いや……なんで本当にいるんでしょうか?
まさか……今の話聞いてたって事……あるよなぁ……。呆然とした表情から一転して何かを決心したような顔つきだもん。
「……転校生」
「お願いがあるの」
おっと、僕が言う前に口を開いてきた。
さて……それにしてもお願いとはなんなのだろうか? さっきの話をばら撒かれたく無かったら一週間以内に三万かそこらを持ってこいと言う話だろうか。
いいだろう、それに付け加えて土下座もしてやる。だから言いふらさないでくださいお願いします。
というか僕……転校生の名前……知らないんだよなぁ……。
「八千……ましろ……貴方を信じてこの話をする。だから、これから言う事は誰にも言わないで」
そこから僕は転校生の話を聞いた。
まあ、金を持ってこいなどと言う話では無かったが、僕の周りの空気が重たくなるのを感じた。
……時間逆行者。まさか魔法少女に続いてタイムトラベラーまで出てくるとは思いもしなかったのだ。
そして最強の魔女、ワルプルギスの夜がこの街にやってくると聞いた。話を聞いてみればとんでもない奴らしく、そんな化け物と転校生はずっと一人で戦ってきたのだ。
そして……鹿目まどかがワルプルギスの夜を倒し、史上最悪の魔女になる姿も見てきたと言う。
転校生の目的は鹿目まどかを助ける事。その為だけに魔法少女になったと転校生は言った。
……僕は少し状況を整理する為目を瞑る。
僕はどこで道を踏み外したのだろうか、魔法少女に関わるまでは普通の中学生だった筈だ。
僕の両親が亡くなった時からか? いや、それは無い。僕の両親はまだ自我が芽生えてない頃、死んだと聞かされた。
小説に触発されて筋トレを始めたのが間違いだったのだろうか? 自分で言うのもなんだが、そこらの格闘家よりも強い自負はある。
ああ……そうだ。この力を小説の主人公のように正義の為に使おうと決心したからだ。
弱きを助け、強きを挫く。
僕はその考えを持ってここまで生きてきた。
些か早い気もするが、ここで命を賭けてもいいだろう。
「……マクシミリアン・テルミドール……是非、貴方の力を貸して欲しい」
「……転校生……僕をその名前で呼ばないでもらおうか」
「ッ……ごめんなさい」
「僕の名前は八千ましろだ……それに覚えておくといい。この名前は……数々の苦難、悲劇を乗り越えた君を助ける名だ」
「!」
転校生が目を見開く。
まあ……それになんだ。友達を助けたい。たったそれだけの為に数多の絶望を見てきた彼女は賞賛に値する。
少しは希望を持たせてやりたいと僕は思った。
「この八千ましろ……必ず君の悲願を達成させてみせる!」
僕は腰に手を当て、片方の手で転校生に指を指すポーズを決める。
うむ、一回やりたかったんだよなこのポーズ。小説のライバルキャラがやっててかっこいいと思っていたんだ。
「……ぷっ……何よそのポーズ……」
それを見た転校生が口に手を当ててクスクスと笑いだす。
おっとぉ? そこ笑うところですか? 笑われると結構恥ずかしいんですが?
死にたい。すっげぇ死にたい。
ああ……こうやって黒歴史というものは増えていくんだな……。もうこれ以上人と関わるのはよした方がいいかもしれん。
「ふふ……よろしく。ましろさん」
「ああ……」
転校生が手を差し出す。
それにしっかりと僕は答え、手を繋いだ。
さて……一ついいでしょうか?
────名前……何ですかね?