あの後転校生の名前は暁美ほむらという名前だと判明した。
いやまあ、直接聞いたわけではなく、後からクラス名簿を見て初めて知ったのだ。
だってそうだろう? これから協力していこうと盛り上がっている時にあんた誰? とか言って水を差したくない。
とまあ、こんな感じでまだ魔女とかが出てきていない生活をしている。
もしかしたら出ているのかもしれないが、僕には魔女を感知する能力がないしな。
暁美さんも必要になった時だけ力を貸してくれたらいいと言ってくれたし、問題はないと思いたい。
そんな訳で僕は見滝原から少し離れた場所に来ている。
どんな訳だと総ツッコミをするのは辞めてもらいたい、たまに寄り道したくなる時が無性にあるのだ。
まあちょっとした散歩だな、こうやって狭い見滝原から出て見聞を広めるというのも乙なものである。
そして少し歩いたら、路地の方に迷い込んでしまった。
いや、違うよ? 路地に一人で歩く男はカッコいいとか思ってないよ? ホントダヨ?
嘘です、かっこいいと思ってます。
薄暗い影が差し込む路地も中、謎の男が一人でそこを歩くだなんてロマンじゃあないか。
まあ今、夜の時間帯だから真っ暗だけど。
そして迫り来る事件の匂いやら何やらとか好きだろう? 僕は大好きだ。
まあ本当に謎の男になってしまった僕なのだが。
あれから結局、宇宙人だと誤解されたままで終わってしまった。
言い出せる空気でもなかったので仕方ないけどさ。
さて、今の時刻は午後7時ぐらいか。少し遅くなってしまったな。早く家に帰らなければおばあちゃんが心配する。
一応連絡はしてあるが、あまり心配はかけさせたくないしな。
そんな時だった。
僕の耳に何か金属がぶつかり合うような音が聞こえた。
音がした方に目を向けてみると、壁から何かを覗き込む女の子の姿が見える。
おいおいフロイライン……。こんな夜にお出掛けとは感心しないな。僕が言えたことじゃあないけど。
さて、何を見ているんだろうか? 僕はこっそり後ろから女の子が見ている方向へ目を向ける。
えー。なんか魔法少女らしき人達が戦ってるんですが?
片や盾のついたポールアックスを持った少女。
片や手に光るかぎ爪のような物をつけた少女。
暁美さんに他にも魔法少女はいると聞いていたがこんなに早く遭遇するとは思わなかった。
名前も知らない人達だし、放置で良い気もするが、たまたまこの現場を見てしまった一般人らしき女の子が気がかりだ。
少しこの場で様子を見ていよう。
「ひゃ! 110番!」
どうやら女の子は警察に電話をかけようとしているらしい。
それはまずい。このことが国家権力に見つかったら大変な事になる。
というか補導されたくない。
「待ちなさい」
僕は急いで女の子の手を抑える。
こんなことで補導されたらたまったもんじゃない。
これなら僕がこの場を収めたほうが手っ取り早いだろう。
「え? だ、誰?」
「あそこにいる者たちの関係者、と言えば良いのかな? 彼女たちの事は知らないけどね」
そして僕は走って、戦っている二人の元へ出向く。
全く。決闘罪という罪を知らないのか? 喜べ、警察に見つかったら一発でアウトだぞ。
僕は二人がぶつかる寸前に、両方の武器を両手で持つ。
「なっ!?」
「はあ!?」
二人がとんでもない顔をする。
まあ、突如として現れた男が武器を掴んだらそりゃ大層驚くだろうよ。
「やめろ、近所迷惑だ」
「誰だよ! 離せっ!」
かぎ爪の少女が僕の手から無理やり離れる。
僕がわざと離したのもあるが、コイツ……なんか異様な空気を感じるな。
「誰だか知らないけど、ここは危ない! 離れて!」
ポールアックスを持った少女が僕の前に立つ。
事情はなんとなく把握した。おそらくあのかぎ爪の少女がこの子に喧嘩を吹っかけたのだろう。
それによく見たらこの子、結構足に来ているようで、少し震えていた。
こんな状態で戦ったら大怪我をするのは必至だ。
「下がるのは君だ。そんな足にきている状態で戦えるのか?」
「だから離れろって言ってんじゃない! アンタ死ぬわよ!?」
ダメだ。頭に血が上っているのか僕の話を全く聞いてもらえない。
しょうがない、ここは少し眠ってもらうしかないようだ。
僕は彼女の首に手刀を落とす。
「がふ」
すると彼女は変身を解除して膝から崩れ落ちた。
すまない。せめて安眠できるように静かに戦うから許してくれたまえ。
「……えー? ……殺ったの?」
目の前に黒い魔法少女は目を見開き僕に指を指す。
「殺しはしていない。少し眠っていてもらうだけだ」
「小巻!」
遠くから見ていた女の子が小巻と呼ばれた少女に駆け寄る。
「君、その子と共にここから離れたまえ。そしてここは僕に任せろ」
「っ! は、はい!」
女の子が小巻さんを引っ張ってこの場から離れようとする。
引っ張ってる姿を見ていると少し重たそうだな。手伝ってあげたいがそうも言ってられない。
「へーキミ、ただの人間じゃないね。名前は?」
「人に名前を訪ねる時は自分から名乗るのが礼儀じゃないか?」
心底楽しそうに狂気に満ちた顔で笑う者だな。
魔法少女と者がそんなので良いのか? 小さなお子様が見たら泣いてしまうぞ。
まあこの魔法少女達はそんな生易しい世界ではなく、とんでもない運命を背負っているわけではあるが。
「ま、いっか。そんな事どうでも」
黒い魔法少女は姿勢を低くして臨戦態勢に入る。
全く、
ここは……カッコいい名前をつけなければな!
僕は彼女の攻撃をかわしながら名前を考える。
手から爪……某アメコミを思い出す攻撃だ。そうだな一先ずここは【ウル】と名付けよう。
うむ、カッコいい……僕の中ではな!
僕はウルの攻撃を片手で払いのける。
(参ったなぁ……攻撃が全く通じない……本当に何者なんだ?)
「ずぉら!!」
僕が拳を握り、殴る。
女を殴るのは趣味ではないがこんな状況ではそうも言ってられないだろう。
それに……ウルはここで叩いておかなければ少し危険だと思ってしまった。
いつか大変な事をやらかしそうな危険な香りがしたのだ。
「ウワァ!!!!」
かろうじて爪で塞がれたか。
まあ良い、さっきの攻撃で痺れが来ているはずだ、ここで一気に叩き崩す!
僕がウルに急接近して殴りかかる。
するとウルはニヤリと笑い、爪を前に出した。そこから伸びる爪。僕は咄嗟に反応してなんとか躱す。
「……爪が伸びるのか……厄介だな」
少し切れてしまった頰から血が流れる。
僕はそれを拭い取り構え直した。
(今の攻撃もかわされた……! 厄介だね……)
僕は伸びる爪に警戒しながらまたウルに殴りかかる。
先程は少し油断したが、流石に攻撃パターンも分かり始めたので、落ち着いて攻撃することが出来ている。
しかし先程から僕の攻撃が鈍いような感じはしている。それと同時にウルの攻撃速度、反射神経が過剰に上がっているのを感じた。
これはまさか……魔法、か?
「鈍いなぁ……鈍いよ。そんな鈍い攻撃、初めて見たよ」
「そうか……貴様。先程から魔法を行使しているな?」
「だとしても教えるわけないでしょ!」
ウルは目を見開き僕にとんでもないスピードで攻撃を仕掛けてくる。
魔法の種類までは判別できないが、相手のスピードを下げ、自分のスピードを上げる魔法か。単純だが厄介な魔法ではある。
しかし……!
「な!?」
僕はウルの攻撃を片手で止める。
「まあ……どんな魔法を使っているのかは知らんが……己の限界を突破すれば良いだけの事だ!」
僕はウルの爪を掴み、頭上に放り投げる。
突如として宙を舞ったウルは汗をかき両方の爪で防御体制をとったがもう遅い!
僕はその場で跳躍して、ウルの爪の上から拳でのラッシュを放った。
「うぉらああああああああ!!!!」
「ぐぼふぁ!!??」
少し痛いだろうが我慢してくれ。これでも手加減はしているんだ。
地面に落ちたウルは大の字に倒れながらこっちを見てか細い声で呟く。
「な、なんで……そ……くどが……落ち……ないの……」
「……己の限界を突破しただけだ。眠っていろ。いい子は寝る時間だからな」
そう言うとウルは変身を解除して眠るように気絶する。僕はその上から上着を被せてやった。
風邪でも引かれたら困るしな。
チラリと彼女の持つソウルジェムを見る。少し濁っているな……。まだ大丈夫そうだがこのままでは魔女になってしまう。
……先程の小巻さんとやらが持って居ないだろうか?
少し追いかけてみよう。
僕は走って先程の女の子を探す。
重たそうに引っ張っているのでそう離れた場所には居ないはずではあるが……。
近くの公園に入ると、ベンチに横たわっている小巻さんと女の子がいた。
「あっ! だ、大丈夫でしたか?」
「ああ、問題ない。少し眠っていてもらった」
そう言いながら小巻さんのソウルジェムを見る。
こちらも少し濁っているようだ。
スカートもポケットが少し盛り上がっているのを見つけた。僕はそれを申し訳ないと思いながらグリーフシードを取り出し、ソウルジェムに翳す。
すると濁りがグリーフシードの中に吸い込まれていった。
ふう、初めて使ったが案外うまくいったもんだな。
「え、えとなんて言ったらいいのか分からないんだけど……さっきのは」
女の子が困惑した表情でこちらに質問してくる。
どうしたものか……ここは僕が説明しても拗れる気もするしな。
「それは目を覚ました彼女から聞くといい。僕はこれで失礼する」
グリーフシードを持ちその場から立ち去ろうとしたら後ろから声をかけられた。
「あ、あの! 貴方の名前は?」
「……八千ましろだ」
そう言って僕は返事を聞かず、その場から立ち去りウルの元へ向かう。
その後ウルの濁りも吸収してその場から立ち去った事は言うまでもない。
マギレコのガチャでさやかちゃんが出ました。
初めて一年…ようやく推しキャラが出て天にも登るような気持ちです。