その日、金の髪留めをつけた桃色長髪の端正な顔立ちをした
その豪邸では、先ほど殺人事件が起こり、ヒナギクが事件の推理を
「そう……犯人は、窓から窓へ飛び移ったんですよ。皆さんが被害者の悲鳴を聞いて駆け付ける前にね! これで窓の外に足跡が無かったのがお分かりでしょう?」
「ば、バカな!?」
「あそこは五メートルも離れているのよ!」
「壁伝いに屋根に上れば二メートルもありませんよ。この家の特殊な構造を知らなければ、思いつきませんが。そして、あの時間に誰にも怪しまれずに家中を動き回れた人物はただ一人……」
右足にギブスをつけた車椅子の男が怒鳴り散らす。
「は、早く言いたまえ! いったい誰だね!? 私の家内を殺したのは!」
「それは、ご主人! 貴方です!」
車椅子の男を指差すヒナギク。
「じょ、冗談はよしたまえ。第一、ワシの足はまだ……」
「下手な芝居はやめて下さい。もうネタはばれてんのよ!」
ヒナギクが側にあった地球儀を車椅子の男に向かって投げると、男は慌てて車椅子から降りて地球儀を避けた。
「だ、旦那様、足が……」
「貴方の足は三ヶ月前にもう治ってんのよ! そうですよね、平山警部?」
「観念しろ! お前の主治医が全て吐いたぞ」
「くっ……!」
くそ!──と、逃げようとする男。
「逃がさないわよ!」
ヒナギクは召喚した木刀─正宗─を逃げる男の後頭部に投げ付けた。
衝撃で倒れる男。
男は警察官によって連行されていく。
「いやー、また君の力を借りてしまったね、桂くん!」
平山警部がヒナギクの背中をポンポンと叩く。
「いつもいつもすまんのー」
「いえいえ。また難事件があれば、この桂 ヒナギクにご依頼を!」
マスコミがその様子を写真に納める。
そして、その写真が新聞に掲載された。
ヒナギクはその新聞を、杉並の白皇学院高等部の二年の教室で読んでいた。
新聞の見出しに、”高校生探偵、またもや事件解決!”と書いてあり、ヒナギクの顔のアップが掲載されている。
「ヒナギクさん、また解決したんですね」
というのは、クラスメイトの
ヒナギクは新聞を畳んだ。
「おはよう、ハヤテくん」
「おはようございます」
ところで──と、続けるハヤテ。「あれ、覚えてますか?」
「あれ?」
「まさか忘れたんですか? 僕が執事大会で優勝したらデートしてくれるって」
「も、もちろん覚えてるわよ。今度の土曜日でいいかしら?」
「いいですよ」
そして土曜日、ヒナギクはハヤテと共に映画館へやって来た。
劇場内が暗くなり、映画が始まる。
これからやるのは、”ナギのごとく!”というお金持ちのお嬢様が主人公の恋愛ドラマだ。
物語が中盤まで差し掛かったころ、映像に振り子のような陰が映り込んだ。
「きゃああああ!」
女性が投影機の前で首を吊った男性の遺体に気付いて悲鳴を上げた。
遺体は空調の影響か、振り子のように左右に揺れていた。
「ハヤテくん、警察!」
「はい!」
ハヤテが携帯で警察を呼ぶと、到着した警察により捜査が始まった。
「おう、桂くんではないか」
平山警部がヒナギクに気付く。
「で、今回も殺人なのかね?」
「たぶんそうだと思います」
遺体が下ろされる。
平山警部とヒナギクは遺体を調べた。
遺体の状況は、首に扼殺痕。衣服が乱れており、抵抗した形跡が窺える。
「所持品は免許証に財布、タバコにライターか」
免許証によると、被害者の名前は
衣服が映画館の制服のため、劇場関係者だと思われる。
平山警部の部下、
「警部、容疑者を連れて来ました」
「ご苦労」
平山警部は三人を見る。
「あなた方、お名前を教えてもらえますかな?」
「私は
「僕は
「俺は館長の
「では聞きますが、あなた方が小宮山さんを最後に見たのはいつですか?」
「私は、今朝出勤した時に見たのが最後だったと思います」
「僕は十時頃に見たのが最後です」
「俺はお昼に小宮山と一緒にご飯食べたぜ。それが最後だな」
「では、最後に小宮山さんと会われたのは、山田さんということですね?」
と、ヒナギクが確認する。
「そうだと思うけど……。ま、この二人の誰かが犯人でなければの話だがな」
「館長! 私たちを疑ってるんですか!?」
「そう言えば、館長は僕らが出勤した頃、小宮山さんと口論してましたよね?」
「それを言ったらお前だってあれだ。小宮山に九条を取られて悔しがってたろ」
「健一、それ本当?」
「九条さんは小宮山さんに暴力振るわれたことがあるよね」
「そんなことで殺す訳ないでしょ!?」
(三人とも怪しいわね)
「木下刑事、被害者の死亡推定時刻は分かってますか?」
「詳しいことは解剖してみなきゃ分かりませんが、鑑識の報告によると午後一時前後だそうです」
「皆さん、その時間は何を?」
「私は休憩室に」
「僕は喫煙所でタバコを」
「俺は受付にいたよ」
「”ナギのごとく!”の投影機を動かしたのは?」
「僕が動かしました。でも小宮山さんは投影機の前で首を吊ってはいませんでしたよ」
(……!?)
ヒナギクは映写室へ駆け込んだ。
投影機が数台あり、一台の投影機が動いていた。
ヒナギクはその動いている投影機を調べた。
投影機の光を出す所に鏡が取り付けてある。そして、その鏡に当たった光が別の投影機の光を出す部分に装着されている鏡に反射し、フィルムの内容がスクリーンに映し出されている。
(なるほど。遺体の出現トリックが分かったわ。後は犯人が誰か、ということだけど……)
「館長さん、受付から見える喫煙所に西城さんはいましたか?」
「ああ、いたよ」
「なるほど」
不適に微笑むヒナギク。
「桂くん、何か分かったのかね?」
ヒナギクは皆に遺体出現のトリックを説明した。
「で、誰なんだ、小宮山を殺したのは?」
「犯人は──」
ヒナギクは九条を指差した。
「事件当時にアリバイの無い九条さん、貴方です!」
「な、何で私なんですか!? 殺害の動機は何ですか!?」
ヒナギクは九条の右目に出来ている痣を見て言った。
「九条さん……貴方、
「なっ!」
「それが殺害の動機です」
九条はその場に崩れた。
「彼がいけなかったんです。毎日暴力振るってきて、どうしたらいいか分からなくて……」
「だからといって、殺人が許されるわけではありませんよ!」
「すみませんでした……」
涙を流す九条。
「連行しろ」
木下刑事が九条を連行する。
「いやー、お手柄だよ桂くん。君がいなければ今回の事件も解決出来なかったかもしれんな」
(大丈夫なの? この国の警察)
「ヒナギクさん、お疲れさま」
と、ハヤテが
その後、二人は映画を見て帰ったという。