銀杏商店街の喫茶店どんぐりでヒナギクはアルバイトをしていた。
「ヒナさん」
同じアルバイトの
「何? 歩」
「ヒナさんって、東宮くんとはどうなったんですか?」
「別れたわ。だってダメ人間なんだもん。それに、彼の他に好きな人出来たから」
「え、誰ですか?」
「ハヤテくんよ」
「へえ、そうなんですか」
扉が開き、客が入ってくる。
いらっしゃいませ、と二人は言った。
「ご注文は何になさいますか?」
ヒナギクが客に訊く。
「コーヒーをもらおうかな」
「コーヒーですね。ミルクとお砂糖はご利用になられますか?」
「ブラックで」
「
ヒナギクがキッチンへ行き、注文の品を持ってくる。
「お待たせ致しました。コーヒーのブラックでございます」
客がヒナギクをまじまじと見る。
「君、仕事いつ終わる?」
「お客様、ナンパですか?」
「ナンパだよ。君、可愛いから」
「ありがとうございます。でも、残念ながら私には好きな人がいますので」
「それは残念だな」
客はコーヒーを
……。
…………。
………………。
店が閉まり、帰路に就くヒナギク。
コツコツ、背後から足音。
(つけられてる?)
ヒナギクは角を曲がり、何者かが来るのを待つこと数秒。
「何かご用ですか?」
現れたのは平山警部だった。
「って、平山警部じゃないですか。どうしたんですか?」
「桂くん、君に殺人の容疑がかかっている」
「え?」
「取り敢えず、署まで来てもらえるかな?」
「はい……」
ヒナギクは警視庁へ同行した。
取調室で平山警部と話をする。
「先ほど、白皇学院の生徒会室で遺体が見付かった。被害者は
平山警部がヒナギクに写真を見せる。
「死亡推定時刻は今日の五時頃。君が学校を出たのがその頃だと、校門に設置された監視カメラの映像で確認が取れている。凶器のナイフには君の指紋がついていたよ。君を疑っている訳ではないが、学校を出る前はどこにいたんだね?」
「生徒会室です。でも、私が出る時、東宮くんはいませんでした」
「凶器の指紋についてはどう説明するんだね?」
「ナイフは時々、生徒会室で使いますから、ついていてもおかしくはないと思います」
「そうか……。これから現場へ来てくれるかね?」
「いいですよ」
ヒナギクは平山警部と共に現場である白皇学院の生徒会室を訪れた。
部屋には争った形跡が残っていた。
ヒナギクは東宮の倒れていた絨毯を調べる。
(何かしら、この染み?)
ヒナギクが染みを触ってみると、弱冠濡れていた。
(エアコン切って出たのに暖かいわね。どうしてかしら?)
「平山警部、この部屋暖かいけど、どうしてですか?」
「来た時、部屋の暖房がついていたんだ。凄く暑かったぞ。リモコンの設定温度が三十一度になってたからな」
「警部、犯人が分かりました」
「何だと?」
「犯人は先ず、ナイフの柄に四角い氷をくっ付け、絨毯の上に立てる。そして暖房を最大まで上げ、椅子を用意してナイフに向かって背中からダイブ。そう……犯人は自殺した東宮くんだったんですよ」
「自殺だと!?」
「絨毯に染みがあるのはお気付きですか?」
「それは君の汗じゃないのかね?」
「いえ、氷が溶けた後です。仮に汗だとして考えると、一カ所にだけあるというのはおかしいですね」
「なるほど、確かにそうだな。じゃあ、自殺で処理するとしよう」
ヒナギクと平山警部は学校を出る。
「もう夜も遅いから送って行くよ」
「ありがとうございます」
ヒナギクは平山警部の車に乗り、自宅まで送ってもらった。