ヒナギクとハヤテは帰京するために、寝台特急に乗っていた。
理由は、ヒナギクが飛行機に乗りたくないと言ったのが始まりだ。
二人は食堂車にいる。
ヒナギクは紅茶、ハヤテはコーヒーを飲んでいる。
二人の他、食堂車には老齢の男女、高校生くらいの男の子とその両親、そしてスーツ姿の男がいる。
ヒナギクは六人の姿をチラッと見た。
高校生の男の子は、スーツ姿の男に声をかける。
「何か用かな?」
「あ、あの……また切手を」
「東京に着いたらあげるよ」
男の子の父親が言う。
「京介、切手なんかもらってどうするんだ?」
「お父さんには関係ないよ」
「関係……って」
「あなた、京介は切手を集めるのが趣味なんじゃないかしら? そこの男性はきっと郵便局員よ」
スーツの男は言った。
「そ、そうなんですよ。僕、郵便局員で。京介くんとはいつも窓口でね」
「へえ。そうなんだ? 私も買ってみようかな」
「それでしたら、後で私の部屋に。上物を揃えてありますよ」
列車が海底トンネルに進入する。
「ハヤテくん、海底トンネルよ。何も見えないわね」
「そりゃトンネルですからね」
スーツの男が席を立つ。
「さて、戻るかな」
スーツの男と入れ替わりに、女が入ってくる。
女は席に着くと、食事を注文した。
「あれ?」
女はスーツの男が出て行った先を見た。
「洋子、切手を買ってくる」
京介の父がスーツ男の後を追った。
*
ヒナギクは部屋で横になっている。
その時、どこからともなく、女性の悲鳴が聞こえてきた。
「なに!?」
ヒナギクは悲鳴の元へ駆けつけた。
「何があったんですか?」
「し、し、し、死んでるの!」
ヒナギクは女の指差した先を見た。そこには、スーツ姿の男の遺体が倒れている。
遺体の腹部にはナイフが刺さっている。死後硬直の具合から、一時間ほど経っているとみられる。
「一体なんの騒ぎですか?」
ハヤテがやってきて遺体を確認する。
「こ、これは!」
「ハヤテくん、乗務員呼んできて」
ヒナギクが部屋に入り、隅々まで調べだした。
「ん?」
鍵のかかった箱。
ヒナギクが遺体を探ると、ポケットから鍵が出てきた。
ガチャリ、と箱の鍵を開けた。
中から大量の粉が飛び出した。
(こ、これは!)
覚せい剤や麻薬などが沢山ある。
「一体何があったんですか?」
乗務員がやってきた。
「は!」
驚く乗務員。
「乗務員さん、この車両から、誰一人出入りさせないで下さい」
「わ、わかりました!」
乗務員がヒナギクの指示を受けて対応をする。
「あ! あとそれから、列車内に警察官がいないかの確認もお願いします!」
「警察ならいるよ」
聞き覚えのある声。
ヒナギクの前に平山警部が姿を見せる。
「平山警部! なにしてるんですか?」
「ん? ああ、出張の帰りだよ。しかし、こんなところで会うとは。それも殺人現場でな」
「被害者ですが、殺されてもおかしくないような商売をしてたみたいですよ」
「どういうことだね?」
ヒナギクは床に散らばった粉や注射器の類を示した。
「か、覚せい剤!?」
ヒナギクは女性の方へ向かっていく。
「あなたが第一発見者の……」
「
「吉崎さん、あなたはどうしてこの部屋に?」
「興味があったからよ」
「何に?」
「えっと……その……」
「薬に手を染めようとしたわけですね?」
「……はい。すみません。でも、殺してませんからね!」