ヒナギクと平山警部は、関係者から事情を聞いた。
怪しいのは京介の父親である。
ヒナギクが父親を疑わしいと思ったのは、被害者が食堂車を出た時、後を追っていたからだ。
だが、それだけで犯人と断定するわけではない。
「ヒナギクさん」
と、ハヤテ。
「ん?」
「もうやめませんか、探偵ごっこ」
「あら、心配してくれてるの?」
「だって、危ないですよ。相手は殺人犯なんですよ?」
「それがいいんじゃない。犯人を推理で追い詰めているときのスリル。やめられないわ、探偵は」
だめだ、とハヤテは諦めた。
ヒナギクは平山警部の元へ移動した。
「平山警部、何か進展ありましたか?」
「父親だけアリバイがないんだ。父親が被害者を追い、君が食堂車でご飯を食べ終え、部屋へ戻るまでの間の三十分の間の」
「証拠がないでしょ?」
「そうなんだよなあ……」
「キャア!」
女性の乗客が列車の揺れで倒れた。
「大丈夫ですか?」
ヒナギクが心配そうに声をかけた。
「ええ、大丈夫よ」
女性は徐に立ち上がる。
「少しお話が耳に入ってしまったのですが、殺人事件があったんですって?」
「ええ。あなたは?」
女性は警察手帳を提示した。
警察の
「警察の方でしたか」
「あなたは、桂さんね? お噂は青森にも届いてますわ」
「それは光栄ですね」
「でも、一高校生が事件に首を突っ込むのは危ないですわよ」
「おい、桂くん」
と、平山警部。
「おや、あなたは……」
「
「桃井 京子……ああ、青森県警の」
「存じ上げてるあなたは何者?」
「警視庁捜査一課の平山だ。階級は警部だが、あなたは?」
「警部補ですわ」
「桃井警部補、捜査にご協力願いたいのですが」
「そうですね」
桃井警部補が捜査に加わることになった。
「警察官と言っても、私は盗犯係ですが」
「畑が違うのか」
「ええ」
ヒナギクは咳払いをした。
「ああ、ごめんなさい」
「一応、容疑者は上がってるんですが、証拠がないんですよ。桃井警部補には証拠を探すのを手伝ってもらいたいのですが」
「証拠、ですか。わかりましたわ」
桃井警部補が捜索に出た。
だが、どんなに全車両を探しても、何一つ出てこなかった。
「おかしいですねー」
「まだ犯人が持ってるのでしょうね」
「あ、私にいい考えがあります」
桃井警部補がメモ帳にサラサラっとなにかを書き留める。
メモ帳を見ると、厨房脇のゴミ捨て場に証拠品を捨てて、と。
「これを犯人に渡すの」
「私がやります」
ヒナギクは父親の部屋へ行き、扉をノックするとメモ帳を床に置き、物陰に隠れた。
父親はメモ帳を拾うと、一旦中に引っ込み、すぐに出てきた。
厨房脇のゴミ箱に、手帳を捨てる父親。
ヒナギクたちは手帳を拾う。
手帳には覚せい剤を購入したと思われる顧客のリストが書き込まれていた。
「覚せい剤?」
「被害者はブローカーだったみたいです」
「なるほど」
三人は関係者を食堂車に集めた。
「え、事件の犯人がわかった?」
と、吉崎。
「誰なんだ、犯人は?」
と、父親。
「お父さん、京介くんはどうしました?」
「え? あ、いや……」
「まあ、いいでしょう」
ヒナギクは父親を指差した。
「犯人はあなたです!」
「え?」
「あなた、被害者の覚せい剤の顧客リストが書かれていた手帳を厨房脇のゴミ箱に捨てましたよね?」
「え、なんのこと?」
「実はあのメッセージ、私たちが用意したんです」
「俺をはめたのか?」
「なかなか尻尾を出しませんでしたからね。賭けに出たんですよ」
「あいつが悪いんだ……。あいつが、覚せい剤なんかを京介に渡してたから」
「顧客リストには京介くんの名前もあった」
「あれが現場にあったら、俺が疑われるって思ってな。だから隠し持ってたんだが……」
桃井警部補が父親に手錠をかけた。
「殺人の容疑で逮捕します」
やがて列車は青森に上陸。父親は青森県警に連行された。