アインクラッドからの転生者   作:アルシャ

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申し訳ありません、デュエルの完全決着モードに時間制限がないことを知りませんでした。
なので、前話でのデュエルでの決着方法とその後の立ち去るところまでの内容がかなり変わっています。
とりあえず簡略版をここに載せておきます。

主人公は、キリト少年の才能を感じとり、ここで殺すのは惜しいと感じ、決闘を中断する。
そして、自分の都合で勝手に決闘をやめるのだからと、勝利をキリト少年に譲り、自分の負けを認める。
負けた場合、キリト少年にアインクラッドの情報を話すと言っていたため、アインクラッドの昔話を始めに話し、その後キリトからの質問に答えて、キリトが黙った後、また聞きたい事があれば答えようといい、立ち去った。

というのが変更後の話です。
すみません。


第14話 コル

 俺は、モンスターの体の一部を大量に売ったにもかかわらず、店主はコルを渡してくれなかった。

 詐欺か? 

 

「コルを受け取っていないのだが?」

 

「何を言っているんだ?」

 

 いや、そのままの意味だが。

 何だ? この店主はもう俺にコルを払ったと言っているのか? 

 だが、俺はコルをもらっては……いや、決めつけるのは良くないか。

 

 何だったか、確か元の世界には電子マネーという不思議なお金があったはずだ。

 よく分かってはいないのだが、何でもカードをかざすだけでお金が払ったことになるという。

 俺は持っていなかったが、なんかそんなようなやつだ。

 

 それか? 

 

 いや、俺はカードを持っていないんだが。

 

 ……そうだ、なら試しに店の物の何かを買ってみよう。

 もしこれで買えるのなら、俺は知らずのうちにカードのようなものを持っていたということになる。

 とりあえず、俺は手近な瓶を手に取り、店主の前に置いた。

 

「すまんが、これをいただけるだろうか」

 

「100コルだ」

 

 すると、俺の目の前にYES/NOというボタンが浮かんできた。

 俺はYESを押した。

 

「毎度あり」

 

 ……買えた、のか? 

 俺はコルを持っていないのに。

 

 俺はそのまま店を出た。

 

「……店主は、文句を言いに来るわけではない、つまりこれは俺のもの?」

 

 お金は、自動で払われるという事か? ……すごいな、凄すぎて言葉が出てこない。

 

 と、いう事はだ、あの3200コルくらいは、いや、100コル使ったから3100コルくらいを、今俺は持っているということか!? 

 なら、俺はようやく、これでようやく飯が食える!! 

 

 俺は飲食店に向かって走り出した。

 

 そして、飲食店に入り、飯を頼んだ。

 

 そこでふと我に帰った。

 大丈夫だろうか? 本当に俺はコルを持っているのだろうか、と。

 実はあの店主にいたずらをされていただけで、本当は俺はまだお金を持っていなく、ここで食事をしてしまったら無銭飲食になってしまう、ということは無いだろうか? 

 

 しかしその不安は、料理が目の前に運ばれてきた瞬間に消え去った。

 思考が、理性が消え去り、俺は目の前の食事にかぶりついた。

 

「……美味い」

 

 ああ、美味い。数日ぶりに食べる食事の何とうまいことか。

 

 そして、いつの間にか目の前から食料が消えていた。

 

「……なに!? 食事はどこに行った!?」

 

 何処だ!? いつの間に!? この俺に気付かれずに食事を奪った奴がいたのか!? なんてことだ!? これでは俺は空腹のあまり餓死してしまう! 

 

 ……ん? あまり空腹が感じられなくなっているな。

 あ、そうか、俺が食ったのか。

 

「……すまなかった」

 

 周りには他の客はおらず、店員しかいなかったが、恥ずかしい事をした。

 もし他の客がいたなら、営業妨害になるところだった。

 気をつけよう。

 しかし、空腹がここまで俺を狂わせるとは。

 

 腹は出来るだけ減らさない方がいいな。

 

 ……それにしても

 

「美味かった」

 

 空腹は最大の調味料と言ったか? まさにそれだ。

 まるで天にも昇る気分だ。

 

 そう、現に今も一切の体の自由が消えて無くなり、視界も真っ暗になっている。

 まるで死んだかのように。

 

 ……ん? 

 

 そして、目の前にディスコネクション警告という文字が浮かんできた。

 

 ……ん? 

 

 体が、動かない。

 

 ………………ん? 

 

 

 ──────────────────

 

 

 俺は、そのまま約1時間ほど体が動かなかった。

 

 しかし、1時間後、体が動くようになった。

 

「……何だったんだ?」

 

 あまり食事を取らなかった反動か? 

 ……そうだな、そうに違いない。

 やはり、食事はきちんと取らなければならないか。

 

 だが良かった。もし体が動かなくなったのが店の中ではなく、道路や、モンスターが出る街の外だった場合、大変なことになっていただろう。

 

「……ゾッとするな」

 

 やはり、知らないことはまずいことだ。

 

 色々と街の人間に聞いて回るか。

 

 

 ──────────────────

 

 

 だが、街の人間に情報を聞こうとしたが、あまり情報は得られなかった。

 

 聞き方がそもそも難しく、自分でもなにが分かっていないかが分からないので、上手く質問できなかった。

 

「……まあいいか」

 

 とりあえずは空腹にさえ気を付けていれば問題ないだろう。

 流石にまた視界が暗くなり体が動かなくなるのはごめんだからな。

 

 

 ──────────────────

 

 

 その後、俺は武器を修理してもらい、しばらく街の周辺で狩をした。

 

 そして、取ったものを売って、そのお金で食事をとり、バックを買い、武器を修理してというのを繰り返していた。

 

 武器は、もう一本買うか悩んだが、もうしばらくは保留することにした。

 なんとなく、まだ剣一本で戦っていたい気分だったから。

 

 そうして、それらを繰り返しながら、ある程度時間が過ぎた後、次の街に行って、またそれらをある程度繰り返した後、次の街に行って、を繰り返し、この世界に来てから2週間後ほどで、《天柱の塔》の近くの街にたどり着いた。

 

《天柱の塔》というのは、昔、前世でシムセスから聞いたあの次の層に行ける塔のことだ。

 

 確か、あそこは20階建だったか? 

 それで、20階には守護獣がいる。

 とても強い奴だ。

 前世では4人で挑んだ敵、だが今回は1人。

 

 倒すのに一体どれだけ時間がかかることやら。

 いや、そうでもない、か。

 

 前世のこの頃はまだまだ未熟だった。

 だから、今の俺ならもっと早く倒せるかもしれない。

 この錆びついた腕でもな。

 

 俺は、塔を登り始めた。

 

 

 ──────────────────

 

 

 しかし、ここからあまり攻略が進んで行かなかった。

 

 塔の中の敵が多すぎた。

 敵が同時に10体も20体も出てくるわけではない。

 勿論10体、20体くらいなら同時に出てこようが対処しきれるが、そういう事ではなく、沢山の敵全てを倒していたら、どうしても先に武器が刃こぼれしてしまう。

 

 少なくとも20階に着くまでには武器が壊れてしまっているだろう。

 

 己の腕が錆びついているから、こんな有様なのだろうと、しばらくは少し、10階くらいまで登って武器が刃こぼれして来たら帰って、その道中で倒した敵の一部を拾って、売って、武器を直して、また挑んでを繰り返していたが、一向に腕が良くなって行かない。

 

 武器が壊れかけるのはほぼ同じくらい武器を振るったタイミングだ。

 そうして、もう1週間程度が経過してしまった。

 

「どうするか」

 

 選択肢は2つ。

 

 沢山の武器を買い、消費しながら進んでいくか、もしくは敵をかわしながら進んでいくかだ。

 

 沢山の武器を買うか? 

 いや、それはやめておこう。

 

 確かに武器は消耗品だ。

 いつまでも使い続けるわけには行かない。

 だが、確かに武器には魂が宿っている。

 それを蔑ろにすれば、いつか必ず己が報いを受ける日が来る。

 

 昔何処かで聞いた言葉だ。

 

 だから、沢山の武器を使い捨てにするのはやめよう。

 

 なら、敵を避けて進むか? 

 

《天柱の塔》にいるモンスターは、確か全て外敵から塔を守る守護獣の分類に入ったはずだ。

 

 そして、20階にいるのはその中の主で、そのほかのところにいるのが子分みたいな感じだったか? よく覚えてないが。

 

 それにあそこの塔からモンスターが溢れ出た等の話は聞いたことがなかったはず。

 

 なら、倒さずに進んでもいい、のか? 

 

 ……行くか。

 俺は極力敵と合わないように隠れながら塔を進んで行くことにした。

 

 

 ──────────────────

 

 

 見つかった。走って逃げた。

 

 見つかった。走って逃げた。

 

 見つかった。走って逃げられなかった。

 相手の方が足が速い。

 俺は相手の足を切り、走って逃げた。

 

 見つかった。見つかった。見つかった。

 

「……」

 

 ダメだ。見つかる。

 とりあえず、見つかったモンスターは倒しておいたが、これでは前と何も変わりがない。

 

 隠れんぼには少し自信があったのだが。

 

 当然気配は紛れ込ませている。

 

 しばらくこの辺りのモンスターとは戦っていたから、モンスターの気配は覚えた。

 その気配を極力真似しているのだが、なぜかバレる。

 

 視覚にも入ってはいなかったはず。

 

 ……嗅覚か? 

 

 相手は赤い体で2足歩行の犬みたいな奴だ。

 そうか、俺は匂いでバレているのか。

 

 ……俺は、臭うのか……

 

 当然か、しばらく風呂に入れていないからな。

 だが、自分では自分の匂いは分からないものだな。

 

 しかし、何をしても見つかるというのなら逆に話は早い。

 

 真っ直ぐ、ただひたすら走り続ければいいだけのことだ。

 足の速いやつの足だけ切ってな。

 敵の攻撃は殺気を読めるから背後からでも余裕で避けられる。

 

「よし、行くか」

 

 俺はもう気配を隠すことすらやめてただ走り続けた。

 

 

 ──────────────────

 

 

 走り出してから、すぐに後悔した。

 モンスター達はいつまでも俺を追いかけて来る。

 足を切ったやつは流石についてこれなかったようだが、俺と同速か、少し遅いやつらが今俺を後ろから大量に追いかけて来ている。

 

 その数、約50以上。

 

 流石にこの数を1人で相手にしたことはない。

 というより、相手にする前に押しつぶされて死にそうだ。

 

 だが、大丈夫だ。

 俺より速いやつがいないということは、俺が止まらなければ追いつかれることはないということだからな。

 

「余裕だな」

 

 そう思っていたら、目の前には宝箱があった。

 宝箱しかなかった。

 道が、なかった。

 袋小路だ。

 

「……やば」

 

 後ろからは無数の足音と鳴き声。

 前方には壁。右も左も壁。

 

 なんとか隙間を縫って通り抜けるか? 

 

 後ろを向くと、狭い通路に所狭しとモンスターが並んでいる。

 少なくとも、俺が通れる隙間は無さそうだ。

 いや、あった。

 

 俺は振り向いて、モンスター達の左側壁面に走り出した。

 

 そして、その勢いのまま飛び上がり、壁を蹴って先頭のモンスターの頭を足場にして、そのままモンスターの群れの頭上を通り抜けていった。

 

「上がガラ空きだな」

 

 当然、下から武器を振り上げて攻撃して来るやつもいる。

 モンスターも動いているから、足場にする場所を探すのも難しい。

 

 だが、慣れたことだ。

 俺はそのまま敵を足場にして敵の後方に抜け、走り去った。

 

 そして、ついに20階に到達して、大きな扉が目に入ってきた。

 

 俺は迷わずその扉を開け、中に入った。

 

 俺を追っていたモンスターはかなりの数がいたが、どうやら扉の中には入ってこないようだ。

 

 ここの主が恐いのか? 

 

 まあ、なんにしても助かったことだけは変わらない。

 

 扉の中の部屋は、薄暗く、そしてとても広い空間だった。

 奥に向かって伸びる、長方形の空間だ。

 

 左右のは幅は約20メートル、奥は、暗くてわかりづらいが、100メートルくらいだろうか? 

 多分それくらいだろう。

 

 そして、少ししたら、左右の壁にある松明がひとりでに燃え上がった。

 そして、松明は次々と奥に向かって火がついて行く。

 

 それにより、だんだんと部屋が明るくなっていき、部屋の中がよく見えるようになっていった。

 ひび割れた石床や壁、その各所に飾られた大小様々な頭蓋骨、部屋の奥には、玉座に座る巨大な何か。

 

「……でかくないか?」

 

 明らかにサイズがおかしい気がするんだが? 

 俺はゆっくりと守護獣へ向かって歩きながら呟いた。

 

 昔、前世で戦った守護獣は、もっと細身で、背も低かった。

 

 もちろん、その赤い犬は俺が倒した赤い犬とは違うやつだとは思うのだが、それにしたって、部屋に入る前に追いかけて来ていた赤い犬とサイズが違いすぎる。

 

 距離はもうそろそろ20メートルを切る。だが今だに守護獣が動く気配はない。

 

 しかし、改めて近くでよく見てみると。

 

「……太ってるな、ぽっちゃり、いやデブか」

 

 恐らく、沢山色々なものを食べて来たのだろう。

 

 その瞬間、それまで微動だにしていなかった巨大な赤い犬が猛然と跳び、空中でぐるりと一回転して俺の近くに地響きとともに着地した。

 

 そして、狼を思わせるアギトをいっぱいに開いた。

 

「グルルラアアアアッ!!」

 

 やばい、ものすごい怒らせてしまった。

 事実は、時として人を傷つける。

 それはモンスターも例外ではなかったというわけか。

 気にしていたんだな、自分が太っていることを。

 

 デブというのは禁句だったか。

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