アインクラッドからの転生者   作:アルシャ

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第4話 デスゲーム

 そう言えば、この世界からどうやって元の世界に転移すれば良いんだろうか? 

 

 俺が転移してきた場所か? だけどあそこは広場の真ん中で、特に何があるわけではなさそうだったんだが。

 

 どうすれば良いんだろうか? 

 詩乃がいたら詩乃に聞けば良いんだが、いないんだから仕方ない、誰か適当な人に聞いて回るか。

 

 誰か知っている人はいるだろう。

 街には結構な人がいたしな。

 

 そう思って、街に向かって歩いている途中、リンゴーン、リンゴーンという、鐘のような音が大音量で響き渡った。

 

「ん? なんだ?」

 

 そして、いきなり大きな鐘の音が響き渡ったかと思うと、突如として体が光り出した。

 いや、ブルーの光に包まれた、といったほうが正しいか。

 

「……は?」

 

 そして、青い膜の向こうで、草原の風景がみるみる薄れていった。

 

 そして、一瞬光が強くなったと思うと、ゆっくりと薄くなっていった。

 だが、薄くなっていく青い光の奥に見える景色は先ほどとはまるで変わっていた。

 

「な!? なんだ!?」

 

 俺は、さっきまで草原にいたはずだった。

 なのに今は、街の広場にいる。

 

 訳がわからない。

 いや、もしかして、転移か? 

 ならここは、ゲームの外? いや、違う、どうやら最初にゲームに入ったときに来たあの広場に転移されたようだ。

 

 まあ、いいか、歩いて戻る手間が省けたし。

 

 周りを見てみると、かなりの人間がこの場所にいるようだった。

 先ほど草原にいた2人の姿も見えた。

 

 なんだろう? この人達も転移させられたのだろうか? 

 色とりどりの装備、髪色、眉目秀麗な男女の群れ。

 凄いな、こんなカラフルな人だかりは、初めてみたかもしれない。

 

 それが、何千人とこの広場に詰められている。もしかしたら1万にも届くかもしれない。

 

 俺以外の広場にいる人も、どこか困惑している様子だった。

 

「どうなっているの?」「これでログアウトできるのか?」「早くしてくれよ」「ふざけんな」「GM出てこい」

 

 何だかイライラしている様子だ。

 ああ、そうか、俺は最初から街に戻るつもりだったから、正直転移してくれてありがたかったが、他の人たちは食事中だったり、睡眠中だったり、もしくは他の街に行っていたのかもしれない。

 

 さっきの二人も青イノシシと戦っていたし、戦闘中にここに戻されたなら、たまったものではないか。

 声の中には一部理解できない言葉があったが、概ね間違っていないだろう。

 

 そんなことを考えていたとき、不意に、それらの声を押しのけ、誰かが叫んだ。

 

「あっ……上を見ろ!!」

 

 上? 

 

 俺は上を見上げた。

 すると、空に真っ赤な文字が浮かんでいた。

 えっと、[Warning]と、[System Announcement]と書かれていた。

 

 えっと、ワーニング、システムアナウンスメント? 

 何かの警告だろうか。

 とりあえずここから離れたほうがよさそうだな。

 

 俺は人混みを抜けて広場の外に向かった。

 

「いっ!」

 

 しかし、広場から出ようとしたとき、透明な壁に激突した。

 

「……たくない?」

 

 痛みがない? 俺は今思いっきり壁に鼻からぶつかったのだが、違和感を感じただけで、痛みは感じなかった。

 

「あ、そうか、さっき青イノシシを殴っていたときに感じていた違和感はこれか」

 

 拳で殴ると、当然拳が痛む。

 だけど、青イノシシを殴ったとき、拳に痛みがなかった。

 

 誰かを殴るなんて久しぶりだったから、すぐに違和感に気づけなかった。

 

 もしかしたら、このゲームの世界では、痛みを感じることができないのだろうか? 

 

 痛みとは生き残る上でとても大切な警告だ。

 特に本能型の俺のような人間にとっては。

 俺の体を一番よく理解しているのは俺じゃない、俺の体だ。

 だから俺はこれまで体の言うことを聞いてきた。

 

 いつまで戦えるのか、限界はどこか、まだやれるのか、やめたほうがいいのか。

 そういったことを体は教えてくれていた。

 

 だが、痛覚が封じられてしまっているのなら、感覚が狂ってしまう。

 限界がわからなくなってしまう。

 

「不味いな、どうにかして痛覚が復活してくれないことか」

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

「ん?」

 

 上から、声が聞こえてきた。

 俺は振り返って上を見上げた。

 

 そして、俺は、自分の目を疑った。

 目の前の光景が、信じられなかった。

 

 今、俺の目の前には、大きな、大きな、信じられないくらい、とても巨大な人が浮かんでいた。

 その大きさだけでも異常なのに、さらには宙に浮いている。

 ありえない光景を前に、一瞬、夢でも見ているのかと思った。

 

 いや、人、なのか? フードを被っているが、フードの中は空洞だ。

 そして、人は空に浮かない。

 つまり、あれは。

 

「幽霊? 亡霊?」

 

 キズナが見たら卒倒しそうな光景が、目の前にあった。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

 茅場晶彦? どこかで聞いたことがあったような? 

 確か、テレビが話していたような……ダメだ、忘れた。

 

 しかし、その茅場晶彦と言う人は、死んでしまったのか。

 幽霊は、現世に強い未練を持つものがなるって聞いたことがある。

 きっと、凄い執念を持っていたのだろう。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 

 何を言っているのかわからなかった。

 日本語を話してほしい。

 プレイヤー諸君とは、もしかしたらこの広場に集められた人達ことか? 

 メインメニュー? なんだそれは? 

 ログアウトボタン? そう言えばさっき広場の誰かが同じようなことを言っていた気がするな。

 不具合? 仕様? 

 

 だめだ、俺には難しすぎて訳がわからない。

 

 とりあえず、あの亡霊は俺たちに何かを伝えたいのだろう。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』

 

 だからログアウトとはなんだ? 

 

『また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合────ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

 えっと、ちょっと待ってくれ、まだ理解が追いついていないのにそんな次から次へと訳のわからないことを話さないでくれ。

 話し方が難しすぎる、もっと簡潔に話してくれないと分かる訳ないじゃないか。

 

 ざわ、ざわ、と、集団のあちこちがざわめいている。

 やはり、皆理解できていないのだろう。

 良かった、もしみんなが理解できていて、俺だけ理解できていなかったら、俺が馬鹿みたいではないか。

 

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み──以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通じて告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果──残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

 やめてくれ! これ以上専門用語で訳のわからない話を続けないでくれ! もっとわかりやすく頼む! 誰も理解できてないから! 

 みんなポカーンとしているのがわからないのか!? 

 どこかで一つ悲鳴が上がった。

 俺も訳がわからなすぎて叫びたい。

 

 確かに何個か聞き覚えのある単語はあった。ナーヴギアとかは。

 ナーヴギアは、この世界に転移するのに必要な道具だったやつだ。

 だけど、それ以外訳のわからない話ばかりしているし、213名が退場しているとか言ってたけど、なんの話をしているんだ? 

 

 頑張って理解しようと努めたが、これは無理だな。諦めて聞いているフリをしておこう。

 

『諸君が、向こう側においてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険性はすでに低くなっていると言ってもよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には安心して……ゲーム攻略に勤しんでほしい』

 

 話が長い。

 透明な壁は解除されないし、よくわからない話を永遠に聞かされて、ちょっと参ってきた。

 校長先生の話くらいに長いぞ。

 

 誰かが叫んでいる。きっと話が長いことに怒っているんだろう。

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実というべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に──諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

 ん? ソードアートオンラインの話が出てきたな。

 ゲームではない? あれ? ソードアートオンラインってゲームじゃなかったのか? 

 蘇生手段ってなんだ? ヒットポイント? 亡霊はまた訳のわからない専門用語を話している。

 ダメだ、分からん。

 

 なんか重要そうなことを話している気はするんだが、もう少し理解しやすく話してほしい。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保障しよう』

 

 ん? アインクラッド最上部第百層? もしかして紅玉宮のことか? 

 この亡霊は、俺たちにそこに行ってほしいと頼んでいるのだろうか? 

 もしかしたら、亡霊の未練は、紅玉宮にあるのかもしれない。

 

「で、できるわきゃねぇだろうが!! ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」

 

 ん? 誰かの声が聞こえてきた。

 

 あー、まあそうだよな、ここから第百層までなんて、何十年と時間がかかるからな。

 時間が余っているやつや、暇なやつ、前世の俺たち4人みたいに酔狂な奴らならともかく、他の人は嫌だろう。

 

 第一前世では、登っていくのは個人の自由だったはずだ。誰かに強制されることじゃない。

 

 他の人たちもどよめいている。やっぱりみんな否定的なんだろう。

 

 亡霊も頼み方っていうものがなっていない。もっと話をわかりやすくしてくれれば、誰かは願いを聞き届けるかもしれないのに。

 まぁ、俺は登ってみたくはあるから、ついでに、亡霊の願いを叶えてもいいんだがな。

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

 亡霊がプレゼントをくれるらしい。もしかして、報酬を先払いして頼みを断りにくくする作戦かもしれない。

 しかし、アイテムストレージとはなんだ? 

 どこかにアイテムストレージという場所があるのだろうか? 

 

 確認してくれ給えって言われても、今透明な壁があって広場から出られないんだが。

 

 すると、突然、周りの人間を白い光が包んだ。

 

「なんだ?」

 

 その光は2、3秒で消えた。

 

 今の光はなんだろうか? 

 ……ん? さっきまで見ていたものと何かが違っているような気がする。

 なんだろうか? 光に包まれていた人たちが、なんとなく何かが変わったような。

 

 これは、あれだ、この間詩乃が見ていた、間違い探しのようなものだ。

 何が変わったのだろうか? 

 

 ……あ、分かった、みんな背が低くなっているような気がする。

 いや、気のせいか? だけど下がっているような、下がってるよな? 

 

 とにかく、あの光はみんなから身長を奪って行ったのだろう。

 

 はっ! 分かった! あの巨大な亡霊は、他の人から身長を奪って大きくなっていったんだ。

 あんなに大きいのはおかしいと思っていたが、そういうことだったのか! 

 

 これはあれだ、皆があまりにも乗り気ではなく、このままでは誰も第百層に向かってくれないと思った亡霊が、身長を奪って皆を脅しているんだな。

 身長を返して欲しければ第百層まで行けと。

 

 なかなかの策士かもしれない。

 人によっては身長というのはかなり大切なものだからな。

 

 だが、そうなると何故俺からは身長を奪わなかったのだろうか? 

 

 もしかしたら、俺は第百層まで行ってもいいと思っていたからか? 

 

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は──ーSAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と』

 

 SAOというのが何かはわからないが、茅場晶彦という人はナーヴギアの開発者だったのか。

 

 こんなことをしたのか? つまり皆から身長を奪ったことを言っているのだろう。

 大規模なテロ? あまり身長に頓着しない人なら別にいいのかもしれないが、気にしている人にとってはテロだろう。

 身代金目的の誘拐、この亡霊はお金欲しさに皆から身長を誘拐したのか。

 確かにお金を払って身長が戻るなら、お金を払う人もいるかも知れない。

 

『私の目的は、そのどちらでもない』

 

 あれ、違ったのか。

 ああ、そうか、紅玉宮のある第百層に行って欲しいんだったな。

 

『それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

 目的を持たない? この状況が最終的な目的? 

 なるほど、報酬の先払いと、身長という人質を取って、皆に自発的に第百層を目指させる状況を作ることが、この亡霊の目的だったのか。

 飴と鞭という奴だな。

 そして、皆が第百層まで登る様子を見ていたいと。

 

『……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る』

 

 そう言って、亡霊は上昇していき、空中に浮いていた血のような色の水面に沈んで行った。

 

 いや、上に浮いていた水面に下から入っていく場合、沈んだでいいのだろうか? 

 いや、それはいいか。

 

 取り敢えず、あの亡霊が言いたかったことをまとめるか。

 

 まず、あの亡霊は茅場晶彦という人の亡霊で、あの亡霊は俺たちに第百層を目指してほしいということだ。

 そして、その報酬は、すでにどこかに用意されていて、それでもやる気を示さなかった人からは身長を奪い、返して欲しければ第百層まで行け、ということだろう。

 

 それで、亡霊の真の目的は、皆が頑張って登っていく姿を眺めたい、といったところか。

 

 成る程、なんとなく分かった。

 俺は全然、第百層を目指すのもいい。

 むしろ、いつかは行こうとしていた。

 

 だけど、もう結構お腹が空いているんだ。

 一度家に帰って食事をしたい。

 多分詩乃も待っていることだろうしな。

 

 だから一度帰ってから、第百層を目指すとしよう。

 そう決めた俺は、この広場にいる人から、元の世界に転移する方法を聞こうとした。

 

「すまな──」

 

 その瞬間、広場の人間たちが、一斉に大声で言葉を発し始めた。

 つまり、圧倒的なボリュームで放たれた多重の音声が、広大な広場をびりびりと震動させた。




第2話で、なぜ主人公にSAOを買わせずに、詩乃に買ってもらったと思いますか?
何故、準備を全て詩乃にやってもらったと思いますか?

まあ、この主人公じゃ買えないだろう、準備できないだろうっていうのもあります。
普通に、この主人公ならきっとこうなるだろう、と思って書きましたが、それ以外にも理由があります。






・・・そう、主人公を無知でいさせるためです。
自分で買ったり、準備をした場合、少しそこで知識が手に入ってしまいます。
だから詩乃にやってもらいました。
主人公にはできるだけ無知でいてもらいたかったからです。





・・・それだけですよ?それ以上に理由なんて何もありませんよ?
本当ですよ?

話は変わりますが、自分はSAOで一番好きなキャラクターは詩乃です。

またまた話は変わりますが、好きな子ほど虐めたいっていう小学生によくある感情ってありますよね、全く理解できませんが。
ええ、全く理解できませんとも。訳がわからないですよね。
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