ライネス師匠と   作:煉獄の師匠・清盛

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思いの外、早くに投稿する事が出来ました。
恐らく私が体調不良であり自宅で安静にし手持ち無沙汰に書いていたからだと思います。本来であれば…投稿ペースは1か月に1回だと思います。

今回は前回の2倍の文章です。拙い上長いので…大変見にくいと思いますが、最後まで読んで頂いたら幸いでございます。




第2話「マカリオ一家とコービット屋敷」

午前10時3分 病院

 

 ライネスと初はマカリオ一家が入院している病院に来ていた。件のコービット屋敷について情報を得る為である。先ずは夫のヴィットリオ・マカリオから話を聞く事にした。

 2人が病室に入り目にしたのは体を丸めブツブツと呟いている中肉中背、中年の男・ヴィットリオだった。

 

「─────」

 

「呆然としてどうした、我が弟子。しっかりしろ」

 

 ライネスが初の背中を軽く叩き励ました。それに対し初は「ありがとうございます」と頭を下げた。満足そうに笑みを浮かべたライネスはヴィットリオの方に向き直り歩みを進めた。

 

「取り込み中のところすまない、ミスター。お話を伺っても?」

 

「─────!!」

 

 ライネスの問いに対しヴィットリオは体を丸めブツブツと呟いているだけだった。よほど狂気の症状が重い様だ。

 返答できないヴィットリオを見てライネスは初の元へ戻って来た。

 

「残念ながら…ヴィットリオ・マカリオから話を聞きだすのは困難だ。諦めるしかないね」

 

「狂気の症状がこれ程とは……」

 

「怖気づいてしまった、などと言うまいな。君は2か月前、私と一緒に日本でこの世のものと思えない()()を解き明かしたではないか。気をしっかりと持ちたまえよ」

 

「は、はい!!」

 

「さて、次は…妻のガブリエラ・マカリオから話を聞こうとしよう」

 

 2人はガブリエラの病室に向かい歩き始めた。ガブリエラの病室はヴィットリオの病室の上の階にあった。

 病室の前に立ち扉をノックすると返事がしたので入室した。ベッドには2人に対し微笑を浮かべ金髪の少しふっくらした女性が居た、彼女がガブリエラらしい。どうやら意思疎通は可能らしい。

 

「突然の来訪失礼する。私はライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。この男は弟子の土御門 初」

 

 ライネスからの紹介があると初はガブリエラに対し会釈した。

 

「ミズ・マカリオ。お話を伺いしても?」

 

「はい…何でしょうか?」

 

 微笑とは対照的に声には元気が感じられなかった。

 

「貴女方が以前、住まわれた例の屋敷についてお聞かせ願おうじゃないか?何やら……異様な事が起きるらしいね」

 

 ()()()()と聞いた刹那、ガブリエラの顔から微笑が消え、ビクッと体を震わせた。何かあったのは間違いない様だ。

 ガブリエラの口から語られる証言を聞き逃すまい、と初はメモ帳とペンを用意した。

 

「あ、あの屋敷には悪霊が住み着いて居ます…」

 

 ガブリエラは声を震わせながら語り始めた。それに対しライネスは興味深そうな顔をし耳を傾け、初はペンを走らせた。

 

「夜中にその()()が私に圧し掛かって目が覚めた事は何度もありました……。()()が怒った場合、皿や家具などを部屋の中で飛ばし────」

 

 ガブリエラの言葉が途中で聞こえなくなった矢先、彼女の呼吸が乱れ、悶え苦しみだした。

 

「くっ、不味いな…過呼吸か!?」

 

 ライネスがそう言いながらナースコールすると、直ぐに医師や看護師たちが駆け付け2人に対し帰る様に促され病室から出された。

 

「追い出されてしまったね。これ以上ガブリエラから話を聞くのは難しそうだ」

 

「はい…。ガブリエラさんの言動から噂の信憑性は増しましたね」

 

「あぁ…。ガブリエラの話を聞いて君はどう思った?」

 

「そうですね…」

 

 初はメモを見返しながら口を開いた。

 

()()が圧し掛かって目が覚めた…と云う点について、金縛りに近い状態に陥ったかと…」

 

「へぇ~。で、皿や家具などを部屋の中で飛ばしは?」

 

「ポルターガイスト現象、かと…」

 

 初の話を聞いてライネスは、うんうんと頷いていた。

 

「ガブリエラが体験した異様な出来事は君が語った通りかも知れない。では、もう一歩踏み込んで考えてみようじゃないか」

 

「もう一歩、ですか?」

 

 初が聞き返すとライネスは指をパチンと鳴らし微かに笑みを浮かべて言った。

 

「マカリオ一家に異様な出来事が起こったと云う結果がある以上、原因があるじゃないかってね?」

 

「原因ですか…?マカリオ一家に…」

 

「それも一因かも知れないが話を聞くのが困難になってしまっただろう?大元である屋敷について調べてみようじゃないか。私たちは屋敷に関して無知だ」

 

「なるほど。では、次は…屋敷について調べるんですね」

 

「あぁ…そうだとも。さて、行くとしよう」

 

 

 

午前11時19分 時計塔 図書館

 

「屋敷について調べるんじゃないんですか?」

 

「おや~?まさか君は直接屋敷に行くと思ってたのかい?」

 

 ライネスは初を小馬鹿にする様な口調で言った。初は「いえ、そういう訳じゃ…」と否定気味に首を横に振った。

 

「屋敷についての情報を得る為には不動産屋か図書館とは思っていましたが…まさか、時計塔の図書館とは思いもしませんでした」

 

「時計塔が魔術師たちによる学院故…その図書館も魔術に関する書類しかないと思ったのかい?それは大間違いだ、ここの図書館は他に比べる事も出来ない程の規模を持つ。情報を得るにはここが一番さ」

 

「確かに…ここよりも大きい図書館は見たことありません」

 

「そうだろう?君は交友関係を断ちボッチになってまで、魑魅魍魎が蔓延る時計塔内に関わらず、ここに足を運ぶ程の愛読家だと思ったから知っていると思ったんだが…」

 

 ライネスの言葉が初に突き刺さる。この図書館に足を運ぶのは事実だ。しかし、交友関係を断ちボッチになってまでは言い過ぎでは?と思った。

 

「ボッチではないと、思いたいのですが…」

 

「ほほう?」

 

 初の言葉を聞いた瞬間、ライネスは小悪魔的な笑みを浮かべ詰め寄った。

 

「私以外と交流がある者が居るのかい?是非とも教えてほしいな」

 

「……」

 

 初は思いつかず沈黙していた、友人と呼べる者の名前が出てこなかった。講義内で顔を合わせ他愛のない会話をするクラスメイトはいる。果たして友人と呼んでも良いのか…。

 ライネスは初の言葉を待ちながらニヤニヤしていた。彼の反応を知っているからである。

 数秒間の沈黙が初は数分、それ以上に感じた。その沈黙を破ったのはライネスの呆れ声だった。

 

「はぁ、やっぱりな~。勉強熱心なのは大いに結構だが、交友関係も持ちたまえよ」

 

「はい、善処します…」

 

「よろしい。では、屋敷について多方面から調べよう」

 

 ライネスの言葉を聞き初はこくりと頷き、それぞれ分かれて調べる事にした。

 初は複数部の新聞や雑誌を手に取り気になる記事を見つけたので、それをメモする事にした。それぞれの新聞や雑誌の記事には「1934年にある繁盛した商人があの屋敷を建てた。しかし、直ぐに病気にかかった為、屋敷をウォルター・コービットと云う人物に売った」「1951年にウォルター・コービットは隣人から訴えられた。隣人はコービットの()()()()()()()()()()()()()()により、この地区から出て行ってもらいたいと訴えたのである」「コービットが裁判に勝ったのは明らかである。1965年の彼の死亡時点で、住所がまだそこになっているからである。また、第2の訴訟事件も起きた。コービットが遺言で自分を自宅の地階に埋葬する様に指示したのを、止めさせようとする裁判だ」と書かれていた。第2の訴訟の結果を調べようとしたが、その情報は見つからなかった。

 ライネスは屋敷の情報を調べるついでに過去に住んでいた者たちの記録がないのか探っていた。地元新聞をペラペラと捲り目を通すと2点、興味深い記事があった。1つは『屋敷の呪いか!?フランス人の移民一家逃亡』と云う見出しで内容が「1979年にフランス人の移民家族が移り住んできたが、酷い事故が続いてしまった為、逃げ出した。両親が亡くなり、3人の子どもは体に障害を負ったのである」と云うものだった。もう1つは『K屋敷に潜む呪い』と云う見出しで年表の様な作りになっていた。「・2008年に別の家族が移ってきたが、彼らも直ぐに病気に憑りつかれた。・2013年には長男が狂気に陥って包丁で自殺し、傷心の一家は引っ越した。・2016年にまた別の家族が屋敷を借りたが、彼らはいくらもしないうちに直ぐに出て行った。一家全員が同時に病気にかかった為である」と記されていた。これらの記事を見て家主とガブリエラの証言には噓偽りがないと確信した。

 

「すみません、師匠」

 

「ん、何だい?」

 

 初がメモ帳を見せながら訪ねてきたので首を傾げて答えた。

 

「この第2の訴訟事件について調べたいのですが…新聞や雑誌には記載がなく」

 

「ふむ。そうだな、一緒に調べるとしよう。丁度調べ事が終わったからね。民事裁判所の記録を持ってきてくれたまえ…1960年代のね」

 

「はぁ、はい……」

 

 初は何故、民事裁判所の記録を持ってくる様に言われたのか分からないのか曖昧な返事をしつつ、それを探し出しライネスの前に置いた。とても分厚かった為、第2の訴訟事件を探すのは大変そうだと思ったがライネスの表情を見る限りそうでもなさそうだった。

 

「何故この記録を持ってくる様に言われたのか分かってないって顔をしているね。冷静になって考えてみなよ、裁判の詳細が一般の新聞や雑誌には記載されないだろう?」

 

「あっ…それもそうですね」

 

「全く…君は肝心な所が抜けているな」

 

 呆れた様な口調で言っているが表情は決してその様にはなってなかった。寧ろ微笑みを浮かべていた。師匠であるライネスからしてみれば、出来の悪い弟子程可愛いものはない、という事なのだろう。

 

「遺言と云うのは…自分の死後の為に財産の処置などを言い残す事だ。当然だが、生前でしか行えない。だからね…その分厚い記録でも、ウォルター・コービットの死から1年が経過している66年以降の記録は見る必要はないんだよ。つまり、半分は見なくていいんだ」

 

「確かに…。でしたら、ウォルター・コービットの死である65年から遡っていけばいいんですね」

 

「あぁ。上出来だ、我が弟子。さぁ、見てみよう」

 

 ペラペラと頁を捲っていくと目的の記録を見つける事が出来た。

 記録には、コービットの遺言を執行したのはマイケル・トーマス神父で、彼は「黙想チャペル&グランター・オブ・シークレッツ教会」の神父であったと記されていた。トーマス神父が勤めていた黙想チャペルは2011年に閉鎖になっているらしい。

 

「ふ~む、第2の訴訟事件の結果は載ってないが……執行したのはマイケル・トーマス神父とある。これは勝訴、として判断していいだろう」

 

「じゃあ…あの屋敷の地階には、ウォルター・コービットが埋葬されているってことですか!?」

 

「掘り起こされてない限りは、ね」

 

 ライネスが目を細め冷静な口調で言った。それに反して初の口調は興奮気味で「異様な出来事の原因は、これのせいじゃないですか?」と言った。

 

「さぁ、どうだろうね。真実は()()()()()()()()()()()()()()と云う事さ」

 

 目を閉じ静かにライネスはそう言ったが、初は意味が分からずキョトンとしていた。目を開いたライネスが初の顔を見て「直に分かるさ」と微笑んでいた。

 初が「は、はぁ」と漠然と返事をし記録に視線を落とすと、ふと気になるものが書かれていた。

 

「ライネス師匠…この黙想チャペルと呼ばれる教会、重大な事件を起こしているみたいです」

 

「ほほう、どれどれ……」

 

 初が記録を指さすとライネスが顔を覗かせた。

 黙想チャペルに関する記録には、近所の子どもが行方不明になるのはこの教会のメンバーたちの仕業と警察の手入れで分かった。手入れの最中に、3人の警察官と17人のカルティストが銃撃あるいは火事によって死亡した、と記されていた。だが、検死は奇妙な程曖昧で情報が伝わってこない。寧ろ、検死官の検死は行われてなかったのではないかと思わせる様な記録だった。教会メンバー54人が逮捕されたが、8人を除いて釈放されたらしい。

 

「これは重大な事件だぞ……これは初耳だ。初、続きを読み上げてくれ」

 

「はい!!マイケル・トーマス神父は逮捕され、40年の刑を言い渡された。しかし、2015年に脱獄し逃亡した……と」

 

「─────。やはり、聞いた事がない。察するに…誰かが違法な介入をした、と云う事だろう」

 

「隠蔽しなければならない理由が、あの教会にはある、と云う事ですね」

 

「そして、ウォルター・コービットと何らかの関わりがある。明日は黙想チャペルの探検だ」

 

 時計の針は19時を指していた。今からの探索は危険性が増すので明日にする事とした。そして、図書館から出る前に初は「コービット屋敷とウォルター・コービットに関する経緯」をライネスに伝え、ライネスは「コービット屋敷の住人に降りかかった異様な出来事」を初に伝え共有する事にした。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回の話は如何だったでしょうか?
皆さまからの感想・質問・リクエストをいつでもお待ちしております。

皆さまが気になるのは、土御門 初と云う男だと思いますので簡単に紹介します。
・土御門 初(つちみかど はじめ)
・166cm/48kg
・白髪のウエーブのかかった髪(髪型はジミーペイジに似ている)
・二十歳で今年の3月に時計塔に行きライネスの弟子となった。
・土御門家次期当主で陰陽師である。
今紹介出来る情報は以上です。この男に関する情報は随時開放します。

鬼ランド…全然やってないな……
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