ライネス師匠と   作:煉獄の師匠・清盛

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UA数が1000を突破しましたので番外編を書こうと思います。
尤もこの章が終わってからになりますが。
お気に入りや、しおりを挟んで頂きありがとうございます。

今回も最後まで読んで頂けると幸いです。
短めですのでスラッと読めるかと思いますが語彙力がない為、伝わりにくい可能性があります。


第5話「悪霊の家(中)」

午前11時54分 コービット屋敷2階

 

 2人と1体が2階へと足を踏み入れた時だった。突然ズシンズシンと大きな音が聞こえた。

 

「─────!!」

 

「ウォルター・コービットによる警告かも知れんな。ここからは気を付けて進むぞ」

 

 物音に驚き唾を飲み込んだ初とは対照的にライネスは冷静だった。間取り図にはこの階が4部屋から成っていると記されていた。先ほどと同様に手前の部屋から調べる事にした。

 この部屋は普通の寝室だ。ダブル・ベッドと本棚があり、窓からは見晴らしの良い景色が見えた。

 

「この部屋はマカリオ夫妻の部屋ですかね」

 

「あぁ、この部屋で夫婦の営みが行われていた様だ。どうかな、我が弟子?ここで子作りでもするかい?」

 

「なッ─────!!」

 

 ライネスが突拍子もない事を言ったので初は顔を赤くして言葉を詰まらせた。

 

「全く初な反応だな~、君は。童て─────」

 

「師匠!!この部屋の調査を続けましょう!!」

 

 ライネスの言葉を遮る様に初は慌てて口を挟んだ。その光景にライネスは苦笑し肩を上げた。先ほどの会話を無理やり忘れようと部屋を見渡した。すると、ある事に気がついた。

 

「師匠…この部屋も居間と同じく…」

 

「あぁ、異様な程多いな…」

 

 十字架がいくつも置いてあり、ロザリオと聖務日課書がベッドわきのテーブルの上に乗っていた。

 

「ここまでになると敬虔なるカトリック教徒と云うよりは…」

 

「異様な出来事に悩まされ、とった行動が神頼み…なのかも知れんな」

 

 ライネスの意見と一致し初はこくりと頷いた。

 マカリオ夫妻の部屋にある物を全て調べ終え、2人と1体は退室し隣の部屋を目指した。

 夫妻の部屋の隣にあったこの部屋は、小さなベッドが2つ、おもちゃ、鏡つきのタンスがあり、壁には飛行機の絵が貼ってあった。どうやら子ども部屋である様だ。そんな中、初は飛行機の絵を見ていた。

 

「飛行機の絵が気になるのかい?男の子はそう云うのが好きなのかな?」

 

「男の子は乗り物が好きなのかも知れません。僕は消防車が好きでした。乗せてもらった事もあります。それに乗る消防士も好きでした」

 

「ほほう?命をかけて消火し人命を救う姿勢が、かな?」

 

「えぇ、そうです。身近に居るヒーローですからね。後は英語の発音がカッコいい、と云うのがあります」

 

消防士(Firefighter)が?」

 

 ライネスが首を傾げると初は力強く頷いた。

 

「Firefighterを日本語で直訳すると…Firefighter(炎と闘う者)になります。カッコよくありませんか?」

 

 初が目を輝かせて熱く語った。ライネスは反応に困り苦笑するしか出来なかった。初は厨二病なのかも知れない。

 

 「さて、この部屋では君には変な感性がある事が分かった。次の部屋に行くとしよう」

 

 自分には変な感性がある、と言われ首を傾げながら初はライネスたちとこの部屋を後にした。本人はいたって普通の感性だと思っている様だ。

 子ども部屋の隣に位置する部屋にはベッドの枠、むき出しのベッドのスプリング、空のタンスが置いてあった。使われてないと云う点を除けば、この部屋は他の2つの部屋と同じ様な構造だ。しかし、決定的に違うものがあった。

 

「うッ─────」

 

 酷い悪臭が漂っていた。あまりの悪臭に初は鼻を摘まんだ。

 

「くッ─────」

 

 ライネスの魔眼が反応した。この部屋は悪臭だけではなく、何かしらの魔術がかかっている様だ。トリムマウから目薬を受け取り、点けて症状を抑えた。

 

「調べる時は今まで以上に慎重にな?」

 

 ライネスが初に釘を刺すると初は無言で頷き、各々細心の注意を払い部屋へと足を踏み入れた。何かないかと各々がベッドの下を除いたり部屋の隅を調べていた時だった。初が不意に部屋の入り口へと視線を移すと困惑した表情を浮かべた。それを見かねたライネスが声をかけてきた。

 

「どうしたんだい?そんな顔をして」

 

「部屋の入り口の床に…血溜まりが……」

 

 初は指差しながら答えた。ライネスは初が指差した箇所を見ると確かに血溜まりが出来ていた。怪訝な表情を浮かべトリムマウと共に血溜まりへと近付いた。それに初は続いた。ライネスは跪き血溜まりを調べた。

 

「乾いてない。これは……今出来たものだ。床に私たちの足跡がない以上、私たちがこの部屋へと足を踏み入れた後にだ」

 

 ライネスが冷静に分析した時だった。突然、窓枠がガタガタと云う音を立て揺れていた。

 

「トリムマウ、窓枠を調べてくれ。慎重にな?」

 

「Ye─────」

 

「いえ、ここは僕にお任せ下さい」

 

「分かった、君に任せるよ」

 

 ライネスがそう言うと初は「ありがとうございます」と頭を下げおもむろに紙を取り出した。その紙は人の形をしていた。そして紙を口元に近付けボソボソと呟き息を吹き込むと、紙は宙を舞い仮面を被った人が姿を現した。

 

「ほほう、式神か」

 

「はい。擬人式神です、尤も下位の式神ですが」

 

 ライネスに一通り説明すると初は式神に視線を移し窓枠を調べる様に命令した。仮面を被った式神は初の命令に従い窓枠を調べ近付いた時だった。突然ベッドが素早く動き式神に衝突した。衝突された式神は窓の外へと押し出され元の紙に戻った。何が起こったのかその光景から目を離す事が出来なかったが、ベッドがガタガタと動き始めたので身の危険を感じた。

 

「初、急いで出るぞ!!」

 

「は、はい!!」

 

 2人と1体は慌ててこの部屋から廊下へと飛び出てドアを閉めた。すると、ドンッ!!と云う大きな衝撃音が響きドアが少し歪んだ。ベッドがドアにぶつかったのだろうと、容易に想像する事が出来た。

 

「1歩でも遅かったら潰されていたかもな」

 

「これ程敵意をむき出しにし襲ってくると云う事は…」

 

「この部屋はウォルター・コービットの部屋だろう」

 

 ライネスの言葉に初は肯定の意味を込めて頷いた。この部屋に立ち入り、あの様な光景を見て体験すれば、この部屋の主が誰なのか直ぐに分かるだろう。

 先ほど襲われたウォルター・コービットの部屋の隣にある部屋を調べてみた。この部屋には、流し台、浴槽、トイレがあった。タオルやその他の物も置いてあり、家族分が揃っていた。また、浴槽の中には黒っぽい水が溜まっていた。どうやら蛇口が緩くなって水が滴り落ちているのが原因だろう。これ以上、調べてもこの部屋から得る情報が無いので廊下に出るとライネスは初に向き直り口を開いた。

 

「さて、最後はウォルター・コービットが埋葬されているであろう地階だ。覚悟はいいかな、我が弟子?」

 

「はい、師匠!!」

 

 ライネス、初、トリムマウは階段を下りて地階を目指した。




最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回のお話は如何だったでしょうか?


さて、初が少しですが…力を使ったので紹介致します。

・擬人式神(ぎじんしきがみ)
 紙や薬、草木などで人の形をした形代を作り、そこに陰陽師の念を入れて使役する式神です。
 擬人式神には上位と下位があり、陰陽師が式神を作る際に意思を持たせた場合は、自立的に動くことができるため上位式神に、意思を持たずその力を失うまで術者の命ずるままに従うものは下位式神になります。
 今回は下位の式神を使いました。

次回の投稿は未定ですが12月頃になるかと。
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