ライネス師匠と   作:煉獄の師匠・清盛

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明けましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
今年もよろしくお願いします。

12月に投稿が出来ずに申し訳ありません。
ボックスイベントとLB5のストーリーに夢中になっておりまして…
言い訳など聞きたくないですよね?
なので、前書きと参りましょう。

UA数が大分昔にですが1000を突破致しましたので番外編を執筆致しました。
最初に言っておきますと、ライネス師匠は今回出ません・ネタキャラが出てきます・書き方を変えてみました。

以上をご了承の方は最後まで読んで頂けると幸いでございます。


番外編
1000UA記念1-1「出会い」


2019年3月某日 日本 土御門宅

 

「これで忘れ物はないな……」

 

 オレはリュックサックとスーツケースの中身を確認していた。何故かって?それは大学の春休みを利用して憧れのイギリスへと旅行することになっていて、忘れ物があったら大変だからだ。昔から些細な事を気にする性格だからな、何度も確認した。

 

「よしッ!!」

 

 満足するまで確認を終えるとリュックサックとスーツケースのチャックを閉めた。すると次は別の不安が頭を過ったんだ。英語をきちんと話せるかだ。一応、英検3級は持っているからな中学生レベルの英語は話せるが……。まぁ、何とかなるだろう。外国人はちゃんと聞き取ってくれると聞いたことがあるしな。

 コンコン、とドアをノックする音が聞こえ開けたら父親が居た。

 

「初、これも持っていくといいよ」

 

「六壬式盤を?」

 

「あっても困らないだろう?」

 

「うん、持っていくよ」

 

 式盤を受け取ると父親は出ていった。そして、オレは受け取った式盤をスーツケースの中に入れた。これで全ての身支度は終えた筈。あとは空港に行くだけだ。リュックサックを背負いスーツケースを引きながら家を後にした。出る時に「行ってくる」と父親に声をかけたら「気をつけて楽しんできてな」とありがたい言葉をもらった。

 空港に着き飛行機への搭乗手続きもスムーズに進み、イギリスへと飛び立った。初めてのイギリス旅行で不安もあったが期待も同時にしていた。到着にはかなりの時間がかかるの事を知っていたので眠る事にした。目が覚める頃にはイギリスに着いているんだろうな~。

 

 

 

午後4時8分 イギリス 某所

 

 オレは旅行会社で選んだ旅館の前に居た。この旅館はハリソン一家が所有する邸宅を宿泊施設に変えたらしい。今もこの旅館はハリソン一家が経営していて、森の奥にひっそりと建っている事から穴場スポットとして人気があるらしい。はぁ~、凄いと眺めていると中から茶髪で20代前半のメイド服を着た人が出てきて、こちらに気付き近付いて来た。この旅館の使用人だな…恐らく。

 

「こんにちは、お客様。私は当旅館の使用人を務めております、ボニーでございます。お客様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 おっ……これが本番の英語か。名前がボニー、と云う使用人さんらしい。ボニーさんはスカートの裾を軽く持ち上げ頭を下げる優雅な挨拶をした。はぁ~絵になるな。おっと…見とれている場合じゃない名前を聞かれているんだよな?緊張するけど喋らないと…!!

 

「土御門 初です。下手な英語で申し訳ありません」

 

 これでどうだ?伝わったか…?オレが不安そうにしていると、ボニーさんは逆に柔らかい笑みを浮かべていた。

 

「土御門 初様でいらっしゃいますね。貴方様の英語は伝わっております故、ご心配はなさらぬ様。もし、不安でございましたら…日本語で話しかけて頂いても問題ございません」

 

「に、日本語!?」

 

 なっ───!?ボニーさんは流暢な日本語で返答してきた。オレは呆気にとられた。

 

「宿泊なさる日本人のお客様は少なくないので…当旅館の使用人全員は日本語を話す事が可能でございます」

 

「なるほど」

 

「ですので、先ほども申した通り…土御門様も何かお困りの際はご遠慮なくお声がけ下さいませ」

 

「はい、助かります」

 

 日本語での会話が可能とは……少しは心の重りが取れた気がする。実に運がいい。

 

「では、お部屋へご案内致します。外ではお身体が冷えてしまいますので」

 

「お願いします」

 

 ボニーさんの言う通り、外はとても寒かった。北海道並みだと聞いていたが、その通りだと思った。尤も北海道には行った事ないが。

 オレはボニーさんに導かれ旅館の中へと入った。

 

「───!!」

 

 言葉を失う、と云うのはこの事だと理解した。中は外観からでも察する事が出来る様に豪華絢爛だった。そして何より目に入ったのは壁にかけてあった女性の肖像画だった。オレは思わず足を止めてしまった。

 

「如何なさいましたか、土御門様?」

 

「いや…この肖像画の女性が気になってしまって」

 

「このお方はアリス様。ハリソン家初代当主・ジョージ様の奥方にして、魔女でございます」

 

「ま、魔女?」

 

「えぇ、始まりの魔女と呼ばれております」

 

 大層な2つ名だな~。しかし、始まりの魔女と言われる所以は何故なんだろう?人の道を外れた行いをして、始まりの魔女と呼ばれているのかな。

 

「魔女と呼ばれる程相当酷い行いをしたんですか?」

 

「いえ、何もしておりません。魔女と呼ばれると言うよりは彼女は正真正銘、本物の魔女です」

 

 本物の魔女、か。ボニーさんの目や言葉から真剣さが伝わってくる。嘘ではなさそうだ。日本にも魑魅魍魎、と云った存在もいるからな。

 

「アリスと云う方が魔女だと分かりました。何故()()()、なんですか?」

 

「この世に存在するありとあらゆる魔術の源流の使い手で、全ての属性を有していらっしゃるからです」

 

 当たり前だが会った事がないが…全ての属性を有しているとは…魔道については疎いが陰陽道で言えば木火土金水の属性を持つ術が使える、と云う事だ。間違いなく大物だろう。などと、考察していたが…ふと我に返った。

 

「あ、すみません…ボニーさん足を止めてしまって…。色々と教えて頂きありがとうございます。その…部屋まで案内してくれると幸いです」

 

「畏まりました。こちらへどうぞ」

 

 ボニーさんに案内され部屋へと向かった。部屋の場所は階段を2回上がり東側だった。つまり、3階という事だ。

 

「こちらの部屋をお使い下さいませ」

 

「ありがとうございます」

 

 礼を述べてオレは部屋へと足を踏み入れた。入れば、おぉ~と感嘆した。そこまで広くはないが…とても趣のある感じで淡く輝く明かりが灯っていて、とてもリラックスが出来そうな部屋だった。ゆっくり、のんびり過ごせそうだな。

 

「夕食は19時より1階の食堂となっております。18時55分にお迎えに上がります。それまで、ご自由にお過ごし下さいませ。当館は散策自由でございます故」

 

「分かりました。ここまでありがとうございます」

 

 オレが礼を述べるとボニーさんは頭を下げて自分の持ち場へと戻った。散策自由なのか…今は4時半。2時間以上も部屋でボーっと過ごすよりは出歩いてみるか。他の宿泊客とは出会いません様に、あまり英語を喋れないからな。

 貴重品を持ち部屋に鍵をかけてオレは行くあてもなく、ぶらぶらする事にした。館内を散策にしても他の宿泊客に迷惑がかかるかも知れないし、外に出るにしてもとても冷えるからな…。どうしたものか。そうだ、エントランスホールの端で音楽を聴きながら本でも読んでいるか。直ぐに部屋に戻り本と音楽プレイヤーを持ち出し、エントランスホールに向かった。当たり前だが、部屋には鍵をかけた。

 エントランスホールに着けば端に位置するソファーに座りイヤホンを付け音楽を聴き、本を開き読み始めた。これで周りを気にする事なく時間を忘れる事が出来るな。読み始めてどの位の時間が過ぎたのか分からないが、不意に肩を軽く叩かれオレは身体をビクッとさせ顔を上げた。

 

「やぁ、驚かせてすまないね」

 

 オレの目に映ったのは同じ日本人の中性的な好青年だった。声を聞かなければ女と間違うかも知れない。年も大体同じ位な感じがした。何なんだ…この人は……。取り敢えずイヤホンを取って話を聞いてみる事にした。

 

「僕に何か…ご用ですか?」

 

「少し、私の暇潰しに付き合ってくれないか?」

 

 などと言いながら対面のソファーに腰をかけた。

 

「構いませんが……貴方は一体……?」

 

「これはこれは失礼した。私は馬林 翔(まばやし しょう)。しがない占い師さ。気軽に翔兄さん、と呼びたまえ」

 

 ……。とてもマイペースな人だな、馬林さんは。

 

「土御門 初です。大学生です」

 

「ふ~む、土御門…土御門……」

 

 オレの名字を繰り返し読み上げて何なんだ?馬林さんは顎に手を当て考え込んでいる仕草をしているが。

 

「ひょっとして……君は陰陽師・安倍晴明の子孫で土御門家の次期当主かな?」

 

「─────!!」

 

 土御門と云う名字を聞いて安倍晴明の子孫、と答える人はいなくはないが歴史や陰陽師に興味を持たないと知らないだろう。けど…この人はオレの立ち位置までを知っているのか?

 

「そう怖い顔をしないで、落ち着く落ち着く。占い師と云う看板を背負う為には占い関係の勉強は必須さだろう?それで陰陽師を知った。その存在に興味を持ち調べていく内に君の存在と出会った。私はねぇ、君に興味があるんだよ」

 

 えっ…この人何て言った……?オレに興味がある?危ない人なんじゃ……

 

「馬林さんって…そっち系の人ですか!?」

 

「いやいや、私は両方いけるよ♪それに…馬林さんではなく、翔兄さんと呼びたまえ。無理ならば、翔さんと」

 

 ま…し、翔さんは笑顔で答えた。間違いない、この人は危ない人だ。でも……偏見はよくない様な。

 

「翔さんはご自身の性癖を暴露する為に、暇潰しの相手を探していたんですか?」

 

「いや、違う」

 

 先ほどまでの調子いい語気とは対象的に翔さんの口調は冷静になった。

 

「私は占い師。私の占いは当たる。過去も未来も視える。だからこそ君に伝えなくてはいけない事がある」

 

「何ですか、それは?」

 

「私は此処で死に、此処で生き返る」

 

「えっ?」

 

「この旅館で命を落とし、生き返る。と言ったんだよ」

 

「意味は分かります。しかし…それを信じろ、と?」

 

「私の占いだからね、必ずそうなる。そう言っても信じてもらえないだろう?だからね、君に占ってもらいたいんだよ。陰陽師に伝わる六壬占で」

 

 翔さんは真剣な眼差しでオレに訴えた。それに六壬占を知っているとは…陰陽師に興味があると言う言葉は本当なのか。六壬占で翔さんが言った様な結果が出れば信じてもらえる、という魂胆だろう。しかし…生き返るとは、どう云った術で?

 

「分かりました。では式盤を持って─────」

 

「いや、君の部屋に行こう」

 

「ぼ、僕の部屋ですか?」

 

「そうだとも。占いの結果を聞かれたくないのさ。何か都合の悪い事でもあるのかい?」

 

「いえ…特にないですが」

 

 初対面でよく他人の部屋に行き来出来るな翔さんは。まぁ、この人なら余計な事はしない筈…いや、する?常識的に考えてしないよね?いや、そもそもこの人に常識はあるのか?

 色々と不安要素が拭い切れないがオレと翔さんはオレの部屋へと向かった。




最後までお読みいただきありがとうございます。

今回の話は如何だったでしょうか?
前書きで言った事がお分かり頂けたかと存じます。

次回の投稿は2月か3月になると思います。

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