常に余裕を持って優雅たれ(震え声) 作:常に余裕を持って優雅たれ──
誰もが寝静まった深夜── 。
極東日本の地方都市の冬木市の港湾区にある広大なコンテナターミナルにて膨大な戦意を撒き散らしている戦士がいた。
深夜であるため、明日の仕事や学校に備えて一般人たちは夢の中にいるから問題ないだろうが、この戦意を少しでも感じ取ってしまったらトラウマになるだろう戦意だ。
さあ、戦いだ、闘いだ、闘争だ!殺せるものならばかかってくるが良い!オレを殺せなければオレがお前を殺す。
こんな殺意と戦意を一般人が叩きつけられれば一生の心の傷になるのも道理であろう。何せクー・フーリンはガッッッ!!と士気を高める目的で叫んだだけで周りにいた人間が何十人も死んでしまったのだから。
そしてサーヴァントといえども、こんなあからさまな挑発に容易く乗りはしないだろう。故にクー・フーリンは手持ち無沙汰であったが──どんな罠があっても己の力でぐしゃりと、踏み潰す自信と結果がある高潔な武人がゆっくりとコンテナの陰から現れ、戦意をぶつけ返す。
現れたのは世界一有名であまりにも高名な英雄。
神々や数多の怪物を倒し、最後には神の座に至った最強の男。
そう、ギリシャ神話の頂点に燦然と煌く男──大英雄ヘラクレス。
圧倒的な戦意と戦意。今にも地面が割れそうな幻覚さえ見えるほどの戦意で空間がギチギチと歪んだ。好敵手を見つけたアイルランドの大英雄とギリシャの大英雄はお互いに笑みを浮かべながら闘争を始める。
クー・フーリンはランサーという最速のクラスらしく己の卓越した敏捷性で一瞬の隙にヘラクレスの懐に入る。しかし、ヘラクレスは回避の動作すら見せない。
「シッ───!」
クー・フーリンの槍による必殺の連続の突きがヘラクレスに刺さったかに見えた。しかし、その最速の連撃はヘラクレスが体に掛けている異質な布によって一ミリもダメージを与えられていない。
攻撃が失敗したことを攻撃を放った直後すぐに悟ったクー・フーリンは一時身を引くために後ろに飛ぼうとするがヘラクレスはそれを許さない。即座にクー・フーリンをかち割ろうと巨大な石斧を叩き付けた。
「チィッ!」
クー・フーリンは己に迫る速さに避けるのは不可能だと判断し、逃げようとした体勢を立て直さんと槍を地面に突き刺した。そして逃げるための勢いを槍を起点にして回転することで殺し──開いた片手に淡く光り輝く剣を出現させて迎え撃つ。
ギィィィィン……!!
斧と剣がぶつかり合っただけとは思えない爆音が冬木市の港湾区に響く。まるでジェット機のエンジン音のような爆音だ。
光り輝く剣と無骨な石斧の鍔迫り合い。どちらの英雄も巨大な力を持つ英雄である。その鍔迫り合いは無限に続くかと思われたが、突然力を強めたヘラクレスによりクーフーリンは体勢を崩した。なぜなら、ヘラクレスは筋力A+、クー・フーリンは筋力A。ヘラクレスは瞬間的にクーフーリン以上の力を発揮できるのだ。
クー・フーリンがぐらりと揺らぐのを見たヘラクレスは再び力を込めたが──クー・フーリンはその増大したヘラクレスの力をも利用して下からヘラクレスの顎を蹴り上げた。
ヘラクレスに一時の隙が生まれ、クー・フーリンはその隙に一瞬で距離を取った。
クー・フーリンは歓喜していた。まさかこの大男のような戦士とこの聖杯戦争で出会えるとは予想だにしていなかったからだ。
その高まり続ける戦意と歓喜と、興奮はクー・フーリンの体に変化を齎す。
身体は皮膚の下で回転し、髪の毛は頭から逆立った。
一つの眼は頭にのめり込み、もう1つの眼は頬に突き出る。
そして筋肉は巨大に膨れ上がり、今にも破裂しそうなほどだ。
そしてクー・フーリンは好敵手に敬意を込めて宝具を使わんと飛び上がり、魔力を魔槍ゲイ・ボルクに込めて全身の力を力動させる。
ヘラクレスもまた歓喜していた。ギリシャの頂点たる己に匹敵しうる戦士に。敵の"ねじれの発作"を見て敵の名前がクー・フーリンだと確信を得たヘラクレスは己も本気を出さねば負けると右腕に『
それはギリシャ神話における軍神アレスの分体である軍章旗を帯の形に直したもので、ヘラクレスの宝具の一つ。
ヘラクレスはその宝具により神性と筋力、耐久、敏捷、魔力の値を大きく引き上げ、弓を取り出した。
其につがえるは百の首を持つという不死身の蛇──ヒュドラの猛毒を含む不死殺しの矢。生きたヒュドラに近づいた人間はその毒に肺が爛れて死に至り、その毒によりケイローンとヘラクレス本人という不死身の人間を二回も死に至らしめた魔矢。
ヘラクレス最強の宝具──ヒュドラの毒矢である。
ギリギリと己の強烈な力を持って弓を引く。加えて力を込めながらも、先ほどの宝具『
その神の気は、並のサーヴァントならばかすれただけでも五体が砕け散るであろうほどの力。
それを最強宝具のヒュドラの毒矢に纏わせる。
ヘラクレスはクー・フーリンを真正面から打ち破る為に己の最大最高の一矢を放たんとしているのだ。
両者とも宝具を放たんと限界まで込められたその力を解放する。
『
『
真の名が解放され、宝具が放たれんとした瞬間。
突然真横から極大の閃光がコンテナを破壊しながら彼ら二人目掛けて飛んできた。
「ムッ!?」
「チィッ!」
ヘラクレスとクー・フーリンは即座に宝具の発動を停止し、極光の外に跳躍する。極光に込められた膨大な魔力はクー・フーリンとヘラクレスという大英雄をしても避けることを強要するものだったのだ。
なぜならその輝ける光の波は星に鍛えられた神造兵装にして数多ある聖剣の頂点に立つ聖剣の王から出た極光であったから。
そう、その剣の名は『
地球という惑星を脅かす外敵の出現時にこそ真の力を発揮すると言われるこの剣を真名解放した時に放たれる究極の斬撃には、どんな英霊だろうと即死させる程の威力が備わっていた。
その究極の斬撃を放った下手人に対して、警戒を強めるヘラクレスとクー・フーリンの間にあるサーヴァントが降り立った。
降り立った人物こそはセイバー、アルトリア・ペンドラゴン───イギリスの誇る世に名高き円卓の騎士たちの王、騎士王であった。
輝ける彼の剣こそは
過去・現在・未来を通じ戦場に散ってゆく全ての兵たちが今際の際に懐く、哀しくも尊き夢
その意志を誇りと掲げその信義を貫けと糾し今常勝の王は高らかに手にとる奇跡の真名を謳う
其は・・・(唐突な不意打ち聖剣アイリポエム)
戦闘シーン難しい……難しくない?
2021/7/19 二騎の筋力A+とAに対する描写の修正