常に余裕を持って優雅たれ(震え声)   作:常に余裕を持って優雅たれ──

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今回は短め


深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ(適当)

優男── 雨生龍之介は召喚されたサーヴァントにより、生まれて初めて"本物の死"を理解できた。暗殺者の深淵。死を齎す者。それらを体現するサーヴァントに対して、龍之介は生贄にと用意していたコトネを放置し、興奮しながらそのサーヴァントに話しかける。

 

「COOOOOL!!!最高だ、超COOLだよ悪魔サン!たった今、俺はアンタに魅せられたんだ!アンタについて行って、アンタの殺し方をもっと見た─────」

 

興奮しながら話しかけた龍之介は途中で言葉を止めた。気づかぬ間に体を両断されていたことに気づいたのだ。コトネも、龍之介もサーヴァントが持っている巨大な剣が振るわれたことを一切認識できなかった。召喚されたサーヴァントは、召喚された時と一切変わらず格好のまま、動いていない。

 

ブシュウゥッ!っと龍之介の体から血が吹き出し、龍之介が崩れ落ちる。

 

──ああ、これが死。やっ、と理解できた……。

 

龍之介は遠のいていく意識の中ようやく死を得ることができ、加えてその死を与えた者が死の体現者であったことに感謝し、その一生を終えた。

龍之介という悪夢をもたらした殺人鬼がようやく消えたことで安心したのか、コトネの両眼から涙がとめどなく流れてきた。

 

龍之介に死を齎した深淵の暗殺者は、未だ縛られたままの泣くコトネに目を向ける。

 

「山の翁、幽谷の淵より召喚に応じ姿を晒した」

 

その重く響く声を持つ、大角の付いた髑髏の仮面、胸部に髑髏をあしらった甲冑を身につけた恐ろしい姿を持った死を纏う者がコトネには自分を救いにきてくれたヒーローにしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

爆弾が何発も落とされたかのような、巨大な爆心地が冬木の港湾区にできていた。警察や、自衛隊に規制されたため、メディアがなんとか撮影しようとしているその巨大な爆心地がある港湾区を、二人の男が歩いていた。調査している警察や、自衛隊は規制しているはずなのに入り込んでいる部外者であるその二人の姿を見ても、一切注意しない。そもそも見えていないように反応すら誰もしていない。

 

その二人とは、20代程に見える若い風貌を持った理知的で、穏やかに見える青年マリスビリー・アニムスフィアと、マリスビリーの友にして三つ編みに結ばれた髪を持つ魔術王ソロモンの二人だ。

 

マリスビリーは時計塔の一二人いるロードの一人であり、天文学科を束ねているロード。魔術師らしからぬ燃えるような人類愛と信念を持ち、魔術師らしく冷血で、冷徹で人間の倫理が欠けているような人物とソロモンは彼のことを思っている。

そしてそのソロモンは言わずと知れた魔術の祖。その死と同時に神秘の衰退が加速したとも言われていて、人物的にはやや気概が足りないという欠点があるが、賢さ、優しさと愛を待ち合わせて全ての人々に敬愛された偉大なる国王である。

 

「どうやら私たちが冬木に来る前から戦闘が行われていたようだね」

「ああ、そのようだ。しかし、妙だな……」

 

首を傾げるソロモンに対し、マリスビリーは何か気になる痕跡でも見つけたのか、と問いかけた。ソロモンは首を横に振って否定する。

 

「いや、これほど大きな被害をもたらした戦闘が、どのような戦いだったか過去を見ようとしたんだが……何者かに私の千里眼が妨害されているようだ」

 

マリスビリーはソロモン王の千里眼を妨害できる何者かがいることに驚愕する。なぜならソロモンの固有スキルである「ソロモンの指輪」は十の指輪が揃っていると、人類が行う全ての魔術を無効化し、また配下に納める能力を持っているからだ。

 

とてもじゃないがソロモンの千里眼による過去視と未来視を邪魔することは不可能と言っていい。

 

事前に時計塔の現代魔術科の学部長、ドクター・ハートレスとマリスビリーが協力して参加者や聖杯戦争の情報を探った時に得たある程度信頼できる情報は幾つかある。

 

あの法政科のロードに喧嘩をふっかけたと噂される遠坂時臣の参加。まあ、これは遠坂時臣は御三家の一角遠坂家の当主なのだが当たり前の情報だが。

アインツベルンがフリーの魔術使い"魔術師殺し"を雇い入れたこと。

時計塔きっての若き天才、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが英雄王の触媒を収集していたこと。

 

第三次ではナチスや帝国陸軍、アメリカ、御三家やその他外来の魔術師など様々な勢力の絡んだ戦争が起こったこと。そして、再びアメリカが秘密裏にこの聖杯戦争に介入しようとしていることなどなど、多岐に渡る。

 

持っている情報の中で多少なりとも可能性があるとすれば。この世全ての財を持つという英雄王の妨害だろう。槍や剣、弓、盾に船、果ては酒や聖杯まで多岐に渡る宝具を持つ英雄王ならば、ソロモン王の指輪能力を掻い潜って千里眼のスキルを妨害することも不可能ではあるまい。

 

──もしくは。マリスビリーは別の可能性も思い至った。

 

誰かの妨害というわけではなく、この冬木という場所が、過去や未来などというモノが見れないほどの不安定さを持つ特異点だとしたら。

 

千里眼が機能しないこともあり得るのではないか、と。

 

 

 




一応整理

セイバー*騎士王(鞘持ち)
……マスター:?

ランサー*光の御子(パーフェクト仕様)
……マスター:時臣

アーチャー*ギリシャの大英雄
……マスター:?

ライダー*英雄王(友がいるので慢心なし、やる気もりもり)
……マスター:ウェイバー

アサシン*初代山の翁
……マスター:コトネ

キャスター*魔術王
……マスター:マリスビリー

バーサーカー*天の鎖
……マスター:?

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