金属が軋む音が静かな森に響く。いや、軋む音ではない。擦れ合う音だ。
音の主は獣ではない。人間でもない。では、一体何なのだろうか。その答えはすぐにわかるだろう。
草木を踏み倒し、ソレはゆっくりと歩く。猪よりも、熊よりも大きな身体。巨体を支えるのはがしりとした太い脚。身体は青黒く厚みのある鱗に覆われ、その目は爛々と輝き飢えを満たせる獲物を探している。
もしソレと出くわしたのならば、牙でもなく、爪でもなく。ある部分に目を奪われるだろう。身体の半分を占める長大な尾――いや、『刃』に。
研ぎ澄まされたそれは一個の武器として完成され尽くしている。
歩くとともに『刃』は揺れ、偶然にもそこにあった木はすぱりと切れた。断面に歪は無く、『刃』の鋭さを物語る。
熱し、斬り、己の牙で磨き上げる。
刀鍛冶であり、剣士である。
そう、その名は――。
「あああぁぁああぁあ!? 何ダァお前はぁ!?」
ある日の夜。闇の中、ソレは人影と出会った。
辛うじて服と分かるようなぼろ切れを身に纏い、汚い声を上げるのは人に似た姿をしているが人ではない。人は口元に血をこびりつけたまま、夜に歩く事などないからだ。
――鬼。とある鬼を祖とし増えるモノ。人を喰らい、力を増し、また人を喰らう。日の光に当たると死んでしまうため、日の届かない場所や夜に活動する。
鬼は問いかけたが、ソレは鬼ではないことは明白だ。ソレは人を喰らった事などないのだから。ソレが鬼と同列になど、なる筈もない。
「グゴォォオオオオオオオォォォッッ!!」
吠えた。それは怒りであり、威嚇であり、開戦の合図でもある。青黒い巨体は鬼を真正面に睨みつける。
「ひっ――お、俺はなあ、この山で一番強えんだぞう! 鬼狩りだろうと食っちまえるんだぞう!」
必死に強がろうとする鬼だが、完全に気圧されている。それを見て巨体は力を込めて後ろへと跳んだ。
「な、なんだあ? この俺にび、びびっちまったかぁ!?」
それは逃げるための行為ではない。攻撃の為に距離を合わせるための行為だ。
巨体がごぼり、と吐き出したソレは放物線を描き地面に落ちると――炸裂した。
それの正体は尻尾を研いでこそぎ落とした欠片を、喉元の火炎嚢の熱で溶かしたもの。
その攻撃は鬼に直撃はしなかった。だが、無傷と言うわけでもない。弾け飛んだ破片は鬼に突き刺さり、じゅうじゅうと音を立てて鬼の身体が溶け始める。
「ぎあぁああ!! 俺が! と、とけ」
言葉の続きを鬼が喋ることはなかった。
ぱっかりと真っ二つになったからだ。
ほんの数秒。かの巨体は飛び上がり、その刃を落下とともに鬼目掛けて振り下ろした。炸裂した弾丸の影に隠れて動いていたために、鬼はソレの行動を見る事ができなかった。もし見れたとしても、身体が溶けていた事により回避は満足にできなかっただろうが。
「グゴォォオオオオオオオォォォッッ!!」
再び響く咆哮。今度は勝利を知らしめるものだ。
朝日に照らされはっきりと見えたその姿は、力強く生きる命そのものだった。
熱し、斬り、己の牙で磨き上げる。
刀鍛冶であり、剣士である。
そう、彼こそは陽光山で産まれた故に猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を帯びた『刃』を持つ特異個体。
――その名を呼ぶとするならば『陽光煌くディノバルド』。
「(何こいつ怖……急に叫んだし……ハンターほどの強度なかったけど何これ? 溶けるって何? 俺の尻尾とかブレスそこまで破壊力あったっけ、えっ怖いんだけど)」
……に、なってしまった人間のお話である。
転生したけど昔の記憶そこまでない。猪肉うめ。精神は人間に近いけど人間じゃない。熊肉うめうめ。原作知識なんてなかった、いいね? 鬼は殺すべし。
通常時は人間強め、戦闘時はディノバルド強めになる。
鬼を狩る理由は「行く先々で飯の邪魔されてムカついたし、頑丈な試し切りできる相手が欲しかったから」
……お前頭ガルルガかよ(偏見)
Q.なんでこいつ陽光山じゃなくてそこから離れた森にいるの?
A.陽光山、日当たりが良すぎて寝れないの。