需要あるんですね、鬼滅×モンハン。
――雲一つない晴空の下、怪物は生まれた。
我輩はディノバルドである。前世は人間であったが名前は忘れた。最期がどうだったのかもあやふやだ。だが、人生改めディノバルド生の始まりは卵の殻を破ってがおーと吠えた時だというのは覚えている。
周りを見渡しても見えるのは石ばかり。ディノバルドの父も母もいなかった。育児放棄はよろしくないが、もしかしたらモンスター的にはコレが普通の子育て方法なのかもしれない。
つまり、生きるか、死ぬか。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。狩りができるか。強者から逃げ切れるか。ディノバルドの本能がどうすべきかを何となくで示してくれたのがせめてもの救いだろう。
生まれて初めて食したのは自身の卵の殻だった。無駄に硬いそれの味もよくわからないまま、必死に食らいついていた。何でもいいから何か口に入れなければ、とがむしゃらに。
……何が栄養になるのかさっぱりだが、とりあえず腹は満たせた。この行動を異常だ、と人間は思うのだろう。俺も前世は人間だけだったから、そのぐらいはまだ分かる。
だが、俺はその時、これについて何の疑問も抱かなかった。思ったのは「次はもっとおいしいものが食べたいなあ」という、実に怪物じみたものだった。今思い返すともうちょっとマシな食べ物探しにいけよ、とは思う。
――ゆっくりと大地を踏みしめ、怪物は動き出した。
腹が減ったら小鳥だか兎だかを喰らって腹を満たした。生まれたてほやほやディノバルドでは大きな獲物は早すぎる。逆に食べられる可能性が大きいからだ。確実に成長せねばならぬ、と人間としてもディノバルドとしても意見は一致した。
岩盤に尻尾を擦り付けてごりごり尻尾削って鋭くして、牙を使って削り、細部を整える。これは毎日の習慣である。そこらじゅうに尻尾でつけた傷は縄張りの主張にもなる。ここにはこんなところに傷をつけられる大きな生き物がいるんだ、と。
――怪物は、慢性的な寝不足であった。
寝れない。この山ずっと日が出てるから眩しくて寝れない。寝れたとしてもほんのちょびっとだけだ。
……よし! 縄張りの中心をこの山にして、寝る時は他の所行くか!
にく! にく! たべる! とりうさぎしかきつねいのししくまー!!
ある者は陽光山で奇妙な音を聞いたという。金属の擦れる音。削れる音。山の中でどうしてかは分からない。常に日が差している陽光山に鬼がいるわけもなく。
ある者は日輪刀の元となる砂鉄と鉱石を採りに行った時、大きな傷跡を見たという。とうてい人の手の届く高さではない位置に付けられた跡は、刀で切りつけたようなものだという。
日毎に、月毎に、年毎に。音と傷は大きくなっていった。分からない、というのは人の不安を煽る。陽光山には鬼よりも大きい、恐ろしい何かがいる。出会ったら最後、命は無い。そんな風に話が広がっていくのも仕方がないだろう。
日輪刀の材料集めに陽光山へと足を運ぶ者は一人、また一人と減っていった。
そんなある日。陽光山へ出向いた勇気ある一人の刀鍛冶が、偶然、それを見た。
「なんだぁ、ありゃあ」
「鬼じゃねえ」
「尾が日輪刀と同じになってやがる」
「地面に擦り付けて、色が――ッ!?」
「ああ。綺麗だ。なんて綺麗なんだ」
「あれを使えたらきっと、緋色の色変わりの刀になるかもしれねえ」
「いや、かも、じゃねえ。なる。絶対に」
「ああ、あの化け物で刀を打ちたい」
「でもあれは鬼じゃねえ…………いいや、鬼かもしれねえ」
「鬼なら、鬼狩りだ」
「鬼狩りに頼めば狩ってくれる」
「異形の鬼だ、うん、そうに違いねえ」
その刀鍛冶は皆にこの出来事を伝えた。本当なのかと怪しむ者もいたが、その刀鍛冶に連れられた場所で大きな怪物が尻尾を研ぐところを見たら一転。興奮止まぬ様子でいかにあの尻尾の切れ味が素晴らしいかを語るようになったという。
「――ってえ訳だ! あれは鬼! だから狩れ!!」
「いや何言ってるんですか皆さん正気に戻ってください! あれは! どう見ても! 鬼じゃ! ないです!!」
「(何話してるんだろ奇面族の皆さん。俺優しいからさ、そっちから危害加えないなら俺も危害加えないよ? ……いや逃げるべきなのかコレ。天鱗探し求めて乱獲するハンターの気配がする。おっしゃ逃げよ!!)」
「鬼が逃げたぞぉ!」
「鬼狩れよ役目だろうが!」
「えっ、ええー……」
奇面族の皆さん:ヒャア!素材に足が生えてゲフンゲフン。
鬼狩りの皆さん:日光浴びてる。めっちゃ日光浴びてるよアレ。どう見ても鬼じゃないよね。なんで怒られないといけないんですかね?
ディノバルド:肉が美味しくて今日も元気です!
〜ディノバルドこそこそ噂話〜
エリア移動中、気が付いてないけど高級そうな壺をがっしゃんがっしゃん壊しているらしいよ。いやーなんで壺から鬼の香りがほんのりしてるんだろうなー、なんでだろうなー?