高坂穂乃果に弟がいたならば   作:naonakki

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第10話 きっかけ

 

ぜ、全然分からん・・・。

 

勉強を始めたはいいが、びっくりするほど分からない。

何から勉強すればいいのかも分からない。

何が分からないか分からない状況だ。

 

このままではまずい。

 

・・・・・。

 

・・・くそ、この手段だけは使いたくなかったが。

 

俺は苦渋の決断を下し、部屋を出て姉ちゃんの部屋に向かう。

 

姉ちゃんは馬鹿だが流石に中学二年生の内容ならわかるだろう。

癪だが贅沢は言ってられない、勉強を教えてもらおう。

 

ノックをし、姉ちゃんの部屋にお邪魔する。

 

「なあなあ、姉ちゃん。」

 

「ん~、どうしたの?」

 

姉ちゃんは、寝転びながら漫画を読んでいた。

 

だらしない、これが華の女子高生かよ・・・。

まあいい、暇そうなら好都合だ。

 

「勉強教えてよ。」

 

ドサッ

 

俺が、端的に用件を言うと、姉ちゃんは寝転がったままの態勢で漫画を床に落としてしまった。

 

・・・まあ、驚くのも無理はないが。

 

「あの、夏樹?今なんて?」

 

と、落ちた漫画を拾いもせず、声を震わせながらそう聞いてくる。

 

「勉強教えて。」

 

もう一度、そう言う。

 

すると、

 

「どどど、どうしたの??

熱でも出てるの?

それとも嫌なことでもあったの?

お姉ちゃんがギュってしてあげるね?」

 

と、姉ちゃんが急にぐいぐい来て俺を猛烈に心配しだした。

後、どさくさに紛れて抱きついてもきた。

 

・・・頼む相手を間違えたか。

ていうかノーブラで抱き着くのは本当にやめてほしい。

 

「熱はないし、抱きつかんでいい。」

 

姉ちゃんを無理やり引きはがしながらそう言うと

 

「む~、最近雪穂も夏樹も冷たいよぅ。

・・・でも、急に勉強なんてどうしたの?」

 

姉ちゃんは、ぶつぶつ文句を言った後、心の底から不思議そうにそう尋ねてくる。

 

そんなに俺が勉強するのがおかしいだろうか?

 

「・・・別にいいじゃん。

先生にこのままだと高校行けなくなるって言われたから、ちょっと頑張ろうかなって。」

 

適当に嘘を言っておいた。

いや、別に嘘じゃないけど。本当に言われたけど。

 

「そ、それは大変だね。

・・・ていうか、そんなに成績悪いの?」

 

俺が黙って今日渡された成績表を見せると

 

「・・・・・っ。」

 

ドン引きしながら絶句していた。

 

・・・なんかむかつくな。

 

「これは、私の手では負えないよ、ここはことりちゃんにお願いしよう!

ことりちゃんなら分かりやすく教えてくれるよ!」

 

そう言うや否やスマホを操作し電話を掛けだす。

 

って、ことりさん!?

 

それはまずい、と、止める暇もなく電話がつながってしまった。

 

「あ、ことりちゃん!うん、うん。」

 

「あのね、夏樹がね、馬鹿すぎて大変なの!

うん、そうそう、知能レベルで言うとチンパンジー並みなんだよ!」

 

「それでね?夏樹に勉強を教えてあげてほしいなって!」

 

「うん、本当に? ありがとう!じゃあそう伝えるね!」

 

姉ちゃんはそう言って電話を切り、こちらに振り向き、満面の笑みで

 

「ことりちゃんが勉強を教えてくれるって!!」

 

「とりあえず謝れ。」

 

誰がチンパンジーだ。

でも亜里沙さんのお姉さんにも猿って言われたな。

・・・あれっ、今の俺の知能レベルって、本当にそのレベル??

 

「でもまさか夏樹がここまでだったなんて、穂乃果でも平均30点は取れるよ?」

 

嘘・・・だろ?

姉ちゃん以下?

 

って、そんなことはどうでもいい、いやよくないけど。

それより、ことりさんは本当に俺に勉強を教えてくれるのか?

 

正直不安だ。

 

いや、亜里沙さんに言われたじゃないか、むしろこれはチャンスだ。

ことりさんも勉強を教えてくれるということは、俺のことを嫌いになったわけではないのかもしれない。

ま、何はともあれこれを機に仲直りをしよう。

 

「お姉ちゃ~ん、続きの漫画貸して~。」

 

俺がことりさんと仲直りをする決意をしていると、

雪穂が何冊かの漫画を持って姉ちゃんの部屋にやってきた。

 

「あれ、珍しいね?夏樹がいるなんて。」

 

雪穂は俺の存在を確認すると少し驚いたようにそう言ってくる。

 

「夏樹がね?勉強を教えてほしいって来たんだよ。」

 

俺が答える前に姉ちゃんが勝手に答える。

それを聞いた雪穂は、

 

「え」

 

ドサッ

 

一言驚きの声を上げ、持っていた漫画を落として固まってしまった。

 

貴様もか。

 

「え、え、なんで?」

 

雪穂が、びっくり仰天という感じで俺にそう尋ねてくる。

 

「ね~、びっくりだよね?

でもこの成績見てよ、高校行けないって言われちゃったんだって。」

 

姉ちゃんはそう言って、俺の成績表を勝手に雪穂に渡してしまう。

 

勝手に渡すな・・・。

 

「どれどれ、うわぁ・・・。」

 

雪穂は俺の成績を確認するや否やそう、悲痛そうな声をあげる。

 

・・・なんかこの反応も慣れてきたわ。

 

「確かに酷い成績だけど夏樹が勉強するほうが私は驚きかな~。」

 

と、雪穂はそう感想を述べてくる。

 

「そんなに俺が勉強するの変か?」

 

「だって中学一年の時、校長先生に勉強嫌だから全部の授業を体育にしてほしいって直談判とかしてたじゃん。」

 

・・・あったな、そんなこと。

人ってこんなに怒るんだっていうくらい先生と親に怒られたんだよな。

 

「そういう変な行動力だけお姉ちゃんに似たよね。」

 

「いやいや、夏樹と一緒にしないでよw」

 

「ごめん、言いすぎたw」

 

くそっ、二人とも好き勝手言いやがって・・・。

 

「うるせえ!

俺はここから学年で3番の成績にまで、駆けあがるんだよ!」

 

雪穂から成績表をひったくり、俺の決意を教えてやった。

 

 

 

あの後二人が爆笑してしまい、聞く耳を持ってもらえなかったので、すぐに部屋に戻ってその日は寝た。

 

覚えとけよあの二人・・・。

 

姉ちゃん曰く、明日早速ことりさんが勉強を教えてくれるそうだ。

そこだけは姉ちゃんに感謝だな。

 

 

 

そして次の日の放課後。

 

はあ、やっぱり緊張するな。

 

俺は今、ことりさんの家の前までに来ていた。

 

あの日以来か・・・

いや、今の俺なら大丈夫だ。

 

・・・よし、行くか!

 

つづく

 


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