絢瀬さんとの勉強が始まって5時間がたった。
ことりさんは、勉強を教えてくれる時、1から10まで丁寧に教えてくれている。
さらに、どこから用意してるのかわからないが可愛らしいイラスト付きの分かりやすい資料付きでだ。
ことりさんが中学生の時自分で使っていたものなのかもしれない。
一方絢瀬さんはというと、1から5を教えるから、後はそれを応用して6から10は自分で考えて解けというスタイルなのだ。
そのスタイルを否定するつもりはない。
自分で考えて解いていくというのも、学力を上げるためには必要だと納得できるからだ。
ただ、
怖い、そして厳しい
ひたすらにだ。
「どうしてそんなことも分からないの?」「そんなことで本当に学年3番を狙うつもりはあるの?」「さっきと同じミスをしてるわよ!」「その問題に何分かけるつもり?」などなど・・・
もう俺の心ズタズタです・・・。
しかも絢瀬さんは、目を引くほどの美人だ。
美人ほど怒った時怖いというのは、本当だと痛感したよ・・・。
しかも、
「まあ、今日はこんなものかしら。
じゃあ、来週までにここまでの問題をしておくこと。宿題よ。」
「え」
・・・それ100ページ以上余裕であるんですが。
それを学校に行きながら一週間で?
しかも難しい問題も結構あるんじゃないか?
俺が突き付けられた宿題の量に唖然としていると、絢瀬さんが挑発するような口調で
「どうしたの?
まさか、できないとでも言うつもりかしら?
その程度なの?あなたの覚悟は?」
「・・・くっ、わかったよっ!」
やってやるよ、舐めんなよっ!
じゃあ、今日はありがとうございました、また来週来ますから!」
と、勉強を教えてもらったことに対する礼は忘れず言ったものの、売り言葉に買い言葉のやりとりを最後に、飛び出すように絢瀬家を後にした。
くそ、勉強する前は絢瀬さんに以前のような棘がなくなったかも、と思ったが勘違いだったようだ。
全然、変わってなかった。
・・・しかしああは言ったものの、この宿題どうしよう。
1週間後にまた絢瀬さんに勉強を教えてくれることになっているが、その間にことりさんは予定が合わず勉強を教えてくれることができない。
つまり、俺一人だけの力で膨大な宿題をこなさなければならないのだ。
・・・・・。
まあとりあえず死ぬ気で頑張るしかないか。
それから俺は5日間マジで死ぬ気で頑張った。
睡眠も極力減らし、家にいる間はずっと勉強をしたし、学校でも空き時間などは全て勉強に費やした。
クラスメイトが俺が勉強をしているのを見てザワザワしていが無視だ。
後、親に初めて勉強しすぎで心配された。
その甲斐もあってか、宿題の9.5割を終わらせることができた。
しかし残りの0.5割、これが問題だった。
教科書や参考書を見てもまったく分からない。
問題が難しすぎるのだ。
・・・どうしよう。
このままじゃ、絢瀬さんに馬鹿にされてしまう・・・。
・・・・・・。
最終手段だ。
学校の教師を頼ろう。
今までの勉強において教師にはまったく頼ってこなかった。
いや、正確には頼れなかったか。
というのも今まで、勉強なんていらないと思っていた俺は授業態度が酷かったのだ。
まあ、ずっと寝てただけだけど。
最近になってこそ、授業は真面目に聞くようになったが、それでも俺の教師受けは最悪なのだ。
まあ、謝れば分かってくれるよな?
しかし、誰に聞くか。
やはり各教科の担当の先生に聞くのがいいか。
・・・いや、待てよ?
ここで俺は恐ろしい考えを思いつく。
学校で一番賢い人に聞いた方が効率よく教えてくれるんじゃないか?
ということは・・・。
校長だっ!!
その後、早速俺は自らの考えにのっとり、校長室に乗り込み勉強を教えろと頼んだ。
しかし、途中で校長室の騒ぎに気付いた体育教師に生徒指導室に連れていかされ、めっちゃ怒られた。
前回のように授業を全部体育にしろなどとは違い、勉強を教えてほしいと、一応学業に意欲的な内容の依頼だったので親が呼ばれることはなかった。
だが、そもそもの常識がないとのことで怒られた。
・・・いい考えだと思ったんだが。
長い時間怒られたせいで、もう日は沈んでしまった。
妥協で各教科の先生に質問しに行こうにも、みんな帰ってしまったらしい。
やばい、明日は土曜日で学校はないし、日曜日は約束の絢瀬さんとの勉強会だ。
明日で何とかしなければ・・・。
こうなったら町中で賢そうな人に声をかけまくるか?
うん、もうそうしよう。
きっと見つかるさ。
その日は次の日に備えて久しぶりにゆっくり寝た。
~次の日~
俺は警察に捕まった。
町中で見た目が賢そうな人に勉強を教えてくれとひたすら頼んでいたのだが、すぐに警官が来て、近くの交番に連れて行かされたのだ。
なぜなんだ・・・。
ていうかみんな気味悪がって全然話を聞いてくれなかった。
みんな冷たすぎるぜ。
「で、何してたの?」
と、警官が面倒くさそうにそう質問を投げかける。
「勉強を教えてくれる人を探してました。」
俺は嘘偽りなくそう答えた。
「・・・すごくまっすぐな目で答えられちゃったよ。
よくわからないけど、なんで知らない人に頼むの?
学校の先生に聞くとかできたんじゃないの?」
「言いに行きましたけど怒られたんですよ!」
「なんで?」
「さあ?」
などと、警官とやり取りをしていると外から言い争いをしながら近づい来る気配がした。
なんだなんだと思っていると、その言い争いをしていた本人たちが現れた。
ていうか交番に入ってきた。
一人は警官、もう一人は赤い髪の綺麗な女の人だ、高校生くらいの人だろうか?
「だから、私はストーカーじゃないっていってるでしょ!!」
赤髪の女性は警官に噛みつかんばかりに抗議している。
「はいはい、ストーカーはみんなそう言うんですよ?」
警官は慣れているのか、そう受け流し女性にそう言い切る。
「私は、陰からにこちゃんを見守っていただけよ!!
決してストーカーじゃないわよ!!」
ストーカーじゃねえか。
「はいはい、もういいから。
電柱に隠れたりしながらニヤニヤして町中歩いてるから気味が悪いと通報をうけているんだよ、10件くらい。」
「イミワカンナイ!!」
やべーやつじゃん、こんなやつとは一生関わるまい。
「ちなみに君は15件くらい通報があったよ。」
うそやん。
そして警官は続けて口を開き、
「で、君の名前は?
親御さんを呼ぶから。」
「なんでだよ!
俺はただ勉強を教えてくれる人を探してだけなんだよ!」
「目を血走らせて?」
「必死だったんだよ!」
「靴を舐めますからお願いします、と言っていたのは?」
「・・・どうしようもなかったんだよ!」
俺が、警官と言い争っていると、
「ちょっと、そこの頭のおかしいあなた、騒がしいから黙ってくれる?」
と、赤髪の女性が突然絡んできた。
「うるせぇ!
てめえに頭おかしいとか言われたくないわ!!
このストーカー野郎め!!」
「はぁっ!?
イミワカンナイ!!
私はストーカーじゃないわよ!!」
これが俺と西木野真姫との出会いだった。
つづく