「よく知りもしないくせにストーカーとか言わないでくれるかしら?この変態っ!」
「変態はあんただろーがっ!
俺は好きな人に告白するために、色々あって町中の人に声をかけてたんだよ!」
「はぁ??どういうことよ??」
「うるせっ、あんたには関係ねえよ!」
勉強を教えてくれる人が見つかるどころか、訳の分からない女に絡まれてしまった。
最悪だ、まじで。
ていうかこの人見た目だけなら絢瀬さんにも匹敵するくらい美人なのに中身が残念すぎるだろ!?
「はいはい、もうこれ以上面倒毎はやめなさい。
今なら厳重注意で許してあげるから、これ以上騒いだら親御さんに連絡するよ?」
俺と喋っていた方の警官が俺と変態女にそう言い放ち、何とかその場は落ち着いた。
変態女はずっと俺の方を睨んでいたが。
その後、警官の言う通り注意だけで解放してくれたので自由の身になったが・・・
これで宿題を終わらせる目途が潰えた。
・・・どうしよう。
俺が途方に暮れていると、
「ちょっと。」
急に後ろから声がしたので、振り返るとそこには、
「げっ、さっきの変態女じゃねーか!?」
そう、先ほど交番で言い争った赤髪の女がいた。
ついて来たのか?
さすが、ストーカーだな・・・。
「変態女って言わないで!
・・・それよりあなたに聞きたいことがあるのよ。」
と、自分の髪の毛をクルクルしながら、少しバツが悪そうにそう言ってくる。
変態女が俺に聞きたいこと?
何だ、パンツの色でも聞かれるのか?
「あなた、さっき好きな人のために町中の人に声をかけたって言ってたわよね?」
「・・・そうだけど。」
質問の意図がよくわからない、何を企んでいるんだ?
「あなたはどうして好きな人のためにそこまでできるの?
事情は分からないけど、町中の人に勉強を教えてくれと頼むなんてそうそうできないわ。
周りから白い目で見られるでしょう?」
と、真剣な表情で俺に聞いてくる。
・・・なんなんだいったい?
そんな真剣な顔されちゃったら答えるしかないけどさ。
「そりゃ、その人が好きだからだからだ。
その人のためならなんだってするさ。」
「・・・そう、
好きならなんだってする、ね。」
と、赤髪の女は俺の言葉をかみしめるようにゆっくり繰り返した。
神妙な顔つきで、だ。
・・・何だよ、さっきまで頭がおかしい女だと思ってたのに、急に真剣になりやがって。
調子狂うな・・・。
「私ね、にこちゃんっていう女の子が好きなの。
小さくて、可愛くて、とても思いやりのある素敵な子なの。」
赤髪の女はしばらく黙って考えている様子だったが、突然ポツポツと語り出した。
その重々しい空気に俺もとりあえず耳を傾けることにした。
なるほど、女の子が好きなのか・・・。
当然、話の流れ的にラブの方だろう。
「でも、私女じゃない?
だからおかしいのかなって・・・。
でもこの気持ちはどうやっても抑えきれなくて・・・。」
それでストーカーみたいなことをしたってわけか。
・・・まあ、そう聞くと変態と一方的に罵るのもどうかと思えてくる。
この人もそれなりに悩んだ末に起こしてしまった行動だったのだ。
「別にいいんじゃない?
女の人が女の人を好きでも俺は別に変だとは思わないよ?」
というか最近ことりさんが姉ちゃんを好きって言ったこともあるし、今の話を聞いても何も感じないのが実情だ。
他にもいるんだくらいの感じだ。
「ほ、本当にっ?」
俺のその言葉に赤髪の女は俺にぐいと距離を縮め、そう確認してくる。
ち、ちかいっ!?
顔は美人だから、思わず体が強張ってしまった。
・・・ていうか、女の人ってなんでこんないい匂いするんだろうな。
「本当だって。
俺の周りでもそういう人がいるし、相談に乗っているくらいだ。」
まあ相談といっても、ただ姉ちゃんとの出来事を一方的に話されるだけだが。
「それ本当に?
嘘じゃないでしょうね?」
向こうは奇跡に出会えたかのような表情で俺を見つめてくる。
「本当だよ。」
「・・・そっか。
最初あなたを見た時は気持ち悪い変態だと思ったけど、あなたに出会えてよかったと今実感しているわ。」
・・・喧嘩を売っているのだろうか?
しかし、次の言葉で俺の怒りも吹っ飛ぶことになる。
「それじゃあ私の恋も応援してくれないかしら?」
とんでもないことを言ってきた。
は?
俺がこの人の恋を応援する?
いやいやいや。
「いや、変ではないとは言ったけど流石に会ったばかりの人にそんなこと言われても。」
そりゃそうだろう、よく事情も知らないのに無責任に相談にのるなんて了承できるわけもない。そんな時間もないし。
「私にできることならなんだって協力するわよ?
そうだっ、あなた勉強を教えてほしいんでしょ?
私、医学部を目指してるの、だから勉強はいっぱいしてきたし、色々力になれると思うわよ?」
まじか。
医学部ってすごく頭よくないとなれないんじゃなかったっけ?
これは運命というやつでは・・・。
「本当に力になれるんだろうな?
・・・この問題とかわかる?」
と、俺はしっかり持ってきていた問題集を渡し、まさに今解けなくて苦労している問題の一つを指差し、そう聞いてみる。
「どれどれ、ふっ、こんな問題10秒もあれば解けるわね。」
と、少々ドヤ顔で俺にそう言ってくる。
これはマジで運命の出会いかもしれない、きてるぞ俺の時代が!
「それならこっちからお願いしたいくらいだ!
俺にできることならなんでもするよ!
だから勉強を教えてくれ!」
「ええ、これで契約成立ね。
・・・そういえば自己紹介がまだだったわね。
私は、西木野真姫というわ。高校一年生よ。」
随分大人っぽいと思っていたが、一つだけ上だったようだ。
姉ちゃんより下に見えねぇ~。
「俺は、高坂夏樹!
中学三年生です!」
一応向こうが先輩と分かったので、そう敬語で自己紹介をする。
「ふふ、いいわよタメ口で?
最近、私がある活動をしているチームで年齢による上下関係に縛られず触れ合うことの大切さを知ったばかりなの。」
と、西木野さんは俺にやさしく微笑みながらそう言ってくれる。
・・・なんか最初に会った時と随分印象が変わったな。
普通にいい人じゃないか。
でも、そういう経験ができるっていうのはいいな、何の活動か知らないがきっと素晴らしいチームなのだろう。
「わかった、じゃあ遠慮なく。
よろしく西木野さん。」
正直、姉ちゃんがいる環境で育ってきた俺にとって、年上の女性にタメ口で喋れるのは助かる。慣れているからな。
「・・・う~ん、呼び方も変えれないかしら?
これから共闘関係を結ぶわけだし、名字呼びっていうのもね。」
確かに言われてみればそうだ。
・・・そうだ!
「じゃあ、まっきーとかは?」
俺がそう提案する、馴れ馴れしすぎてダメだろうか?
「まっきー・・・、うん、いいわねそれ!
採用よ!
私は夏樹って呼ぶわね!」
と、西木野さん、いや、まっきーもこの呼び方を気に入ってくれたようだ。
「じゃあそういうわけで、これからよろしくまっきー!」
「ええこちらこそ、夏樹!」
こうして俺たちはめでたく共闘関係を結んだ。
(少し前)
・・・びっくりした。
急に男の人に声をかけれたと思ったら、勉強を教えてくれと言われたのだ。
怖くてつい逃げちゃったけど・・・。
あの人、すごく真剣な表情だったな・・・。
それにとても困っているようにも見えた。
勉強を教えることができるかは分からないけど、さっきのところに戻ってみようかな・・・。
でもあれだけ真剣に勉強を教えてくれだなんて何があったのだろう。
今まで会ったこともしゃべったこともない男の人だったが、なぜかすごく私の中に印象づいてしまった。
・・・なんでなのかな?
私が、自分のモヤモヤしている気持ちの正体を考えていたが、
「か~よちんっ!
おまたせにゃ~!」
待ち合わせをしていた親友の姿を確認し、私はいったんそのことについて考えるのは保留にした。
つづく
ここまで、読んでいただきありがとうございます!
申しわけありません、非常に大きなミスをしていました。
読んでいただいていた皆さんはお気づきだったかもしれませんが、これまで
絢瀬絵里を綾瀬絵里と書いていました・・・。
やってしまいました・・・。
(指摘していただきようやく気付きました。)
一応気付いた部分は全部訂正したつもりです。
ちょくちょくミスをしている部分は気付いたら直しているのですが、ここまで大きなミスをしているのは初めてだったので、後書きにて謝罪させて頂きます。
以後気を付けさせていただきます。
では、引き続き作品をお楽しみいただければと思います!