高坂穂乃果に弟がいたならば   作:naonakki

19 / 43
第19話 乙女の悩み

「でね、一瞬よ?

一瞬目を離したすきに不良の20人くらいの集団に「何してるんですか~?抗争ですか~?」

って、楽しそうに言いながら、突撃をしていたのよ。」

 

「容易に想像できますね・・・。」

 

「そうでしょ?

その後、亜里沙を抱えて死ぬ気で走って逃げたわよ・・・。

あの時の私、ボルトより速かったんじゃないかしら?」

 

「まあまあ、はいこれでも飲んで落ち着いてくださいよ。」

 

「・・・ありがとう。」

 

そう言って、俺がついだお茶を飲み干す絵里さん。

 

「・・・はぁ、まあそれでも許してしまうんだけれどね。」

 

「そうですよね、だって・・・。」

 

「「可愛いから!」」

 

絵里さんに勉強を見てもらった後、こうして絵里さんと雑談(といってもほとんど絵里さんの苦労話だが)をするのがすっかり日課になってしまった。

当初の絵里さんとの出会いからこうなると、誰が想像できただろうか?

今じゃ絵里さんの方から「この日なら勉強を見てあげるわよ、うちに来なさいよ。」と誘ってくるくらいだ。

仲良くなれたことは純粋に嬉しいし、おかげで学力も着実に身についていてる実感がある。

それにこんな馬鹿っぽい話をするのも結構好きなので、最近では絵里さんといる時間がひそかな楽しみになっている。

 

「って、もうこんな時間!?」

 

絵里さんが部屋にかかっている時計を見て驚いている。

 

「えっ、うわっ、もう7時半か・・・。」

 

楽しい時間は過ぎるのが早いもんだ・・・。

 

「そろそろ、解散の時間よね・・・。」

 

そう語る絵里さんは少し寂しそうだ。

正直こういう反応をされると、前までとのギャップがありすぎる分、絵里さんがとても可愛く見えてしまう、ついつい抱きしめたくなってしまうような・・・。

ええい、姉妹そろって俺を誘惑しやがって!

 

「今日亜里沙は、お友達の家に泊まるのよね・・・、

そうだっ、夏樹、うちでご飯食べていきなさいよ!」

 

一人でご飯を食べるのが寂しいのか、そんな提案をしてくれる。

 

「絵里さんがご飯を作ってくれるんですか?」

 

「そうよっ、私の手作り夜ご飯よ♪」

 

腕まくりしながらそう楽しそうに言う絵里さんを見て、一抹の不安がよぎる。

絵里さんのキャラ的に滅茶苦茶うまいか、滅茶苦茶まずいかのどっちかだろうな・・・。

 

「・・・夏樹、何か失礼なこと考えてない?」

 

「ははっ、まさかそんな、ははっ、じゃあ家に電話してご飯食べてくるっていいますね。」

 

ジト目で見つめてくる絵里さんをできるだけ視界に入れないように家に電話をかけ、ごはんがいらない旨を伝えた。

 

「家の人、大丈夫だって?」

 

「姉ちゃんが今日はハンバーグだからノープロブレムだって。

夏樹の分もお姉ちゃんが食べてあげるってさ・・・。」

 

・・・今から帰るって言ったら怒るかな?

 

「ふふふ、穂乃果らしいわね、じゃあ明日のランニングは穂乃果だけ倍走ってもらおうかしら、太ったらいけないし♪」

 

「是非。俺が許可します。」

 

~30分後~

 

「はい、どうぞ召し上がれ♪」

 

「おぉ、おいしそう、見た目は・・・。」

 

「ちょっと、見た目はってどういう意味よ?」

 

「いただきま~す、うんうん、うまいうまい!」

 

「たく・・・、でもまあ、おいしかったならよかったわ。」

 

絵里さんが作ったご飯はとてもおいしかった、すこし不安だったがよかった。

絵里さんも俺がおいしいと言ったことで嬉しそうにしている。

 

「いや~絵里さんと結婚する人は幸せですね~。」

 

「っ!? ゴホッ、ゴホッ!?」

 

「え、どうしたんですか、絵里さん?」

 

俺が、絵里さんを褒めたら急にむせたよ、なんでだ?

 

「ゴホッ・・・ふー、きゅ、急になによ!?」

 

なぜか顔を真っ赤にした絵里さんに怒られたんだが。

 

「何って、だから絵里さんと結婚する人は幸せだなって・・・。」

 

何か地雷だったのだろうか?

俺の言葉を聞いた絵里さんはまたさらに顔を赤くしていた。

 

「・・・そ、そう、夏樹は私がその、お、奥さんだったらうれしいの?」

 

絵里さんは、手をもじもじさせ、上目遣いにそんなことを聞いてきた。

 

なんだこの可愛い生き物は?

 

「そりゃあ、嬉しいでしょ~。

絵里さん美人だし、周りにも自慢しまくりでしょう。」

 

思ったことをそのまま言う、毎日が楽しいだろうよ。

そしてそれを聞いた絵里さんは、

 

「そ、そう!そうなのね?」

 

顔は赤いままだが、嬉しそうにはしゃいでいる。

 

「・・・まあ、俺には亜里沙さんがいますけどね!」

 

最後に俺は格好をつけるためにわざと虚空を見つめながら、クールにキメ台詞を決めてやった。

 

・・・・・。

 

・・・・・ん?

 

てっきり、「そんなことはもっと賢くなってから言いなさい」などと、ツッコミが来るのではと構えていたが、全然絵里さんからの反応がないぞ。

 

ちらりと視線を絵里さんに戻す。

 

そこには、

 

とても悲しそうな表情をした絵里さんがいた。

 

・・・・・え?

 

・・・どうしたんだ、さっきまであんなに楽しそうにしてたのに。

俺のキメ台詞が寒すぎたのか!?

 

「あの・・・絵里さん、何か反応がほしいな~って。」

 

気まずかったので、絵里さんにそう呼びかけると

 

「・・・えっ、あ、ごめんね。

ちょっと、ぼーっとしてたわ。」

 

そう言う絵里さんは何かを隠すかのようにご飯をがっがっと食べ始めた。

 

どうしたんだ絵里さん?

まあいっぱい食べることはいいことだ、俺も冷める前に食べよ。

 

その後は、何とか調子を取り戻したらしい絵里さんとほどほどに雑談を楽しみ、その日は帰った。

 

 

 

「・・・・・。」

 

独りぼっちになってしまった家の中で私は、ぼーとしていた。

 

こんなに楽しい日々を過ごしているのはミューズでの活動を除けば本当に久しぶりだ。

もちろん、その楽しい日々を過ごすことが出来ているのは夏樹のおかげだろう。

 

・・・・・。

 

・・・いけないとは分かっている。

 

夏樹は亜里沙が好きなのであって、決して・・・。

 

・・・・・。

 

この関係も、夏樹が学年で3番以内に入るまでなのだろうか・・・。

 

それは・・・いやだ。

 

・・・はあ、ずっとこの毎日が続けばいいのに。

 

ミューズでの活動、そして夏樹との勉強会、

断言できるが私の人生のなかでも今が一番輝いている。

 

・・・最初に夏樹と会った時はこんなことになるなんて思いもしなかった。

 

最初は、ただ馬鹿な男の子が亜里沙の見た目の可愛さに寄ってきただけだと思っていた。

そういう子は今までにも何人もいたし、特に驚きはなかった。

 

しかし、その後夏樹は、死に物狂いで努力し続けて着実に実力を伸ばし、今までの男の子とは違うことを証明して見せてきた。

一生懸命頑張れば、叶うのだと、私に証明しているかのように・・・。

実際、そう遠くない未来に夏樹は学年で3番以内の成績をとるだろう。

 

私はどちらかというとっつきにくい性格をしていると自覚している。

実際あまり友達とかあまりいないし・・・。

でも夏樹はそんな私にもどんどん喋ってくれるし、思ったこともそのまま言ってくれる、からかってきたりもする。

・・・最初は私に緊張してたようだけど。

まあ要するに夏樹と一緒にいると、楽しいのだ、特に気を遣ったりもせずに自分をさらけ出すことができるのだ。

 

そしてこんな風に接することが出来るのは、夏樹が初めてだった。

 

・・・だからなのだろうか?

 

私はいつの間にか、そう、自分でも気づかないうちに、夏樹のことが・・・。

 

でも、それは許されないこと。

 

だって夏樹は亜里沙のことが好きなのだから・・・。

 

生まれて初めて亜里沙を羨ましく、そして少し恨めしく思ってしまう。

 

そんな風に考えてしまう自分に嫌気がさす。

 

でもそれも仕方がないだろう。

 

・・・・・・。

 

やめね、やめやめ。

 

これ以上考えてもどんどんマイナスの方に向かっていきそうだったので、考えるのをやめて、別のことを考えるようにした。

 

次はいつに勉強をみてあげようかしら?

 

また夕食を作ってあげようっと♪

 

つづく

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。