どうしよう、ようやく今日一日が終わったと思ったのに・・・。
今から、姉ちゃんとことりさん、海未さんとお泊り?
・・・ゾクッ!
だめだ、寒気しかしない、ここは勇気をもって断ろう。
後悔するという点が気になるが・・・。
夏樹 『すみません、今日はちょっとあれなんで無理です。』
これでよし、さあ帰ろう!
ピコンッ
ラインの通知音である。
・・・・・。
恐る恐るスマホの画面を見る。
海未 『夏樹の部屋の引き出しの二重底の下にあるものが、公にされてもいいのですか?』
夏樹 『ダッシュで行きます。』
行かなかったら完全に後悔するやつだわ。
・・・でもなぜだっ!?
完璧に隠していたはずなのに!?
なぜ秘蔵お宝コレクションの存在がばれたのかを必死に考えながらも海未さんの家にダッシュで走り出した。あんなもん公に出されたら、それこそ終わりじゃねえか!
ピコンッ
またラインの通知音だった。
今度は姉ちゃんからのメッセージが来ていた。
画面を開くと、そこには
姉ちゃん 『二重底の下に隠してやつのこと、二人に話しちゃった♪
ごめんね、てへぺろ♡」
くそがあぁっ!!
・・・ぜってえ、許さねえぞ姉ちゃん。
ていうか、なんで姉ちゃんは俺の引き出しの秘密を知ってるんだよ!
その後、姉ちゃんへの復讐方法を考えながら、海未さんの家へ死ぬ気で走った。
~15分後~
や、やっとついた・・・。
・・・おえっ、豚汁出てきそう。
「やっと来ましたね夏樹!」
俺が疲労と吐き気と戦っていると、海未さんの嬉しそうな声が聞こえた。
顔を上げると、そこにはパジャマ姿の海未さんがいた。
風呂に入った後なのか、髪は少し湿っており、頬は少し赤みがかかっており、シャンプーのいい匂いが漂ってくる。
こうして見てる分には、超絶美人なんだよな、海未さんって。見てる分には。
・・・はぁ、いまから何が起こるのやら。
どうか平和に今日一日が終わりますように。
その後、走ったことで汗だらけの俺を見てまずは風呂に入るように言われたので、ありがたくお風呂に入らせてもらった。
「一緒に入りますか?」、と言われたが丁重にお断りしておいた。
後、なぜか俺の着替えは姉ちゃんが持ってきていたらしい。
最初から呼ぶつもりだったのだろう。だったら最初から呼べよという感じだ。
そしたら、かよちんとの下りもなかったのに・・・。
そんなことを考えていたが、風呂から上がり、着替えも終わった俺は、とうとう3人がいる部屋の前にまで来てしまった。
中からは、楽し気にしゃべる話声が聞こえてきている。
おとなしく三人だけで女子会をしてくれたらいいものを・・・。
お泊り自体は初めてではない、だが最後にしたのは俺が小学生の時だ。
まさか中3になってまで、お泊り会なんてするとは思っていなかった。
一応軽くノックをしてから、入室をする。
「あっ、夏樹君!さっきぶりだね♪」
「ふふ、今から楽しいお泊り会の始まりですね!」
「夏樹、おつかれ~。」
3人は、三者三様の反応で俺を迎え入れてくれた。
・・・それにしても、この3人もあのライブをしていたんだよな。
にわかには信じがたいな・・・。
さっき、ミューズのライブ映像を見たためか、今その当人たちがパジャマ姿で目の前にいることに少し違和感を覚えた。
実際のアイドルを見た時もこんな気持ちになるのかね。
「どうしたの、夏樹?
早く入っておいでよ?」
俺が、部屋の入り口で3人を見て固まっている俺を見て不思議そうにそう入室を促してくる。
「ああ、ごめんごめ・・・って、ちょっと待って、何でこの部屋に布団が4組あるの?」
すでに3人は寝る為の布団を敷いていたようだ。それ自体はいいのだが、問題はその布団が3組ではなく、4組あるのだ。姉ちゃんに、海未さん、ことりさん、後一組はいったい誰のだ?
見当もつかんな。
当然俺は別の部屋のはずだ、もう中学三年生の立派な男子だし、間違いない。
「何を言っているのですか?
夏樹の分の布団に決まってるじゃないですか?」
「そうだよ、夏樹君疲れてるの??」
間違いなくなかったようだ。
って、いやいやいやいやいや。
「それはまずいだろっ!?」
心からの叫びで、三人に抗議する。一緒の部屋で寝る?冗談じゃない。
「何がまずいのですか?」
ところが海未さんは、何か問題でもと、平然とそう尋ねてくる。
馬鹿なのだろうか?
「いい年した男女が一緒の部屋で寝ることがおかしいって言ってるんだよ!!」
お互い、育つとこも育ってきてどんどん大人に近づいてきているのだ、最近では俺の息子にだって、その、フサフサのあれだって、生えてきたしな//
とにかく、昔のような距離感でいつまで接していくのはまずいだろう。
「「「???」」」
ところが、3人にはまったく通じていないようだ。
全員、何を言っているのとばかりに、可愛く(姉ちゃんは除く)首をかしげている。
どうすればいいんや!?
「よくわからないですね。だって夏樹は穂乃果とよく一緒に寝ているんでしょ?」
「おいおいおいおい、それはいったい何の冗談ですか??」
よく一緒に寝てる??
誰が好き好んで寝るか!!
たまに無理やり、一緒に寝させられるときがあるだけだ、週に一回くらい。
・・・あれ、結構寝てる??
姉ちゃんはたまに突然部屋に来て、布団に潜り込んできて、手と足でがっしりホールド決めてくるので、無理やり一緒に寝させられるのだ。
冬は意外と暖かいので、案外なしでもないと、思ってしまっている自分がいるのは内緒だ。
無論夏は地獄である。
「でも穂乃果ちゃん、よくツイッターで、「夏樹と一緒に寝た~」みたいなコメントしてるよ?」
・・・ちょっと待て、俺の不名誉が全国ネットで発信されてるってこと??
俺が、「えへへ、夏樹と雪穂を抱きながら寝るとすごい気持ちいいんだよね~。」などとふざけたことを言っている姉ちゃんに、呪いよかかれと睨むが、当の本人はその俺の視線には全く気付かない。
「そうですよ、それを考えれば一緒の部屋で寝ることなんて大したことではないんですよ。」
「いやいや、でもおかしいって!!」
「・・・では、穂乃果と一緒に寝ている夏樹は変態ということになりますが?」
「断じて違う!」
「では、一緒の部屋で寝ることくらい、問題ありませんね?」
「・・・そう、なのか?」
「そうだよ、夏樹君。」
「・・・・・。」
論破された俺は、一緒の部屋で寝ることになってしまった。
・・・どこで間違ったのだろうか?
しかし、俺に思考する時間なんて与えられないらしい。
「それで夏樹君、早速だけど夏樹君は胸が大きい女性が好みなの?」
と、ことりさんが突然ぶち込んできたからだ。
相も変わらず笑顔だが、目がちょっと怖いのは気のせいではないだろう。
海未さんは、完全に目が笑っていない、なぜだろうか?
「スミマセン、ナニヲイッテイルノカワカリマセン。」
・・・まずい、間違いなく俺の秘蔵コレクションを見たうえでこの質問をしてきている!?
やっぱり、この三人のお泊り会に来てもろくな事がない・・・。
冷や汗が止まらないぜ、最近冷や汗いっぱいかいている気がする・・・。
「夏樹君、siriみたいに答えても誤魔化されないよ?」
少し低いトーンでそう答えてくることりさん。
そして、続けてより低い声のトーンで海未さんが、
「夏樹の部屋の引き出しの二重底の下にあった本のタイトルは確か、『爆弾果実で包んであげr「うわあああああああ!!??」」
いつぞやの叫び声よりも大きな声で海未さんのセリフをかき消す俺。
ああああ、恥ずかしいいいい!!??
タイトルが妙に馬鹿っぽいのが余計恥ずかしい!!??
エロ本を見つけられた世の中の同胞は皆この地獄みたいな羞恥心と戦ってきたのか??
・・・これを乗り越えて大人になるということか、険しい道だな。
と、訳が分からないことを考える程度には、俺の頭はパニック状態である。
・・・経験ある奴ならわかるよな??
恥ずかしさのあまり、布団の上を縦横無尽にごろごろ転げまくっていると、
ガシッ
俺の腕と足が何かに固定された。
何だと思ってみてみると、
腕をことりさんに、足を海未さんにがっちりホールドされていた。
・・・体がまったく動かないんですが。
ていうか姉ちゃんはなにしてんだ!?
弟が、年上の女性にいたずらされかけてますよ??
俺が、姉ちゃんがいた方向に目を向けると、
「・・・すぴ~。」
・・・寝ていた、なんでやねん!?
なぜこの状況で寝れるんだ!?
ていうかいつから寝てたんだよ!!
「さて夏樹、では別の質問です。
夏樹は、胸の大きい女性が好きなのですね?
よく考えたら、希の胸も凄く見てましたものね?」
「・・・いや、別に好きじゃn「正直に。」」
「・・・・・はい、狂おしいほど大好きです。
希さんの胸も正直、ど真ん中ストライクです。」
もはや言い逃れはできないので素直にそう答える、これなんて拷問??
「私のような大きさの胸の女性はどうなのです?」
ボールですね~、と言ったら殺されるだろうか?うん、やめておこう。
俺が黙っていると、海未さんは続けてこんな質問をしてきた。
「答えたくないのなら、まあいいでしょう。
・・・では、彼女にするのも、胸の大きい女性がいいのですか?」
なぜか、すごい真剣な顔つきでそんなことを聞かれた、ことりさんもごくりと固唾をのんでいるし。
二人の顔つきと質問内容がアンマッチすぎて、状況が分からなくなってきた。
・・・しかし、海未さんそれは違うぜ。
「海未さんは大きな勘違いをしていますよ?」
俺もなんとなく、二人の真剣な雰囲気に合わせるように、いい声で、諭すように、二人にそう語り掛ける。
「何が勘違いなの、夏樹君?」
「・・・性欲と好きは違うってことさ。」
一瞬部屋は静まり返った。
ふ、あまりの俺の言葉の深さに驚きを隠せないのだろう。
「・・・何言ってるの夏樹君?」
「・・・馬鹿なのですか??」
しかし、一瞬の間をあけて二人は、こいつ何言ってるんだと、俺を馬鹿にしてきた。
・・・ふっ、女にはわかるまい。
・・・・・。
うん、正直俺もよく分かっていない、雰囲気で適当に言ったわ。
だが、こころなしか二人が嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
二人とも、胸が大きくないことを気にしているのだろうか?
別にことりさんは胸が小さいとも思わないけど、海未さんは、まあ、うん・・・。
「まあ、いいでしょう。
このあたりで許してあげましょう。」
しかし、二人は俺の回答になんやかんや満足してくれたのか俺の拘束を解いてくれた。
・・・ていうか、何で俺は拘束されてたんだ?
だがまあいい、これで少しは休めるな・・・。
「ではこの件は、一件落着ということで、次にどちらが夏樹と一緒に寝るか勝負しましょうか。」
「負けないよ海未ちゃん!
あ、夏樹君。ことりは、別に夏樹君と一緒に寝たいわけじゃないけど穂乃果ちゃんが大絶賛するから、試したくなっただけだからね??」
・・・どうやら、まだまだ休むことはできないらしい。
つづく
第26話読んで頂きありがとうございます!
というわけで今回から二年生の三人とお泊り会です!
ちょっと長くなりそうだったので、分けて投稿させて頂きます!
次話も読んでいただければ嬉しいです!
ではっ!