さて、前話のあとがきでも書きましたが、今回から時系列的に7話の続きからになります。
もし、7話?覚えてねーよ、という方がいましたら、読み返すことをお勧めします。
申し訳ありません、面倒かけて・・・。
「まっきー、いよいよダブルブッキングデートの日が来ちまったな・・・。」
「そうね、昨日で完全に風邪が治ってよかったわ!」
「何でちょっとテンション高いんだよ・・・、ていうか昨日まで風邪長引いていたのかよ!?」
「・・・そうよ、昨日まで普通にしんどかったわ。風邪を引いている時に騒ぐものじゃないってことを痛感したわ、ゴホツ!」
「・・・おい、今咳しなかったか? 本当に風邪治ったんだよな?」
「・・・治ったわよ。」
「おい、目を逸らすな目を。」
日曜日、ことりさんと海未さんとのデートの当日、俺とまっきーは本日の動きについて最終確認をするため、とある喫茶店に来ていた。
だが、まっきーの様子がおかしい、というかどう見ても風が完治していない。
「本当に大丈夫よ!医者の卵の私が言うのだから間違いないわよ!」
しかし、まっきーはそう言って、自分は大丈夫だと言い張っている。
協力してもらっておいてなんだが、なぜこんなにも手を貸してくれようとしているのだろうか?
「まっきー、協力してもらうのは嬉しいけど、体調悪いなら帰って休んでくれよ?
また風邪がぶり返しでもしたら、俺が嫌だからな?」
俺がまっきーの目をしっかり見てそう言うと、まっきーは目をパチクリさせてから、
「・・・はぁ、そんなことを平気でペラペラ言うからことりや海未に迫られるのよ。」
まっきーは俺から目を逸らして髪の毛をくるくるさせながら、そんなことを言ってきた、心なしか少し顔が赤くなっている気がする、やはり風邪なのだろうか。
・・・しかしなんで今のが海未さんやことりさんに迫られることに繋がるんだ?
「というより、私が帰ったら今日のデートはどうするつもりなのよ?」
「・・・・・謝る?」
「許してくれると?」
「・・・・・無理?」
「無理ね。」
いや、ワンチャン許してくれ・・・ないよな~。
どのパラレルワールドに行っても許してくれる世界なんてなさそうだわ。
「心配しなくても映画を見るくらい大丈夫よ。このまっきーに任せときなさい!」
まっきーは、自分の胸に手を当て、ウインクまでして俺にそう言ってくれている。
「・・・わかった、でも体調が悪くなったら素直に帰ってくれよ?」
「はいはい、分かってるわよ。」
確かに、現状ではまっきーに頼る以外に手はない。
不安は残るが、ここはまっきーに甘えることにしよう。
「それより、今日の予定について最終チェックするわよ?」
まっきーは、自分の体調の話は終わりとでも言わんばかりに、話を強引に切り替えてきた。
確かにそうと決まれば今日の予定については、お互いの行動を把握する必要があるので、俺も集中モードに入る。
「まず、ことりと夏樹が待ち合わせをして、映画館に向かう。そして席に座ったところでトイレに向かうふりをして私と入れ替わる、ここまではいいわね?」
「大丈夫、お~けい。」
「そして、夏樹は海未との待ち合わせ場所まで向かい、海未と合流して食事を摂る。そして私たちの映画が終わる頃に夏樹はこちらに向かって、海未と映画館に入る。
そこで、私たちが見ている映画が終わる頃を見計らってトイレで合流して、私と夏樹が入れ替わる。後は、ことりと夏樹が食事をして、そのまま別れる。
そしてまた映画館に戻ってきて、海未と合流してそのまま帰る。
・・・どう覚えた?」
「・・・・・おう。」
大丈夫、賢くなった俺なら理解できたはずだ、何せ俺は学年3位の男だからな!
姉ちゃんなら確実に理解できなかっただろう。
「ふ、我ながら完璧な作戦ね。まあ欠点があるとしたら、私が同じ映画を立て続けに二回見なくちゃいけないことね、せめて別の映画だったらよかったのに・・・。」
「しょうがないじゃん、二人とも同じ映画見たいって言ったんだから。
でも、ことりさんはともかく、海未さんまで恋愛映画を見たいなんてな・・・。」
そう、今回の映画は海未さんとことりさんの見たい映画をみることになったのだが、二人とも今人気急上昇中の恋愛映画を見たいと言い出したのだ。
映画の内容は、人気というだけあって面白かった。主人公と幼馴染のヒロインの子との恋の駆け引きが見てるこっちまで、ドキドキしたり、ハラハラさせられたりと言った感じだ。
ちなみにことりさんと海未さんと映画を見た後に、映画についての話になった時に話を合わせられるように、昨日映画を見に行っていた、抜かりはない。ちなみに一人だと恥ずかしかったので雪穂も一緒についてきてもらった。
「まあいいわ、後怖いのは、私が入れ替わっているとばれた時ね。ばれた時を想像するだけで震えが止まらないわ。」
まっきーは、両手で自分の体を抱きしめるようにして、まじで震えていた。
前から思っていたが、なぜかまっきーは、海未さんとことりさんに恐怖心を抱いているように見える、実は仲でも悪いのだろうか?
「まあ、映画館は暗いし大丈夫だろ・・・多分。」
「・・・祈るしかないわね。」
よし、不安しかないが、やるだけのことはやった。
後は、もう前に進むしかない!
なるようになるだろう!
「そういえば、気になっていたんだけど夏樹が持ってるその紙袋は何?」
まっきーは俺が持っている紙袋が気になったのか指差し質問をしてきた。
「ふっ、よく聞いてくれた。これはな・・・にんにく入りのチーズケーキだ!
食べた瞬間口の中ににんにくが広がるスペシャルケーキだ!」
そう、この前ことりさんに悪戯をされた仕返しに昨日の土曜日に一生懸命作ったのだ。
途中、臭すぎて死にそうになったが、これを食べたことりさんのリアクションを想像をすれば余裕で我慢できた。
「・・・それをどうするつもりなの?」
「ことりさんにプレゼントする。」
「・・・殺されるわよ、まじで。」
「そんなまじな感じで言われるとびびるじゃん、やめろよ」
まっきーは、まじでやめとけとばかりに、超真剣な表情で俺にそう警告をしてくる。
「・・・まあいいけど、私は忠告したからね?」
おいおい、そんな反応するから滅茶苦茶怖くなってきたじゃねえか。
まっきーのことだから、「いけいけww」みたいなノリで返してくれると思ったのに。
・・・渡すのをやめるか?
・・・いや、やる、なにせこのケーキを作るのに6時間かかったんだ、絶対渡してやる!
その後、まっきーと別れた俺は、ことりさんとの待ち合わせ場所に向かった。まっきーは、先に映画館に向かっているはずだ。
というわけで、集合場所近くまで来たのだが、まだ時間まで15分ほどある。
・・・少し早く来すぎたか。もうちょっと喫茶店にいればよかった。
なんて思っていたのだが待ち合わせ場所に近づくと、既にことりさんが待っているのが見えた。
遠めからでも、手をもじもじさせ、そわそわしているのがわかる、恐らく映画が楽しみなのだろう。
俺が近づいていくと向こうもこちらに気付いたのか、トテテとこちらに近づいてきた。
「お、お疲れ夏樹君!」
「お疲れ様です、ことりさん。」
少し上ずった口調で、しかし元気よく挨拶をすることりさんに、俺も挨拶を返す。
・・・それにしても、今日のことりさんは一段とお洒落だな。
普段からもお洒落だなとは、思っていたが今日はさらに力を入れている気がする。
夏も終わったこの季節に合わせた服装もそうだが、イヤリングなどのアクセサリーが一層、ことりさんの魅力を引き出していた。
しかもシャワーを浴びてきたのか、ことりさんからシャンプーのいい香りが漂ってくる。
俺がまじまじとことりさんを見ていると、ことりさんが緊張と期待が入り混じった顔でこちらを見ているのに気付いた。
・・・はは~ん、これはわかったぞ、ことりさんの考えていることが。
これは、自分の格好を褒めてほしい時の仕草だ。
ていうか、昨日見た恋愛映画でこんなシーンがあった。
ことりさんは今からその映画を見ることになるが、その時のヒロインとことりさんは同じ表情だった。まさか、昨日の映画がこんなところで役に立つとは。
・・・しかし、どう褒めたもんか、まあ適当でいいか。
「今日のことりさん、すっげー可愛いですね。」
「・・・・・っ!?」
ドゴッ
「ぶっ!? なぜ・・・。」
俺が可愛いと言った瞬間、持っていたハンドバッグをフルスイングして殴ってきたんだが!? しかも顔面。
いてぇ~、もろに顔に入った・・・。
「きゅ、きゅきゅ急に、そんなこと言ってくるからだよ!!
も、もっと、こう、ふんわりと褒めてよっ!直接的過ぎるよ!!」
ことりさんは、恥ずかしかったのかどうか分からないが、見たことがないくらい顔を真っ赤にして、俺にそうまくしたててくる。
おかしい、映画では「も、もう〇〇君ったら//」って、なってたのに・・・。
いや、別にことりさんにその反応をしてほしかったとかじゃないけどさ・・・。
ま、しょせん映画は映画だな。
でも、映画のヒロインと同じで褒めては欲しかったんだな・・・。
難しいな、女心って。
こうして俺のデートは、顔面と胃の痛みを伴って始まってしまった。
つづく
というわけで28話でした!
今回から海未ちゃん、ことりちゃんとのデートです!
ここから、物語はどんどん動いていきますので、どうか最後までついて来ていただければと思います!
では、また次話で会いましょう!