今日の私は一味違うよ。
今までお母さんから、さんざんヘタレと馬鹿にされてきたけど今日はしっかり、夏樹君に私の想いを伝えます。
というのも、つい先日電話で目標としていたテストで学年3位をとることが出来たと報告があった。何のためにその目標を掲げていたかは分からないけれど、夏樹君が3位をとれば告白しようって、あの日みんなで決めたから。
正直夏樹君を好きな人があんなにいたなんて驚きだった。
ライバルは手ごわいけど私だって夏樹君とたくさんの時間を共に過ごしてきた。
・・・絶対負けないよ。
でも、正直ライバルがいてよかったのかも。
ライバルの存在に後押しされて今日、告白をしようを決心することができたから。
まあでも、とりあえずは映画を楽しまないとね!
今日はきっと最高の日になるよね!
・・・恥ずかしいけど、腕組んじゃえ!
・・・やばい、ことりさんがぐいぐい来る。
映画館までに行く道中、ことりさんが思い切り腕を組んできた。
本人も顔を真っ赤にしているから相当恥ずかしいのだろう。
恥ずかしいのならやめてくれよ・・・。
さっきから周りから視線を感じるし、ていうか頼むから学校の奴に見つかりませんように、こんな場面を見られたら確実に殺される。
・・・まさかそれが狙いか?
「あの、ことりさん。腕を組むのは俺の生命の危機に繋がる可能性が・・・。」
「やっ!」
しかしことりさんは、短く可愛い声ではっきり否定の意思を示し、さらに腕に力を込めてきた。そんなに俺を貶めたいのか!?
こうなったら学校の奴に会わないことを祈るしかないな・・・。
それにしても、ことりさんとこんな密着して散歩するとか、心臓に悪いったらありゃしない。
さっきから鼓動があり得ないほど早いんだが・・・。
ことりさんもこれを姉ちゃんにすればいいものを。
俺が勘違いしてことりさんのことを好きにでもなったらどう責任をとってくるのか。
その後、何とか特にトラブルなく映画館に着き、予定通りトイレに行くということで上手く抜け出すことができた。
トレイに向かうと、そこにはまっきーが既に待機していた。
「予定通り来たわね、後はこのまっきーに任せなさい!」
「・・・不安しかないが、頼むよ。」
「どうして不安なのよ?服装だって夏樹と同じにしたし、カツラだってしてるのよ?
ばれないに決まってるわよ!」
確かに映画館内で着替えたのだろうまっきーは、ぱっと見ただけなら俺と見間違るかもしれない、顔をみれば一発で分かるが・・・。
まあ映画館内は暗いし大丈夫だろう。
「そうだな、じゃあここは任せた!」
「ええ、任せて頂戴!」
まっきーの自信のみに満ち溢れた表情を後に俺は映画館を去った。
・・・電話では伝えたが、今日はちゃんとことりさんに勉強を見てくれたお礼をちゃんと言わなくちゃな。
それに亜里沙さんに告白するために勉強を教えてもらっていたことも伝えたほうがいいよな?一番勉強を見てもらったのはことりさんだし、本当のことを黙ってるのは何だか悪い気がする。
からかわれる気もするが、最後にはことりさんなら応援してくれるだろう。
ことりさんは、なんやかんや人を思いやることができる優しい人だからな。
その分、気は進まないが姉ちゃんとの恋もしっかりサポートしてあげよう。
俺はそう心に決め、海未さんとの集合場所にまで向かった。
本日二度目の集合場所にまで行くと、そこにはことりさんと同様で、すでに海未さんがいた。
ちなみに集合時間まではまだ10分以上ある。
・・・デートは集合時間前に集合するのが普通なのだろうか?
「お疲れ様です、海未さん。」
「夏樹!お疲れ様です!とうとうこの日が来ましたね!」
元気よく、そして実に嬉しそうに俺に挨拶をしてくる海未さん。今日がよっぽど楽しみだったのだろう。
「そう・・・で、すね。」
しかし、俺はその海未さんを見て思考が止まってしまい、うまく返事をすることが出来なかった。
おいおい嘘だろ・・・、海未さんがお洒落をしている!?
海未さんはあまりお洒落には関心はなく、いつもは見た目より機能性を重視した服を着ていることが多い。
ところが今日はどうだ?あの海未さんがふりふりのスカートをはいて、今どきの女性のファッションをしているぞ??
ことりさんは、元からお洒落をしていることが多いため、今日のファッションにもそこまでの驚きはなかったが、海未さんは普段とのギャップがあり、そのインパクトは絶大だ。
・・・ていうか元々美人だからすっげー綺麗なんですが。
「ふふふ、今日は夏樹とのデートの為に頑張ってお洒落をって・・・、夏樹?きいているのですか?」
「え? あ、海未さんが綺麗でびっくりしてました、ってあっ・・・。」
うぉぉぉ、俺は何を言っているんだ!?
急に声をかけられたもんだから、思ったことをそのまま言っちまったよ!
「え・・・、あ、そ、そうですか// どうも、ありがとうございます//」
海未さんも俺の言葉に一瞬、豆鉄砲をくらった様に呆気に取られていたが、すぐさま照れたように視線を逸らしながら、もじもじとそんなことを言ってきた。
「い、いえ・・・。」
「じゃ、じゃあ行きましょうか?」
「・・・そうですね、行きましょう。」
出会って、一瞬で気まずい空気を作ってしまった俺たちは、そのまま食事を摂るため、予約してあるレストランに向かった。
レストランへの道中、俺たちの間には、特に会話もなく静かな空気が二人を包んでいた。
普段はあんなにうるさい海未さんもなんか今日はやたらと大人しくしている。
しかも「手を握ってもいいですか?」と、聞かれ、思わず首を縦に振ってしまい、今俺たちは手を握って歩いている。
・・・うん。
・・・なんだこれは。
普段のガツガツくる海未さんはどこに行ったんだ!?
滅茶苦茶恥ずかしいんですが!?
なんか、初々しいカップルみたいですげえ恥ずかしいいい!!
海未さんをちらりと見ると、心の底から幸せそうな表情を浮かべており、それを見ると、「手を握るのをやめよう」とは、言い出すことが出来なかった。
結局、海未さんから伝わる手の暖かいぬくもりをレストランに着くまで、ずっと感じることになった。
その後、予約していたレストランについた俺たちは、二人で食事を摂った。
食事中は、先ほどのような沈黙はなく、世間話や近況報告などを話し合い、食事を心から楽しんだ。
お互い出された料理を全て食べてもしばらくは会話を楽しんでいたが、ここで海未さんが、外にでようと、提案してきた。
予定では、後もう少しレストランでゆっくりするつもりだったが、特に断る理由もなかったので了承し、レストランから出ることにした。
「映画までまだ少し時間がありますし、この近くに公園があるのですが、少しそこを散歩しないですか?」
と、散歩をしようと誘ってきた。
その顔はどこか、覚悟を決めたような表情を浮かべていた。
「いいですよ。」
俺は、その提案を受け入れた。
~少し前~
「ほら、お姉ちゃん! 早くしないと上映に間に合わないよ!」
「そうね、確かにその通りよ。それは十分理解しているわ。でもお願いだから走らないで頂戴。また、はぐれたら何をするか分からないから!!」
今日は、亜里沙と映画をみることになっていた。
どうも、最近人気のある映画らしくどうしても見たいとお願いされたので、一緒に見に行くことにした。
正直、今日の練習もきつく、家でゆっくりしたかったが、可愛い妹のお願いとなれば断ることなど出来るはずもなかった。
それにしても、今日の映画は恋愛映画って言ってたわね・・・。
はぁ、亜里沙はいいわね、映画でも恋愛を楽しめて、現実でもすぐに恋愛をするのよね。
せめて、私は映画をたのしもうと・・・何か凄く悲しいわね。
つづく
というわけで30話でした!
もう30話とは早いものですね・・・。
さて、タイトルの通り、今回は、いよいよ彼女たちが本格的に動き出したという回になります!
次話もすぐに更新していきたいと思います!
ではっ!