高坂穂乃果に弟がいたならば   作:naonakki

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今回少し長めです、ご了承くださいませ・・・。


第39話 亜里沙さん・・・大好きです!!!

秋風が吹き始め、少し肌寒いこの季節。

しかし、休日ということもあり、町中は子供から年配の方まで幅広い年代の人で溢れており、賑やかで、平穏を感じさせる温かい雰囲気を漂わせていた。

 

そんな中、俺は

 

「亜里沙さああぁああん!! 待っててえええ!!」

 

走っていた、無論、全速力でだ。

 

必死の形相で叫びながら走る俺を見た人たちが勝手に避けていく中、俺は我が道で駆けていく亜里沙さんを見失わないように出せる限りの体力を振り絞り、追いかける。

しかし、困ったことに亜里沙さんは走るのが速すぎるのだ。

情けないことだが、男の俺がどんなに走っても追いつけないのだ。

・・・何か運動でもしているのか??

単にこの半年間、勉強しかしていなかった俺の運動不足が原因でもあるだろうが・・・。

 

ちなみに当の亜里沙さんはと言うと

 

「あはは~♪ 夏樹君~、早くおいでよ~♪」

 

と、美しい金色の髪をなびかせ、超のつく笑顔で振り返りながら、実に、実に楽しそうに俺にそう言葉を投げてくれる。

既に体力が尽き欠けていた俺は、そんな亜里沙さんの言葉に

 

「は~い♡」

 

うおおおお!!

あの笑顔の為なら、俺はボルトにだって追いついてやる!

体の底から湧き上がる愛の力によってブーストを得た俺は亜里沙さんに追いつくことに成功する。

 

「わっ、すごい! 夏樹君! すっごく速いね」!

 

「・・・は、はは、まあ・・・ね。」

 

ぜーぜーと、息を切らしながら、なんとかそう答える。

・・・デートが開始してまだ30分も経っていないのに体力が既に尽きそうだ。

ていうか、なんで亜里沙さんは全然息を切らしていなんだ??

あれだけ走ったのに、ケロッとしている亜里沙さんを見て驚愕していると、亜里沙さんがあたりをきょろきょろ見渡しながら、

 

「そう言えば、おすしやさんは、どの辺にあるの? たくさん走ってきたからそろそろかな?」

 

「・・・亜里沙さん、もうとっくにお寿司屋さんは過ぎたんだよ、実は。」

 

「ええっ!?」

 

何を隠そう、寿司屋には走ってからものの2分ほどで着いたのだが、走るのに夢中になっていた亜里沙さんは気付くはずもなく、その後も10分ほど走り続けたのだ。

勿論、声をかけたが、走って夢中になっている亜里沙さんに通じる訳もなく・・・ということだ。

でも可愛いから何をしても許しちゃうんだよな~。

 

「大変っ! じゃあ急いで戻らないと! さっきよりスピードを上げて走らなくちゃ!」

 

ここで間髪入れず俺を殺しにかかる発言をサラッとした亜里沙さんはスタンディングスタートの姿勢に・・・

 

「ちょっと待って亜里沙さん!?」

 

ほぼ無意識的に亜里沙さんの手を掴み、走らせまいと止める。

 

「どうしたの?? 早く行かないと!!」

 

「今度は、お寿司屋さんを通り過ぎないように二人で一緒に行こう。」

 

「ハラショ~、確かにそうのほうがいいね♪ また見失ったら大変だもんね!」

 

 

よし、これで亜里沙さんを見失なわないで済むぞ・・・助かった、まじで。

既に、足ががくがくの状態になっている俺は、心の底から安心する。

ここで、俺は重大なことに気付く。

 

・・・え、ちょっと待てよ?

 

俺、今亜里沙さんと手を繋いでいる!!??

 

さっき、亜里沙さんを止める為、咄嗟に手を掴んだがそれが結果的に手を繋いでいる状況を作り出している!

 

・・・あ、ああ、やばい、意識した瞬間手から汗が滝のように出てきたんだが!

で、でも・・・

亜里沙さんの手、柔らかぁあい!?

なんだこれ!? 小っちゃくて、すべすべで、あぁ、もうこれだけで幸せだ・・・。

と、というか、この状況はお寿司屋さんまでこのまま手を繋いで行く流れでは??

そ、そうだよ、今更手を離したら、意識しているみたいで変な空気になるかもだし??

こ、このまま手を繋いでいくのが自然だよな? な?

 

「じゃ、じゃあ行こうか亜里沙さん//」

 

俺が手を繋いだまま、努めて冷静に(なれていないが)そう声をかけると

 

「うん! じゃあ今度は二人三脚だね! 上手く走れるかな??」

 

「うん?」

 

走る? 何を言って・・・

俺が、亜里沙さんの言っている意味が分からず、混乱していると、突然亜里沙さんが俺の手を強く握り返してきた。

 

「・・・え//」

 

な、なんだなんだ急に手を握り返してきて――

 

「よ~い、ドン!!」

 

俺が、鼓動を高鳴らせてドキマギしていると、亜里沙さんは元気よくそう叫び、勢いよく走りだした。俺の手を強く握ったまま。

当然、亜里沙さんに引っ張られる形になった俺は

 

「ぎゃあああぁぁぁ!!??」

 

ピンク色のお花畑気分から、一気に地獄に叩き落さされたかのような絶叫をまき散らしながら亜里沙さんに、引きずられるような形で追従する。

あ、足が・・・もげる・・・。

既に悲鳴を上げている足を無理やり動かされる形で寿司屋まで行く羽目になってしまった。

・・・こ、これは、あかん、まじで。

 

 

 

「亜里沙さん!! ここ! ここっ!! ここがお寿司屋さんっ!!」

 

足の感覚がなくなりそうになる時にようやく寿司屋さんに来たので、絶対に聞こえるようにお腹の底から声を出し、亜里沙さんに伝える。

 

「ハラショ~♪ ここがお寿司屋さん!!」

 

何とか、俺の心からの叫びは亜里沙さんの耳に届いたようで、しっかり止まってくれた。

よかった・・・本当に。

俺たちの目の前には、100円で様々な種類のお寿司が食べられるチェーン店のお寿司屋があった。

昼時ということもあり、結構混んでいるが、カウンター席ならすぐに入れそうだ。

出来ればテーブルの方が良かったが、この際カウンターでいいだろう。

・・・というか、早く席について水分補給をしたい!

 

カウンターを希望するとすぐに店内に案内された俺たちは、ようやく席に着くことができた。

・・・あ~、やっと席に着いた。椅子ってこんなに素晴らしいものだったのか。

俺が、ほっと一息ついていると、横では、亜里沙さんが子供の様に目をキラキラさせて、レーンの上を回っている寿司を見ている。

 

「ハ、ハラショ~、こ、これがお寿司!!」

 

大変喜んでもらっているようだ。

これだけでも、死ぬ気で走った甲斐があったものだ・・・。

とりあえず、水を飲もうっと・・・。

俺が、がぶがぶと水を飲んでいると、亜里沙さんが

 

「ねえねえっ!! これって回っているお寿司は何でも食べてもいいの??」

 

「うん、いいよ。回っているお寿司は基本的に何でも食べてもいいよ。」

 

「ハラショ~! とっても面白い!!」

 

そう言いながら、亜里沙さんは「どれがいいかな~?」と回っている寿司の一つ一つを食い入るように見つめながら迷っていた。

そんな亜里沙さんをずっと見ていたい欲求もあったが、こちとら健全な中学生。

目の前に寿司があったのなら、食べたくなるのが自然、何より寿司は大好物なんだ!

亜里沙さんと寿司のどっちが大切だって? そんな質問は野暮ってもんだ。

 

まずは・・・サーモンから食べよう!

 

流れてきた二貫のサーモンが載った皿に目をつけ、それを取る。

淡いピンク色をしたサーモンの身の美味しそうなことといったら・・・。

俺は、慣れた手つきでサーモンに醤油をかけ、箸を取り、サーモンをいざ食わん!!

・・・と、したところで、俺は隣からの熱い視線を向けられていることに気付く。

なんだ? と思い、隣に目を向けると

 

「ほおぉ~~」

 

寿司を食べようとする俺を、口を大きく開けて感心したように見つめる亜里沙さんの姿が。

初めてだから寿司の食べ方ひとつとっても珍しいのか?

 

・・・正直食べにくい。

それに、亜里沙さんにそんなに見つめられると、滅茶苦茶恥ずかしいんだが・・・。

 

「ん? 食べないの??」

 

しかし、この期待に満ちた亜里沙さんをこのまま焦らすのも罪っていうものだ。

・・・よし、食うぞ。

 

パクッ

 

俺が、サーモンを口に放り込むと同時に亜里沙さんは、顔をぱあっと明るくさせ、

 

「ハラショ~!! これがお寿司の食べ方なんだね!!」

 

「もぐ・・・もぐ・・・、喜んで何よりだよ・・・。」

 

ちなみに味なんて分からなかった。

もう一貫は大事に食べよう・・・。

 

それから俺たちは、思い思いに寿司を堪能し、店を後にした。

ちなみに、亜里沙さんは最終的にはサーモンが一番お気に入りだったようだ。

おいしいよね・・・サーモン。俺も3皿食べちゃったよ。

 

「う~ん! とっても美味しかったね!!」

 

「本当に。 寿司こそ日本の誇りだわ、まじで。」

 

亜里沙さんも大変満足してくれたようで、良かった。

最初はどうなることかと思ったが、何とかなるものだ。

・・・でも、この後どうしよう?

何も考えていない・・・。

俺が、再度頭を悩ませていると、ここで亜里沙さんが意外な申し出をしてきた。

 

「あのね、私美味しい和菓子屋さんを知っているんだけどそこに行かない??」

 

「行こう!」

 

亜里沙さんの提案に対し、「NO」の二文字はない俺は、即座に了承するが、

・・・和菓子か。

自分の家が和菓子屋だけに、勘弁願いたいところだが、亜里沙さんがお勧めするということは、さぞかし素晴らしい和菓子屋さんに違いない。

それに、亜里沙さんがどいうものが好きなのかを知るいい機会だ。

 

というわけで、食後は走ったら体に悪いんだよと、これ以上足を酷使しないように適当なことを言い、亜里沙さんとゆっくり歩きながらその目的地に向かった。

 

 

 

歩くこと15分ほど、どうやら目的地に着いたようだ。

うん・・・着いたんだよな?

 

 

 

って、ここうちやん!?

 

 

 

目の前には、見慣れた我が家があった。

・・・どいうこと?

まさか、お勧めの和菓子屋ってここ!?

いやあ、まあ家に近づいているな~なんて思いながら歩いてたけど、まさか俺の家とは・・・。

・・・美味しいか、うち?

俺が和菓子屋の息子として、思ってはいけないことを思いつつも、店に入っていく亜里沙さんに急いで後を追いかける。

 

店に入ると、

 

「・・・は~、朝からキモイもん見るわ、店番させられるわで、最悪の休日だよ、本当に。」

 

と、ぶつくさ文句を言う、双子の姉である雪穂が店番をしていた。

それにしても朝から見たキモイものとは何のことだろうか??

 

「雪穂~、やっほ~♪」

 

ここで、亜里沙さんが雪穂にとても慣れ親しんだ、まるで友達のように挨拶をしていた。

 

「えっ? あっ、亜里沙・・・って、何で夏樹がいるの!?」

 

・・・ドウイウコト?

 

どうして、雪穂と亜里沙さんが親し気に挨拶してるんだ??

・・・え? 二人はまさか友達かなにか??

 

「ん? 雪穂、夏樹君と知り合いなの??」

 

「いや・・・知り合いも何も双子だよ、私達。」

 

「ええっ!!?? 双子??」

 

亜里沙さんもまさかの状況にかなり驚いていた。

無理もない、俺も驚いている。

 

その後、状況の整理をしたところ、亜里沙さんと雪穂は同じ中学に通っており、仲の良い友達で、よく一緒に遊んでいるらしい。

一度、うちに来た際、うちの和菓子を大変気に入ったのだとか・・・。

まさか、雪穂と亜里沙さんが繋がっていたとは・・・世の中分からないもんだ。

 

「でも、本当凄い偶然だね♪」

 

「ね♪」

 

「・・・・・。」

 

ちなみに、どうせお客さんも来ないだろうと勝手に決めつけ、三人でお茶と和菓子をつまみながら談笑している。

俺が、亜里沙さんに、相槌を打つたびに雪穂が引きつった顔でこちらを見てくるが知ったことではない。

 

「でもよかった~、私一度雪穂の弟さんには会いたいと思ってたから♪」

 

「ん? どうして?」

 

「あ、亜里沙?? そ、それはいいじゃない?? ほら、お饅頭食べなよ?」

 

亜里沙さんの言葉に今まで、仏頂面だった雪穂が何故か急に慌て始めたぞ。

双子だから分かる。

・・・これは、何か面白いことが起こるぞ。

 

「まあまあまあ、雪穂。饅頭なんて後で食べられるだろうから亜里沙さんの話を聞こうぜ??」

 

「うるさいっ! 夏樹は黙って!!」

 

俺は、暴れる雪穂を押さえて亜里沙さんに先をどうぞと促す。

 

「雪穂ったらね? 弟は可愛げがないけど、優しくて話も合って、なんやかんや一緒にいると落ち着くんだよね~ってよく言ってるんだよ♪」

 

「「・・・・・。」」

 

それを聞いた俺たちは一瞬沈黙に包まれる。

しかし、数瞬後には、雪穂の顔は耳まで真っ赤になり、顔を両手で覆い、「うわああ// 最悪だよ//」と、悶え始めた。

 

一方俺は、

 

「ほほほほおおおうう??? なるほど、なるほど~?? 雪穂は俺が大好きなんだなww」

 

「くうう// うるさいっ! 死ねっ!!」

 

俺にからかわれ、ますます顔を真っ赤にした雪穂は、座布団で殴り掛かってるが、そんなものどこ吹く風。

そうかそうか~ww これはいいことを聞いたぜww

一生いじってやるww

 

「うふふ♪ 二人は本当に仲良しさんなんだね♪」

 

その後も、三人で楽しく談笑をし、あっという間に時間は経ち、お開きとなってしまった。

 

一つ謎が解けたことがあったが、どうも雪穂と亜里沙さんは、ミューズに憧れ、二人で時間がある時に自分たちもミューズのようなスクールアイドルになるために練習をしているらしい。

・・・どうりで走るのが速いわけだ。

というか、亜里沙さんがアイドルとか絶対にファンになる自信があるな。

 

「じゃあ、雪穂またね?」

 

「うん、またね。」

 

俺は、亜里沙さんを送るため、一緒に我が家を後にする。

 

まだ18時だが、この季節では既に外は真っ暗になっていた。

気温も昼に比べると数度下がっているようで、かなり肌寒く感じる。

だが、そんな中でも俺たちは今日一日を振り返り、楽しく会話をしていた。

 

「今日は本当に楽しかった! ありがとうね、誘ってくれて♪」

 

「こっちこそ楽しかったよ!」

 

・・・これはいい感じなのでは??

 

辺りに人気はなく、暗い道を照らすのは、等間隔に並べられた街灯の淡い光のみ。

まるで、世界に俺と亜里沙さんの二人しかいないようだ。

昼間は少々騒がしいこの通りだが、静寂となると、そのギャップから普段とは違う何か神秘さを感じてしまう。

この流れでいきなり告白とかしたら成功しないだろうか・・・。

が、ここで亜里沙さんが少し興奮したよう口調で

 

「あ、ここってさ。私たちが初めて会った時の公園だよね!」

 

と。亜里沙さんが、指を差した先には確かに俺たちが初めて出会った公園があった。

 

「ね、せかっくだから、ちょっと寄って行こうよ!」

 

そう言うと、亜里沙さんは小走り気味に公園へと足を踏み入れた。

俺も後を追って公園へと足を踏み入れる。

 

あの時と同様に公園内に人気はなかった。今ここには俺たち二人きりだ。

・・・懐かしいな。

思えば、半年前に亜里沙さんとここで出会ってから全てが変わったんだよな。

全てに絶望をしていた俺が、ことりさんと海未さんと仲直りをし、まっきーや絵里さんとも仲良くなれた。

極めつけは、学年底辺の成績の俺が、今やトップレベルにまで来たのも、全て、あの時の出会いがあったからだ。

 

「う~ん、懐かしいね~! あの時は夕方だったけどね~「亜里沙さん!」」

 

急に大きな声で、呼ばれた亜里沙さんは、こちらを振り返り、きょとんとした顔で見つめてくる。

 

・・・よし、決めた。

 

 

告白

 

 

するぞ

 

 

 

大丈夫さ、ここに来るまでにたくさんの人たちの支えがあったんだ。

 

 

 

「亜里沙さん、大事なことを言うよ?」

 

経験したことのないほど、高鳴る鼓動を感じつつも俺は言葉を紡ぐ。

亜里沙さんも、雰囲気的に何かを感じ取ったのか、俺の言葉を逃さないように耳を傾けてくれる。

すぅーっと大きく息を吸い、そして

 

 

 

「亜里沙さん、半年前から出会った時から好きでした!」

 

 

 

 

「一人の女の子として、一人の女性として・・・」

 

 

 

 

「亜里沙さんが大好きですっ!!!」

 

 

 

 

つづく

 




というわけで、第39話でした!
読んで頂いてありがとうございます!

今回は少し長めでした、申し訳ありません・・・。
書いている途中で私もつられて鼓動が速くなっていました。

というわけで、次話にてどうなるのか、一緒に見届けていただければと思います!

では、また次話でお会いしましょう!
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