ドクン・・・
ドクン・・・
ドクン・・・
心臓の音がやたらとうるさい
頭が真っ白だ
顔が熱い
呼吸がうまくできない
だが・・・俺は、言ったんだ。
この半年間、ずっと秘めていた想いを亜里沙さんにぶつけたんだ。
後は・・・返事を聞くだけ!
・・・スゥ
深呼吸を行い、気持ちを落ち着かせ、亜里沙さんに向き直る。
改めて見た、亜里沙さんは
きょとんとした表情を浮かべていた。
まるで、自分が何を言われたのかが理解ができないといったふうに。
しかし、数秒の時を使い、俺の言葉の意味を理解したのだろう。
「・・・え、ええっ!?//」
亜里沙さんは、その小柄な体からは、想像もできない大きな声をあげ、ひどく驚いている。
あまり、こういうことに経験がないからなのか、その顔は真っ赤だ。
亜里沙さんは、手をもじもじとさせ、口をパクパクさせながらも、その小さな口を開き
「え、ぅ、その・・・夏樹君は、私のことが、好き//なの??」
と、途切れ途切れながらもそう確認を取ってくる。
上目づかいで見つめてくる亜里沙さんを見て、さらに心臓が跳ね上がるのを感じながらも、俺は、亜里沙さんの間違いをしっかり訂正する。。
「違うよ・・・大好きなんだ!!」
俺は、亜里沙さんにしっかり想いが伝わるように、先ほどよりもさらに大きな声で、そう叫ぶ。
「あぅ// ・・・そ、そう//」
俺のまっすぐな言葉に、亜里沙さんは元々真っ赤だった顔を、湯気が出るのではないかと錯覚するほど、さらに真っ赤にして、うつむいてしまった。
俺は、ゆっくり待つことにする。
亜里沙さんだっていきなりのことで、気持ちを整理する時間は必要だろう。
個人的な希望では、早く返事が欲しいが。
もう心臓がキャパオーバーで破裂しそうだ。
そして、どれだけ時間がたったのか、緊張のあまり分からなかったが、亜里沙さんは恥ずかしいのか目は少し逸らしながらも、顔を上げてくれた。
まだまだ、顔は赤いが先ほどよりは落ち着いているように見える。
・・・亜里沙さんは、なんと答えるんだ!?
俺の全身が細かく震えていることに気付く。
手汗も、滝のように溢れてくる。
・・・怖い
亜里沙さんの口から、告白の返事をもらうのが怖い。
断られたらどうする??
俺と亜里沙さんの間には、決して埋まらない溝ができるだろう。
そうなると、今日の様に二人で楽しく遊ぶことだって叶わないだろう。
・・・・・。
告白ってこんなに大変なことだったんだな・・・。
けど
俺は精一杯したんだ。
どんな答えだろうが、受け入れるさ、きっと。
けど、やっぱり怖いわ・・・。
「あの・・・// まずは、ありがとう// 私なんかを好きになってくれて//」
亜里沙さんは、慎重に言葉を選びながら、ゆっくりとそう切り出してきた。
「・・・いや、俺こそ急にごめん。」
だが、俺が聞きたいのはその先の言葉だ。
俺は、震える手に力を込め、恐怖を無理やり押し殺そうとする。
もうじき来るであろう、俺が求める言葉に備えて。
亜里沙さんは、恥ずかしそうに振舞いながらも俺の方に、視線を向けてきた。
そして
「それで、その・・・返事なんだけどね?」
・・・きた
どっちだ・・・どっちだ??
亜里沙さんは、どう返事をする??
それとも返事は保留パターンだろうか??
亜里沙さんは、口を静かに、ゆっくり開けて、一言
「ごめんなさい」
え
いま・・・なんて・・・言った?
ごめ・・・ん・・・なさい?
ふら・・・れた・・・のか?
―亜里沙さんに振られた―
それを理解した瞬間、俺の中で何かが崩れていくのを感じた。
この半年間の俺の行動を支えていた、愛の力とでもいうのか、それが打ち砕かれたようなそんな感触。
はは、そうだよ、俺なんかが亜里沙さんと付き合えるわけなかったじゃないか・・・。
分かっていたことじゃないか。
そんな風に思考がマイナス方向にいくと、それはどんどん加速していく。
今すぐこの場から逃げたい欲求にかられてしまう始末。
もはや、亜里沙さんの方を見ることができない。
情けない、その一言だ。
「・・・その、告白されたのなんて初めてだったし、凄く嬉しかった。でもね・・・」
そう語る亜里沙さんの方を盗み見るように視線を向けると、その顔は、悲痛に包まれていた。
亜里沙さんは、困っている人がいたら、誰にでも声をかける心優しい女の子だ。
そんな子が、この状況を苦しく思わないはずがない。
好きな子にこんな顔をさせてしまうなんて・・・。
俺の何がいけなかったのだろうか??
性格? ルックス? ポージングをしたのがダメだった?
・・・まあ、もう、どうでもいいか。
俺ができることは、なるべく振られたことを気にしていないように努めて、亜里沙さんの罪悪感を軽減すること、それだけだ。
俺の中に残った、わずかな責任と義務感により、折れてしまった自分の心に鞭を打ち、亜里沙さんの方に顔を上げる。
しかし、ちょうどそのタイミングで亜里沙さんが、続きの言葉を語るために口を開き、
「・・・私ね、女の子が好きなの///」
流石に聞き捨てならなかった。
心の中にあった、どんよりとした感情が一気にとっぱわれ、というよりは、疑問の感情が心の中を埋め尽くしたというのが正しいかもしれない。
「え? 女の子? ・・・今、女の子って言った??」
俺が、食い気味にそう確認をとる。
・・・嘘だろ?? 聞き間違いだよな??
あの女神のような亜里沙さんが、レズなわけ・・・ないよな??
俺が、さっきとは別の意味で震えながら、亜里沙さんの回答を待っていると
「う、うん// 女の子が好きなの// 」
照れながら答える亜里沙さんを見て、再度俺の中で何かが音もなく崩れ去っていくのを感じる。
・・・また、レズ。
俺の周り、レズ多くないだろうか。
呪いなのか?
俺が、あまりの衝撃的事実に絶望と戸惑いの感情に襲われていると、
「だ、だから、その、本当にごめんなさい!」
ぺこりと謝った亜里沙さんは付け加えるように「ここから家近いから」と言って、亜里沙さんは急ぎ足で帰ってしまった。
俺に気を遣って、一人にしてくれたんだろう。
暗く、静かな公園で一人になってしまったことが分かると、
俺は膝から崩れ落ち、
「~~~~~~~っ!!!???」
力いっぱい、握りしめた拳で地面を殴りつけ、声にならない叫び声をあげ、泣いた。
本当に好きだった。
笑顔が可愛いところも、あの光り輝く金色の髪色も、真っ白な肌も、少し天然なところも・・・。
今回振られたって、また努力を続けて告白しなおそうなんて考えも、実はあったのだ。
それくらい、好きだった・・・。
しかし、その想いが叶うことは決してないことが分かってしまった。
だって・・・亜里沙さんはレズなのだから。
俺は、男。
つまりは、そういうことだ。
その後も、俺はしばらく公園で泣き続けていたが、時間も遅いこともあり、いつまでもそこにいるわけにもいかない。
抜け殻の様になっていた俺は、よろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りで公園の出口に向かう。
~絵里サイド~
「・・・はぁ、結局二人のことは見失うし、ヒールのせいで足は痛いし、変な目では見られるし。」
亜里沙と夏樹が走り出してから、必死に追いかけたけど、ヒールのせいで、思い切り転んだのよね、まだ痛いわ・・・。
それに、よく考えたら金髪隠せてない時点で変装も何もなかったわね、何が町中のマダムなのよ・・・、バカみたい。
はあ・・・。
亜里沙と夏樹はどうなったかしら?
もしからしたら、二人とも既に恋人の関係になってたりしてね・・・。
そうなったら、私は素直に二人を祝福してあげられるかしら。
って、だめね、思考が良くない方に行ってるわね・・・はぁ、早く帰ってお風呂にでも入りましょう。
そう気持ちを切り替えて、家の近くにある公園まで来たところだった。
この時間帯に公園に人がいるとは思わなかった私は、公園の入り口から、よろよろと歩いてくる人物を避けることが出来なかった。
ドンッ!
慣れていないヒールを歩いていたこともあり、力なく歩いていた私は、その衝撃でお尻からドスンと鈍い音を立てて転んでしまう。
本日二度目である。
「いったぁ~い!! うぅぅ・・・早く帰りたい。」
お尻の激痛に涙を浮かべながら、たまらずそう叫んでしまう。
今日はなんてついていないのだろう・・・。
そんなことを心の中でぼやきながら、ふとあることに気付く。
そうだわ、ぶつかった人はどうなったのかしら??
ぶつかった人がいるであろう方向に目線を向けると、そこには自分と同じく、お尻をついて、地面に座る態勢になっている人がいた。
私と同じようにお尻から転んでしまったのだろう。
・・・って、え??
私が、その人物が誰かを確認した瞬間、一気に痛みが吹き飛んだ。
だって、その人物は・・・
「夏樹!!??」
「・・・え? あ、絵里さん・・・。」
そこにいたのは、いつものように元気で調子のいい夏樹ではなかった。
沢山泣いたのか目は充血しており、顔も何だかやつれているように見える。
「・・・夏樹? 何があったの?? 大丈夫??」
あまりの異常な夏樹の姿に、私は軽いパニック状態になってしまい、わたわたと夏樹にそう問いかけるが、夏樹は、それに答えることはせず私のことをじっと見つめてきた。
「どうしたの、夏樹? 具合でも悪いの??」
何があったのかは分からないが、何か夏樹にとって重大なことがあったのは確かだろう。
だとしたら、なんとかしてあげなくては。
しかし、夏樹は私をじっと見つめたまま、固まってしまっている。
どうしたらいいのか分からなかったが、夏樹の目に見る見る涙があふれてきたかと思うと、表情がどんどんくずれていき、ドンっと、私に思い切り抱き着いてきた。
「・・・え// ええ//?? ちょっと// どうしたの、夏樹??」
突然の嬉し、こほんっ、突然の出来事に戸惑いを隠せず、抱き着かれるままでいると、
「おれ、俺・・・亜里沙さんに振られた・・・。」
「・・・え??」
その後、泣きじゃくる夏樹をとりあえず、公園内のベンチまで誘導して話を聞くことによると、デートを楽しんだ後、亜里沙に告白をしたが、振られた・・・と。
亜里沙がレズであったという事実については、後日、じっくり考えるとして、今は夏樹だ。
私にもたれかかるように泣いている夏樹を見て、どれほど傷ついているのかがよく伝わってくる。
この半年、目標に向かってひたすら真っすぐに突き進んできた姿は、欠片も見て取れなかった。
その夏樹の姿を見て、私はある決心をつける。
私は、できるだけ優しい声で夏樹にそっと呼びかける
「・・・ねえ、夏樹? ちょっとこっちを見てもらえないかしら?」
私の声に、夏樹は嗚咽を漏らしながらでは、あるがこちらを見てくれた。
そんな夏樹に私は自身の顔を近づけ、
こう言った。
「・・・夏樹? 私と付き合わないかしら?」
「・・・え?」
絵里さんは何を・・・言っているんだ?
・・・付き合う??
俺と絵里さんが・・・?
「私なら、夏樹の悲しみを埋めることができるわ・・・。この半年、夏樹と触れ合ってきて分かったのだけど、夏樹と一緒にいると楽しいし、幸せな気分になれたわ。何より、夏樹のことをよく理解している自信があるわ。夏樹はどうかしら??」
俺が思考をまとめる前に絵里さんはそう言いながら俺の顔に片手を当て、その整った小さな顔を近づけてきた。
「・・・え、いや、え、急に言わても。」
状況が飲み込めていない俺は、近づけてくる絵里さんの顔から視線を外し、そう答える。
な、なんだ・・・何が起きているんだ??
「いいのよ? でもね、悲しい時には人に甘えることも重要なのよ?」
そう言って、絵里さんは俺を、優しく・・・優しく
ぎゅつ
と、抱きしめてきた。
絵里さんに抱きしめられていると、悲しみも全て拭い去ってくれるかのようなぬくもりを感じることができた。
ああ・・・なんて、温かいんだ。
今感じられるのは、先ほどとは真逆の温かみ、優しさ。
俺の心の中で崩れていった、何かを埋めてくれるような感覚。
そんな天にでも召されるのではないかと疑うくらい、心地よい気持ちになっていると、絵里さんは俺を抱くのを辞めて少し距離をとり、
「ね? 安心するでしょう? 私なら夏樹に空いた穴を埋めることができるわ・・・。」
にこりとした笑顔を浮かべながら、そう言い、またその距離を近づけてきた。
しかし、今度は抱きしめるために近づいてきたのではない。
潤んだ瞳を静かに閉じ、真っ白な肌を朱色に染め、僕の顔に自身の顔を近づけてきた。
それを拒むことが出来なかった。
それどころか、心の中では、それを受け入れたいと思う気持ちもあった。
そして
――――――――。
この日、俺は人生初の失恋を経験し、人生初の彼女ができた。
つづく
第40話読んで頂いてありがとうございます!
実は、この展開は第一話を書いている時から絶対書きたいと思っていた内容になります。
ようやく形にできた・・・。
ちなみに物語は、まだまだ続きます(笑)
今回のお話で一段落といったところでしょうか・・・。
なんか、20話のあとがきくらいで物語中盤くらいかなーとか言ってた気もしますが忘れてください・・・。
というわけで!
引き続き、読んで頂ければな、と思います!
では、また次話でお会いしましょう!