自室のベッドに大の字で横たわり、見慣れた天井をボーと見つめる
放心状態で帰ってきたのだが、そのまま着替えもせず自室のベッドにダイブしてから、まったく動く気になれなかった。
・・・心がざわざわする
地に足がつかないとでもいうのだろうか、とにかく落ち着かない
今日一日自分に起きたことがあまりに衝撃的であり、現実感がないのだ。
それを証明するように、トクントクンッという、いつもは気にならないはずの鼓動の音が、やたらと耳に響いてくる。
・・・こんな気持ち初めてだ
嬉しい感情と悲しい感情が互いにぶつかり合って相殺し合っているような、そんな感じ
とにかく、今のままでは何もやる気が起こらない為、ただただぼうっと過ごす。
・・・30分位、経っただろうか?
これっぽっちの時間の経過だけでは気持ちが完全に鎮まることはなかったが、流石に多少は落ち着いてきた。
・・・少し整理していこう、今日一日俺の身に何が起きたのかを。
まずは・・・
―亜里沙さんに振られた―
改めて、再認識すると、また目頭が熱くなり、泣き出しそうになったが、すんでのところでそれを堪える。
当然だが、ショックだった
それはそうだ、亜里沙さんが好きだから、亜里沙さんと付き合いたいと思っていたからこそ、この半年間頑張ってきたのだ。
それが、まさか亜里沙さんがレズだという結果に終わり、俺の初恋は木端微塵に砕け散ったのだ。
ここまでで終わっていたら、俺はただただ悲しみから自室に閉じこもって出てこないような事態にも発展しかねなかっただろう。
あるいは、俺に少しでも根性魂が残っていたら、どうすれば亜里沙さんに振り向いてもらえるかを死に物狂いで考え、実行していたかもしれない。
だが、今の俺はそのいずれでもない・・・。
理由は明白
絵里さんが俺の“彼女”になったから
本日一の予想外の出来事であある。
・・・やはり、その言葉を自分の中でも繰り返してもいまいち実感が湧かない。
夢だと言われた方がまだ、納得がいくというものだ。
・・・・・。
俺は、何も考えず、無意識に
指を、そっと、唇に這わす
その瞬間
あの
柔らかく、ふにっとした感触が
蘇る
「っ////!!??」
口から手をばっと離し、勢いよく起き上がる。
ようやく少し落ち着いてきていた心臓がバクンバクンと他の人にも聞こえるのではないかというほどの大音量を奏でる。
・・・やっぱり、夢じゃないよな?
あの時感じた絵里さんの温かさ、優しさ、そしてあの・・・『キス』の感触
あれは、間違いなく偽りのモノではなく、本物だった。
でもなあ、やっぱり信じらないよなぁ・・・。
そんな風に、呟いたときだった。
♪~♪~♪
スマホから、電話がかかったことを知らせる軽やかな電子音が部屋に鳴り響く。
手に取り、画面を見ると、電話をかけてきた相手は
『絵里さん』
・・・ざわっ
電話をかけてきた相手を確認した瞬間、突風が吹きつけたかのように、心が大きく揺れ動く感覚に襲われる
期待
不安
二つの感情が一気に押し寄せてくる
いったい、何の用なんだ??
・・・いや、このタイミングでの電話。
俺と絵里さんが恋人同士になったことに関係する内容の電話に違いない。
しかし、もし勘違いだったら?? 夢だったら??
今までも連絡はたくさん取ってきたが、それはあくまでも、姉の友達として
だが、今は・・・どうなのだ??
凄まじい緊張に襲われるが、そのまま電話に出ないわけにいかないので、指をスマホの画面に這わせ
ゆっくり・・・ゆっくりと・・・・画面を、スライドさせる。
そして、通話状態になったことを確認し、スマホを耳にそっと当てる。
そこから今まで何度も聞いてきた、声が聞こえてきた。
「・・・もしもし? 今、大丈夫だった?」
出るのが遅かったせいだろうか、そんなことを聞いてくる絵里さん。
しかし、なぜだろう、聞きなれた声のはずなのに、どうしてこんなに緊張するのだろうか
電話越しに聞こえる絵里さんの声が、やたらとこそばゆい。
「あ、ああ、うん。大丈夫だよ。」
なんとなく緊張していることを隠すように、冷静を装い、返事を返す。
「そう、よかったわ♪ それで、その、なんて言うのかあれだけど・・・改めて、よろしくね?//」
「・・・え?」
絵里さんの少し照れを含めた言葉に
何が? といった意味も込めて、そう返事を返す。
本当は、何のことかなど分かっている。
・・・しかし、どうしても絵里さんの口から聞きたかったのだ。
これが夢でないと、確かめるためにも
「そ、その// 私達が『恋人』になったからよ// 恥ずかしいから言わせないでよ//」
はにかみつつ、隠し切れない幸せを振りまきながらのその言葉は、ぼんやりと靄がかかっていた俺の心に、溢れんばかりの光を届けてくれる。
心が澄み渡っていくようだ。
・・・やっぱり、夢なんかじゃない。
絵里さんは、俺の
『彼女』なんだ!!
それを、はっきりと確信できた俺は、途端に、心の底から嬉しさがこみあげてくる。
亜里沙さんの件は、悔いが残らないと言えば、嘘になる。
しかし、それを補っても、尚、余りある幸せが俺を包んでくれる。
「ちょ、ちょっと?? 聞いてるの?? 恥ずかしいんだから返事してよ、ねえ??//」
おっと、いけない、いけない、つい、考え事をして『彼女』を困らせてしまったようだ。
絵里さんの、焦り、困ったような言葉にさらなる興奮を感じつつ
「ごめん、絵里さんが彼女になったことに幸せを感じてたんだ。」
冷静になってから、今の自分の放った言葉を聞くと、羞恥のあまり、壁に頭突きを食らわせ、記憶を飛ばすところだが、今の俺は、テンションマックスなのだ。
そんな、くさいセリフが自然と口からこぼれてしまう。
今の俺は無敵だ。
「え・・・//// あ、ぅ、そ、そう/// なら・・・しょうが、ないわね//」
電話越しで、姿は見えないが、顔を真っ赤にし、もじもじと恥ずかしがる絵里さんの姿が俺には、見える!!
可愛い・・・可愛すぎる!!
俺が、妄想を捗らせ、ご満悦になっていると、絵里さんが、恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに
「そじゃあその・・・明日の放課後にデートでもしないかしら??」
え
デート・・・だって・・・!?
電話越しでさえ、こんなにも絵里さんの可愛さが伝わってくるのに、その上、デート!?
直接、絵里さんと触れ合うことができるデート!!??
・・・そんなの
・・・行くに決まってるじゃないか。
「わかりました、じゃあ明日は予定を開けておきます。」
「うん♪ それじゃあ明日また連絡するわね。 それじゃあ、その、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
ここで、通話は終わり。
プープーと、通話が切れた音が虚しく鳴っているが、そんなことは、どうでもよく、スマホを耳に当てたまま身動きが取れないでいた。
今、自分が置かれている、あまりにも幸せな状況を全て受け止めることができなくて、一種のフリーズ状態なのだ。
待て待て待て待て、落ち着け落ち着け~?
まとめるぞ?
俺は興奮状態ながらも、何とか頭を回らせ、状況の整理にかかる。
・・・よし、え~と
① 絵里さんは俺の彼女になった
② 絵里さんは可愛い、とびっきりに、抱きしめたくなるほどに、ていうか可愛すぎて死ねる
③ そんな絵里さんと明日デート
・・・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
叫んだ
それはもう、叫んだ
この気持ちを言語化することなんてできない
溢れる感情を吐き出すには、叫ぶしかできなかった
夜の9時
腹の底から、大気を、大地を揺るがさんばかりの大声量が自らの部屋を飛び越え、家の中、そしてその外へ、まき散らされていくのを感じつつも俺は叫んだ
「絵里さあああああんんん、かわいいいいいいいいぜえええええ!!!」
天を仰ぎ、そこに絵里さんの姿を思い浮かべ、ありったけの感情を全て乗せ、叫ぶ
叫び続ける
この想いよ、絵里さんに届けと言わんばかりに
その後、鬼のような形相となった母親が部屋に突入してきて、思い切り殴られるまで叫び続けたのだがそれは、また別のお話。
つづく
第41話読んで頂いてありがとうございます!
というわけで、しばらく夏樹君には、絵里ちゃんとイチャイチャしてもらいます・・・。
次回は、デート回です!
・・・・・はぁ、彼女欲しい。
はい! では、どんどん更新していきますので、次話でもお会いしましょう!