高坂穂乃果に弟がいたならば   作:naonakki

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42話 初デート

デート

 

ただのデートではない

 

初めての彼女との初めてのデートだ

 

他がなんと言おうが、それは俺にとって特別なことであり、とても大切なイベントだと思っている

 

考えが童貞っぽい?

 

言っておくが俺は童貞だ、夢くらいみさせてくれよ

 

具体的には分からないが、初デートっていうのは、なんというか、その・・・、日常から解き放たれたかのような幸せを彼女と一緒に噛み締めるような、素晴らしく、楽しいイベントっていう感じなんだよ

そして、付き合って一年経ってから、「そいえば初デートは――」なんて懐かしむように二人で語り合う・・・

それが俺にとっての初デートのイメージだ

 

なのに・・・

 

なのに・・・!?

 

 

 

「どうして、絵里さんの家で勉強なんだよ!?」

 

とうとう我慢の限界が来た俺は、ノート、参考書といった勉強道具がたくさん載ったテーブルをガタッっと言わせ、立ち上がり、心からの主張を隣に座っている彼女となった絵里さんに訴える。

 

「どうしたのよ、急に?」

 

絵里さんは、特に驚いた様子もなく、冷静な様子で俺を見上げながらそう返事を返してくる。

 

昨日、絵里さんからのお誘いで、初デートをすることになったわけだが、そのデート場所は付き合う前から馴染みのある絵里さんの家だったのだ。

最初は、もしかして家デートというやつでは、とドキマギしたものだが、俺を自宅に招いた部屋着姿の絵里さんは、にこりとした笑顔で

 

「それじゃあ、早速、勉強をしましょうか?」

 

と、『いつものように』言われてしまい、今に至る。

 

当然、絵里さんに勉強を見てもらうのは、付き合う前からも何回もしているわけで・・・

彼女との初デートというイベントに胸を膨らませていた俺を裏切る形になっているわけで、不満爆発である。

別に絵里さんと勉強をするのが嫌というわけでは、ない。

こうして彼女としての絵里さんと二人きりで勉強をするというのも、ドキドキするし、ぶっちゃけ、絵里さんがそばにいるだけでも幸せを感じてしまっている自分もいる・・・が

それでも、初デートで、わざわざ勉強をしなくてもいいのではと思う自分がいるのだ。

 

絵里さんは、そんな不満げな俺を一瞥すると

 

「・・・それじゃあ聞くけれど、学年で3位とれてからも勉強続けている?」

 

懐疑的な視線を俺に向け、そんな質問を投げつけてくる。

 

「・・・してないけど。」

 

「ほら見なさい。」

 

絵里さんは、そう結論付けると「早く勉強を再開するわよ」と、早く座るように促してくる。

 

「・・・勉強をしなかったのは、別にさぼっていたわけじゃなくて――」

 

最近、色々あったからできていなかっただけだ、

そもそも、3位をとる目標は達成しているんだから、勉強をしなくてもいいじゃないか、

だから、今からでもちゃんとしたデートをしよう――

 

そう説明をするつもりが、途中で俺の言葉を遮るような形で

 

「言い訳無用、学生として勉強をすることは当然のことよ? 勉強をさぼっていたのなら、その分の遅れを取り返すべきよ。 気が抜ているんじゃないかしら?」

 

と、絵里さんは、聞く耳を持ってくれない。

それどころか、説教モードである。

 

・・・なんだよ

 

一人だけ盛り上がっていた自分が馬鹿みたいだ

絵里さんは俺のことを好きと言ってくれたが、嘘だったのだろうか?

それとも世間一般で言いう、恋人同士というのは、存外こんなものなのだろうか?

・・・とにかく、気持ちが萎えてしまったのは、事実だ。

 

そもそもが亜里沙さんに告白するために始めた勉強であり、絵里さんの言い分に納得できなかったし、勉強をする気もあまりなかったが、

 

「分かりましたよっ! やりますよ、勉強!」

 

不満を含ませるように、少しだけ声を荒げさせてドカッとその場に座り直し、勉強を再開することにした。

このまま、帰るのは何だか絵里さんに言い負けたような気がして、嫌だった。

俺は、負けずぎらいなんだと、改めて実感したよ。

絵里さんは、そんな俺の態度に特に何もコメントすることなく、ただただ、いつものように、分かりやすく、勉強で分からない部分を教えてくれたのだった。

 

そして、4時間ほど経った頃に、俺はペンを机に、静かに置き、大きく息を吐きながら

 

「・・・やっと終わった。」

 

と、つぶやいた。

 

久しぶりに勉強をしたせいで、感覚が鈍っている部分があり、効率的に学習できなかった。

少しでも、勉強をさぼるとこうなるのかと、恐ろしく思ったよ。

 

勉強が終わったことに対する達成感と、初デートが勉強一色だったことに対する不完全燃焼感が俺の心を満たす。

 

・・・これが、初デートか。

勿論、勉強中に浮ついたことなんて、一ミリも起こっていない。

粛々と勉強に集中していただけだ。

 

「・・・はぁ。」

 

思わずため息が出るが、しょうがないと思う。

時計を見ると、既に18時を回っていた。

亜里沙さんが帰ってくるのは19時って言っていたから、少しくらいなら絵里さんの家にいることは、できそうだが、正直もうそんな気分ではなかった。

 

そういうわけで、絵里さんに何を言うまでもなく、荷物をまとめ、自宅に帰る準備をはじめる。

 

その時だった

 

 

 

ギュッ!

 

 

 

絵里さんに

 

 

 

抱きしめられた

 

 

 

俺の背中に、飛びつくように

 

 

 

―まるで、ずっと待っていたと言わんばかりに―

 

 

 

「え・・・ちょ// 絵里さん// 何なんですか急に!?」

 

一瞬何が起きているのわからなかったが、すぐに抱きしめられているということを認識し、慌てふためきながら質問をする。

しかし絵里さんは何も答えず、抱きしめる腕にさらに力を込め、自分の顔を背中にぐりぐりと押し付けてくるのみ。

 

「ど、どうしたんですか、絵里さん??// 何か言ってくださいよ//」

 

抱き着かれているという現状への高揚感に加え、背中に押し付けられる柔らかく暖かい感触にドキドキが止まらない。

 

なんだ!?

 

何が起きている??

 

すると、ここで絵里さんが背中越しに

 

「・・・夏樹は勘違いしているようだけれど、私だって最初から、こうしたかったんだからね?」

 

ドクンッ!?

 

絵里さんの、甘えたようなそんな言葉に心臓が跳ね上がる。

 

え・・・何が起きているんだ?? 勉強のし過ぎで幻覚でもみているのだろうか??

 

ここで、絵里さんは俺の背中からゆっくり―名残惜しそうに―離れた。

少し残念におもいつつ、絵里さんの方を振り返る。

自分の顔が赤くなっている自覚はあったが、振り返って見た絵里さんの顔は、もっと真っ赤っかだった。

 

「・・・その、私はね? 夏樹の一度決めたら、それに対して真っすぐに突き進む姿に惹かれて好きになったの、勿論それ以外も性格とか、色々あるけれど・・・//」

 

手をもじもじさせながら、上目遣いで、そんなことを可愛い絵里さんを目の前に俺の脳内は真っ白だった。

前半とのギャップもあり、絵里さんが可愛すぎて、脳内処理が追いつかないのだろう。

 

「最近、穂乃果から夏樹があまり勉強をしていないって聞いていたの・・・。せっかく勉強を頑張ったのに、3位をとったからそれで終わり、っていうのは凄く悲しい気がしたの。一緒に勉強して達成したっていう私達との思い出がなくなってしまうようで・・・。それに勉強をしておいた方が色々将来の役にも立つし・・・。」

 

申し訳なさそうに、目を伏せながら絵里さんはそう俺に謝罪を述べてくる。

 

目の前にいる絵里さんが、もうどうしようもなく愛おしく感じてしょうがなかった。

今すぐに抱き着きたい衝動に襲われるほどだ。

先ほどまで、不満に思っていた自分を殴ってやりたいくらいだ。

そうか・・・今思えば俺と絵里さんが関係を築き上げてきたのは、勉強を通してだった。

だったら、その勉強をやめて言い訳がなかったのだ。

 

「絵里さん・・・」

 

俺の呼びかけに対し、切なそうな目で俺を見つめてくる絵里さん

 

「ごめん、絵里さん。勘違いしていたよ。俺、勉強を続けるよ。」

 

あまり、多くを語ると、感極まってどうにかなりそうだったので、短くそう答える。

そんな、俺の回答に対し、絵里さんは、パアッと顔を明るくし、

 

「ありがとう!! でも・・・」

 

絵里さんは、そこで口を止め、なぜか不満げに口をぷくーと膨らませた。

普通に可愛いが、急にどうしたんだろうか?

 

「絵里さん、どうしたんですか急に?」

 

「それよ」

 

俺の質問に、食い気味にそう答えてくる絵里さん。

・・・それ??

思い当たることが何もないのだが?

 

「あの・・・どれですか?」

 

「呼び方よ、その『絵里さん』っていうの」

 

え・・・それって・・・

 

まさか!?

 

「も、もしかして呼び捨てにしろと・・・?」

 

俺が、困惑気味手にそう質問をすると

絵里さんは、少し恥ずかしそうに

 

「・・・そ、そりゃそうでしょ、だって夏樹は私の彼氏なのよ?//」

 

・・・この人は何回俺を惚れ直されたら気が済むんだ??

彼女にこんな風に言われたら逆らえるはずもない・・・

しかし、呼び捨てか・・・

うん、ハードルたけぇ・・・

 

しかし、絵里さんの勇気を出して言ったであろう頼みを裏切るわけもない。

俺は心を決めて、改めて絵里さんを真っすぐに見つめる

絵里さんも、緊張したように俺の視線をまっすぐに捉える。

 

やばい・・・どんどん顔が赤くなっていくのが分かるんだが

ていうか、改めて思うが絵里さんってまじで可愛いよな・・・

あー、だめだだめだ! 

早く言わないとどんどん、ハードルが高くなっていく・・・

 

くそっ、早く言うんだ!!

ええいっ、ままよ!

 

「・・・え、絵里////」

 

「・・・う、うん////」

 

うおおおおお、何だこれ、恥ずかしいいいい!!??

 

言った瞬間に、顔が凄い熱を持って絵里さんのことをまともに見れないんだが!?

絵里さんも俺と似たような感じなのか、俺から視線を外し顔を両手で覆っている。

小さな声で「呼び捨てにされちゃった~~~//」という呟きが、かすかに聞こえてくるのが、凄く可愛いと思う反面、気恥ずかしさが増すのを実感する。

 

その後、お互い落ち着くのを待って、ようやく一息ついた。

 

「あの、色々あるだろうけど、これからもよろしく、絵里・・・//」

 

「うん// こちらこそよろしくね?//」

 

結果良ければすべてよしというが

 

俺の初デート・・・

 

最高でした

 

まじで

 

まだ、呼び捨てにするのは時間がかかりそうだが、これからゆっくり慣れていけばいいだろう。

 

「じゃあ、今日はこれくらいで帰ります。もうそろそろ亜里沙さんもかえってくるだろうし。」

 

既に18時半を示している時計を横目にそう締めくくり、帰宅に着こうとする。

 

しかし、ここで絵里さんは、ニコっと妖しい笑顔を浮かべる

 

なんだ? と思う間もなく、

 

ぴん・・・ぽ~ん・・・

 

と、呼び鈴が鳴る音が

 

誰だろうか? 宅配便でも来たのだろうか?

 

そう思ったが、ここで絵里さんがとんでもないことを言ってきた

 

「あら、亜里沙が『時間通り』帰ってきたようね♪」

 

 

 

・・・・・え

 

 

 

つづく

 




第42話読んで頂きありがとうございます!

自分も一度でいいから彼女と勉強とかしてみたいものです・・・

というわけで、次話も早く更新できるように頑張ります!

では、また次話お会いしましょう!
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