・・・頭がぼーっとする。
風邪を引いてしまった俺は、平日にも関わらず布団の中で休息中だ。
ずっと寝ていた為、もう眠気はない、かと言って起き上がるような元気もない。
・・・暇だ。
まあ、たまにはゆっくり過ごすのもいいかもなぁ。
なんてさっきまで思っていたが・・・
「・・・何でいるの、希さん?」
なぜか制服を着た希さんが俺の部屋にいた。
学校は、もう始まっている時間のはずだ。
この人の行動は本当に謎なんだよな。
「いや~可愛い後輩が風邪ひいたっていうから、お見舞いに来たんやん?」
いい笑顔でそう言っているが、本当だろうか?
「学校はどうしたんですか?」
「まあまあ、うちはええねん、特別やから。」
「どういうことやねん。」
「細かいこと気にしてたら、モテへんで?
おっと、夏樹君にその心配はなかったか?」
冗談ぽく笑いながら希さんがそう言ってくる。
・・・俺のこと好きなのは海未さんくらいだわ。
「それより、色々買ってきたけど何かいる?」
希さんはスーパーの袋らしきものをガサガサしながらスポーツ飲料水やゼリーなど取り出しながら俺にそう聞いてくる。
一応、お見舞いに来たというのは本当らしい。
「あ、それはありがたいです。ちょうどお腹減ってたんですよ。」
さっきまで寝ていたので、実はお腹が減っていたのだ。
希さんの真意は分からないが、ここはありがたく好意に甘えておこう。
「やろ~?何食べたい?ゼリーにアイスになんでもあるよ~?」
「じゃあ、ゼリーでお願いします。」
「おーけー」と言い、てきぱきとゼリーを取り出し食べる用意をしてくれる。
・・・怖いぐらい従順だな。
ミューズの中でも俺をからかってくるトップ3には確実に入る希さんがここまでしてくるのは、正直裏があるとしか思えない。
ちなみにトップ3の残り二人は、ことりさんと凛さんね。
「じゃあ、はい、あ~ん♪」
「あの・・・一人で食べられますけど?」
当然のようにあーんをしてくる希さんに俺がそう言うと
「まあまあ、こんな可愛いお姉さんがあ~んしてくれるなんて中々ないよ~?」
「自分で言いますか・・・。」
確かに、可愛いけど。
ていうかミューズのみんなは全員可愛いけど。
だが希さんはミューズの中でもずば抜けている部分がある。
そうそれは、おっぱ・・・
「夏樹君~?何かいやらしいこと考えてない~??」
「ハハハ、マサカ」
・・・なぜ、ばれたっ!?
乳をガン見したのがいけなかったのか?
「そっか♪ じゃあはい!あ~ん♪」
・・・どうやら逃げられないようだ。
観念しよう、いくら希さんでも病人の俺に何かしようなどとは企んでいないだろう、うん。
「・・・あ~ん。」
「はい♪」
俺が、口を開くとそこに、ちょうど一口サイズに分けてくれたゼリーを流し込んでくれる。
・・・うん、おいしい。
先ほど買ったばかりなのだろう、適度に冷たく、火照った体にそのその冷たさがしみわたっていくようだ。
人は、風邪などを引いて体調が悪い時、弱気になる傾向があるそうだ。
俺も例外でなく正直寂しさを覚えていたこともあり、何だかこの状況が心地よくなってきた。
「はい、次あ~ん♪」
「・・・あ~ん。」
そこから俺も特に抵抗することなく、素直に希さんの好意に甘えることにした。
・・・なんだか希さんが優しい理想のお姉さんのように見えてきた。
ちなみにうちのリアル姉ちゃんは俺が風邪を引いたと知った時、慌てて俺の部屋に突入してきたらしく、勢い余って俺に頭突きをかましてきやがった。
俺はその衝撃で気を失った。
凄い衝撃だったよ、まじで・・・。
当然、姉ちゃんは出禁だ。
雪穂?
ラインで「ファイト」とだけ送ってきたよ。
「ごちそうさまでした。
希さんありがとうございました。」
すべてのゼリーを食べ終わった俺は、希さんに素直にお礼を言う。
「ええんよ、既にお礼はしてもらってるから♪」
・・・ん?
「希さん・・・どういうことですか?」
「まあまあ、気にせんといて。」
と、答えてくれなかった。
なんだなんだなんだ?
怖いっ!すごく!
「それより、夏樹君、最近いっぱい青春してるらしいやん?」
俺が、ビビっていると希さんが急に話題を変えそんなことを言ってきた、
「え、なんのことですか?」
が、まったく身に覚えがなかった俺がそう答える。
「ふふふ、それでこそ夏樹君や。
ただこの先、誰かに想いを告げられるようなことがあったら、
好き嫌いに関わらず真剣に向き合いや?」
と、希さんが真面目な感じを出してそんなことを言ってきた。
・・・どういうこと?
俺が理解できずに考えていると、
「今日はそれが言いたかってん、じゃあうちは帰るわ~。」
と、さっさと部屋から出ていこうとしてしまう。
しかし、部屋を出る直前に何かを思い出したようにこちらに振り向き、
「あ、そうそう、さっき言ってた既にお礼もらってるって言ってた件やけど、
あ~んしてた下りのところ、ミューズのみんなにライブで配信してたんよ、実は。」
・・・・・ホワイ?
「じゃあ、うちは帰るから、お大事にね~。」
そう言い残し、希さんは部屋から出ていってしまった。
・・・・・え?
・・・・・え?
・・・・・・。
その後、俺は考えるのをやめて寝た。
食事をしたおかげか割とすぐに眠りにつくことができた。
その後、ライブ配信を見たとして海未さんが押しかけてきて、私もあ~んしますと言って無理やりあ~んされた。
後、なぜかことりさんにも。
風邪だっていってるのに、凄い疲れた・・・。
これは、復讐だな・・・。
実は対希さん用に、一つ武器を隠し持っていたのだ。
今日だけじゃない、今までからかわれた分の復讐を今果たす時が来たようだ・・・。
くくく、今から希さんの慌てふためく姿が目に見えるぜw
今日は、遅刻したせいで、絵里ちに心配かけてもうたな。
でもまあ、あんな占い結果になってもうたらじっとしてるなんて無理やったしな・・・。
昨日、海未ちゃんから日曜日に夏樹君とデートをすると聞かされたうちは、
興味本位で夏樹君について恋占いをしてみた。
その結果は・・・
よくないものやった。
正直、占いなんて科学的根拠もないし、心から信じてるわけではない。
ただ、なんとなく嫌な予感がしただけ。
・・・でもまあ、仮にこの先大変なことになっても夏樹君なら大丈夫やろ。
そのためのアドバイスもしっかり今日したしな。
それよりも、あのライブ配信見た海未ちゃん達、凄いご乱心やったな(笑)
あの後、海未ちゃんとことりちゃんは、夏樹君の家にダッシュしていってたな~。
夏樹君にちょっと悪いことしたやろか?
と、そんなことを考えているといつの間にかラインがたまっていることに気付いた。
スマホを取り、画面をのぞき込む。
絵里ちに他のみんなもなんか言ってるな。
え~何々?
絵里 『希可愛いわね(笑)』
凛 『これは萌えるにゃ~』
にこ 『wwwww』
・・・何のことや?
ん? なんか動画がアップされてる。
穂乃果ちゃんがアップしてるんか。
何の気なしに再生ボタンを押しみる。
『あ、お母さん?私希だよ?』
『うん、こっちの生活にもばっちり慣れたよ!』
『それにミューズのみんなともとっても仲良くなって、毎日がとても楽しいよ!!』
動画を止めた。
これは、お母さんと電話したときの私だ。
いつもとは違う口調でとても嬉しそうに電話をしている私の姿がそこに映っていた。
もう一度ラインを見てみる。
すると、動画のアップの前に穂乃果ちゃんが何かを言っていた。
読んでみると、
穂乃果 『希さんまじ可愛いかったです(笑)by動画撮影者の夏樹より』
「なつきいいいいい!!」
私の叫びは夜の街に響き渡った。
つづく