~半年前~
・・・はあ。
何もやる気が出ない・・・。
ことりさんと海未さんの二人と喧嘩、いや、喧嘩と言っていいのか分からないが、とにかく二人との関係性が気まずくなり、最近はずっと最悪の気分だ。
・・・早く帰ってゲームしたい。
ところが、悪いことというのは、続くらしい。
「では、今から成績表を返していくぞー」
先生のその一言で最悪だと思われていた気分がさらに悪くなるのを感じる。
テストなんてこの世からなくなればいいのに・・・。
勉強は嫌いだ、なぜしなくてはいけないのか分からないからだ。
英語とか数学とかこの先役に立つのか?
そんな考えを持っていると当然成績がいいはずもなく、
「おい、高坂、もうちょっと頑張ったらどうだ?
高校に行けないぞ?」
と、ありがたいお言葉とともに渡された成績表には、
246位と記してあった。
248人中だ。
いつものことだ。
ま、後二人俺より、下がいるならいいか、
と成績表をポケットに押し込み、勉強のことを考えるのはやめた。
学校が終わると、まっすぐに家に帰った俺は、早速ゲームをした。
ゲームはいい。
嫌なことも全部忘れて、夢中になれるからだ。
それに、続けていくうちにどんどんうまくなっていくことが楽しくてしょうがないのだ。
ゲームをしていると、途中で雪穂が帰ってきたので一緒にスマブラをすることにした。
しかし、
「あ~、もうやめやめっ!夏樹強すぎ。」
と、わずか2回戦しただけで、雪穂がコントローラーを放り出してしまった。
雪穂もちょくちょくゲームはしてるみたいだが、最近ずっとゲームをしていた俺と、いつの間にか実力の差が開いていたらしい。
「・・・ていうかさ、夏樹なんかあったの?」
俺が雪穂に構わず一人でゲームを続けようとすると、そんなことを言ってきた。
流石双子の姉だ。
俺の様子がおかしいことをとっくに見抜いていたようだ。
「・・・別に。」
が、当然何があったのか答える訳もなく、そのままゲームを続けた。
「・・・ふ~ん、まあいいけどさ。ゲームもほどほどにね?」
と、言って自分の部屋に行ってしまった。
それからもゲームを続けていが、母さんから、ゲームをしてる暇があるなら買い物に行って来いと、家から追い出されてしまった。
面倒だ、しかも買ってくるもの多いし・・・。
仕方がなく、スーパーに向かうが、途中で面倒になり、通りかかった公園のベンチで休憩することにした。
もう少しで春とはいっても、まだまだ寒い季節は続いている。
夕方ということもあり、公園には他に人の姿はなく、静かな空間が広がっていた。
そんな雰囲気だからだろうか、思い出したくもないことを思い出してしまう。
・・・二人に嫌われてしまっただろうか?
なぜあそこまで言ってしまったのだろうか。
もっと言い方があったのではないのか?
ベンチで過去の自分の行動を悔いていると、
前から声をかけられた。
「どうしたんですか?なにかあったんですか?」
とても、透き通った声だった。
俺の真っ暗になってしまった感情にも響くその綺麗な声に、
うつむいていた顔をゆっくり上げる。
そこには、
一人の少女がいた。
まず目に飛び込んできたのは、夕日色に輝く綺麗な金色の髪だった。
次いで、蒼色の透き通るようなきれいな目。
そして整った顔、真っ白な肌。
まるでお人形さんのようだった。
現実離れしたその光景に思わず、我を忘れて魅入ってしまう。
「あの、どうしました?」
少女が、黙っている俺を不審に思ったのだろう。
きょとんとし、そう尋ねてくる。
「あ、ご、ごめんなさい。つい。」
我に返った俺は、少女の方を食い入るように見ていたその顔を慌てて逸らす。
「そうですか?
それで何かあったのですか?」
少女はそう言いながら隣に座ってきた。
ふわりと、化粧水なのか何かは分からなかったが、とてもいい香りがした。
「い、いや、別になにも、ないですよ。」
座ってきた距離が近かったということもあり、緊張してしまった俺は、噛みながら、そう答える。
「そうですか・・・。
でも、口にすることで楽になることもあるかもしれないですよ!」
そう明るく言ってくれた少女に、改めて顔を向けた。
少女は満面の笑みで俺を見つめていてくれた。
・・・可愛い。
「って、お姉ちゃんが言ってたんですけどね。」
えへへ、と冗談ぽく笑いながらそう舌を出す少女を見て思わずこう思った。
可愛い。
いや、まあ、さっきも思ったけどね?
「・・・実は、ちょっと前に大事な人たちと喧嘩をしたんだ。」
しかし、そんな少女を見ていると、俺の中にあった暗い心が少し晴れていくような気がして、気付いたら、勝手に口が動いていた。
俺は、二人と何があったのかを最後まで、これまで会ったこともない少女に語った。
少女はそんな俺の話を最後まで静かに聞いてくれた。
そして、俺が全てを語り終えた後、少女はまず第一声に
「話してくれてありがとうございます。」
そう、感謝の言葉を述べてくれた。
そして、続けてこういった。
「・・・で、ごめんなさいなんですけど、正直日本語に慣れていない部分があって、分からなかったところが結構ありました。」
うそ~ん。
「で、でも!あなたが、二人のことをとても大事に思っていることは伝わってきました。
きっと、仲直りできます!絶対です!」
と、少女は、大きな声で力強くそう言ってくれた。
そんな必死に言ってくれる少女の姿を見ていると、
いつの間にか、自分の中にあった暗い感情が無くなっているのが分かった。
「・・・ありがとう、何だか俺勇気が出てきた!」
そうだよ、俺が二人のことを大事に思っている気持ちだけは嘘じゃない!
きっと二人も分かってくれる!
そのことに気づかせてくれた少女に俺は、頭を下げて深く感謝する。
「いいえ、私は何もしてませんよ?
でも、元気が出てよかったです!
・・・あっ、もう帰らなくちゃ!」
思い出したように少女は、そう大きな声で言い、あたふたしだした。
そしてそのまま、立ち上がって、
「じゃあ、私はもう行きます!
二人と仲良くなれることを願ってます!」
と、慌てながら走って行ってしまう。
「あ、ちょっと待って、名前、そう名前は??」
見知らぬ俺にここまでしくれたのだ、恩人の名前くらいは聞いておかなくては、
俺のその言葉に少女は立ち止まり、
くるりと、振り向き、そしていたずらっぽく、そして少しだけドヤ顔交じりの笑顔でこう言った。
「ふっ、名乗るほどの者でもないですよ?」
俺が、ぽかんとしていると、そのまま少女は立ち去ってしまった。
なぜ、名乗ってもらえなかったのか分からなかったが、最後のあの、笑顔を見て、俺は確信した。
俺、あの子好きになったわ。
つづく