例えば鉛筆の家凸から始まるラブストーリーとか(本編完結) 作:マクバ
例えば鉛筆の家凸から始まるラブストーリーとか
今は夏休み。昼過ぎに起きた俺は学生の長期休みにありがちな昼夜逆転気味の生活をしていた。まぁそれは置いておいて最近ハマっているシャンフロにログインする、前に朝飯、じゃないや昼飯を食べるか。
「瑠美は……あーそういえば朝から出かけるって昨日言ってたな」
昼過ぎに帰ってくるって言ってたな。新作の服でも買いに行ったのか。
「仕方ない昼飯作るか」
レンジでチンするだけだけどな! そう思ってとりあえず冷凍食品を漁ろうと冷蔵庫に向かった時、家のドアがガチャと空いた。瑠美が帰ってきたのか。やけに早いな。自分の昼飯も〜とか言い出すかなぁと思っていたら
「お兄ちゃんちょっと来てー!」
とお呼びがかかった。俺は開けようとしていた冷凍ピザを調理台の上に置いて玄関に向かった。大方服を買いすぎて重いから部屋に持ってけとかそういう話だろう。
が玄関に着いた俺を待っていたのはそんなもんじゃすまない、もっと弩級の爆弾だった。
「来ちゃった。やっほー! サンラク君!」
最後には爆発することで有名? なアーサー・ペンシルゴンこと、スーパーモデルの天音永遠が居たのだ。
「は?」
色々言いたいことはあったが、俺の口から絞り出せたのはこの言葉だけだった。
確かになんやかんやで瑠美経由で俺の家とか諸々をコイツは知ってはいたが実際に来るとか考えてないんですけど!? 精々なんかよく分からない郵送物とかくらいしか考えてなかったのに!?
「なんだい? その間抜けな声は。このスーパーカリスマモデルの天音永遠様を前にしてさ」
というか早く入ってもいいかい? 変装解いちゃったから今人に見られるとあんまりよろしくないんだけど。とかのたまっているが今はそんな軽口に返事をする余裕はない。
「すみません! トワ様! お兄ちゃん固まってないでお茶出してあげて!」
瑠美はもうすっかりペンシルゴンの配下となったらしい。アイツも最後には爆発するのか……
「もぉー瑠美ちゃんったら気軽に永遠義姉ちゃんでいいって言ってるじゃないか」
「そんな! 恐れ多いですー!」
俺が半ば意識を飛ばしながら日本人特有の流されやすい基質故か、お茶を出している間にもそんな会話が繰り広げられている。義姉ちゃんのニュアンスにツッコミを入れる気にもならない。
「で、何しに来たんだ? 大体の用事はチャットか前みたいにゲームの中で会えば済むだろ?」
わざわざ直接会いに来たのはなぜだ? というか妹がなぜ連れてきたんだ?
冷静になればなるほどこの状況のおかしさに目がいく。
「そうだねぇ〜。おねーさんにも色々あるのだよ。まぁ、ようやく決心がついたと言えるかな」
後半は何を言ってるのか小声過ぎて聞こえなかったが、おかしい。こういう時コイツならたまたま近くで仕事があって、おっかけで来た瑠美を見かけて、面白そうだから来ちゃった、とか言いそうなもんなのに、妙に誤魔化すというか曖昧な言葉が多い。まるで何か核心に近づきたくないような。
「まぁ何でもいいけどさ。特に面白い物はないぞ」
こいつをマイルームに入れる訳にはいかない。特にやましい物があったり、雑ピみたいなポエム集があるわけではないが、卒アルなんかを見られた日には大惨事になるだろう。
「君の部屋に行くのも面白そうだけど、今日はいいんだ。今日の用事はそれじゃない」
「じゃあ何だって言うんだ?」
俺は今までのペンシルゴンとは違う雰囲気に戸惑いながらそう尋ねた。まるでこれは1週目なのに意図せずに隠し√を踏んでそのまま真エンドに行ってしまってるような。何かが決定的に違う気がするが、何が違うのかが1週目だから分からないようなそんな不思議な感覚が俺の頭の中に燻っていた。
「おねーさんとデートにでも行こうじゃないか。何カッツォ君みたいに本業絡みってわけじゃないよ」
What? デート? 広義的にいえば男女が2人で出かけることをデートと言うらしいが、広義的な方でもコイツと出かけようとは思わない。まぁ確かにスーパーカリスマモデルだけあって外見はメチャクチャ整っている。会話もドッチボールになることが多いがまぁ楽しい。だがなぁ……
「すっごい殴りたくなる顔をしてるけど今日はおねーさんが奢ってあげよう。一応社会人だからね。未成年の君と割り勘なんて言わないさ」
「いや今疑問なのはそんなことじゃなくてこの状況全般なんだけど」
俺はそう言いながら時間を稼いで、会話の主導権を取り戻すタイミングを作ろうとしていたが。
「ゲーマーの君なんだ。絶対今日じゃなきゃダメな用事なんてないだろ?」
こうして家凸して来るくらいなんだ。瑠美経由で俺の予定なんて全て知っているんだろう。
「オーケー。分かったよ。何企んでるか知らんけど乗ってやろう。10分待っててくれ。出かける用意してくるから」
今の俺の格好は上下スウェットだ。近くのコンビニくらいなら問題ないが、天音永遠と出かけるには不足しすぎている事くらい俺でも分かる。
「本来なら女を待たせるなんてって言いたい所だけど今日は急に来たこっちが悪いしね。その格好でさぁ行こうって言わないだけよしとするよ」
私はその間瑠美ちゃんと話しているからさー。とペンシルゴンは言って、そのまま瑠美と話始めた。あんまり長引くと俺の今までのありとあらゆるエピソードが話されるだろう。急ぐか。
こうして俺と永遠のラブストーリーは、俺を知る人間からすれば想像通り、永遠の猛アタックから始まったのだった。この時の俺は本気でアタックとは気づかなかったがな!!
ちなみにこの後着替えてきた俺に、速攻チェンジと言い放ちコーディネートする! とか言い出して、結局部屋の中まで入られたのは秘密だ。
あまりにも再現度低いと思ったら言ってください。消します。