例えば鉛筆の家凸から始まるラブストーリーとか(本編完結) 作:マクバ
やっと事態に頭が追いついてきた。といっても既に我が城は鉛筆とその手先となった実妹の手によって陥落間際なんだけど。何とか卒業文集だけは死守して(アルバムは諦めた)、ペンシルゴンと妹に、この服はない、とかなんで合わせる事を考えないの? とボロクソに言われながら、彼女ら曰く妥協に妥協の末これを着てこいと言われた服を今は手に持っている。
着替えながら考える。なんでペンシルゴンいや、天音永遠は家に来たんだ? 最近瑠美が仲良くなっていたのは知っている。それによって俺のリアルがほぼ割れていたのも、まぁ知っている。が家凸したあげく、俺を外に連れ出すのがわからん。俺を罠にかけようにも、リアルでのイザコザで面倒なことには芸能人の向こうの方が明らかだ。というか2人でいる所をすっぱ抜かれたらアイツ詰むだろ。俺未成年だし。そこまでのリスクを犯す理由ってなんだ? 聞いても多分答えないだろうし。
色恋沙汰は多分ないよなぁっと頭から除外しながら理由を考える。アイツと俺のラブコメなんてあのラブクロック並のクソゲーになるだろうし。いやまぁ起きてる事実だけならライトノベルにありがちな展開ではある。ゲーム仲間のスーパーカリスマモデルが家凸してくるなんてラブコメディはありそうな気もする。実際には起きて欲しくないがな!
普通のモデルなら素直に喜べるが相手はあの最後には自爆することに定評のあるペンシルゴンだぞ。リアルでそれをかまされたらたまったもんじゃない。確かリアルで出来ないからゲームでやってるとは言ってたはずだが、どこでタカが外れるかわからん。この前の、GGCで名前隠しと顔隠しでゲーマーとしても顔は出てないが活動してしまったし何か心境の変化があったのかもしれない。
そんな出口のない迷路のような思考をしていたら着替えが終わっていた。あまり待たせてあの魔王の機嫌を損ねるのも良くない。こうなりゃ行き当たりばったりで何とかするかね。
俺は思考の渦から抜け出す意味も込めて1つ息を吐いてから部屋を出た。決して溜め息じゃないです。はい。だから部屋に様子を見に来た瑠美。これはオフレコで頼む。
2秒でバラされた。何やかんやあってペンシルゴンの事をトワとリアルで呼ぶことになった。
「何か違和感あると思ったらお前俺の事名前で呼んでるよな」
瑠美に見送られて家を出たあと、先ずは駅に行こうと言った、マスクとカツラを付けて変装したトワを見て、思い出したように俺は言った。
「やっと気づいたのかい? リアルじゃ呼び方に困ってね。瑠美ちゃんも居るから苗字じゃ呼べないし、プレイヤーネームじゃそれこそ呼べないよ。君の名前そこそこ有名だしリア凸はされたくないだろ?」
「お前今日俺に何したか分かってる? そのリア凸してきたんだけど君」
俺はトワの返してきた内容があまりにもブーメランだったので反射的にそうツッコんだ。しかしトワは全く意に介することなく
「ていうかさお前とか君とかじゃなくてちゃんと呼んでよ。亭主関白良くないよ? 時代は男女平等さ」
「それこそバレるのでは? って気遣いだったんだが……まぁそう言うならトワって呼ぶことにするよ。ていうかトワの周りに関しては実質女尊男卑だろ?」
一応気を使ってたつもりなんだがなぁ……いくら性悪ペンシルゴンとはいえ、男と2人でいる状況はモデル的に不味いと思ったんだが……
「それに関しては周りが勝手に忖度してるだけさ。楽郎君とカッツォ君は違うけど」
「まぁ俺とカッツォがお前に気を使うことはほぼねぇな。良くも悪くも」
何だかんだ俺はその距離感を気に入ってる訳だが。煽り煽られ、本気でやる時は協力する。ウェザエモンとかGGCとかがそうだ。面白いと思えた事に全力を一緒に出せる仲間であり、普段どんだけ巫山戯あっても大丈夫だと思える信頼感をまぁ2人には持っていた。
「まぁゲームの中で男女云々言う奴は大体直結厨だから」
「いや! それは偏見すぎる! 姫プレイとか色々あるでしょ」
「反論で真っ先に出るのがそれかい? 姫プレイだって男の方はワンチャンス狙ってるでしょ」
「んん〜そんなもんなんかなぁ」
姫プレイが起きるような健全なオンラインゲームを最近してなかったせいで姫プレイの基準がジョゼットになってた。いやジョゼット女じゃん。しかもあれ対象NPCじゃん。ダメじゃん。
「幕末とか姫プレイないからなぁ」
「なんで今そのゲームが出てくるの!? あれサイコパスしか生き残れないんだから姫プレイとか有り得ないでしょ」
俺がボケてトワがツッコンだり、その逆をしたりとまぁウィットに富んだ会話をしながら道を歩いていると最寄りの駅に着いた。
「やっぱ最寄りはここなんだ。私の実家の隣駅だね」
「え? お前ん家そんな近いの!?」
世間は狭い、俺はそれを実感してしまった。あ、まぁそうか玲氏の姉と知り合いだもんなそういえば。
「またお前って言ったね。私のことをお前なんてリアルで呼べる人はそうそういないんだよ」
君はもう少し分かった方がいいと言わんばかりにトワは人差し指を立ててチッチッチッと指を横に振りながらそう言った。
「悪かったよ。トワ。んでどこに行くんだ? あんまり遠出する時間はないぞ」
「まぁ落ち着き給えよ。楽郎君わざわざ電車で移動するわけないでしょ。そこだよ。今日の目的地は」
そう言ったトワが指した先は駅ではなく反対の裏路地だった。
「んで? 臓器売るのは流石に勘弁な。両親に殺されちまう」
「なんですぐそういうこと言うかなぁ。あそこ少し入ったところに昔からよく行くイタリアンのお店があるんだ」
「へぇ〜知らなかったな。ずっとこの駅使ってたのに」
ホントに知らなかったなぁ。高校生の外食なんざファミレスか食べ放題だしどっちも駅前の目立つ所にある。裏路地に行くことはほぼなかった訳だ。
「私も見つけたのは偶然だしね」
「何だ? 脅迫相手の臓器売ったあとの帰り道か?」
「リアルじゃ流石にやらないって。モモちゃんとブラブラしてたらたまたま見つけたの」
リアルじゃって……ゲームなら躊躇せずやれるのかもしかして。これからゲーム内で寝る時コイツにだけは気をつけておこう。
「モモちゃんって玲氏のお姉さんだよな」
「そうそう大学が一緒だったのさ。こっちで会う時にテスト教えて貰ったお礼にご飯奢った時にね」
「ふーん」
まぁコイツなら1夜漬けとかでも出来そうだもんな。
「ま、そういう訳で行きましょうか」
私に続けーとトワは裏路地に入っていった。今更逃げ出すわけにも行かんしな。
「どれだけ煽られるか分かったもんじゃねぇし」
今思えばこれが初デートか。ここのイタリアン美味かったんだよなぁ。俺はカルボナーラで、トワはペペロンチーノを頼んでたな。アイツに煽られて食べさせあったけど今思えばあれもアピールってやつ?
悪かったから無言で殴んないでくれ。地味に痛い。まぁまたその内行くか。あー分かってるよ。勝手に行きやしねーよ。俺が鉄砲玉なのはゲームだけだ。
力尽きた。誤字脱字見てないのであったら報告お願いします。
この後、玲氏を出して三角関係にするか、居なかった事にするかどうしよう。