例えば鉛筆の家凸から始まるラブストーリーとか(本編完結)   作:マクバ

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何故デート本番の内容をペンシルゴン視点にしてしまったのか。女性の気持ちとかわからんのに……という訳でキャラ崩壊注意です。
あ、ヒロインちゃんには憧れのまま止まってもらうこととなりました。


制服着るのははさすがに厳しいじゃん

 紆余曲折あったけど無事に楽郎を目的の店に連れてこれた。もっとおしゃれな都会の高層ビルの上層階にあるレストランとかでもよかったんだけど、楽郎が平穏に過ごせるとも思わなかったし、連れてくならもっと楽郎をイジリ倒したいときにすべきだ

 と自制した。今回はもっと穏便に済まそうと思った。

 さらに言うとまだ学生である彼と、自身が学生の時に来ていた店に来ることで、気持ちだけでも学生の頃の気分でデートと行きたかった、なんて乙女心もあったりする。臓器売買云々言われて思い出にヒビが入りかけたが、私と彼の今までのやり取りならそれくらいのことを言いかねないのは織り込み済みだ。

 

 店内に入ると、久しぶりに来たけれど相変わらず落ち着きのある雰囲気だ。暖色の光と、少し暗めの色の木材のフロアは、ログハウスのような、秘密基地のような雰囲気も合わせて持っている。

 

「こんな洒落た店が近場にあったとは」

 

 楽郎も中々気に入った様子。社会人になってからは来てなかったし、今日は変装もしている。常連感を出すこともなく私たちは席に案内された。

 

「席が空いててよかったな」

 

「そうだねぇ。混むときは結構混むからね」

 

 それでも席に座れないってほどになることはあまりなかったとは思うけど。私が仕事で学生のころに行ってた店、みたいな企画でも絶対ここは出さなかったし。入れないほど混むことはほぼない。

 

「さて何を頼もうかな」

 

「私のおススメはカルボナーラかペペロンチーノだよ」

 

 学生の時は大体どっちかを食べていた。季節の限定メニューとかボンゴレとかも美味しいんだけど、この2つは特に美味しい。百ちゃんと毎回2つ頼んでシェアしていたりもした。

 

「んじゃ、カルボナーラにしようかな。体が乳製品を欲してる気がする」

 

 楽郎はカルボナーラか、なら私は

 

「それじゃあペペロンチーノにしよっと」

 

 今回の楽郎のボケ? はスルーしていこっかな。毎回突っ込んでると、どんどん普段のやり取りになっちゃうしね。それは私の望むことじゃない。彼をいきなり落とすなんてのは土台無理な話で、クソゲー脳の彼を1度恋愛脳にする必要があるわけだ。そのためには普段の言葉のドッジボールは無しでいかなきゃいけない。まずはペンシルゴンじゃなくて、天音永遠として意識してもらう必要がある。と今回のデートの目的を復唱していたら、その間に楽郎が注文を済ませていた。

 

「ありがとね」

 

 私がそういうと、楽郎はギョッとした顔を浮かべて

 

「こんなのでお前に礼を言われると背筋が凍るんだけど」

 

「私のお礼は怪談か何かかな? あとお前じゃなくて」

 

「あ、悪い。トワ」

 

 私がそういうと彼はばつの悪そうな顔をしてから、私を名前で呼んだ。このまま順調に私を意識してくれてるといいんだけどね。

 

「そういえば何で今日来たんだ? 瑠美が出かけるときに言ってた感じだと前から決まってた感じがしたんだが」

 

 楽郎が言ってきたことは私からしたら中々痛いとこをつかれたって感じだった。素直に言っても今はまだ本気にしてくれないだろうし、普段の煽るように話せば、彼の警戒心が跳ね上がるだろうし。

 

「瑠美ちゃんから誘われてたからね。もともと。それでどうせなら楽郎君にドッキリでもってね」

 

 私は結局後者寄りの回答をすることにした。後で瑠美ちゃんと口裏合わせをしないと。

 

「ついででドッキリかました挙句、部屋まで踏み入られたのか」

 

 そういった楽郎は胡散臭い人間を見る目で私を見たきた。

 

「その顔やめてよ。私も傷つくんだよ」

 

「コノキモチ……コレガ……ココロ?」

 

「そのネタもう飽きたよ! 絶妙に腹立つ顔で言っちゃってさぁ!」

 

 半ばテンプレと化したセリフに思わず声を大きくしてしまう。あぁやっちゃったよ。この調子じゃ一生悪友ポジから出れないよ。

 

「お待たせいたしました」

 

 そんな私の心を察したかのようなタイミングの良さで、料理が来た。いつもの掛け合いに移行しそうな空気がリセットされる。これで命拾いできたかなぁ。ホント、こんな苦悩をする日がくるとは思わなかったよ。

 

「おぉ! 美味そう!」

 

「そりゃ私のお気に入りのお店だからね。美味しいよ」

 

 楽郎も料理の方に意識が向かったみたいだ。まぁそれすなわち私に対して意識が向いてないってことでもあるからちょっと悔しいんだけどさ。

 

 そんなことを思いながらも、学生の頃の懐かしの味を楽しむことにした。

 

「んー! やっぱり美味しいね」

 

 ペペロンチーノはパスタの中でも作りやすい部類に入るけど、ここのはホントに美味しい。

 

「おぉ! これはマジで美味いな。今度からここに来るかな」

 

「気に入ってくれてよかったよ」

 

 いや、ホントにね。これでまた誘う口実にもなる訳で。毎回ここにはしないけど、何かある度にここでご飯を食べれたらそれは嬉しいことだろうとは思う。

 刹那主義の癖に先の事を考えるなだって? それは無理だよ。今が順調なら、彼とのこの先のこともつい考えてしまうからね。まぁ今やりたいことは今やっちゃうんだけど。

 

「楽郎君さぁ」

 

「何だ? トワ」

 

 私が彼に声をかけると彼はフォークの手を止めてこちらを向いた。こういう所で地味に育ちって出るよね。まぁそれは置いておいて。

 

「私さ久々に来たからそっちのカルボナーラも食べたいんだけど、1口ちょうだい」

 

 ちょっと懐かしむように私はそう言った。すると彼はフォークを置いて、カルボナーラの器をこちらに寄こしてきた。

 

「わかった。いいぜ。ほらよ。その代わりにそっちのも1口くれよ」

 

「分かってないなぁ。こういう時は食べさせてくれるもんでしょ」

 

 私がそういうと彼はギョッとした顔をした。そしてそのまま口を開き、

 

「いやそんなバカップルぽいことペンシルゴンとしたくないんだけど。ていうか仮にも芸能人がそういうことを公然としていいのか」

 

 動揺しているのかプレイヤーネーム呼びになっている彼を見ながら、私は続けて言う。

 

「あーごめんね。ごめんね。お姉さんの配慮が足りなかった。楽郎君にはリアルの女の子とのデートでこういうのする度胸はないか」

 

「はぁ? あんまり舐めるなよ? こちとら1つのミスも許されない。コンマ単位の攻略チャートをやり遂げたんだぞ」

 

「ゲームでね。リアルじゃないんでしょ? そういう経験」

 

「リアルでストップウォッチ片手にデートとかする訳ないんですけど」

 

「さもデートしたことある風に言うけど、そっちの攻略チャートの話じゃなくて恋愛全般の話さ」

 

 私は楽郎に畳み掛けるようにそういう。

 

「お姉さんが練習相手になってあげるって言ってるのさ。私に出来るようになれば大抵の女の子に出来るようになるよ。それても楽郎君は緊張しちゃって出来ないかな?」

 

 まぁ他の子にやらせる気なんてないんだけどね。私が挑発するようにそういうと、案の定彼は

 

「いいだろう。やっすい挑発にのるのは癪だけどやってやんよ! 口開けろ! ペンシルゴン!」

 

 ノッてきた。ただ

 

「ペンシルゴンじゃなくて?」

 

 私がそういうと彼は、ちょっと詰まりかけたが

 

「トワ。口開けろ」

 

 そう言った。言ってる事は命令口調なのに、顔を赤らめながら、今更やってることに恥ずかしさを覚えているような表情なのがいい。これで彼はきっと私を意識せざるを得ないでしょ。

 

「はいはーい。あーん」

 

「今更だけど恥ずかしくなってきた。人がいなくてよかった」

 

 私がそういって口を開くと、彼はそう言って大量にパスタを巻き付けたりだとか、奥までフォークを突っ込んでくるとかもせずに、普通に私の口にパスタを入れてきた。

 

「ん〜。久々に食べたけど、カルボナーラもやっぱり美味しいね。もう一口ちょうだいよ」

 

「人いなくても流石にもうきついわ! ていうか俺にだけやらせるなよ。トワもやってみろよ」

 

 私が彼から貰ったカルボナーラを堪能しつつ、ちょっと調子に乗ってみると、少し余裕を取り戻したのか彼はこう言ってきた。

 

 

「いいよ。もちろん。お姉さんが食べさせてあげよう。ほら口開けて」

 

 はい。あーん、と私がパスタを巻き付けたフォークを差し出すと、彼の予想では私はやりたがらないとでも思っていたのか、目を泳がせながら

 

「え? お、おい!」

 

 とまた動揺しはじめた。まぁ今更降りることは許さないよ。

 

「ほらほら、パスタ食べたいんだろう? はい。口開けて。こんなの私のファンに見られたら殺されちゃうよ?」

 

 私がそう言うと、彼はここで逃げたらイジられるとでも思ったのだろう。ヤケクソ気味に

 

「先にやったのそっちなのに俺が殺されるの!? っ! たくっ! あーん」

 

 と口を開いた。そこに私は手に持った自分のフォークを入れる。彼が口を閉じてからフォークを抜き

 

「よく食べれましたー。褒めてあげるよ」

 

 と言った。彼はパスタを食べ終えてから悔しそうに

 

「初めてトワに年上の余裕を感ちまった。凄まじい敗北感だわ」

 

 と負け惜しみを1つ言ってからカルボナーラを食べた。

 

「あ、間接キスだよ? 楽郎君そういうの気にするタイプ? 私はあまり気にしないよ」

 

 相手によるけど。私がそう言うと、彼は噎せたのか咳き込み出し、それが収まると

 

「今それ言う? てかトワのもそうじゃん!」

 

「いや私は気にしないし」

 

 相手によるけど。

 

「俺だって気にしてねぇー! 今も無心で食ってたわ」

 

 無心で食べられると困るから、今言ったんだけどね。さて、ここまですれば、鈍感って訳じゃない楽郎ならまぁ私に意識が行くでしょ。

 

 そこからはお互いさっきの事を言いながら(私だけが一方的に言ってた気もするけど)パスタを食べ進めた。もう1回あーんをさせようとも思ったけど、楽郎君の余裕が思ったよりなさそうだったから断念した。あんまり一方的になりすぎるのもよくないからね。

 

 

「美味かったぁ。ごちそうさま」

 

「美味しかったでしょ?」

 

 私がそう言うと、彼は頬を手で擦りながら、

 

「美味かったのはもちろんだけど……」

 

 そこで彼は1度言葉を区切った。いや区切ったってよりは詰まってるのかな。

 

「まぁくれぐれも天音永遠に食べさせてもらった、なんてSNSで言わないでね。まぁ言ったら言ったで君も大炎上だけど」

 

 そうなったらそうなったで容赦なく、彼との関係を既成事実にするだけなんだけど。

 

「やらねぇよ! さすがにそこまで馬鹿じゃないわ!」

 

「そうかい? まぁまた来ようか」

 

「トワとは二度と来ねぇ!」

 

 

 

 

 結局何回もここに来ることになったよね。え? 何? うるさい? この時は余裕が無さすぎて頭がゴッチャゴチャだった? ならお姉さんの予定通りだね。

 ちょっと拗ねないでよ。この時の君はまぁ可愛かったよ。ほら、顔を赤くして……分かったって。今度また行こう。その時は1口と言わずにさ。その時はパスタで窒息させる? またまたぁーそんなこと言っちゃってー。




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