例えば鉛筆の家凸から始まるラブストーリーとか(本編完結) 作:マクバ
今回で一応完結です。章タイトルとこの話のタイトルが同じなのは仕様です。
永遠が愛を君に捧ぐ。
花火大会以来、何回か仕事の合間を縫って楽郎と会い、少しづつ彼のハードルを下げていった。悪態をついてやってた食べさせ合いも、今は慣れたのか何も言わなくてもやってくる。それで私が揶揄うと顔を赤くして、いいだろ別にいつもやってるじゃん、と返してくる。ここまで来るのにどれだけ苦労したことか。瑠美ちゃんにも散々協力してもらった。というわけで私、天音永遠は本日、陽務楽郎に告白します!
「と言ってもねぇ……」
告白された経験は数あれど、告白した経験のない私はとても脅えていた。刹那主義とはいえだ、彼とは永い付き合いをしていきたいと思っているわけで!
「これでフラレちゃったら私、何も出来なくなりそうだ」
今居るのは今日のデートの待ち合わせ場所だ。といっても集合時間より1時間くらい早いんだけど。ここはかなり広いショッピングモールで日本1大きい観覧車がランドマークとして有名な場所だ。
正直ショッピングモールに来たって服を買うことは、まぁほとんどない訳だけども、モールの中には映画館とか、外にもカラオケとか遊ぶ場所には困らなそうだからここにした訳なんだけど。
「どうしようかなぁ」
観覧車で告白するのはロマンチスト過ぎるかなぁ。でもなぁ……何でもない流れで言っても本気にして貰えなさそうだし、そもそも向こうから告白して欲しいっていうのもあるしなぁ……。それで待ってる間に横からかっさらわれても嫌だけど。
「恋と戦争では手段は選ばないとも言うしねぇ」
「なに物騒なこと言ってんだ? シャンフロで鉛筆王朝建てるのはやめろよ?」
「うひゃあ!?」
私の独り言を拾ったのは私が待ち望んでいた彼だった。どうしよう今の最初から聞かれてたら恥ずかしすぎるんだけど。
「なんだよその声? おはよう、トワ。一応時間より早く来たつもりだったんだが待たせちまったみたいだな」
悪い。と言って来た楽郎は私のコーディネート通りの格好で来た。そしてどうやらさっきのも最初の方は聞こえてなかったみたいだ。
「全くだよ。私を待たせるなんてさファンの子が聞いたら君は大炎上だよ」
「一応集合時間の30分前なんだよなぁ。てっきり時間ギリギリに着くもんだと思ってたぜ」
「あのねぇ。社会人にそんなことは許されないんだよ」
よっぽどの実力者でも遅刻連発してたら干されるような業界にいるから尚更ね。
「あー、まぁそりゃそうだよな。にしても早すぎやしないか? いつ来たんだ?」
「ついさっきだよ。まぁそんなのはいいんだ。行こうか」
30分前もついさっきさ、君に会えることを思えばね。とは言わなかった。っというか言えるわけないよねぇ。
「そうだな、ぼちぼち行きますか」
私が誤魔化すように行こうと言うと、彼も同意してくれた。ただ1つ予想外だったのが
「ねぇ……手」
そう彼の右手が私の左手と繋がっている事だ。今までに受けたことの無い奇襲に思わず悲鳴が出そうになるが、グッと堪える。
悲鳴をあげたら彼が痴漢か誘拐で捕まってしまうから、という訳ではなく、単純に自分が思ったよりも純情である所を見せたくなかったからだ。まぁでも
「私が悲鳴上げてたら、楽郎君一発アウトだよ?」
「トワも中々パンチある攻撃してきたこと散々あったろ。ていうかさ」
普段やってる食べさせ合いとかの方がハードルは高いだろ。彼のこのセリフに、あぁまぁそうだよねぇ。と思いそれと同時に、今日は上手くいく気がしてきた。
2人でショッピングモールを練り歩く。
「さてどうするかねぇ。トワはどっか行きたいところあったりするのか?」
楽郎君はノープランなのか、私に行き先を委ねてきた。まぁ良いけど、付き合ってくれたら、自分からもどこ行きたいか言って欲しいとは思っちゃうかもね。
「私としてはファッションは見る気ないかなぁ。どうせなら映画とかどうだい?」
服は普段の仕事で幾らでも見るし、多分お店入ったらお仕事モードになっちゃうからね。あんまり行きたくはない。まぁ楽郎君を着せ替え人形にするのは面白そうだけど。
「映画かぁ。最近見てないなぁ。今何やってたっけ?」
「今だと恋愛物があったよ。クソゲーマーの君的にはあんまり興味ないかもしれないけど」
この時私は、多分恋愛映画よりもアクションの方が好きだよなぁ。っていうか今だとVRフル活用のハリウッドの最新のアクション映画が上映されたばっかだからそっち行くことになるかなぁ、と思っていた。けれどその予想は良い意味で裏切られることになる。
「いいんじゃねぇか? 面白そうじゃん」
「あれ? アクション系じゃなくていいの?」
「そっちも好きだけど今日はこっちの気分だな」
彼のこういった一挙手一投足に胸がざわつく。向こうから手を繋いできたり、普段なら絶対に見ない映画をチョイスしたり、それらが全部恋愛方向に寄っていることにだ。
「ふーん。ならそうしよっか! これ男子高校生と年上のOLの恋愛物だけど」
中々に今の私たちの関係に刺激を与えそうな内容なんだけど、楽郎君は知っててこれをチョイスしたのか、それとも知らなくて選んでいるのか。今日の楽郎君の態度と合わせると気になったので尋ねてみる。
「…………だから選んだんだよなぁ」
少しの沈黙の後、頭をかきながら呟いた彼の声を私はしっかりと聞き、想定より楽郎君が恋愛脳を持っていたことに驚愕した。私を揶揄う気でチョイスしたと思っていたからだ。
「知ってたならいいんだ」
「え? ……っておい! 聞こえてた!? 今の?」
「しーらない。さぁ行くよ。もうすぐ映画始まっちゃうぽいし」
「ちょっ! 待て! 聞こえてたの!?」
口から漏れでる君が悪い。
耳まで赤くしながら、おいおい! と連呼する楽郎君を見て私は、やっぱり今日はいい日だと確信した。それこそ明日死んじゃうんじゃないかと思うくらいには。
「映画館なんて久しぶりに来たな」
「うん。私も映画みるなら最近は家ばっかりだったから」
あの後五月蝿く聞いてくる楽郎君を黙らせた後、私たちはモール内の映画館に来た。あと5分ほどでお目当ての映画が始まる。チケットを買い、映画鑑賞のお供にポップコーンとドリンクも買っておいた。ちなみにポップコーンは大きいサイズに2種類の味(キャラメルと塩)が入ったやつを1つ買い、飲み物は私はミルクティーで楽郎君はエナドリだ。映画館でエナドリなんて飲まなきゃ寝るって言ってるのと同義なのに……。まぁエナドリに魂を売ってる楽郎君だから仕方ないか。
「それじゃ買うもん買ったし行きますかね。ライオットブラッドが無かったのだけが残念だけど」
「あんな体に悪い物が何処にでもあるわけないでしょ」
「ライオットブラッドは合法だ!」
「この話はよしておこう。さて席はっと」
これ以上ライオットブラッドに魂を売った信者と話していても仕方がない。切り上げて席に向かう。封切られたばかりだからか、席はかなり埋まっている。まぁ映画は席さえ取れれば、混み具合はあまり関係ないけどね。
「あそこだな」
楽郎君が席を見つけてくれた。既に座ってる人の前を避けて進み席に座る。今はスクリーンにはこの先のシーズンの映画の告知が上映されていた。へぇ、カースドプリズン主役の映画制作決定かぁ。一体誰の影響なんだろうねぇ。横の楽郎君を見る。気恥しそうにこちらを見ていた。
「君のおかげかもよ? あれ以来人気になったんでしょ?」
「らしいなぁ。いやなんか小っ恥ずかしいわ」
そのあと何本か映画の告知が流れ、やがて本編が始まった。
共通の趣味である音楽を通して知り合った2人の男女。女の方が男に惚れるが、そこで男が高校生であることを知ってしまう。
世間の目を気にしながらも、どんどん彼に惹かれていくが彼の同級生にも彼を好きな人がいることを知ってしまう。彼の歳が経つのを待っているだけでは取られてしまうかもしれない、という不安に駆られながらも、2人は付き合う訳では無いが音楽を通して仲を深めていった。
そして最後は女が誰かに取られる前にと男に告白し、OKと言われエンドロール。
まぁ面白いとは思った。それ以上に今の自分の状況と重ねて見てしまった面が大きいけど。あぁそういえば百ちゃんの妹の玲ちゃんって楽郎君の同級生だっけ? エンドロールを見ながらそこまで考えて、やっぱり今日決めようと決意した。楽郎君の方を見てみると、彼は恋愛映画を見たあととは思えないような難しい顔をしていた。
映画館を出て少しモール内を散策した。雑貨屋を見に行ったり、ゲームショップを漁りながら彼のクソゲー雑学を聞いたりとそこそこに有意義な時間を過ごせたと思う。クソゲー雑学は正直いらなかったけどね。
いつ決めようか。といっても流石にこんな人がいる場所で急に言うわけにもねぇ。となるとやっぱり……私はモールの外にある観覧車の方を向いた。まぁモールの中にいるから別に見えてるわけじゃないんだけどね。
「ん? トワどこ見てんだ?」
「いやぁ、ちょっとねぇ……」
「トイレなら逆だぞ」
なーんで女心が分からないかなぁ。というか女の人にトイレはあっちとか言わないの。
「トイレじゃないよ。外の観覧車乗ろうよ!」
「?? バカと外道は高いところが好きってか?」
「なーんで一々そういうことを言うかなぁ。まぁ高いところから人を見下ろすのは好きだけどさ。君も好きでしょ?」
「ん。まぁな。高所恐怖症ではないぜ」
ならさっきの例えで言うとバカは君ね。とは言わなかった。普段のノリで行こうとすると、今の心境とのギャップでポロッと言ってしまいそうだったからだ。
「んじゃそういうことで行こうか」
「その顔には色々言いたいが、まぁいいぜ」
しれっと私は楽郎君の手を取りながら向かった。彼も無言で握り返し、その手を振りほどいてくることはなかった。
「改めて下から見ると大きいねぇ」
「日本1だろ? 確か」
観覧車の下まで着きそんな話をしながら、乗り場に向かう。幸い特に順番待ちもなくすぐに乗ることが出来た。
「観覧車っていつ乗ってもワクワクするな」
「それはただ、子供のままなんじゃないの?」
「いやほら高いところから下々の人間を見下ろすのは楽しいじゃん」
「それ私のセリフになるはずなんだけど」
「自分で言ってちゃ世話ねーよ」
完全な密室。向かい合って座る私たちの発する音以外は何も無く、私はこれからすることを考え過ぎないためにも、何時もより口数多く喋った。
「もうすぐ頂上みたいだな」
「そうだねぇ。下にいる人達がゴミみたいだよ」
「そこは豆粒って言えよ!」
外道トークをわざとし続ける。じゃないともうどうにかなってしまいそうだった。心臓の音を聞かれないように私は話続けた。
「もうすぐ頂上じゃない?」
「お? 確かにそうだな」
そう言って彼は私に背を向けて外の景色を見始めた。外はまだ明るいがうっすらと夕焼けが広がり、空は赤と、青と金が入り交じった模様を描いている。彼はその景色に目がいっているようだった。
「よしっと」
「うお!? どうした急に?」
向かい合っていた状態から隣に座り直す。
「いいじゃん! そっちの方が景色が綺麗だったから」
私がそう言うと、彼はまぁそっか、と頷きまた外を見始めた。もういいやっちゃえ。
「楽郎君」
彼を呼ぶ。彼は今度は何だとゆっくり振り向く。
「んっ……」
もう勢いに任せてやっちゃえと振り向いた彼の唇を奪ってから言った。
「好きなんだ。君のことが。よかったら私と付き合って欲しい」
「……え?」
「え? じゃないよ! 私は君が好きなの!」
私のファーストキスも捧げたのに! え? はないでしょ
「ドッキリとかじゃなく?」
「そう言われるのが嫌だから……キス、したんだよ」
私がそう言うと、彼は後ろの夕焼けと変わらないくらい赤くなり始めた。多分私も同じくらい赤くなっているだろう。
沈黙が私たちの間を横たわった。その時間が長かったか、短かったか私は分からない。ただ沈黙を遮った楽郎の言葉だけは分かった。
「その……俺も好きだ。トワのことが。だからよろしく。これからも」
今度は彼から私の唇を奪った。やがて観覧車は一周して地上に戻ってきた。
私たち2人は手を繋いで降りる。さっきまでは手を握りしめあっていただけだが、今はお互いの指をからませあってしっかりと握っている。
夕焼けによって出来た長い2つの影を見ているだけで私は幸せな気持ちになった。
「改めてよろしくね」
「あぁ、俺の方こそ」
なんか冗長になってしまった感はある。もうちょい再現度も上げたいし、文の構成も良くしたいと反省。
活動報告にお題箱作ってみたのでよかったらそこにお題投げてください。
感想等あったらお願いします。