「あぐっ……ガハッ!」
フィトリアは廃墟の壁に叩きつけられ、血を吐いた。
(なんて強いの……フィトリアの魔法も眷属器も全く歯が立たない)
神鳥の姿を以ってしても、その上で強大な衝撃波をもろに食らって吹っ飛ぶ始末。
最初に会った時から、彼我の実力差の判断を見誤っていた。
次元が違う。フィトリアには、間違いなく自分に勝ち目は無いという確信が出来てきていた。
(でも、フィトリアには約束がある……その約束がある限り、フィトリアは負けちゃ駄目)
目の前の小さな災厄は、純白の翼をはためかせ、今でも優雅に宙に浮いている。
三日三晩戦い続けて、疲れすらも見えないその様子は、消耗戦すらも不可能だと思い知らされるには十分だ。
「もう終わりか? あっけないな」
「ちがう……まだ、フィトリアは……戦え――ガッ!?」
「悪足掻きも大概にしたらどうだ。そなたに勝ち目はないのは、そなた自身ももう分かっているだろう」
「うう……」
振るわれた剣の衝撃波がフィトリアの腹に容赦なく叩き込まれる。ごぼり、と口からまた血が溢れた。
うめくフィトリアに、災厄が近づいてくる。
(不味い……時間がない)
このままでは殺される。
フィトリアは、まだ死ぬわけにはいかない。あと、一分。
一度災厄を見逃すこととなるが、背に腹は代えられない。自らの管轄である場所に、一分後に起こる波を収めて、それから短期間内で傷を治療すると共に作戦を考える。そして、世界中のフィロリアル達の情報網を駆使して、災厄を見つける。
(今ここで死んではいけない。あと、四十秒持ちこたえて、波の場所へ転送されればいい。まだこの時期なら、今のフィトリアでも、多分何とかできるはず)
そう思っているフィトリアはまだ、災厄の波とギャラクティックナイトのどちらが強いのかという目測も見誤っている。
ギャラクティックナイト――銀河最強の戦士と謳われ、恐れられてきた彼の力は、『一つの星を滅ぼすのも朝飯前』と言われるほどだ。
そんな彼の前にまだ死にかけているフィトリアが居るのは、単に
本来の目的は別にある。フィトリアを攻撃したのは、単に攻撃してきたから、敵として倒すことにしただけだった。
そして突然、フィトリアの目がキラリと光った気がした。
その刹那。
「「ハアッ!」」
長い熾烈な戦闘を経たとは思えない速さで二人は肉薄し、その刃を交えた!
フィトリアの爪と災厄のランスの間に飛び散る火花から、その鍔迫り合いにどれほどの力が込められているかが伺い知れるだろう。
波が起こるまであと、十秒。
(ここが執念場!)
攻撃して、この拮抗状態を維持する。
避けるのが無理なら、攻撃という最大の防御しか攻撃を凌ぐ方法はない。
……そうして、接近したことが、後のシリアス崩壊に繋がるとも知らず。
そしてついに、その時が来た。
「――間に合った」
「これは……」
フィトリアの足元に、転送の魔方陣が展開した。
目を見開く災厄に、フィトリアはゆっくりを形のいい唇を三日月形にゆがめた。
その直後、フィトリアは波の起こった場所に転送された。