槌の勇者が大王様   作:血糊

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物凄く遅くなってしまいました……申し訳ありません……


人間の世界をほぼ知らない陛下よりもほぼ知ってる人間がどうして陛下よりも単純なんだ

 赤髪の女は怯えながらも、元康に促されて話し始める。

 

 その話は声を震わせながらゆっくりと話していた。

 

 だが長い。

 

 話が長い。

 

 なので途中でデデデが切れた。

 

 

 「あ゛-ッ!! 話が長い、長すぎるぞい!」

 

 「はぁ……!?」 

 

 

 赤神の女は勿論顔を引きつらせる。されどもデデデの怒りは収まらない。

 

 

 「貴様の話は事実よりも感情ばっかり盛られてるから何があったのかが分かりづらいわい! 二十文字以内で!簡潔に!事実だけをまとめろぞい!」

 

 

 いやデデデはちゃんと成長してるのだ。してるんだが、それでも本を読むということはまだ苦手なのだ。いやそういう話ではなくて。

 

 デデデの言うとおり、確かに女の話は『怖かった』『恐ろしかった』というのを異常なほどに主張してきていて、肝心な所がよく分からないのだ。というか、事実も事実で取って付けたようなものばかりでストーリーが雑な気がする。

 

 まあ、二十文字以内でまとめると『凡人が即興で作ったような現実味のない小話』というのがデデデの印象だった。

 

 

 「分からないのはてめえの理解力がないだけだろ」

 

 「何だと貴様!」

 

 

 元康が敵意むき出しで反論してくる。馬鹿にされてキレたデデデをなだめるためにフレイアが近くに寄ってきた。

 

 

 「デデデさんデデデさん。簡潔にまとめるなら、尚文さんが女の人に酷いことをしようとした、ってことですよ」

 

 「おお、助かったわい」

 

 「ま、嘘でしょうがね」

 

 「何ですって!?」

 

 

 スパッと切り捨てる辺り、フレイアもフレイアで大体のことは察せたらしい。眉をひそめている。

 

 

 「フレイアちゃん、マインは本当にそいつに襲われたんだよ。現に泣いてたんだ」

 

 「泣いてたですか? 泣いてて、それで何がそうだって証拠はなかったのですか?」

 

 「証拠って、マインがあんな怖がっていたんだし、嘘なわけがないだろ?」

 

 

 おい待て。こいつはそれだけで決め付けたのか? 物的証拠もなく?

 

 

 (嘘だろう……証言だけで断罪とか可笑しすぎるわい)

 

 

 これはもうナオフミに対して同情を禁じえない。被害者が泣いてるけど証拠も何もない……でっち上げの可能性もあるけど、本当だったら被害者が可哀相だからと信じているかもしれないが、その被害者を全く疑わないというのは流石におかしい。

 

 赤髪が元康の後ろでひっそりと、遠目であれば分からないくらいの笑みを作ったのをデデデは確かに見た。

 

 その笑顔は……まさしく嘲笑のそれだ。

 

 

 「ッ」

 

 

 イヤリングのようにしていたハンマーに、発作的に伸ばされた片手を押さえ込めたのは、フレイアがデデデのガウンの裾を握ってくれていたからだった。

 

 この女はまるで、初めて出逢ったばかりの頃の、虚言の魔術師のようだ。ピンク玉とデデデ、バンダナワドルディと仮面騎士が手を貸して、そしてポップスターから遥か遠く、栄えた文明の痕跡が未だ息づく惑星ハルカンドラの果てで、最後の最後で裏切った……

 

 ……いや、まだ彼の方がマシか。あの時の彼は、時々居るような狡猾な野心家とも言えた。力を持っている分厄介ではあったが。

 

 だがあの赤髪の女は違う。単なる自分の下衆な欲求を満たすが為に、たった一人をよってたかって甚振っていた。その一人を歪ませてしまうほどに。

 

 人を信用させ、落とす。あの時と似ている点が比較的多かった為に、あの時の憤りを思い出したデデデの衝動的な行動は、仕方ないものだろう。

 

 

 「っ!? おい、何のつもりだ!」

 

 「いや、何でもない。嫌なことを思い出してしまっただけだぞい」

 

 「嫌なことで武器を取ろうとするとか物騒すぎるだろ。というか何でその嫌なことを思い出したんだよ」

 

 「……」

 

 

 咄嗟に槍を向けてきた元康の背後で、人を馬鹿にするような、女の笑顔が深まる。

 

 

 『クックク……コレでボクはコノ星の……イヤ! 全ウチュウの支配者とナルのダ!』

 

 

 マスタークラウンを被り、大仰に両手を灰色の空に掲げて高笑いを上げる彼……本性を現したマホロアの姿が、声が、脳裏で鮮明に流れていく。

 

 

 「デデデさん」

 

 「……安心せいワシは平気だわい。これ位なら、まだ我慢できる」

 

 

 吹き上がる殺意は、フレイアの心配そうな声で押さえつけられる。

 

 だが、元から短いその忍耐はいつまで持つのだろうか?

 

 

 「……ラルクベルク。ワシはいま途轍もなく気分が悪い。だからもう帰らせて貰うぞい」

 

 「……分かった」

 

 

 ラルクベルクが聞いたその言葉は、今までよりも格段に、傲慢な大王のように聞こえた。

 

 今までは取り繕っていて、これが本来の姿なのだと、悟った。

 

 それほどに、今のデデデから放たれている重圧は段違いだった。

 

 今のデデデには、今この場にいる誰であろうとも到底近づくことは出来ない。そう、嫌でも分かる。

 

 踵を返し、歩き始めるデデデが、ふと足を止める。

 

 

 「フレイア。貴様は残って、ワシの代わりに用件を済ませろ」

 

 「……分かりました」

 

 

 振り返ることもなく告げられた言葉を承ったフレイアは、デデデから背を向ける。

 

 が、そこで鮮やかな黒と蒼に染まった視線だけをデデデに残し続ける。それに気づいたデデデがだるそうに顔だけ振り返る。

 

 

 「デデデさん、やはり、やってはいけないのですか?」

 

 「絶対にやるな。これは命令ぞい」

 

 「分かりました」

 

 

 もう何もいわないとばかりに、どすどすとこの部屋に入ってきた道を引き返していく。

 

 それに異議を申し立てられる資格を持つ者は、ここには一人たりともいない。




明日、間話追加です
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