槌の勇者が大王様   作:血糊

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明日更新とか言いながらあさって更新になってしまいました……
投稿予約時間のミスです。申し訳ありません


ピンクの悪魔が跳ねる時、邪神たちは恐れおののく

 デデデが向かったのは、治療院ではなかった。

 

 王都の外の草原にデデデは立っていた。

 

 ロクな理由なんてない。ただなんとなく来てみた、それだけだった。

 

 

 「……」

 

 

 はるかぜというには程遠い、心地よさのカケラもないそよ風。

 

 気持ちの悪い風だ。外見はのどかな草原だが、かりそめの平和なのだと知るには十分、その風は淀んでいた。

 

 こんなところにずっといては、身が持たないのはよく分かる。

 

 人ではない自分がいるには、あまりにも歪んでいて、そして狂っている。ここは間違いなく『人間の世界』だ。

 

 平和も安寧もほとんどない、常に理不尽が襲い掛かる、そんな残酷すぎる世界。耐える力が必要な、苦しい世界だ。

 

 ポップスターとは違う世界だとよくわかる。悪い奴を倒したら一件落着、と簡単にはいかない……

 

 でも、この世界を少しでもよくできる可能性ならある。

 

 なんとなく、この歪んだ世界は()()()()()()()()()気がする。あの赤髪の女を見たとき、マホロアのような既視感だけではなく、もう一つの違和感があった。

 

 善意なんて微塵もないような本性、そして完璧すぎる演技。それが、まるで物語に出る根っからの悪人のように感じた。

 

 

「まるで、想像の中の悪みたいな……あんまりにも完璧すぎて作り物めいた感じがしたんだよな」

 

 

 ……単なる気のせいかもしれないが。

 

 

 「――正解♡」

 

 「っ!?」

 

 

 とっさにそこから飛びのいたことが、デデデの命を救った。

 

 先ほどまでデデデが居た所に、沢山の槍が突き刺さる。あそこにいれば串刺しになっていた。

 

 間違いなく殺しにかかってきているような挨拶の仕方に、デデデの頬を冷汗が伝い落ちる。

 

 そして、デデデの背後に何かが降り立つ気配。

 

 

 「はじめまして、辺境の星の大王様。私は貴方の考える『黒幕』メディアよ」

 

 「貴様……いつの間に」

 

 「貴方は気付かなかったでしょうけど、空を睨んでた貴方の目と私の目が合ったの。だからもしかしてって、分け身を作ったの。それであなたに会いに来てみたけど……軽そうな見た目して私の顔に騙されるような脳なしじゃないのねー」

 

 

 くすくすと笑うマインとそっくりな白髪の女……メディアの実力をなんとなくデデデは悟っていた。

 

 

 (こいつ、ギャラクティックナイトよりも強いな)

 

 

 いつものエンデ・ニルと同等だろうか。少なくとも今のデデデには間違いなく適わない相手だ。

 

 ……だが、どうやらこいつが元凶らしい。

 

 

 「『マイン』は私の分け身なのよ。四聖勇者の分裂を促すような命令をしていたわ。本来ならマインで貴方に接触しようかと思っていたのだけれど、槍が邪魔で行けなかったのよね」

 

 「……本当に、目が合っただけで会いに来たのか?」

 

 

 慎重にデデデは問いかける。武器は持たない。下手に持って戦意を持たれてしまえば終わりだ。ただでさえ最初から殺意しかないような挨拶をしてきた奴だ、好戦的なタイプかもしれない。

 

 メディアがスッと目を細める。

 

 

 「本当は違うわよ。その武器に宿ってる精霊が、どうやら元の主人の力をほとんど空になるまで吸い取って呼び出したのが貴方だった。どっちにしろ近いうちに接触する予定だったわ。ま、でも一人の時に会うつもりだったし手間が省けたわ」

 

 「精霊か……」

 

 「主人の力はかなりのものだった。それでも貴方を選んだのは、この世界を救える人材として貴方のほうが優秀だと判断したんでしょうね。自分で選んだくせに。まあ、前の主人じゃさっきの攻撃を避けるのは不可能だったでしょうけど」

 

 

 饒舌にメディアはデデデがこの世界に来た理由を語ってくれる。

 

 その精霊というのは、この世界を護る為だけに存在するものということだろうか。

 

 というか、デデデの強さをどうやって知ったんだ精霊とやら。取材でもないのにアポ取らずに勝手に呼び出すとはどういう了見だ。

 

 

 「貴方は地球でもなく、この世界でもない。遥か遠くの星から現れたイレギュラー。どういう奴か、確認することは正解だったわ」

 

 

 『どういう奴』というのは、自分の手で転がせる馬鹿者か、危険を持つ制御のできない面倒な知恵者かということだろう。

 

 後者だと分かったメディアは、それでも楽しそうな笑顔を浮かべている。

 

 

 「危険はあるけど、私には適わないのは分かった。まあでも、どんな足掻きを見せてくれるか楽しみだわ」

 

 「……いつまでそんな余裕が続くか、見ものだわい」

 

 「……なんですって?」

 

 

 はっとデデデは自分の口を押さえる。だが、一度出した言葉は、戻ることはない。

 

 デデデの嘲りを含んだ言葉に眉をひそめたメディアだが、直後、大爆笑した。

 

 

 「あっはははははははははは!! 面白いこと言うじゃない貴方。いいわ、特別に波のこと、教えてあげる」

 

 「何?」

 

 「そうよ。災厄の波の真実、貴方だけに教えてあげる」

 

 

 楽しそうにメディアは話した。この世界の誰もが知らない、波の真実を。

 

 

 「災厄の波は私が引き起こしてる災害。波で死んだ奴から取れる経験値を私が手に入れるためのね。経験値は私がやっているゲームに必要なの」

 

 「ゲーム?」

 

 「私と同じ神達で、どっちが沢山経験値を集められるかっていう、ね」

 

 

 経験値。それの意味するものは、漢字一文字で表せるがとても大切にするべきもの。

 

 メディアの言う『ゲーム』……それはすなわち、その大切にすべきものを沢山奪うような、残虐な遊戯。人間の持つ残虐性がはっきりと分かるような、普通の神経をもつものならきっと吐き気を催すくらいに邪悪な……

 

 暇を持て余した神々の遊び、そう称せるけども、神は神でも、悪い神々の遊びだ。

 

 そう思っていたデデデは、不意にあることを思い出した。

 

 

 「神? ……あー、そういえばカービィとニルが暇すぎて、どっかの邪神をどちらが沢山倒せるかゲームしよう! とか何とか言ってたわい」

 

 「……えっちょっと待ってそれいつのこと?」

 

 「ん? ワシが呼び出される直前の記憶はないがそれよりも前のは覚えてるんだが、それでも一年前からか?」

 

 「……最近他の神とのコンタクトが取れなかったのはまさか……ちょっと確認してくるわ」

 

 

 顔面蒼白のメディアの分け身がそこから掻き消えた。

 

 あの二人のことだから、そこらの中ボス程度、瞬殺などお茶の子さいさいだろう。それだけではなく、どうやらあのピンク玉、暇を持て余したから始めた程度のゲームで神殺しの神器『ティンクルスターアライズ』まで持ち出していた。ニルでさえ真モードの巨人の姿だった。

 

 なんとなく、メディアを待ちうけているであろう展開を察した。

 

 デデデは憂いを帯びた顔でしばらく空を見ていたが、日が暮れてきたころに、そろそろ自分も帰ることにした。

 

 

 

 

 

 ☆大王様移動中……★

 

 

 

 

 

 治療院まで帰ってくると、フレイアが待っていた。

 

 任された残りの用事はほとんど済ませたけど、デデデが居ないと出来ないのがあったから、全てこなすのは無理だった。だから今すぐに砂時計のところに行かないといけない、とのことだった。

 

 デデデは龍刻の砂時計の所に行って用事を済ませた後、城が用意していた豪華な部屋で波の前の最後の一夜を過ごした。

 

 ……黒幕メディアは、一睡どころじゃなかったようだが。




カービィとニルが邪神狩りを始めた理由


 「ねえねえカービィ、チョットいいカイ?」
 「んー何、マホロア」
 「最近ボクのローアにちょっかい出してくる奴らが多いんダヨ……今はまだ大丈夫ダケド、その内本当にローアが墜落しちゃうかの知れないカラ、どうにか出来ないカナ?」
 「え? ローアにちょっかい出してくる奴が? 物好きなのかな?」
 「多分単なる暇つぶし代わりダヨォ……ボクにとってはホンットウに迷惑ダケドね! アイツラ、人間みたいな見た目だけど、結構強いカラ、多分ティンクルスターアライズ使った方がイイんじゃないカナ?」
 「(あれ、いつの間にか倒す運びになってる? いやまあ助ける気はあるけど)ティンクルスターアライズが必要なら、ニルも連れて行った方がいいかも」
 「ああ、そうダネ! 確かにその方が倒しやすいかもしれナイシ……」
 「そうと決まれば、早く準備しなきゃ! ニル呼んでくるからスタアラ持って来てて、マホロア」
 「ワカッタ。
 ……今のウチにアイツラ排除しとけば、コノ平和な星に危害が加えられるコトもないダロウシ、キットこれでイイはず」






 この星で平和に暮らしたいマホロアが犯人だった。ちなみにマホロアも邪神の正体を全く知らない。
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