槌の勇者が大王様   作:血糊

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あけましておめでとうございます!

波直前から。


災厄の波

 「もうすぐその『災厄の波』が起こるんだな」

 

 

 太陽ももうすぐ地平線の裏に隠れようとしている夕方。澄み渡るような茜色の空の下で、これから災害が起こるなんて信じられないような快晴だ。

 

 どんな災害なのかは分からない。だけど、未知の強敵に挑む前のようなわくわくとした気持ちで、一行は波が起こるその時を待つ。

 

 そして――バキン! とガラスが破壊されるような音が響いた。

 

 穏やかな平和を感じさせる澄んだ茜色が、不安を煽るような濁ったワインレッドに染まる。三勇者達が中心に向かう姿が見える。

 

 デデデはその様子を見ながら、にやりと笑う。

 

 

 (ワシでも対応には問題なさそうだわい。場合によってはワシの力でどうにかできるか怪しかったがな)

 

 

 それこそナイトメアや星の夢、エンデ・ニルとかが出てきていればデデデの手には負えなかっただろう。

 

 歴戦の勘というものなのだろうか、なんとなくデデデには今回は自分の手におえないような化け物は出てこないという予感があった。

 

 さて、さっさとボスを〆てくるかと思った時、視界の隅に、昨日見た二人分の後姿が映った。二人が向かうのは、三勇者の方向とは違う。

 

 二人の向かう先にあるのは、リユート村だ。

 

 

 (……そういう事か。なら)

 

 

 「貴様らは中心に向かえ」

 

 「ちょっと待ってくれ、坊主があっちに」

 

 「あっちにはワシが行く。フレイア、二人を運べ」

 

 「……」

 

 「我慢させてすまんな。あと、出来るだけ早めにケリをつけろ。少しでも犠牲者は減らしたいぞい」

 

 

 不満げなフレイアの頭をデデデがわしゃわしゃと撫でる。

 

 乱れてしまった髪を直しながらぷうっと頬を膨らませるが、そのうち鳥の姿になる。

 

 

 「後で美味しいもの沢山食べさせてくださいよ」

 

 「わかっとるわい。食べるんならグルメレースの方がワシはいいがな」

 

 「グルメレース?」

 

 「コースに配置されてる食べ物を食べながらゴールまで走る奴だぞい」

 

 「脇腹が死ぬ奴だろそれ……ま、分かった。坊主たちのこと、頼むぞ」

 

 「おー、そっちも頼むぞい」

 

 ラルク、テリスがフレイアの背中に乗る。フレイアが軽やかに波の中心へと飛んでいくのを見届けてから、デデデはナオフミ達を追った。

 

 

 

 

 

 ☆大王様移動中……★

 

 

 

 

 

 ナオフミは一人で沢山の魔物たちを誘導していた。上手く気を引いて、村人たちを逃がす時間を稼いでいるようだ。

 

 そこにデデデが突っ込み、ジャイアントデデデスイングで一気に蹴散らす。

 

 

 「デデデ!? どうしてここにいるんだ、フレイア達はどうした!?」

 

 「あっちを任せてるぞい。ここの防衛は貴様らだけでは手が足りんと踏んで来ただけだわい。安心しろ、ワシ一人でもここを守るには十分くらいには強いぞい!」

 

 「……何にせよ心強いのには変わらないな。助かる」

 

 「礼なぞいらんわい。当たり前のことだからな」

 

 

 デデデがおにごろしデデデハンマーで一気に虫の魔物を吹き飛ばす。ハンマーを振り回せば、それだけで周りの魔物たちはなぎ倒され、ぶっ飛ばされ、叩き潰される。

 

 まさに理不尽的暴力の権化。デデデ大王らしいといえば、らしいような力任せの戦いだ。姿形が変わろうとも、デデデ大王はデデデ大王ということなのだろう。

 

 しかし、どんどん魔物の亡骸が増えていく一方、魔物の数は減るどころか増えていっている。

 

 

 (くっ、埒が開かんぞい!)

 

 

 仕方ない、とデデデはハンマーのジェットエンジン機能を使用し、一度に一気に吹っ飛ばしていく。が、それでも数は一向に減る様子はない。

 

 

 「ナオフミ様! 避難誘導が終わりました!」

 

 「でかしたラフタリア!」

 

 「む、狸娘、居たのかぞい」

 

 「最初からいましたよ」

 

 

 剣を振り回しながら答えるラフタリア。

 

 その姿にデデデは心強さを覚えた。

 

 

 (前からよく奴を見ていたからかもしれんがな)

 

 

 一流の剣術は、まるで華麗な演舞のようだと聞いたことがある。

 

 デデデはそれは事実だろうと思っている。確かに、あの仮面騎士の剣術は銀河中にも通じるような腕前だろう。姿がアレ(一頭身)なところもあるが、確かに踊っているようにも見えなくもない。

 

 今のラフタリアでは、それとは程遠いが、なんとなく通じる所はある。洗練すればもしかしたら……

 

 あの通称世界一カッコいい一頭身が居ないことが悔やまれる。奴が居ればラフタリアを指導してくれたかもしれない。八つ当たり気味にハンマー投げで巨大な魔物を爆発四散させた。

 

 

 「……強いな」

 

 「なんとなくですが、デデデさんが別の世界から強制的に呼び出された理由が分かりますね……」

 

 

 ナオフミとラフタリアはデデデの無双ぶりに驚きを隠せていなかった。

 

 デデデの強さは、巨大グリフィンを単身で倒せるのだからかなりのものだろうというのは分かっていた。

 

 だが、それでもこうこの鬼神のような戦いぶりを見せ付けられては……

 

 

 ((あの強さに追いつける気がしないな……))

 

 

 どこかの未来で神に成り上がるという快挙を成し遂げている二人はそう心の中で思った。

 

 だが、そんな驚きも長くは続かない。

 

 

 

 「……!? ラフタリア、デデデ!」

 

 「分かっとるわい! 貴様は狸娘を守ることに専念しろ!」

 

 「えっ!?」

 

 

 ナオフミがラフタリアをかばうのと同時、火の雨が降ってくる。

 

 そのことにはナオフミと同時に気づいたデデデは、火の雨の中を駆けていく。

 

 火の玉がデデデの身にかすっていく。若干の火傷を負いながらも、動作の問題にはなりえないのが幸いか。

 

 それでも、これを()()で降らせられるというだけで、脅威にもなりえる。

 

 だが、味方も巻き込みかねない大雑把な攻撃だ。なんとなく引っかかるものがあったが、デデデは魔物だからどうせそこまで知能はないのだろうとその違和感を無視した。

 

 しかしどうしたことだろうか。魔法を放っただろう魔物の姿はどこにもない。全員肉弾戦が得意そうな奴のみだ。

 

 襲い掛かってくる魔物を叩き潰しながら、デデデは村を一周する。

 

 

 (一体誰が降らせたのかぞい……?)

 

 

 疑問と胸騒ぎを抱えながらデデデは走る。

 

 ナオフミ達が居る所まで戻ったとき。デデデは見た。

 

 ラフタリアと、いつの間にか来ていた謎の鎧の軍隊(多分)の間に立つ、あのピンク玉がビームをコピーした時の帽子の色違いを被った、青年。

 

 戸惑った顔で背を向けている青年に向けている剣を降ろそうとしているラフタリア。ナオフミも同じく戸惑いを隠せないまま、ラフタリアに駆け寄る。

 

 こちらからでは顔色の伺えない青年を見たデデデは、不安が的中したのを思い知った。

 

 

 ――コイツ、ワシ同等か、それ以上のチカラをもっている!




次回、VS謎の青年(???)戦。

また更新が遅くなりそうです……
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