「待ていダチョウもどきぃ! 大人しくワシの食料になれええええええっ!」
「グアアアアアアアアア!!!」
夕方に差し掛かっても結局草原しか見つからなかった為、デデデは野宿をすることに決めた。
ということで、今やっているのは今日の夕食の狩りだった。
偶然見つけたガチョウっぽい謎の青い鳥が、一匹で草原の中心にいたのを見つけた為、そこにつけ込んで狩ろうとしていたのだが、デデデの接近に気づいたガチョウもどきは逃げるどころか、あろうことか立ち向かってきた。
デデデよりも大きいくせに、すばしっこい。武器の性質上、攻撃が大振りになってしまうこともあって、ほとんどが空振りに終わってしまう。
もちろんそのようなことが続けば、デデデのストレスがどんどん溜まっていくのは必然で。
「だあああああっ! なぜ当たらないんだぞい!?」
「グアー♪」
とうとうデデデはぶち切れてしまった。その場で地団太を踏むデデデを見たダチョウもどきはまるで「バーカ」とまるでデデデを煽るように鳴いていた。
勿論、そんなことをされれば怒りがグレードアップするのは否めなかった。
「……絶対にワシの夕食にしてやる。照り焼きチキンにしてやるぞい……!」
「グアア……!」
怒気の籠もったデデデの言葉に、ダチョウもどきは足を止め、「いいだろう。かかってこいや!」とでも言うようにデデデの前に立ちはだかった。
そして、ダチョウもどき対デデデ大王の真っ向勝負が始まった。
デデデが大きく跳躍するのと同時に、ダチョウもどきがデデデの方に翼を交差させる。
すると、ダチョウもどきの前に、緑色の魔法陣が現れた。目に見えて風が魔法陣の中心に凝縮されていく。
空中にいるデデデはというと、ハンマーを大上段に構えていた。その下には迎撃の準備を整えたダチョウもどきがいる。
デデデのハンマーに火がついた。そのまま勢いよく燃え盛り始める火をデデデは気にしない。
なぜなら、これこそがデデデの必殺技なのだから。
「おにごろしデデデハンマー!」
「グアアアアアアアアアア!」
炎の軌跡を描きながら振り下ろされたハンマーと、放たれた巨大な風の塊が、ぶつかり合う。
強大な力のぶつかり合いで、たとえ盾の勇者であっても簡単に吹き飛ぶような衝撃波が周囲に広がった。
デデデがその衝撃波で後方へと飛ぶが、即座に体勢を整えて墜落を免れた。
「……相殺で終わったか」
「グアア!?」
またしても攻撃を退けられたデデデは渋い顔を見せるが、ダチョウもどきは、デデデから見て、驚いた表情を見せていた。
あれを相殺したことに驚いているのかもしれないが、それがどうした。
(攻撃は届かなければ意味はないぞい)
決定打とはいかないだろうが、初手からかなりのダメージを与えられたかもしれない。
技と言うものは、初手からが肝心だ。一度見られると、次からは対応できる。初見というのは、大きなアドバンテージでもあるのだ。
デデデが持つ技の中では攻撃力の高いおにごろしデデデハンマーが防がれたのはかなり痛い。今の魔法を放たれれば防げてしまうことが分かられたからだ。
(ほかの技だと今一つで終わりそうだからこそ、初手から叩き込んでみたが、悪手だったか)
夕日はまもなく姿を隠す。このままでは、夜になってしまう。そうなれば終わりだ。奴の足なら間違いなく逃げられる。
デデデは歯噛みする。初手のミスがあまりにも大きかったために、今日はご飯なしを覚悟するべきだろう。
そう思った時だった。
ぞわり、とデデデの背筋から何かが這い上がる。
大きな影がデデデの頭上を通った。そう思ったときには、目の前の獲物が姿を消していた。
(なっ!?)
デデデは周りを見渡す。地上にはいない。
ならば上空か。そう思い上を見上げると、ちょうど巨大な鳥みたいな何かが、足にダチョウもどきを捕らえて、旋回している姿を見つけた。
人が真剣に狙っているときに、まさか横取りされるとは。あの鳥もどきは一体どういう了見なのだろうか。
横取りした側がうれしくとも、横取りされた側が怒るのは当然だろう。ましてや、腹をすかせている時に限って、掻っ攫われた。
食べ物の恨みは怖い。ただでさえ食い意地の張っているデデデなら尚更だろう。
「あの鳥……っ気が変わった、今日のワシのディナーは貴様だ、鳥もどき! ばくれつデデデハンマーなげ!」
怒り狂ったデデデは、両手で掴んだハンマーをハンマー投げの要領で鳥もどきに向けて、投げ出した。
投げ出されたハンマーは、狙い違わず鳥もどきの頭部にヒットした、その途端ハンマーが爆発した。
ばくれつデデデハンマーなげ。それは、デデデの持つ技の中では、最も攻撃力のある技だった。
爆発に巻き込まれた結果、鳥もどきの頭部は吹き飛んでしまった。
脳漿を撒き散らしながら鳥もどきが落ちてくる。デデデはその場から走って距離をとる。
そして、デデデが先ほどいたところに頭部を失った鳥もどきが墜落した。
「ちょいとスプラッターな光景だったが……ざまーみろ、だぞい」
「グアー」
「んあ? 別に貴様を助けたつもりはないが。単にそいつをワシの食事にするためにやっただけだ、勘違いするな」
「グアグア」
「って、ただおこぼれを貰うだけだったんかい!」
ついさっきまで命の危機にさらされていたというのに、なんともケロッとした様子で、魔方陣を展開させてカマイタチを発生させて鳥もどきの肉体の一部を切り取っていた。肝が据わっているのか、単なるアホなのかは知らない。
切り取った肉をハグハグとついばむ様子を見てると、デデデはもはやどうでもよくなってきた。自分もさっさと食べよう。腹減った。
「……あー、そういや火種のことを忘れてたわい」
デデデはふと気づく。そういや火が無かった。
さっき投げたハンマーは戻ってきたし、またおにごろしデデデハンマーを使って火をつけてるしかなさそうだ。
はぁ……と溜息をついて、まずは燃料を集めることから始めた。
「ああ、貴様も手伝ってくれるのか」
「グアー」
どうやら食べ終わったらしいダチョウもどきも燃料の為の小枝回収を手伝ってくれた。
……それにしても。
(このワシがこのような汚れ仕事をするときが来るとはなぁ)
だが、背に腹は代えられない。夜の闇に慣れてきた目を酷使しながら、仕方なく採集は続ける。時々風船に雑な顔の落書きっぽいのがある変な生き物が噛み付いてきたり、ウサギっぽい丸い何かが噛み付いてきたりしたが、全部叩き殺した。
そのせいで、ただでさえデカイ鳥もどきの処理が出来ないのに、また獲物が増えてしまった。
この量は流石にデデデでも食べられない。
「むむ……」
難儀なものだった。仕方ない。前に読んだレシピ絵本にあった、保存食でもある程度作ってみようか。そして残りの今日自分が食べる分だけを焼いて、それ以外はダチョウもどきに譲ろう。
あの絵本に書かれてあった通りなら、何かハーブと縛るものが必要だったか。
「ハーブはともかく、縄なら細い蔓を洗えば代用できるか?」
枯れてるのがあるなら、それを上手く編んで、縄みたいなものを作れるかもしれない。
あるといいなぁと思いながら、ある程度集まった小枝を草原の端、地面に置き、火をつける。
その間に、ダチョウもどきは獲物を全てブロック型に切って、いつの間にか用意されていた大きな葉っぱに全て乗せられていた。改めて見ても、量が半端ない。
「グアグア!」
ダチョウもどきは、最後にその辺にあった岩から薄い板を切り出し近くに置くと、もう自分の仕事は終わったと言わんばかりに、一番大きなブロック肉に嘴を突き刺してから、どこかにもって帰っていった。
「……あ」
無言で見送って一分。肉の処理役をしてもらいたかったのに、逃げられたことにデデデは気づいた。
いや、ダチョウもどきのつまみ食いのおかげでだいぶなくなってはいるのだが。だがこの量は一人では無理なのは変わらない。
はぁ……とデデデが溜息をついた、その時だった。
「……凄い量だな」
男一人、少女一人の救世主がやってきてくれた。