アニカビ名残のあるゲムカビな陛下。悪役っぽいがいい奴なのです!
追記
マキシマムトマトではなくマキシムトマトでした
「あんたも、俺と同じ異世界人だったのか」
いきさつを全て話した後の男の第一声はそれだった。
「い、異世界人?」
「そうだ。お前の居る場所とは全く違うだろ? 俺も、ここには召喚されてきたんだ」
「しょ、召喚? お前……」
「……なんだ、その化け物を見るような目は」
そして目の前の男が人外ということも発覚した。
召喚されるなど化け物でしかありえないだろうに。この星には多分人になってしまう何かがあるに違いない。この男の本来の姿は一体どんなものなんだろうか。
「お前、何か勘違いしてないか?」
「この星には、人間になる呪いでも掛けられているのか……?」
「えっお前人間じゃないのか」
「そうだわい。ワシは人間じゃないわい」
「おじさん人間じゃないんですか!?」
「だからおじさんじゃないと言っているだろうが小娘! ワシはデデデだ!」
「じゃあデデデおじさん」
「だからおじさんというなぁっ!」
ラフタリアは頑なにデデデのことをおじさんと呼んでいる。
言っておくが、今のデデデの姿は二十代後半くらいだ。まだおじさんというのは早い。中身の年齢は確かにおじさんだが。
「ん? 貴様の言い方、まるで自分が人間みたいな」
「現にそうだからな」
「え? あれじゃないのか、あの、緑の化け物」
「それなんて緑色の目の怪物? 違う、俺はれっきとした人間だ。ラフタリアだって人間じゃなくても亜人で、怪物じゃない」
「亜人? 動物の特徴があるからか?」
「……そんなことも知らないのか。よく今まで生きてこられたな」
「生憎今日の朝早くに初めて目を覚ましたからな」
「あんたもあんたで、この世界に来たときには牢屋の中だなんて、災難だったな」
「全くだわい。だが、貴様には投獄されるような理由があるようだが」
「……俺には全く覚えはないがな。冤罪をかけられたんだよ。しかもその国じゃ、俺が犯したらしい犯罪は重罪なんだと。あっという間に俺が犯罪者って噂が広がっていた」
「極刑受けるレベルのかぞい?」
「通常は処刑なんだとさ」
「……ナオフミ様はそんな方ではありません。そんなことをする人ではないんです」
ラフタリアは血を吐くように言った。
悔しそうなその様子を見たデデデは、確信した。
(本当に酷い目にあったんだな)
男……ナオフミにかけられたのは間違いなく冤罪だろう。少なくとも、あの虚言の魔術師のような演技力があるとは思えない。
何者かに嵌められたのかもしれないとも思う。そして、ナオフミはその嵌めた相手を知っているのだろう。だから、あんなにも憎しみがこもった表情をしたんだ。
「この盾を見られたらすぐに俺の身元が分かってしまう。だから、あんたに見られたくなかったんだよ。今はあの目を見たくなかった」
「身元がわかる、ねぇ……やっぱりそうなのか」
罪人の目印になる武器だなんて。自分の愛用の武器がこんな不名誉なものにすりかえられたことには本当に腹が立つ。
デデデの不満げな様子を見て、あることを感づき、顔を怪訝なものにしたナオフミは。
「……ちょっと補足させてもらうけどな。本来ならこれを見られたら敬われるものなんだよ。俺だけが例外なだけで」
「へっ?」
デデデの間抜けな声を聞いたナオフミは、やっぱり勘違いしてたか、と嘆息した。
「ってことは、ステータス魔法も知らないんだな」
「ステー……えっなんだそれは」
「……右上に何かあるだろ、それに集中してみろ」
「ん? ……えーと、こうか? おっ、なんか出たぞい」
「そこに職業みたいなのが書いてあるはずだ。俺の予想通りなら、多分勇者ってあると思うぞ」
「何を言っておる。ワシみたいなのが勇者なわけ…………」
半透明の画面に記されている職業には……『槌の勇者』とあった。
「大変ですナオフミ様! デデデおじさんが白目をむいてます!」
「喜ぶならまだしもなんでショックを受けてんだよ」
「……だって」
「あ、戻りました」
「聞いたことがあるんだぞい。勇者って面倒くさいものって。政治云々に関わらないといけなかったり、国に飼い殺しにされたりするって。ワシはそんなの真っ平だ!」
「……よく分かってるじゃないか」
仮面騎士から聞いたことがあった。勇者の伝承の裏には、とてつもない闇があるんだと。
肯定してほしくなかった。やっぱそうだった。
デデデは見ず知らずの奴らに拘束されるのは御免だ。だが勇者になった以上……
「勇者やめる方法はどこにあるかぞい?」
「勇者やめる方法があったら俺はとっくにやめてる」
一縷の望みも一刀両断である。デデデはうなだれた。
そんなデデデの鼻に、肉の焼ける匂いが漂ってきた。
「ん、やっと焼けたか」
ナオフミの言葉は、鳥もどきのステーキ――鳥もどきの本来の名前はグリフィンなのでグリフィンステーキの完成を告げていた。
☆大王様&盾の勇者&狸娘食事中……★
「こんなに美味しいステーキを食べたのは初めてだぞい……」
「美味しかったんなら良かったが、泣く程じゃないだろ」
「まずいスープの件が影響してるんじゃないでしょうか」
「……だろうな」
最後の食事がカワサキ流ベジタブルスープ・スペシャルだった為、感動するのも仕方ない。
デデデは号泣しながらグリフィンステーキを食べていた。
その様子に半ば呆れながら、ナオフミとラフタリアは同じくグリフィンステーキを頂いている。
グリフィンステーキ……塩味のみというシンプルさで、肉汁のうまみも、素材の味というのも引き立っている。切って焼いただけだというのにどうしてこんなにも美味いのだろうか。ナオフミこそがコックオオサカの本物の弟子じゃないのか、と思うほどである。
そのうち、沢山あったグリフィンステーキも三人の腹の中に全て収まってしまった。
(そういや、まだマキシムトマトは一個だけあったか)
これは三等分すればいいだろう。このまま持っていても明日には悪くなるのだから。新鮮なうちに食べるのが一番だ。
「よし、次はデザートだ」
「デザート!?」
「……俺はいらん」
「貴様は強制だわい。ステーキだって一枚しか食ってないんだからせめてこれくらいは食え。かなり美味いやつなんだからな。狸娘、ナイフ」
「だから私はラフタリアです。はい」
「美味くても俺はいい。もう食べられない」
「嘘つけ。腹の虫が鳴っとるぞ」
その会話の間にも、三等分が終わる。デデデはその中の二個とナイフをテーブルに置くと、残りの大きな一個を持ってナオフミに向き直る。
「羽交い絞めにしろ」
「はい」
「えっちょっおいラフタリア! どういうつもりだ」
「どういうつもりも何も、ナオフミ様にはもっと食べてもらわないといけません。そもそもデデデおじさんの善意を払いのけるのは失礼です」
「それは……そうだけど」
「ということだ。食え!」
「ってだから俺いらないってふごおっ!?」
嫌がられるのは予想通り。ということで、ラフタリアと共謀してナオフミにマキシムトマトを突っ込んだ。
ナオフミは最初はかぶりをふろうとしてラフタリアに固定されていたが、そのうちちゃんと飲み込んだ。
マキシムトマトは体力を全回復させられる栄養満点野菜なのだ。栄養失調もこれで解決なのである。
「…………」
飲み込んだ後のナオフミは何故か大人しかった。ラフタリアが拘束を解いた後は、口の周りについた果汁を指で拭って、それを一舐めした。
「ナオフミ様……?」
「貴様も食べてみろ」
「はい。あむっ――~~~っ美味しいです!」
「うむ、安定の美味さだぞい」
ラフタリアは目を輝かせる。やっぱりいつも通り、マキシムトマトは美味かった。
食べ物を