槌の勇者が大王様   作:血糊

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ダチョウもどきの逆襲

 一夜を洞窟で過ごしたあと、デデデは下山した。どうやらもうあの蜂の大群はデデデを諦めて、どこかに行ってしまったようだった。

 

 荷物の入ったリュック(盗賊から貰った(たかった)もの)が枝とかに引っかからないように、獣道にそって下りた。

 

 今更なのだが、どうしてデデデがこの山に登ったのかというと、人里を探すためだ。高いところからなら、周囲を上から一望して、村か何かがあるといいなと思ったからであった。

 

 いつもならば、双眼鏡とかでもっとよく観察できたが、いかんせんサバイバル中である。そのようなものはまだなかった。

 

 

(金は使ってないからまあまあある。だが、少しばかり心許ないな)

 

 

 近くに村があれば、そこに寄って、食料や道具を買おうと考えている。今の所持金は合計で銀貨が100枚程度、銅貨が50枚程度なので、この地域の道具の相場がまだ分からない中だと、もう少し欲しいところだった。

 

 山に登って見つけられたのは、大きな牧場らしきもののある村だ。あそこに寄ってみるとしよう。

 

 

 

 

 

 ☆大王様移動中……★

 

 

 

 

 

 「ほー、ここはダチョウもどきの牧場だったのか」

 

 デデデが村に着いてからまず向かったのが、大きな牧場だった。

 

 この牧場に近づいていくにつれ、昨日手に入れた卵と同じ匂いがしたからだ。もしかしてと思って向かってみると、予想通り。その牧場には沢山のダチョウもどきがごろごろしていた。

 

 

 (ここの管理者なら、ダチョウもどきのことについては詳しいだろうし、これがどんな卵かも分かるかもしれん)

 

 

 この牧場に来た理由はもう一つあった。それは、昨日手に入れた卵の正体を暴くためだった。

 

 匂いからしておそらくこの卵はダチョウもどきのものなのだろう。でも、一応本当にそうなのかということと、食べても腹は壊さないのかという確認だった。やはりデデデは食い意地が張っている。

 

 しかし、そんなデデデの前に、とある障害が立ちはだかる。

 

 

 「グア?」

 

 「グアー」

 

 「グアア!」

 

 「グアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 デデデに気づいたダチョウもどき達が、突然雄叫びを上げながら突進してきたのだ。

 

 デデデも突然のことにぎょっとしたが、まあ柵を超えることは無理だろうと思っていた。

 

 ダチョウもどきは予想を裏切り、柵を越えようとしてきた。だが、ダチョウもどきは飛び越えるのではなく、別の方法で越えてきた。

 

 そう。木で出来た柵を強烈なキックで破壊したのだ。

 

 

 「え」

 

 「「「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」

 

 「のわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」

 

 

 可哀想なことに、デデデはダチョウもどき達の健脚による全力疾走に轢かれる羽目になった。

 

 無数の足に踏まれまくり、最後尾のダチョウもどきがデデデの股間を蹴り上げ、そのまま宙に舞わせた。

 

 そしてデデデの体が上昇をやめ、落下する先は、全力で走るダチョウもどき達のコースの真ん中で。

 

 

 「ぎゃあああぁっあぁぁぁっぐぁぁぁぎゃあっ!」

 

 

 潰れた蛙のような声を上げながら踏まれていくデデデの体。一回目は背中、二回目は前と、念入りにされたデデデの体中はもはや足跡だらけである。

 

 

 (なぜワシがこんな目にいぃぃぃぃ……)

 

 

 これはもうどんまいとしか言いようがない。デデデにはこんな酷い事に遭わされる理由が全く思い浮かばない。あまりにも理不尽すぎる。だが体中が痛くて、動けない。

 

 やるべき事は終わったといわんばかりに、呑気に牧場へと帰っていくダチョウもどきに軽く殺意を覚えながら、デデデはそこに転がることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……というところだな。全く、骨が折れた程度で済んでよかったわい」

 

 「いや骨が折れた程度は程度ではありませんよ」

 

 

 治療師に回復魔法を掛けてもらいながらだが、状況説明を終えたデデデは、大きく嘆息する。

 

 あの後、異常に気づいて出てきた牧場主が、壊れた柵の修理をしていたところ、偶然デデデを見つけ、村の治療院に運ばれて今に至る。

 

 あのダチョウもどき……正式名称はフィロリアルなんだそうだ。元々温厚な性格だというそのフィロリアル達の暴走については主人である牧場主でも分からないらしい。

 

 だが、もしかしたらデデデの何かがフィロリアル達の気に触れたのかもしれないとのことだった。

 

 

 (いや何が気に触れたんだよ!)

 

 

 自分は柵越しに見ていただけだ。なのにどうしで奴らの気に触れるようなことになる。何処が温厚だ。むしろ凶暴だろう。

 

 どうせ大好きなご主人サマにだけは猫を被っているのだろう、とデデデは顔をしかめる。

 

 

 「本当に申し訳ありません……」

 

 「正直言って許したくないし、あの鳥どもをワシの手で極刑を下してやりたいが……他人の所有物に手を出すのはいけないことは分かっているわい」

 

 

 本当にすまなさそうな顔をしている牧場主をこれ以上責めるのは酷だろう。

 

 だが、以前のデデデなら間違いなく「極刑ぞい!」とブチギレていただろう。いや今も確かにキレている。

 

 だが、デデデはそんなことより気がかりな事があったため、抑えることができた。以前に比べるとデデデには常識が備わっている。自国の民ではない他人のものを勝手に奪うことはいけないということも承知できていた。

 

 ……自国の民のものも、自分のために権力を乱用して剥奪するというのも、悪いことであり、それをまだ理解していないことについてには、まだ突っ込んではいけない。いいね?

 

 

 「それより、ワシの荷物の中に卵が入っていたはずだが」

 

 「ああ、あのフィロリアルの卵ですね? どうやら何か保護の魔法を掛けられていたようで、割れてませんでしたよ」

 

 「そうか……」

 

 

 あの卵が無事だということにデデデは安心した。アレを割りたくなかったのもあるが、リュックの中が酷いことになる二次被害を被ったかもしれなかった。割れてなくてよかった。

 

 そして、やはりあれはフィロリアルの卵だったようだ。

 

 

 「あそこまで丁寧に保護されているなんてビックリしましたよ……あの卵、一体何処で拾ったんです?」

 

 「貴様に話す義理は無いわい」

 

 「そ、そうでしたね……ですが、せめてこちらからお詫びをさせてほしいのです。あの卵には魔物紋が掛けられていないようでしたし、こちらで孵化器付きで契約しましょうか?」

 

 「……なんだそれは」

 

 「おや、知らないのですか?」

 

 

 デデデの困惑に、牧場主は丁寧に説明してくれた。

 

 魔物紋とは、魔物を自分のパーティに入れるためのものであるとともに、制御をする役割を持つらしい。孵化器というのは名前の通り、卵を速く孵化させるものなんだそう。

 

 それを聞いたデデデは考えた。

 

 

 (手懐ければ、色々と使えるかもしれん)

 

 

 移動手段としてだとあの速さは優秀だし、健脚によるキックの威力は不本意にも実際に体験して、かなり痛かった。戦力にも使える。なんだかんだで連携のある戦闘は楽だからだ。

 

 デデデはその打算を腹の内に隠し、牧場主の持ちかけた話を了承した。




お前は、誰だ?

――私は、『悪』だ。貴様の心の闇に引き寄せられたのだ。

俺の心の闇、だと?

――憎いだろう? 貴様を貶めた女が、王が、愚かな勇者が。

それは……

――私と手を組め。そうすれば、奴らに復讐できるぞ。我らの手で、奴等に絶望を与えてやろうではないか。

……断る。

――何故だ? 奴等に復讐をしたくないのか?

確かに、あいつ等にはそのうち復讐するつもりだ。だが、お前と手を組むつもりは無い。

――貴様には力が無いだろう。私なら、貴様に力を与えられるぞ?

だとしても、俺はいらん。俺は、お前を信じるつもりは無い。とっとと失せろ。

――そうか。だが、覚えていろ。私は常に、貴様の影に潜んでいるぞ……
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