戦う炎の料理人   作:ドミネーター常守

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マグマグの実とメラメラの実についてご説明頂きどうもです!!

やっぱり、単純にエースがメラメラの実を扱いきれていないという練度の問題が大きいのでしょうねぇ…と、改めて思ったりしました。



頂上戦争の終わり

 

 

 マリンフォードを脱出するべく、逃走用の船を探すサンジ達御一行。

 

 途中、大将青雉の襲撃を受けるも、サンジとサボ、そしてエースの3人の力で青雉の魔の手から逃れる事に成功し、そしてエースはジンベエと共に白ひげ海賊団の傘下の者達と先に戦場から脱出する事ができたようだ。

 

 そして残すは───ルフィである。

 

「黒足、お前…あのスピードによくついてけるな」

「これくらいどうってこたァねェよ」

 

 だが、そう簡単に海軍が逃がしてくれるはずもなく、赤犬、青雉と来て、次は黄猿といった状況だ。光の速さで襲いかかってくる厄介極まりない大将と交戦中のサンジとサボはあまりにもな執拗さにいい加減飽き飽きしている様子でもある。

 

 海軍からしたら、エースを取り逃がしてしまった失態もある為に、ルフィだけは絶対に捕らえるつもりなのだろう。

 

「いい加減、麦わらを寄越しなよォー」

「誰が渡すかピカピカ野郎ッ!!」

「弟を渡すはずがないだろッ!!」

 

 サンジの見聞色───"未来視"と突然変異した動体視力によって黄猿とどうにか渡り合っているが、数で負けている事もあり、明らかに分が悪い状況だ。

 

「はあ…はあ、くそッ!!」

「麦わらボーイ!大丈夫ッ!?」

 

 見るからに、ルフィも疲弊しており限界が近い。

 

 これならばまだ、追手の数は多くともエース達と共に海に逃げていた方がマシだったかと思ってしまうが、それももう後の祭りといったところ…。

 

「そろそろ限界だねェー…まあ、頑張った方じゃなッ!?」

 

 エースは取り逃がしてしまったがルフィだけでも───海軍はその腹積もりだ。サンジからしたら、己達よりも黒ひげ側に戦力を回さなくていいのかといったところ…。

 

 それでも、やはり天はルフィに味方しているのか───サンジはそう思わずにはいられない出来事が起こる。

 

「何もするな…黄猿」

 

 何者かが黄猿へと銃を向け、動きを止めさせたのだ。

 

「おォーッとっとォー、()()()()()()()()じゃないのォー」

 

 白ひげに続いて、"()()"を立て続けに相手にする余裕など今の海軍にはない。

 

「あ!」

 

 声を上げるルフィ。その様子に、サンジはどうしたのかと疑問を抱くも、すぐにその人物とルフィの繋がりを思い出し、ルフィの反応に納得することとなった。

 

 黄猿に銃口を向けるその男───赤髪海賊団副船長ベン・ベックマンの登場に、周囲は騒然とし、そしてマリンフォード海域に姿を見せた一隻の船に誰もが驚愕することとなる。

 

 海軍は赤髪海賊団が同じく四皇の"百獣海賊団"と昨日、小競り合いを起こした情報を掴んでいたこともあり、その驚き具合はとても大きいものだ。

 

 ただ、誰よりも驚いているのはルフィだろう。何せ、赤髪海賊団の海賊旗をその目で見るのは実に10年ぶりなのだから…。

 

 しかし、そんなルフィに対してベン・ベックマンはこう告げるのである。

 

「久しぶりだな…ルフィ。大きくなりやがったもんだ…ただ、せっかくの再会を喜びたいところだが、今は逃げろ。

()()()にも会いたいだろうが…その機会は何れ必ずある。もっと成長した姿を見せてやってくれ」

 

 ルフィに優しい眼差しを向けながら、ベン・ベックマンはこの場を引き受けると───ルフィ達にこの場所から早く逃げろと促すのである。

 

「一目…シャンクスに会いてェなァ…けど」

 

 ルフィも、()()に会いたいと思っている。しかし、脳裏に浮かぶのは10年前の約束だ。

 

『この帽子をお前に預ける』

 

 ルフィはエースを救い出す為にこの戦場に降り立ち、そしてエースを救い出した。

 それでも、それを成し得たのは多くの手助けがあったからこそであり、自分だけでは決して助け出す事などできなかったと理解もしていた。まだまだ自分は弱く、ちっぽけな存在でしかなく、たまたま()()()()()()だけなのだと、ルフィはそう感じずにはいられない。

 

「まだ…シャンクスには会えない」

 

 10年前、別れ際にシャンクスから告げられたその言葉───()()がまだ果たせていない事を、ルフィはこの戦争で身に染みて理解させられたのである。

 

『いつかきっと…必ず返しに来い。立派な海賊になってな』

 

 だがきっと、必ず約束は果たしてみせるのだと───ルフィの想いは、これまで以上に強くなった。

 だから、今は背を向けて去る。生きて、そしてこれまで以上に強くなる事を心の中でシャンクスに誓って───

 

「おれ…行くよ!シャンクスによろしくッ!!」

「おう。伝えておく…楽しみにしてるぜ、ルフィ」

「うん!!」

 

 その背はどこまでも眩しく、無限大の可能性を秘めている。ベン・ベックマンも表情を緩め、ルフィを見送っていた。

 

「昔とちっとも変わってねェ…が、本当に大きくなったな、ルフィ。…お前、ルフィの仲間か?」

 

 走り去ったルフィから、視線をサンジへと移したベックマンはにこやかな笑みを浮かべながらサンジへと尋ねてくる。やはり、小さい頃から気にかけているルフィの仲間となると気になるのだろう。

 

「あ、ああ。麦わらの一味のコックを務めさせてもらっている」

「ルフィの奴も一端の船長に成長してるんだな…まあ、あれからもう10年だ…当然か」

 

 そう呟くベックマン。ただ、サンジは感慨深げな彼とは違って、四皇で最も若く、そして若くして四皇入りを果たした赤髪海賊団の副船長を前に、白ひげを前にした時とは別の緊張感を感じていた。

 

 皇帝(船長)を支える存在(副船長)。シャボンディ諸島で出会ったロジャー海賊団副船長"冥王"シルバーズ・レイリーもそうだったが、やはりまだまだ差がある事を目の当たりにしている様子だ。

 

「ルフィをよろしく頼んだぜ」

「言われなくても」

 

 赤髪海賊団の副船長からも成長を期待されるルフィの背を眺めながら、これは責任重大だと感じるサンジ。だが、サンジもまた覚悟を改めルフィを追う。

 

「あれが…ルフィが憧れる赤髪海賊団船長…"赤髪"のシャンクスか…」

 

 ルフィは見ないように走り去って行ったが、サンジは赤髪のシャンクスの姿をその瞳にしっかりと捉えていた。

 

 そして視線が合い、赤髪のシャンクスに笑いかけられたサンジは頷く。

 

 その瞳が語っていたのは、ベックマンとまったく同じであり───

 

 

 *

 

 

 戦場に降り立った赤髪は、四皇として恐れられ、崇められるに相応しい王の資質を強く醸し出していた。

 

 ただ、表情はとても緩んでおり───

 

「ルフィがよろしくだと」

「そうか…一目会いたかったなァ…けど、今会ったら約束が違うもんな」

「ルフィもちゃんとそれをわかってたぜ」

「ああ。ただ、ルフィの頼もしい仲間を見れただけでも嬉しいもんだ」

「ありゃァ、相当な器だ」

 

 2人がこれからの成長を強く期待しているルフィ。そのルフィの仲間───サンジを目にした赤髪のシャンクスとベックマンは、満足気な表情を浮かべている。

 

 世界の均衡は崩れた。しかし、こうして新しい世代が育っているのは確かで、それを喜ばずにはいられない。

 

 だからこそ、赤髪のシャンクスはこの戦争を終わらせに来たのである。

 

「もう無駄な戦いは止せ。これ以上を欲しても、両軍被害は無益に拡大するばかりだ。それでも暴れ足りないと言うなら…来い…おれ達が相手になってやる!」

 

 どよめく戦場。

 

 赤髪のシャンクスが述べたように、両陣営───これ以上を求めても無駄に血を流すだけだ。

 

 白ひげ陣営はエース奪還という目的を果たし、白ひげが身命を賭して勝利を掴んだ。

 海軍はエースの処刑に失敗し、エースを奪還されたが、海軍の手柄ではないが白ひげが死んだ。

 

 そして、この戦争に於て最も利益を得た人物───黒ひげ。戦力を得るだけに止まらず、白ひげの"グラグラの実"の能力まで得た黒ひげにこれ以上、更に利益を得させるわけにはいかない。

 ここで海軍の戦力を削り、敵対勢力となるであろう白ひげ海賊団残党の戦力を削るべきではないだろう。

 

「どうだ、ティーチ…いや…黒ひげ」

「…。ゼハハハ、やめとこう!お前らと戦うにゃあ、まだ時期が早ェからな!

 ゼハハハ!野郎共、行くぞ!!」

 

 "四皇"赤髪を前に、黒ひげも潔く身を引く。今ここで赤髪と衝突したらどうなるか───強大な悪魔の実の力を得ても、結果はわからない。

 

 それだけ、四皇の力は強大なのだ。

 

「両軍、この場はおれの顔を立てて貰おう」

 

 去り行く黒ひげに手を出す事なく、そして赤髪が再び口を開く。

 

「白ひげの弔いはおれ達に任せて貰う。戦いの映像は世に発信されていたんだ。これ以上、白ひげの死を晒す様な真似は決してさせない」

「何だと!?白ひげの首を晒してこそ」

 

 エースの処刑に失敗した海軍はせめて白ひげの首を晒す事で威厳を保ちたいところ。しかし、海軍がやるべき事はそのような事ではない。

 

「構わん」

「元帥殿!?」

「赤髪、お前なら…責任は私が取る」

 

 海軍がやるべき事───それは、白ひげが死んだ事で崩れた均衡を修正し、保たせる事だ。

 このような事態になった後始末───責任はきっちり取らなければならない。黒ひげが現れようが現れまいが、白ひげと海軍が正面衝突した時点で、世界が荒れるのはわかりきっていたことなのだから…。

 

「負傷者の手当てを急げ!戦争は終わりだァ!!」

 

 かくして、"大海賊時代"開幕以来最大の戦い───白ひげ大艦隊 VS 海軍本部、王下七武海による"マリフォード頂上戦争"はここに幕を閉じ、歴史に深く刻まれるのである。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 赤髪海賊団の介入により頂上戦争が終わりを告げた。

 

 そして、赤髪海賊団の手助けもあって戦場から離脱できたサンジ達は現在───

 

「まさかお前が船に乗せてくれるとはな…()()

「馴れ馴れしく名前を呼ぶな黒足屋。お前には()()()()()を見せてもらった…理由はそれだけだ」

 

 軍艦を奪い逃げようとしたサンジ達だったが、"死の外科医"トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団の潜水艇が突如現れ、サンジとルフィはその潜水艇に乗せて貰えることになり、お言葉に甘えているようだ。

 

 最初こそ、サンジはローも過去に戻り記憶があるのだろうかと疑問視したようだが、前回の人生での頂上戦争時にルフィがローに世話になったのを思い出し、そしてローが言っている面白いものというのが、サンジがドフラミンゴに怪我を負わせた事を言っているのだろうと気付き、素直にルフィ共々世話になる事にしたのである。

 

「しかし…麦わら屋は相当無茶してやがるな」

「やっぱりか?」

「ああ。ダメージの蓄積量がとんでもない」

 

 ローが医者である事も、サンジが大人しくハートの海賊団の潜水艇に乗った理由だ。ここに麦わらの一味の船医チョッパーはいない。そして、チョッパー以外で信用できる船医となると、やはりローしかいない。

 

 付き合いは短いが、前回の人生で()()を組んだ相手だ。ルフィの思っている同盟は普通の同盟と違うが、それはもう麦わらの一味全員にとっても同じで、サンジのなかでもローは仲間のようなものなのである。

 

 頭脳派で鋭いローに対し迂闊な事は喋れないが、それでももう信用している相手だろう。

 

 ちなみに、サンジとルフィはローに世話になっているが、サボ達はというと───

 

「それは当然だっチャブル!」

 

 軍艦を奪い、サボ、イワンコフ共々に戦場から無事に脱出していた。

 

「ルフィは無事なのかッ!?」

 

 そしてもう()()───ルフィをこよなく愛し、この上なく心配する人物が海兵を率い姿を見せた。いや、海兵達はただ()()をここまで運んで来ただけであり、今は石化させられた哀れな存在と化しているが…。

 

「ハンコックちゃん」

 

 "海賊女帝"ボア・ハンコックは、七武海としてルフィを追い討ち取るという理由───嘘で戦場から離脱。

 そして、ルフィを追ってここまでやって来たのである。

 

「黒足…ルフィは」

「今は眠ってる。正確には、限界を迎えて気絶したってのが正しいだろうが」

「麦わらボーイはインペルダウンですでに一度…立つ事すらできない…いえ、死の淵まで行ってしまったのよ。それなのによくもまァあれだけ暴れ回れたもんだっチャブル!多分、2、3日は目を覚まさないんじゃないかしら?」

 

 イワンコフがそう告げると、全員の視線がローへと向けられた。

 

「はあ…さっきも言ったが、麦わら屋はあり得ない程のダメージを蓄積してる。そいつの言った通り、2、3日は目を覚まさないだろう。…が、寧ろ身を休める為にも必要な事だ」

「イワンコフ…ルフィが死の淵まで行ったってのはいったいどういう事だ?」

 

 ただ、気になるのはイワンコフの発言だ。死の淵まで行ってしまったというのはいったいどういう意味なのか…。

 インペルダウンでルフィがどれだけの無茶をしたのかという事だ。

 

「監獄署長マゼランの毒に侵されたのよ」

「なっ!?」

「どうやって生き延びたんだ?」

 

 驚くサンジ達とは別で、ローは医者として冷静に事の真相を確認する。

 

 サンジも、前回の人生でルフィがエースを助ける為にインペルダウンに侵入し、そして頂上決戦にまで乗り込んだ事はもちろん知っていた。しかし、インペルダウンで起きた事細かい内容までは、今思えばルフィからも聞いた記憶がない事に今になって思い至る。

 

 そして、ルフィが毒に対する耐性が強くなっていたという現象───それはこれが理由だったのかと、サンジはその答えに至ったようだ。

 

「ヴァタシの能力で麦わらボーイはどうにか助かったっチャブル。けど…ヴァタシの能力は相手の免疫力を利用してのもの…医者でもなければ、薬剤師でもない」

「リスクがあるって事…か。イワンコフ…その、ルフィが回復する為のリスクってのはいったい」

「寿命よ」

「ッ!」

 

 驚愕するサンジやハンコックを他所に、その答えがわかっていたサボは静かに目を瞑る。

 

 どうして、イワンコフにその時の話を事細かに聞いておかなかったのかと、サンジは悔やんでならない。

 だが、聞いていたからと言って、どうにか出来たわけでもないのも事実だ。

 

 だが、悔やんでばかりではいけない。

 

 ここから先、如何にルフィの負担を減らすか───それもまた、サンジのやるべき事だ。

 支えるだけでは足りない。サンジは改めて自覚する。

 

 だからこそ、エースを救い出し未来が変わった今となっても、麦わらの一味には()()()()()であると、サンジはそう考えずにはいられない。サンジはすでに、今後の行動計画を企てるのである。

 

 時代は新たに動き出した。ここから先は未知なる世界───頂上戦争の終わりはサンジにとって真新しい、前回とは確実に違う始まりの合図となる。

 






や、やっと…終わった?な、何か…力尽きた気がする。もちろんこの作品の終わりではない。

皆様、感想、ご評価等よろしくどうぞ。燃え尽き症候群にならないように頑張りたいです。

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