戦う炎の料理人   作:ドミネーター常守

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ONE PIECEの小説で好きだったのがいつの間にか消えてるゥ!!



到着

 

 

 "黒足のサンジ"。懸賞金7700万ベリー。

 

 エニエス・ロビーを陥落させた麦わらの一味の主戦力である彼が、初頭でそれだけの懸賞金を懸けられるのは当然のこと。しかし、今の彼の真の強さはその額には決して見合ってはいない。それは決して、その額に見合った強さを有していないというわけではなく、その逆でそれ以上の強さだということである。

 

 ただ、そこに関しては相手の油断を誘えることもあり、サンジ本人もそれを受け入れてもいた。ただ、犬猿の仲である"海賊狩りのゾロ"に負けていることだけは悔しさを滲み出しているようだ。

 

 実際のところはそれも些細な問題であり、サンジが一番気にしていることは懸賞金の額でも、ゾロに負けていることでもないのだが…。

 

「これから向かうマリンフォード…これをきっかけに俺の手配書を少しでもマシなのにさせてやる」

 

 似顔絵から始まり、ようやくまともに撮ってもらえたかと思ったら鼻の下を伸ばしただらしない顔。サンジは己の手配書にすらも、何一つ良い思い出がないのである。

 

 マリンフォードに向かう目的は決してそれが一番の理由ではないのだが、せっかく大勢の海兵達に顔見せするのだからこの機を逃すわけにもいかないというサンジの切実な想い───果たしてそれは神に届くのだろうか…。

 

「そもそもエニエス・ロビーであれだけの中将、大佐含む海兵達に顔見られてるってのに写真入手失敗ってどういうことなんだよ!?俺が何したってんだッ!!」

 

 誰にぶつけるべきなのかすらわからないこの怒り。

 

 ならばこの怒りを、マリンフォードにてこれから勃発するであろう()()()()にて少しでも発散できたならば───と、急ピッチでの猛特訓を終えたサンジは海中をコーディングされた船で進みながら考えていた。

 

 彼の真の目的は違うのだが、少しは報われてもいいではないかと思ってしまうのは仕方ないかもしれない。

 

 そんなことを考えながらも、サンジは着実にマリンフォードへと近づいている。

 宣言通りに"新人類(ニューカマー)拳法"師範99人を倒して見せたサンジは、オカマ達から船を貰い受け、そして船を引いてくれる生物をも借りれたことで、少しばかりの時間の余裕もでき万全の状態にてマリンフォードへと向かっている。

 

 前回の人生のアドバンテージもあり、攻めの料理を習得しているサンジはそれを食べながら、いつも以上に力を漲らせ戦いに備え、そして1人静かに呟いた。

 

「しかし、今でも驚きだ。エースがまさか…()()()()()()だったなんてな。

 ルフィと兄弟だっつーから、エースも()()()()の息子だとばかり。姓が違うのは腹違いだろうと勝手に思い込んじまってたからな」

 

 サンジがコックを務める麦わらの一味の船長"麦わらのルフィ"には兄が存在する。

 

 その兄も海賊で、しかも世界に名を轟かせる強者だ。

 

 ただ、ルフィとその兄が血の繋がりのない義兄弟であったことをサンジが知ったのは、その義兄が()()()()()()()後のこと。

 

 もっとも、サンジにとってもルフィ本人にとっても血の繋がりがないことなどは些細な問題であり、本人達が兄弟だと口にして仲良くしているのであれば、誰も迷惑に思うことなどない。

 

 いや、海軍からしたら傍迷惑な兄弟という認識ではあるだろうが…。

 

 そして今、ルフィのその兄が世間を大きく賑わせている。

 

 サンジが向かう場所───マリンフォードにて、ルフィの兄である"火拳のエース"ことポートガス・D・エースの公開処刑が決行されようとしているのだ。

 

 処刑決行日はこれより2日後。

 

「白ひげ大艦隊 vs 海軍本部、王下七武海。とんでもねェ面子が勢揃いだ。だからって、船長が1人突っ走ってるのを後から新聞で知るなんてのはもう二度とゴメンだぜ」

 

 急ピッチで鍛え上げ、前回のアドバンテージがあるとはいえ、サンジよりも強い者達が五万といる。

 そんな死地へと自ら進もうとは───船長の支えになろうとするサンジの思いは一味の中でも特に強いものだ。

 

「気がかりなのは、俺の行動が何かしらの変化をもたらすこと…だが、ルフィは必ずマリンフォードに辿り着く。

 アイツはそれができる奴だ。俺はただ、マリンフォードでそれを待ち、アイツが到着したら動き出す」

 

 ただそれまでは、お得意の隠密活動をしようかと───サンジは意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 世界の均衡は今、崩れつつある。

 

 四皇"白ひげ"エドワード・ニューゲートと海軍本部による全面戦争。

 

 そして、その全面戦争に乗り込もうとする同じく四皇の"百獣のカイドウ"を止めようとこれまた同じく四皇の"赤髪"が動き、四皇同士の小競り合いが勃発。

 四皇同士の激突など、もはや小競り合いという言葉では片付けられないものだ。

 

 白ひげを迎え撃つ海軍にはそちらに回せるほどの戦力の余裕もない。

 

 今、この世界に絶対に安全な場所など決して存在しないだろう。

 

 そして、この緊迫した状況のなか、更なる問題を起こしてくれた超問題児が存在する。

 

 前代未聞。大監獄"インペルダウン"に自ら侵入した大馬鹿者が現れたのだ。

 それも、囚われた()()を救い出す為に…。

 

 その大馬鹿者の名はモンキー・D・ルフィ。つい数日前、シャボンディ諸島にて彼の天竜人を殴り飛ばすという所業を仕出かした超問題児ルーキー海賊だ。

 

 だが、たかだか3億ベリー程度のルーキー海賊が1人でインペルダウンに囚われた義兄を救い出すなど不可能。

 況してや、"覇気"すらもまともに使えぬ者が侵入など、あまりにも無謀な行為でしかない。

 

 大監獄インペルダウンは、そのルーキー海賊を遥かに上回る強者達が囚われている場所。捕まるのも時間の問題だろう。

 

 しかし、決して油断してはならない。そのルーキー海賊が及ぼす影響力は無限大で、何を仕出かすかわかったものではないのだ。だからこそ、モンキー・D・ルフィは超問題児と認識されているのである。

 

 

 *

 

 

 そして案の定というべきか───一度は捕らえられ、毒に侵され虫の息で死を待つのみなだけだったはずのモンキー・D・ルフィは復活し拘束から逃れ、最下層"レベル6"から、現七武海と旧七武海の2人の他、曲者達を引き連れ集団脱獄というあり得ない事態を引き起こしたのだ。

 

 常に騒動の中心人物となり、その場にいる多くの者達を魅了し巻き込む───それこそが、麦わらのルフィのもっとも脅威的な力であり才能。

 そして予測不能な自分勝手さが危険視される要因でもある。

 

 インペルダウンからの集団脱獄。この局面で立て続けにこれだけの騒動が起きてしまっては、笑えないどころか普通なら精神的に可笑しくなり笑ってしまうだろう。

 

 こうして、死刑囚ポートガス・D・エースの義弟であるモンキー・D・ルフィは、インペルダウンにて前代未聞の所業を仕出かし、引っ掻き回すだけ引っ掻き回し、新たな戦力を得てマリンフォードへと義兄を助ける為に向かう。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 一方のマリンフォードでは、すでに世紀の大戦争が勃発。

 

「ついに始まりやがったか」

 

 すでにマリンフォードへと到着していたサンジは、海兵の家族達が暮らす住居が並ぶ場所にて息を潜めていた。

 当然のことだが、その住居には誰一人として存在していない。

 

「ルフィはそろそろ…ん?お、おいおい…」

 

 隠密行動が得意なサンジは、すでにルフィが大量の脱獄囚達を引き連れマリンフォードに向かっているという情報を得ている。あとはただ、船長の到着を待つのみ。

 

 ただ、サンジはお得意の見聞色の覇気にて、ルフィがすぐ近くにいることを察知する。

 

「な、何で()()()()にいやがるんだ!?」

 

 視線の先───大将"青雉"によって凍結させられた津波。その凍結した津波にくっついている軍艦が一隻。

 

 どうやら、ルフィはすでにマリンフォードに到達しており、大津波にさらわれ、上空で立ち往生してしまっていたようなのだ。

 

「ったく世話の焼ける船長だぜ!!

空中歩行(スカイウォーク)稲妻(ライトニング)】」

 

 だが、ルフィがすでに到着しているとわかれば、サンジは動くのみ。

 

「なっ!?あ、あれは誰だ!?」

 

 通常の空中歩行よりも遥かに速く空を駆けるサンジに、海兵の誰かが気付き声を上げ、そして次々と視線が向けられる。

 

 そして、何をしたのか───軍艦ごと宙から落ちてくるルフィ達御一行。

 それを確認したサンジは、落下するルフィのもとへと向かい、海に落ちる前にキャッチする。

 

「ったく、またメチャクチャしやがって…下は海だぞ」

「サンジ!?お前どうしてここにいんだ!?」

「船長が無茶してんのを船員(クルー)が黙って見てるわけねェだろうが」

 

 とはいえ、他の仲間達はまだそれを知らない。

 

「つっても、ここまで来てんのは俺だけだがな」

「…そっか。けど、お前がいてくれんなら千人力だ!!」

「へっ、千人力どころか一万人力になってやるぜ、船長」

 

 麦わらのルフィ、そして黒足のサンジ。最悪の世代が頂上決戦へと参戦。

 

 






カマバッカ王国からマリンフォードまでの距離なんて語られてないし、わかるはずもないので、アマゾン・リリーからよりは近いことにしてます。

サンジはコーディング戦で近くまで行き、白ひげが現れる前に到着できたので、そのまま海歩行(ブルーウォーク)で海中を進み密かにマリンフォードへと上陸し待機。


空中歩行(スカイウォーク)稲妻(ライトニング)
ニジに指摘された空中歩行を改良し、剃並…それ以上の速度を空中歩行で出せるようになった模様。

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