戦う炎の料理人   作:ドミネーター常守

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大海賊時代と言ってるけども、ロジャー世代って白ひげが全盛期でバリバリで地震と津波を起こして、天候操る女ビッグマムが万物に魂を吹き込んで暴れ回り(ビッグ・マムは老いをまったく感じさせない怪物だけども)、シキが空に島々浮かせたり海水浮かせて操ったり傘下もストロングワールドの時より遥かに強かったり、若い頃のカイドウがブイブイ言わせて龍になって飛び回って暴れて、大仏になったセンゴクや悪魔ガープがそれらを迎え撃って若かりし三大将がそれに続いて…そして頂点にロジャーがいた…。

大海賊時代言うてるけど、ロジャー時代のが恐ろしくない?と、思ったり。



獅子を狩る狩人

 

 

 サンジが金獅子へと強烈な蹴りをお見舞いし、その隙にサボは金獅子に捕らえられていた気象学者達を解放する。

 

「"泥棒猫"!お前もここから離れろ!!」

「け、けどサンジくんがッ!!」

「アイツは絶対にやられねェよ!アイツが何の心配もなく戦えるようにしねェと…おれもお前達を避難させたらサンジの助けに回るから安心しろ」

 

 サボはナミにそう告げ、ナミ含むウェザリアの気象学者達を逃げることにだけ集中しろと促した。

 

 革命軍の船もかなり近くまでやって来ている。

 

 今はサボの言ったように、サンジが金獅子にのみ集中できる状態を作り上げることが先決。相手は大海賊の金獅子だ───よそ見などしている余裕などない。

 

「サンジくん…」

「もたもたするな!」

「ッ!」

 

 サボが誘導し、襲いかかってくる敵を一蹴しながらこの船から脱出する。サンジを残すことに一瞬だけ躊躇するナミだが、ここに残っては足手まといにしかならないのだと───彼女は唇を噛み締めてどうにか走り出す。

 

 振り返って見るサンジの背中が、ナミにはとても大きく見えていた。これまで見てきたサンジの背中とは比べ物にならない───たった数ヶ月で別人のように成長したサンジに、ナミは様々な思いを感じ、抱くのである。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 煙草に火をつけ、吸い始めるサンジ。

 

 ナミ達が去った場所にて、サンジは静かに───敵を見据えていた。

 

「あの程度でやられるわけねェよな…金獅子さんよォ」

 

 奇襲を仕掛けたサンジだが、大海賊金獅子がこの程度でやられるわけがなく、集中力を研ぎ澄ましている。

 

 ここからが本番───死闘の幕開けだ。

 

「…生意気なガキだ…なかなか強烈な挨拶をかましてくれるじゃねェか」

 

 頭から血を流しながら立ち上がる金獅子だが、サンジの強烈な一撃を食らいながらも立ち上がってくるのはさすがと言えよう。

 

 老いたとはいえ、その風格は大海賊と呼ばれるに相応しいものだ。

 

「おれ、白ひげ、ビッグ・マム…そして、ロジャー。ロジャーが海賊王になる前…当時はこの大海賊時代が可愛く感じる程に豪快で、荒々しく…最高の時代だった。

 それに比べりゃァ、今の大海賊時代は随分とつまらなくなっちまったもんだぜ。()()()()とカイドウが四皇として君臨してるようだが…あとは赤髪か…まあ"玄脚(くろあし)"…テメエの一撃はなかなか痺れたぜ。

 ジハハハハ!この弛んだ大海賊時代のルーキーにしちゃあ、なかなか見所のあるガキだ!認めてやるよッ!!」

 

 高らかに声を張り上げながら、金獅子はサンジを強者と認め、海賊王のライバルだった大海賊の力を解放する。

 

「ッ!」

「ジハハハハ!この高揚感は久々だ!!楽しませてくれよ…玄脚ィ!!」

 

 サンジに飛びかかってきた金獅子が義足代わりにしている自身の愛刀を振るう。

 武装色の覇気を纏い黒刀と化したその一太刀は強力極まりない。

 

「ジハハ、よく防いだ」

「へっ、これくらい楽勝だ」

「楽しいのはこれからだぜ、玄脚。ジハハハハハ!!」

「くっ、【"武装鋭化"堕天使風脚(アンジュ・デシュ・ジャンブ)点火(フランベ)】!」

 

 武装色の覇気により鋭利化させた両脚から黒炎を舞い上がらせ、サンジは金獅子の斬撃を迎え撃つ。

 

 黒刀と化した両脚と、武装色の覇気を纏い黒刀と化した二本の名刀がぶつかり合い、激しい金属音が響く。

 金獅子が身を隠し、一戦を退いてから20年。だが、俊敏で軽やかな動きはそのブランクを感じさせないもので、サンジは武装色の覇気を全開にし金獅子の蹴り太刀を受け、大海賊の力を痛感していた。

 

 サンジの背中を汗が伝う───しかし、決して引くわけにいかない。サンジには、守るべき()がいるのだ。

 

「ジハハハハ!血湧き肉躍るッ!!」

「じじい相手に興奮なんかしねェよ!俺が血湧き肉躍るのはレディに対してだけだ!!

 "肩ロース(バース・コート)”、”腰肉(ロンジュ)”、”後バラ肉(タンドロン)”、”腹肉(フランシェ)”、”上部もも肉(カジ)”、”尾肉(クー)”、”もも肉(キュイソー)”、”すね肉(ジャレ)!」

「あの"泥棒猫"はかなりタイプだぜッ!!」

 

 目にも止まらぬ速さでの連撃の応酬は、その攻防は凄まじく、船内の至る所に斬撃の余波が飛び交い、船を内側から破壊していた。

 

 そして、金獅子の言い放った言葉はサンジをより一層ヒートアップさせる。

 

「ナミさんの虜にならねェ男なんざこの世にいねェからなッ!世の常識だ!

 食らいやがれ老いぼれッ!【仔牛肉(ヴォー)スピア】!!」

「ぬうッ!!」

 

 サンジの鋭い後ろ蹴り───黒槍と化して黒炎を上げる(玄脚)の一突きと、金獅子の黒刀による一太刀が衝突すると、覇王色の覇気の衝突によって激しい雷鳴が鳴り響き、その衝突は船を───海を大きく揺らす。

 

 あまりの威力に互いに受け身を取れず激しく吹き飛び、金獅子はデッキまで突き抜け海に落ちる寸前でどうにか止まり、サンジはそのまま海へと吹き飛んでしまう。

 

 互いにかなりのダメージを負ってしまったに違いない。

 

「え…き、金獅子!?」

 

 ただ、金獅子が吹き飛ばされた先───デッキではナミ達が革命軍の船に逃げている最中だった。

 

「くっ…玄脚のガキ…想像以上に強ェガキだ…ぐあッ!」

 

 金獅子の体の至る所に切り傷と火傷の痕。露になった背中には痛々しい裂傷。

 そして頭部には、サンジの強烈な蹴撃の痕も残っており、金獅子は血を流している。

 

 この短時間でどれだけ壮絶な激闘を繰り広げていたのか───金獅子の痛々しい、ボロボロの姿からも戦いの熾烈さが窺える程だ。

 

「チッ、ここまでの痛み…久々だ。…ん、おお"泥棒猫"じゃねェか」

「ッ、サンジくんはどうしたのよ!?」

「ジハハ、この状況で仲間の心配ができるたァ…肝の据わった女だ。ジハハハハ…玄脚がどうしたかだったな。玄脚のガキは吹き飛んで海に落っこちちまったぜ!

 おれ相手にここまでやってくれたのは誉めてやるが、呆気ない幕切れだ。()()()は海に落ちちまったら何もできねェからなァ!!」

「え?」

 

 ただ、ボロボロな姿でありながらも、自身はこうして立っており、サンジは海に沈んだこの状況に、金獅子は愉悦感を感じていた。

 

 しかし、金獅子は大きな()()()をしていることにまったく気付いていない。

 

「サンジくんが…能力者?」

 

 そして、ナミは金獅子が口にしたその言葉に、大きな疑問を抱くのある。

 

 確かに、サンジが雷にも勝るとも劣らない電撃を脚から放っていたことに、初めて見たそれにナミも驚いていた。

 この数ヶ月間の間に能力者になったのかと思いもしたようだ。

 

 だが、ナミはサンジが以前口にしていたことを思い出す。

 

『この一味は約半数が能力者だ。確かに悪魔の実の力は強力だが、"カナヅチ"になってしまうというデメリットがある以上、残る俺達は能力者にならないほうがいい』

 

 能力者が海に落ちた時を考えた場合、必ずそれを助けに行く存在───泳ぎが得意な存在が必要となる。

 そして、サンジは一味内で泳ぎが一番得意でもあるのだ。

 

『1つだけ…()()()()()()()()()()があったんだが、その実を食べた奴と出会っちまった。

 だから、俺が能力者になることはないよ、ナミさん』

 

 どんな能力なのかはナミに対して口にしなかったサンジ。

 

 だが、ナミは金獅子の言葉を聞き疑問を抱いた今、ある考えに至り顔色を悪くする。

 

 もし、サンジが気になっていた悪魔の実を食べた能力者が死に、その実が偶然にもサンジのもとに現れてしまったならば───そして、その実をサンジが食べ、能力者になってしまっていたら…。

 

「ッ、サンジくん!!」

 

 サンジが能力者となり、カナヅチになってしまったと思い込み、勘違いしたナミは、サンジを助けようと海に飛び込もうとする。

 

「待て」

「なッ!?は、放してッ!!サンジくんが溺れてるのよ!?すぐに助けなくちゃ!!」

 

 海に飛び込もうとするナミの腕を掴んだのはサボで、彼はサンジが溺れているかもしれないのに至って冷静だ。

 

 ただ、それはサボが()()()()()からで、ナミと金獅子が()()()()だけ…。

 

「大丈夫だ。何も心配する必要はない」

「ど、どういうことよ?」

「どういうことも何も…サンジが溺れてないってだけの話だ。それに見とけ…金獅子の驚く顔が見れる」

「え?」

 

 サボがそう口にするなか、ナミの視線の先では金獅子が驚きに満ちた表情を浮かべている。

 

 何かを───海中から猛スピードで駆け上がってくる何かを感じ取っているのだ。

 

 そして次の瞬間、爆発が起きたかのような大きな水飛沫が上がる。

 

「ナミすわぁーーーーーん、呼んだァーーー?」

 

 体の至る所に切り傷を負いながらも、姫の心配する声を聞き取った騎士(ナイト)は何事もなかったかのように姿を現す。

 

「サンジくんッ!!」

 

 傷だらけでありながらも、至って元気そうなサンジの無事な姿を確認し、ナミは顔を綻ばせる。

 

「玄脚!?テメエ、能力者じゃなかったのか!?」

「ああ?いったいいつ誰が能力者だなんて口にした!やっぱ歳は取りたくねェもんだな!思い込みが激しくて、妄想癖まであるんじゃあなァ」

「テメエ!!」

 

 だが、金獅子が勘違いしていたのも仕方ないかもしれない。炎を扱うのは知っていたが、雷、電撃まで操れるのはナミも知らなかった。それを操るサンジを能力者だと勘違いしたのは何も金獅子だけではないのだ。

 

 頂上戦争時、ルフィもサンジが能力者になったと勘違いしていたのだから、サンジ本人から話を聞いているサボやレイリー以外知らないのも当然。

 サンジの()()()()ですら知らないことだ。

 

 そして、宙に舞い上がったサンジは()()()()()()()

 

「行くぜ!【海歩行(ブルーウォーク)】!!」

 

 水を蹴り、海面を猛スピードで駆け抜けるサンジに、金獅子も驚愕の眼差しを向ける。

 

「何だとッ!?」

 

 ルフィやロビン達、能力者の仲間が海に落ちた際に素早く助け出す術としてサンジが習得した技だが、水中で水を蹴り魚人並───それ以上のスピードで移動できるなら、海面を蹴り水上を駆け抜けるのも決して無理ではない。

 

「う、嘘ッ!?水の上を走ってる!?」

「おいおい…サンジの奴、これじゃあ本当に"()()()()()()"じゃねェか」

 

 サボがそう呟くなか、サンジは一気に金獅子との距離を詰める。獲物(金獅子)を狙う狩人は獰猛な瞳を浮かべ───そして、今度は忽然と姿()()()()

 

「ぬっ!?」

 

 驚愕する金獅子。

 

 サンジはその場から光速の速さで消えたわけではない。いや、厳密にはとてつもないスピードで海を駆け抜け金獅子の背後へと移動したわけだが、金獅子の瞳にはサンジがまったく捉えられていないのだ。

 

 まったく何も───サンジは透明化(ステルス)によって、長年の夢だった透明人間にもなれるようになったのである。まさに、"ジェルマ66(ダブルシックス)が生み出した最高傑作にして、そして悪役であるジェルマが心の中で憧れていたヒーロー"海の戦士ソラ"を彷彿とさせる存在へと成長したのだ。

 

「ッ、後ろか!?」

 

 透明人間と化したサンジに対し、金獅子は"見聞色の覇気"で気配を察知し、行動を読み対応する。

 しかし、海を駆け、宙を舞い、陸海空を縦横無尽に移動でき、更には透明化まで習得したサンジは金獅子にとって非常に厄介な相手だ。

 

 いつだったか、サンジが自らこう口にしていた。

 

『この一味で最も厄介な存在になる』

 

 それは強ち───いや、事実であり、サンジは確かに最も厄介な存在と言えるだろう。

 

「炎に電撃ッ、更には透明人間だと!?玄脚ッテメエ…いったい何者だァ!!」

 

 おまけに、ここは海のすぐ側。海側に蹴り飛ばされたら一巻の終わり。

 

 サンジ VS 金獅子の死闘は熾烈さを増す。そんななか───

 

「サボ、避難を急ぐわよ」

「ああ」

「えッ誰!?」

 

 金獅子がサンジに気を取られているこの隙に、ナミや学者達の避難を急ぐ革命軍。

 サボに声をかけてきた()()()()()()()()は、革命軍"東軍"軍隊長のベロ・ベティである。

 

「へェ…あれがサボの言ってた()()()の玄脚。噂通り、ワイルドで素敵じゃない」

 

 サングラスをずらし瞳を露にさせ、金獅子と戦うサンジににこやかな笑みを向けていた。

 

「おほォーーーーー!リンドウちゃんに勝るとも劣らない破廉恥で過激的!!けどとんでもない美女ォーーーーー!!」

 

 裸の上半身の上に上着とネクタイを着ただけの過激なファッションを目の当たりにしたサンジの脳裏には、裸の上半身の上にアウターだけという似通った格好の"九蛇海賊団"の狙撃手リンドウが思い浮かぶも、ベロ・ベティはリンドウよりもワイルド感に溢れ、ネクタイがエロさを際立たせているように見える。

 

 当然、そんなエロスの極みを見せられたら、サンジの透明化が解けてしまう。

 

「あ…いつものサンジくんだ…けど…誰よリンドウちゃんって」

 

 ただ、ナミはサンジの反応にホッとする一方、どこか胸のざわつきも感じているようである。それは、いつものようにサンジが他の美女に目を奪われているのがどうしてか気に入らないと思ってしまうからなのか、それとも自分が知らない女の名前がサンジの口から出てきたからなのか…。

 遠い存在に思える程に成長したサンジを前に、いつも通りの反応も目にしながらも、ナミは心を乱されていた。

 

「あ!お、おい、サンジ!ベティに見惚れてんじゃねェよッ!!」

 

 ただ、今は金獅子と死闘の真っ只中。

 

「ひ、久々に興奮したァ」

 

 だが、金獅子もベロ・ベティのエロスの極みにしっかり目を奪われ、枯れたはずの獅子の心を取り戻したかのような、健全な男子の反応を見せている。

 

「ジジイが発情してんじゃないわよ!!」

 

 ナミが投げたものが顔面に直撃してのものなのか、サンジの蹴りによってのものなのか、それともベロ・ベティに興奮してのものなのか───金獅子の鼻から垂れる血は誰によってのものなのかわからない。

 

「ハッ!い、いかんいかん!今は金獅子と戦ってるんだった!」

 

 サンジも冷静さをどうにか取り戻し、ベロ・ベティが気になりながらも、金獅子へと突っ込む。

 

「テメエは腐ったバターだ!跡形もなく溶かしてやる!

【"武装・(トロワ)"悪魔風脚(ディアブルジャンブ)"熔融(デグラッセ)"クラリフィエ=ショット】!!」

「ぐおォ!こ、この…あづッ、ま、まさかッテメエみてェなガキがこの()をッぐわあァァァ!!」

 

 サンジの強烈な蹴りを武装硬化させた腕で受け止めた金獅子だが、あまりの熱さと、そして腕の内側から()()される痛みに耐え兼ね絶叫を上げる。

 

 そして、金獅子の片腕がまるでバターが溶けたかのように───熔融してしまう。

 

「老いぼれは大人しく隠居してろッ!!」

 

 老いた獅子は若き狩人によって調理される。

 

 






前話でチラッと出ましたが、サンジくんニジ同様にレイドスーツなしでのステルス化習得。

サンジの海歩行(ブルーウォーク)って、多分海面でも有効ですよね?
そしたら、まさしく海の上を歩ける…駆ける海の戦士ヒーロー"ソラ"だなァ。

ジェルマから誕生した、ソラを継ぐのがサンジだったっていう皮肉話。
ちなみに新しい技の、武装・(トロワ)。これはあれですね、サボとの修業にて覚醒した武装色の内部破壊。
"熔融(デグラッセ)"クラリフィエ=ショット。悪魔風脚の熱により熔融させる禁忌の蹴り。
デグラッセとは鍋底に付いたスュックを水やワインなどで煮溶かす操作のこと。いい言葉が浮かばす熔融としました。
クラリフィエとは、バターを溶かし澄ますことです。

あと、ハンコックには反応薄かったのにリンドウやベロ・ベティに反応したのはエロかったからです。

あ、そういえば祝20話。どうにか頑張れております。

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