戦う炎の料理人   作:ドミネーター常守

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悪魔の実の中で、ハズレ能力ってどの実だろうか?

ヒトヒトの実は…まあ…あれとして…他に…。



冥王と悪魔と金獅子と…その再来

 

 

 悪魔の実の力は強大だ。

 

 もちろん、全ての悪魔の実が強大な力を有しているわけではない。

 戦闘に不向きな能力もあれば、なかには能力を使いこなせない者もいたりする。

 

 そして、強大な力を得る代わりに悪魔の実の能力者は例外なくカナヅチになってしまうのも大きな欠点だ。

 

 ただ、世界に名を轟かせる大海賊達のほとんどが悪魔の実の能力者であることは確かな事実である。

 

 先の頂上戦争にて世を去った"白ひげ"エドワード・ニューゲート。四皇の紅一点である"ビッグ・マム"シャーロット・リンリン。同じく四皇であり、武闘派の"百獣"のカイドウ。

 

 その他にも、四皇の幹部達のほとんどは能力者で、"王下七武海"の者達も、大剣豪"鷹の目"以外は能力者だ。

 

 ならばつまり、悪魔の実の能力者でなければ、世界に名を轟かせる大海賊に上り詰めることはできないのか───それは違う。

 

 世界最強の剣士"鷹の目"のように、無能力者でありながら世界一の座に君臨することは不可能ではない。

 無能力者でありながらも、世界に名を轟かせる存在は多く存在するのだ。

 

 その中でも、最も有名な存在はやはり()()()()だろう。海賊ではなく海軍に所属している者だが、拳一つで多くの海賊達を捕らえ葬り去ってきた"悪魔"と称される海兵と、海賊王の右腕として恐れられた副船長───

 

「…ちっ、玄脚(くろあし)…テメエ見てると…あのムカつく2人の顔がちらつきやがる」

「あ?」

 

 片腕を失った金獅子は舌打ちしながらも、苦悶の表情ではなく清々しい表情を浮かべている。

 

 インペルダウンから史上初めて脱獄し、それから20年───世界の支配者となるべく緻密な計画を練り、世間から姿を消していた金獅子だが、もしも彼が姿を消さずに第一線で暴れ続けていたら、多少の体の衰えこそあれども、ここまでのブランクは感じられることはなかっただろう。

 もしかしたら本当に、世界の支配者になれていたかもしれない。

 

 だが、20年もの長い間第一線から退き、ブランクがあるにも関わらず、引き際を誤り世間に姿を見せた金獅子はルーキー海賊に追いつめられ無様極まりなく、かつてロジャーや白ひげとしのぎを削った大海賊としての風格などあったものではない。

 

 一時は、サンジも老いたとはいえ大海賊なだけはあると思っていたが、寄る年波には勝てず、金獅子の動きは鈍くなるばかりだった。

 

「レイリー…ガープ…忌々しい奴らだ。よりにもよって、あのクソッタレ共の顔がちらつくなんてな」

 

 海賊王の右腕"冥王"シルバーズ・レイリーと、海軍の英雄にして"悪魔"と恐れられたガープ。

 その2人の姿を、金獅子はサンジに垣間見たのである。

 

 己の肉体のみで敵を薙ぎ倒し、金獅子の前に立ちはだかった伝説達。

 サンジの場合は()()()()()があるが、それでも戦闘に一切手を使用せず脚技のみで金獅子と戦うサンジは、その伝説達を彷彿とさせ、金獅子にそう思わせるに至った。

 

「玄脚…テメエは、"麦わらのルフィ"が海賊王になれるとでも思ってんのか?」

「あ?そんなもん当然だ。ルフィは必ず海賊王になる。アイツは支配を望まず、自由を求め…この世界で最も自由な奴…未来の海賊王だ」

 

 サンジのその言葉に、金獅子はかつてのライバルの───ロジャーが言い放った言葉を思い出す。

 

『おれは支配には興味がねェんだよ、シキ!自分のやりてェようにやらねェと海賊やってる意味がねェだろうが!』

 

 海賊王ロジャーもそうだった。誰よりも支配を嫌い、誰よりも自由を愛し、望んだ男。

 

 仲間を救う為だけにエニエス・ロビーを襲撃し世界政府に喧嘩を売り、兄を救う為にインペルダウンに侵入し頂上戦争にまで乗り込み───豪快で、破天荒で、自分勝手で、予測不能。麦わらのルフィがこれまでやらかした行動もまた、どこか海賊王ロジャーを彷彿させるものがある。

 

「!」

 

 そして、金獅子は幻影を見た。サンジの背後に若かりし頃のレイリーとガープを───そしてその隣に、今この場所にはいない"麦わらのルフィ"と、そして───若かりしかつてのライバルの姿を…。

 

「おれらの時代には()()()()()程度の奴なんざァごまんといた」

 

 今の、サンジの力は前回の人生の時よりも遥かに強くなっている。そして、その強さは七武海クラス───いや、それを凌ぎ、四皇幹部クラスにも匹敵するかもしれない。

 

 だが、金獅子の全盛期時代にはそのレベルの実力者はごまんといた。

 それでも、その実力者達は全盛期の金獅子達からしたら銅メダリストでしかない。

 

 それから更に一つ上───四皇クラス、四皇に匹敵する力を持った者達がその世代には今よりも多く存在したのだ。

 今この世界に存在する海賊の人数だけは、この時代の方が多いようだが、それでも質は金獅子や白ひげの全盛期時代の方が高かったのである。

 

 何と恐ろしい世代だろうか…。

 

 しかし、その金獅子達ですらも銀メダリストでしかない。

 

「テメエがおれ達の時代に存在してたら…どうなってただろうなァ、玄脚。呆気なく死んだか…それとも、おれ達と同じステージにまで這い上がってきたか」

 

 金メダリストは───海賊王はこの世界にたった1人しか存在しない。

 

「先輩として一つアドバイスだ。よォく覚えとけ玄脚…海賊王の称号は、今のテメエが軽々と口にできる程…安いもんじゃねェぞ!!」

「ッ!」

 

 片腕を失いながらも、ついさっきよりも遥かに強大な───禍々しい覇王色の覇気が金獅子から放たれる。

 

「ジハハハハ!テメエの器…この金獅子様が見定めてやろうじゃねェか!!」

「ぐッ!?」

 

 今までの攻防がまるで練習だと感じてしまう程に、鋭く強烈な蹴り太刀がサンジへと襲いかかり、サンジはどうにかそれを武装鋭化させた脚で防ぐ。

 だが、金獅子の勢いは殺しきれず、そのまま海へと吹き飛ばされてしまった。

 

「ジハハハハハ!玄脚、テメエと戦ったことでおれは自分の限界と老いを感じちまった!だが、このまま隠居するってのも癪に障る。なら最後に…弛んだこの時代の海賊であるテメエが未来の海賊王の右腕に恥じない器になれるよう、おれ様が直々に揉んでやろうじゃねェかッ!!」

 

 これまで常に支配者になることを望んできた金獅子だが、サンジとの戦いで体の衰えを痛感したのだ。

 もう、己は過去の存在でしかないということを…。

 

 ただ、金獅子にとってこの大海賊時代は受け入れられないものがある。ロジャーが海賊王となり、死んだ後に幕開けした世界。その世界は、金獅子からしたら生易しく───とても、自分と同じ海賊とは思えぬ程の弱者達がのさばる弛んだ世界。

 

 だが、そんな弛んだ世界で金獅子が見つけた()()()

 

 白ひげと同じく、旧時代の残党でしかないのだと悟った金獅子は、ロジャーとはまた違った形で、この大海賊時代を己達が生きた時代にも勝るとも劣らない時代にしようと、そしてその想いを託していいと思えた若者───サンジに、その熱き想いを託すのである。

 

「ジハハハハ、おれァ金獅子だァ!!」

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 空中で、激しい攻防が繰り広げられている。

 

 片や能力者の空飛ぶ伝説の海賊。

 

「ジハハハハ!最近の若ェ者はだらしねェな!!もう降参か!?」

 

 片や無能力者でありながらも、空を飛べる新進気鋭の海賊。

 

「誰が降参するかよッこの老いぼれ!!」

 

 金の獅子と、それを狩らんとする金の狩人の戦いはますます熾烈さを増していた。

 

「サンジの奴…この戦いでまた一段と強くなってやがんな…つか、能力で自分自身を浮かして空を飛べる金獅子はともかく、アイツの体の構造は本当にどうなってんだよ。

 ガキの頃は落ちこぼれだったから父親に捨てられた?アイツの父親、とんでもねェバカだろ。アレを見ろ…アレを…最初こそブランクを感じさせてたが、精神が肉体を上回ったのか…ここに来てまた強さが増してる金獅子とやり合ってんぞ」

 

 サンジと金獅子の激しい空中戦───死闘を目の当たりにしながら、サボはそう呟く。

 

「ちょ、ちょっと!アンタ、サンジくんの加勢に入るって言ってたじゃない!?どうして行かないのよ!!」

 

 ただ、その戦いを眺めているサボに対し、ナミが強い口調で言い放ってくる。

 

 確かに、サボは学者達の避難が終わったらサンジの加勢に入ると口にしていたが───サボはあの中には入れないだろう。それは何も、サンジと金獅子に比べ実力が劣っているからではない。

 

「入りたくても入れないし…寧ろあれは入ったら駄目だろう」

「はあ!?な、何言ってるのよ!!サンジくんが圧されてるのよ!?」

 

 サボの言葉に驚き、ナミが声を荒げたその矢先、金獅子の一太刀を防ぎきれなかったサンジの体から血飛沫が舞う。

 

「サ、サンジく…え?」

 

 だが、ナミはその瞬間のサンジの表情を見て、まるで時が止まったかのように、驚き、固まるのである。

 

「誰も邪魔しちゃならねェ…あれは、サンジと金獅子の一対一の戦いなんだ」

 

 サンジの表情は、その死闘を心の底から楽しんでいるような───獰猛で、生物としての闘争本能が全面に出ているようなそんな表情なのだ。

 

「ジハハハハハ!楽しいもんだなァ玄脚ィ!!」

「んにゃろォ!!」

 

 そして、それは金獅子も同様に…。

 

 金獅子もサンジとの戦いを心の底から楽しんでおり───ただ、それだけではなく、金獅子はサンジに対し己を超えて行けと、その想いを拳に、一太刀に乗せ、そしてサンジの成長に強い期待を抱いている。

 

「ジハハ!【獅子・千切谷】!!」

「伝説の海賊の力はこんなもんかよ!?

小悪魔風脚(プティ・ディアブルジャンブ)繊切り(シナフォード)】!!」

 

 サンジも金獅子のその想いに全力で応え、この激闘のなかでどんどん成長しているのだ。

 

「誰も…あの空間に入ってはいけねェんだ」

「じゃ、じゃあ!ただ黙って見てろって言うの!?」

 

 悲痛な表情を浮かべ叫ぶナミ。

 

「私…守られてばかりで…」

 

 頂上戦争でサンジが、ルフィの兄エースを救い出す為に、ルフィの支えとなり、助けとなり暴れていたことを記事で知ったナミは、これまでずっとサンジに守られてばかりだったことを痛感しただけではなく、ルフィが兄を失うかもしれなかった状況で何もできなかった自分に、かつてない無力感を感じていた。

 

 そして、その無力感は今───更に増すばかり。

 

 守られてばかり───いや、サンジ達は決してそうは思っていない。航海に於いて、ナミは麦わらの一味の生命線なのだ。皆が、海の上でナミに命を預けている。

 

 だからこそ、サンジ達は全力でナミを守るのだ。

 

 守られてばかりではない。互いに助け合って生きているのである。

 

「サンジの奴、ここに来る途中、とにかく煩くて煩くてさ。ナミさん、ナミさんって…おかげで耳タコだ。

 アイツにとって、アンタを守ることは強くある為の理由で、強さの原動力なんだろうなァ。まあもちろん、アンタだけってわけでもないだろうが…それでも、アイツが強くあれんのはアンタの存在あってこそだ。

 なら、そんな顔してねェで、名前呼んでやれよ。きっと…アイツにとんでもねェ力を与えるから」

 

 傷だらけになりながらも、金獅子と戦うサンジにナミは視線を向けた。

 彼女の瞳に映るサンジは、女を前にして鼻の下を伸ばしている彼でもなく、鼻血を垂れ流している彼でもなく、目をハートにして、体中からハートを出す脳内ピンク色状態でもない。

 

 ナミを助けにやって来た騎士(ナイト)であり、ルフィを絶対に海賊王にすると心に誓った麦わらの一味の矛であり、盾でもある。

 

「サンジくんッ!!」

 

 ナミの声が、サンジに絶大な力を与えるのだ。

 

「へッ!俺には勝利の女神様(ナミさん)がついてる。絶対に負けるわけがねェ…いや、負けるわけにはいかねェんだよ、金獅子ッ!

【"武装(トロワ)"・雷霆天使風脚(アンジュ・レミエル・ジャンブ)"激辛味(アンタンス・エピス)"】!」

 

 その瞬間、サンジの右脚からけたたましい電撃が迸る。まるで、サンジを中心に無数の稲光が走っているかのような───そして、サンジがその稲光となり金獅子へと襲いかかる。

 

「終わりだッ金獅子!

竜の息吹(レデュイール)】!!」

「ぐぅがッ、ぐわあァァァァァ!!」

 

 強烈な電撃がサンジの蹴りによって金獅子の内部へと送り込まれ、そして内部を破壊する。

 金獅子の全身を襲う電撃は、通電経路組織だけではなく、神経系、循環系、臓器にまでも大きなダメージを与えていた。

 

「散れ…金獅子」

 

 焼け焦げた金獅子を前に、サンジは静かにそう呟いた。

 

「ジハハ…ハハ…楽し…かった…ぜ…玄脚」

 

 かつて、神話のような壮絶な戦いを繰り広げた伝説的な存在が、若い力に敗れ海へと消え去って行く。

 

 一度は、引き際を見誤った。だが、同じ過ちは二度犯さず、今度は伝説として、かつて海賊王としのぎを削った大海賊として───その表情は満足気であり、最後は悔いなく───その人生に幕を閉じるのである。

 

「…ッ、や、やべェ…俺も…限界だ」

 

 金獅子が海へと沈んで行く様を見届けたサンジは、緊張の糸が途切れたかのように───ふらりとその体が海へと落ちて行く。

 

 これまで、サンジがここまでの刀傷を負い、ここまで多くの血を流したことなどなかった。

 骨折などの大怪我はあったが、刃物を武器とする───剣士の相手は麦わらの一味の剣士"海賊狩りのゾロ"と決まっていたのだから当然だ。

 

 それでも、サンジは剣士を相手に───大海賊を相手に打ち勝ったのである。

 

 ただ、サンジは全てを出し尽くし、疲労困憊となり、気を失いかけてしまう。海に沈み行くなか、朦朧とする意識のなか、サンジの瞳に映ったのは───まるで、人魚姫と思えるかのような美しい、オレンジ色の髪の美女だった。

 

 

 *

 

 

「…ジく…!…ンジ…ん!サンジくん!!」

「うっ…あ…れ…?ナミ…さ…ん?」

「サンジくん!ああ、良かった!!」

「俺は…」

 

 ナミに助けられたサンジは、彼女の声で目を覚ます。

 

 その体は血だらけで───だが、ナミを見た瞬間に怪我など気にせずに顔を綻ばせるのだ。

 

「ナミさん…怪我はないかい?」

 

 どんな時も、サンジは己よりもレディの心配をする。

 

「バカッ!無茶ばっかりしてッ!相手は海賊王とやり合った大海賊だったのよ!?」

「わりィ…けど…へへッ、勝ったぜ」

「もうッ!…けど…助けに来てくれてありがとう、サンジくん」

「どういたしまして」

 

 世間は金獅子の死を知り、そして───新たな金の獅子の誕生を知る。

 

 






世代交代戦。サンジ VS 金獅子。

冥王や悪魔をどこか彷彿とさせ、偶然にも金髪のサンジ。そのサンジに、金獅子は託して散りました。

サンジの今回の決め技が竜の息吹(レデュイール)だったのは、サボとの修業の影響もありますが、現実世界にドラゴン・ブレス・チリという、かつて世界で一番辛い唐辛子に認定された品種からのものです。今は世界で二番目。
レデュイールとは、フォンやアルコールなどの液体を煮詰めながら風味と濃度を凝縮していく技法です。まあ、この場合は辛さが凝縮されたって意味にして名付けさせてもらいました。

それにしても…やっぱオリジナル展開って難しい!!

皆さん、励みになる感想、評価よろしくゥ!!

自分でもちょっと頑張った感あって疲れたァ!!
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