戦う炎の料理人   作:ドミネーター常守

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原作史上初めて、サンジにガチ惚れしてしまったプリンちゃん。ワノ国には出てくるのだろうか…。



恋はいつでもハリケーン!

 

 

 元七武海"海侠のジンベエ"、"革命軍"幹部イワンコフ。

 

 そして、新進気鋭の超問題児ルーキー海賊"麦わらのルフィ"と"黒足のサンジ"。

 

 その4人がこの戦場にて台風の目となり突き進む。

 

 これ以上白ひげ陣営の士気が高まってしまっては困る海軍はこの辺でルーキー海賊の勢いを止め、鼻っ柱をへし折りたいところだろうが、サンジとルフィを守るように並び立つジンベエとイワンコフの存在は実に厄介なものだ。その後ろに厄介な脱獄囚達もいるのだから実に苛立たしいだろう。

 

 その上、サンジとルフィのコンビネーションは非常に厄介で付け入る隙がなかなかないのだ。この2人の機動力は並大抵のものではない。

 

 そして何より、黒足のサンジの存在には驚きを隠せずにいるようだ。

 

「黒足が7700万ベリーだと?あれのどこを見てそう判断したんだ!?あれは億超え…いや、確実に七武海クラスだ!!」

 

 サンジはゲッコー・モリアを吹き飛ばしたことでより一層警戒されている。

 

 六式の内のいくつかを駆使し、機動力に優れ、強靭な脚力、そして能力者でないにも関わらず炎を操り───サンジを強者と認識した海軍は気を引き締め直し応戦していた。

 

 ただそれでも、攻めの料理によって肉体を最大限にまで活性化させ、万全の状態でこの戦地に降り立ったサンジはなかなか止められるものではない。

 

 そして何より、サンジが危険視されるのは───

 

「…!おい、ルフィ!スモーカーが数秒後にお前狙ってくんぞ!!」

「え?そうなのか?」

 

 まるで未来を見ているかのように、そしてどんなに速い攻撃にも反応してしまう動体視力。

 

「ルフィ伏せろ!!」

「おう!!」

「うちの船長にゃ手出しさせねーぞケムリ野郎が!

【"武装"小悪魔風脚(プティ・ディアブルジャンブ)繊切り(シナフォード)】」

 

 目に見えぬ細い無数の斬撃が、因縁ある海軍本部准将スモーカーへと放たれる。

 

「ぐあっ!!」

 

 モクモクの実を食べた自然系(ロギア)の煙人間であるスモーカーには、覇気を習得していないルフィでは敵わない。クロコダイルのように水という弱点があったならばどうにかできただろうが、覇気以外に明確な弱点のないスモーカーは今のルフィからしたら相性最悪の相手だ。

 

「け、煙のおれに攻撃を当てやがっただと!?黒足の奴、覇気を!?」

 

 同じく自然系(ロギア)"ピカピカの実"の光人間である黄猿に触れることができていた時点で、サンジが覇気を扱えるのは明白だったが、スモーカーはその瞬間を目にしていなかったこともあり、完全に油断して手傷を負わされてしまう。

 

「どうやってケムリンに攻撃当てたんだ!?」

「今は説明する暇はねーし、教えたところですぐに扱えるものでもねー。自然系(ロギア)は俺が引き受けるから、お前はエースを救うことだけを考えていろ」

「わかった!!」

 

 的確な指示を与えるサンジは、献身的にルフィを支え、そして守り、戦っている。

 

「待たぬかッ!!」

「ん?…あ!」

「か、か、海賊女帝ィィ!?」

 

 そんな局面でサンジとルフィの前に姿を見せた王下七武海の紅一点。世界一の美女───"海賊女帝"ボア・ハンコックが2人の前に立っていた。

 

「ハンコック!!」

「はう!?(ま、また名前を呼ばれたッ!!)」

「じょ、女帝だ…な、何て、美し」

「あ、サンジ!今はハンコックよりも…って、あれ?サンジが()()だ」

 

 女帝を前にし、サンジがいつものメロリンモードに突入───してしまうのかと思いきや、くねくねと身を踊らせておらず、目もハートになっておらず、ルフィもサンジが普通であることに驚いているようだ。

 

 世界一の美女、そして人魚姫を前にして石化してしまったことのあるサンジがメロリンモードにならないなど───やはり、それだけこの戦場が地獄と化しているということなのだろうか…。いや、そんな地獄と化した戦場だからこそ、サンジならば地獄に咲いた美しい一輪の花と称しているはず。

 

 いったい彼の身に何が起きたのか…。

 

「そなた、先程からルフィの隣を陣取り、あまつさえ指示を出すなど何様じゃ!?」

「ハンコック!コイツは俺の仲間で、スッゲェ頼りになる奴なんだ!だからそんなこと言わないでくれよ!!」

「うッ!(また名前を呼んでもらえた!!)

 あ、あなた様がそう言うのであれば…そ、それよりもコレを」

 

 サンジに突っかかってきた海賊女帝ハンコックではあるが、ルフィに立て続けに名前を呼んでもらえたことですっかりご機嫌を取り戻し、愛するルフィへ()()()()()を渡し、静かにこう告げる。

 

「そなたの兄の手錠の鍵じゃ」

「え!?うおぉーーー!ハンコック、お前って奴は!」

「ル、ルフィ!よ、良いのじゃ、妾が勝手にやったことで」

 

 ルフィからの熱い抱擁を受け、女帝ハンコックは大きく取り乱す。

 

「本当にありがとう!!」

 

 そしてあっという間に走り去って行くルフィ。まるで嵐のようだ。

 

「こ、これが…(結婚!?)」

 

 だが、取り乱すハンコックを他所に、彼女以上に取り乱している者がその場にいた。

 

 いつもならば、相手がルフィとどんなに親しい間柄であろうとも相手が女であれば、抱擁などしようものなら嫉妬で怒り狂うのがサンジという男なのである。

 しかし、ルフィがあの海賊女帝に抱擁しようともサンジは無反応。寧ろ、地に両膝を突き項垂れ、頭を抱えているのだ。

 

 いったいサンジの身に何が起きているのか…。

 

「な、何故だ…世界一の美女…海賊女帝を前にしているというのに…どうして、あの()()()()ばかりが俺の脳裏を過るんだ!!」

 

 突如、訳のわからないことを叫び出すサンジ。しかし、彼にとってはとても重要なことなのだろう。この局面で、足を止めて()()()()()()()のことを考えてしまうほどに…。

 

「そ、それに…いったい何なんだ()()()()はッ!?」

 

 そして何より、サンジが驚愕しているのは脳裏に過る身に覚えのない───だが、鮮明に覚えている記憶だ。

 

「プ、()()()()()()が…お、おお、俺に()()()()()だと!?」

 

 そう、サンジはこの世紀の大戦争真っ只中で、世界一の美女を目にしてしまったことをきっかけに、海賊女帝よりも美しいと感じてしまったその瞳───いや、プリンという名の女が頭を過ってしまったのだ。そして更には、一度死んでしまったことが原因なのか、ハッキリとした理由は不明ではあるが、サンジがそのプリンによって抜き取られてしまった記憶───キスをされた瞬間が甦り、このような状態に陥っているのである。

 

「ハッ!確かあの子の能力はッ!!」

 

 そして、人の記憶を抜き取り、改竄することのできる能力者であったことを思い出したサンジは顔が一気に熱くなり、鼻が()()()する5秒前だ。

 

「こなクソォーーー!!」

 

 しかし、今のサンジは一味違う。

 

「この素晴らしい思い出を血で汚してなるものかァ!!」

 

 サンジは全身から炎を放ち立ち上がる。

 

「ああ!でも俺はどうしたらいいんだ!?俺はレディー達を愛する為に生まれてきた男だ!!たった1人のレディーを…いやしかしプリンちゃんを…いやだが全てのレディーに一途でなければ俺は俺じゃない!いやだがプリンちゃんだけに一途でない俺など俺でもない!

 ああ神よ!俺はどうしたらいいんだ!?どうして俺にこのような試練を与えるんだ!?」

 

 何を言っているのか───この場にいる全ての者達が理解できないだろう。

 

「コイツ…どうすればいいの?」

 

 "奇跡の人"エンポリオ・イワンコフですらもお手上げ状態だ。

 

「くっ、やはりこれは恋なのか!?真の恋なのか!?」

 

 先にルフィが進んでしまったことなど気付いてすらいないサンジは、もうここで戦線離脱状態である。

 

「こんな時に恋だと!?海賊女帝に見惚れて恋に現を抜かすとは随分と余裕だな黒足ッ!!」

「黒足ボーイ!白猟が来たわよッ!!」

 

 そんなサンジに、この機を逃すまいと、先程の借りを返そうとスモーカーが仕掛けてきた。ちなみに、サンジが海賊女帝に恋をしているというのは完全なる勘違いだ。

 

 だが、心が熱く燃えたぎっているサンジにとって、もはやスモーカーは敵ではない。相手にならないだろう。

 

「この胸をかき乱す激しい嵐…これはまさしく!"恋はいつでもハリケーン"!!」

「ぬっ!妾のセリフをよくもッ!!」

 

 何故それに海賊女帝が反応したのか───それは彼女も同じだからだろう。

 

「攻めの料理の比じゃねェ!体が…力がどこまでも漲ってきやがるッ!!

 "武装"【反行儀(アンチマナー)キックコース】!!」

「ぐはっ!?」

 

 武装硬化させた右足がスモーカーにクリーンヒットし、上空へと舞い上がらせる。

 

「ス、スモーカーさん!?」

 

 強烈な一撃に意識が飛びかけていたスモーカーだが、大切な部下の声が聞こえて、どうにか意識を取り戻すことができたようだ。

 しかし、そんなスモーカーに対しサンジは手を───いや、足を緩めることはない。

 

「行くぜッ!!【空中歩行(スカイウォーク)】」

 

 恋はいつでもハリケーンなのだから…。

 

「くっ!」

 

 スモーカーのもとまで一気に駆け上ったサンジは、すでに両足が高熱を帯びており、全身が激しい炎に覆われている。

 

「【悪魔風脚(ディアブルジャンブ)天国の記憶(ヘブン・メモリーズ)】!

 待っててくれプリンちゃん!俺は必ず君に会いに行く!!」

 

 愛の力を得たサンジは無敵だ。

 

「くらえ!愛の力をッ!!

野獣肉(ヴネゾン)シュート】!!」

「ぐああぁぁぁ!!」

 

 空中にてきりもみ回転しながら蹴りを何度も叩き込み、そしてトドメに強烈な踵落としを叩き込む。

 

「うおらァ!!」

「ガハッ!!」

 

 スモーカーはそのまま地面に直撃。その衝撃は凄まじく、大きな地響きを起こすほどだ。

 

「スモーカーくん!!」

 

 スモーカーの同期である海軍大佐ヒナが駆け寄るなか、サンジは地上へと舞い降りる。

 

 ローグタウンにてスモーカーと初めて戦った時、サンジは手も足も出ずに敗北した。

 

「へっ、やられっぱなしは性に合わないんでな」

 

 二度目のアドバンテージという後ろめたさがあるが、この場にそれを指摘する者など誰もいない。

 

「スモーカーが負けただと!?」

「中将クラスの実力者だぞ!?」

「く、黒足を何としても討ち取れ!!」

 

 サンジ VS スモーカー。

 

 二度目の対決は、サンジの完全勝利だ。

 

「うおっ!?」

 

 ただ、そんな衝撃的な局面でサンジに蹴りを放ってきた人物がいた。

 

「か、海賊女帝!!」

「何をぼさっとしておるのじゃ、黒足。ルフィは先に行ってしまったぞ」

「え!?」

「やれやれ…まあいい。ただ、妾の願いを聞いてはくれまいか?」

 

 本来ならこの世界の誰もがその美しさに魅了され二つ返事で了承することだろう。

 かくいうサンジも───いや、以前までのサンジならば疑うこともなく…。とはいえ、ルフィを手助けしてくれる海賊女帝を疑う余地などなく、サンジは冷静に話を促す。

 

「妾は表立ってルフィを手助けできぬ。だからそなたにしか頼めぬ…どうか、ルフィを守ってくれ」

「そんなの当たり前だ。あなたに言われなくても、ルフィはこの俺が守り抜く…任せてくれ」

「ふっ、頼んだぞ黒足」

 

 サンジからの返答に最高の美しい笑みを送る女帝ボア・ハンコック。

 その笑みにサンジは不敵な笑みを返してルフィのもとへと向かっていった。

 

 立ち去ったサンジの背を眺めながら彼女は静かにこう呟く。

 

「ルフィは仲間にも恵まれておるな。素晴らしい仲間じゃ。ルフィには劣るが、なかなかイイ男ではないか」

 

 海賊女帝にここまで言わせるとは───麦わらの一味の者達が聞いたら耳を疑うことだろう。

 そして、海賊女帝を前に鼻の下を伸ばしていないサンジなどサンジではないと、質の悪い病に侵されたのではないかと大慌て間違いなしである。

 

 恋は───愛は大きく人を変える。

 

 しかし、こんなサンジはサンジではない。

 

 






一度死んだ影響によって、プリンの能力で抜き取られたはずの記憶を取り戻したサンジ。熱く燃えてしまいました。
女帝を美しいと思うのに、一度死んでしまったことでより一層にプリンの瞳が美化されてしまっているサンジ。
サンジにとって、原作で初めてマジ惚れしてくれたお相手なのだから…やっぱり幸せにはなってほしいよね。

しかし、全てのレディーに一途でなければならないサンジ。いったいこれからどうなるのか…。

そして戦場では、サンジにとっても因縁の相手であるスモーカーに打ち勝ったのである。

天国の思い出(ヘブン・メモリーズ)
地獄の思い出(ヘル・メモリーズ)の真逆。プリンにキスされたことを思い出し、そのおかげもあってか炎の威力は倍増し…どころかとてつもない。

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