WinterGhost Frontline   作:琴町

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副官のお仕事/指揮官のお仕事①

 目の前に並ぶ料理の中から、ハムステーキをトレイに乗せた。次いでパンケーキ、ザワークラウト。飲み物は……冷たい牛乳。少し邪道気味の冷たい食事(Kaltesessen)となった。

 戦術人形HK416がこの“猫の鼻”に合流して早一週間。食堂の朝メニューを一通り試した結果、自分にとってはこれが一番合うと判断した。これほど「普通に美味しい食事」を継続して摂ることができるとは想像したことも無かったので、何だかむず痒いような心地に見舞われる。

 一瞬ぼうっとしていただけで、擦れ違いざまにぶつかりかけた。F2000がこちらの全身を見回しながら、ペコペコと頭を下げてくる。

 

「わっ、ごめんなさい!何か零したりしてませんか!?」

「えぇ、大丈夫よ。こちらこそぼうっとしてたわ。ごめんなさい」

 

 ならよかったです、と笑顔で言い残してF2000はその場を去った。

 

 朝食時だからか、食堂はそれなりに混雑している。辺りを見回して、連れの分も含めた空席を探す。G11は「もうちょっと寝るぅ……」と言って出てこなかったので、三人分で十分だ。

 見つけた適当な空席につく。もう少しすればUMP姉妹が来るはずなので、向かいの二席はキープしておこう。

 

「おはよう」

「おはよー」

 

 隣に座る断りも兼ねてMDRに声を掛けると、眠そうな声が返ってくる。確か彼女は朝から出撃があるはずだが、こんな調子で大丈夫だろうか。

 そう訊ねると、

 

「じゃあお(はなし)しよ。そうすれば眠気も飛ぶでしょ」

「まぁいいけど……」

 

 パンケーキを口に運ぶ。甘い……っ!PMCの基地にしては随分と洒落たことに、生地にクリームチーズが練り込まれていて、冷えているのに美味しく頂けてしまう。

 MDRがマフィンサンドを齧りながら訊ねてきた。

 

「“猫の鼻(ココ)”にはもう慣れた?副官の仕事はどうよ?」

「えぇ、場所自体にはね。この快適さにはまだ少し慣れないわ。ご飯も美味しいし、寝具も上等だし。訓練施設も充実してる。

 仕事の方は……問題なく熟せるとは思っていたけれど、想像以上に楽だったわね。

 あの指揮官、自分でさっさと終わらせちゃうのよ」

 

 ハムステーキの油を、ザワークラウトの酸味と食感で相殺する。キャベツがやけに甘いので一度ノアに訊ねたら、FMG-9を始めとする菜園好きの人形たちが育てているとのこと。本当にここは対鉄血の前線基地なのか。

 MDRが口の端に付いたソースを舐め取った。

 

「そもそもよく副官になれたよね。

 理由は分かんないんだけどさ、指揮官ってここに来てからずっと副官採用してなかったんだー。

 G36はお世話をしたがるから、好きにさせてるみたいだけど」

「あぁ、それは」

 

 MDRの質問で、416は少しばかり記録を遡る。

 

 


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