目の前に並ぶ料理の中から、ハムステーキをトレイに乗せた。次いでパンケーキ、ザワークラウト。飲み物は……冷たい牛乳。少し邪道気味の
戦術人形HK416がこの“猫の鼻”に合流して早一週間。食堂の朝メニューを一通り試した結果、自分にとってはこれが一番合うと判断した。これほど「普通に美味しい食事」を継続して摂ることができるとは想像したことも無かったので、何だかむず痒いような心地に見舞われる。
一瞬ぼうっとしていただけで、擦れ違いざまにぶつかりかけた。F2000がこちらの全身を見回しながら、ペコペコと頭を下げてくる。
「わっ、ごめんなさい!何か零したりしてませんか!?」
「えぇ、大丈夫よ。こちらこそぼうっとしてたわ。ごめんなさい」
ならよかったです、と笑顔で言い残してF2000はその場を去った。
朝食時だからか、食堂はそれなりに混雑している。辺りを見回して、連れの分も含めた空席を探す。G11は「もうちょっと寝るぅ……」と言って出てこなかったので、三人分で十分だ。
見つけた適当な空席につく。もう少しすればUMP姉妹が来るはずなので、向かいの二席はキープしておこう。
「おはよう」
「おはよー」
隣に座る断りも兼ねてMDRに声を掛けると、眠そうな声が返ってくる。確か彼女は朝から出撃があるはずだが、こんな調子で大丈夫だろうか。
そう訊ねると、
「じゃあお
「まぁいいけど……」
パンケーキを口に運ぶ。甘い……っ!PMCの基地にしては随分と洒落たことに、生地にクリームチーズが練り込まれていて、冷えているのに美味しく頂けてしまう。
MDRがマフィンサンドを齧りながら訊ねてきた。
「“
「えぇ、場所自体にはね。この快適さにはまだ少し慣れないわ。ご飯も美味しいし、寝具も上等だし。訓練施設も充実してる。
仕事の方は……問題なく熟せるとは思っていたけれど、想像以上に楽だったわね。
あの指揮官、自分でさっさと終わらせちゃうのよ」
ハムステーキの油を、ザワークラウトの酸味と食感で相殺する。キャベツがやけに甘いので一度ノアに訊ねたら、FMG-9を始めとする菜園好きの人形たちが育てているとのこと。本当にここは対鉄血の前線基地なのか。
MDRが口の端に付いたソースを舐め取った。
「そもそもよく副官になれたよね。
理由は分かんないんだけどさ、指揮官ってここに来てからずっと副官採用してなかったんだー。
G36はお世話をしたがるから、好きにさせてるみたいだけど」
「あぁ、それは」
MDRの質問で、416は少しばかり記録を遡る。