デストロイヤーちゃん激推しの方は読まない方がいいかも
血の通いを感じさせない白い指が、赤黒く汚れた腹を撫でた。
赤い蜂の巣のような物体――先程まで鉄血工造のハイエンドモデルだったモノ――は両手を縛られたまま、力なく蠢動する。しかし当然そんな行動に意味は無く、トーチャラーの人差し指がずぷりと人工皮膚の内側へ潜り込んだ。
通算一〇九八回目の激痛で泣き叫ぶ人形に向かって、トーチャラーが語りかける。その口調はあくまで優しく、聞き分けのない子供に辛抱強く言って聞かせる母親のようにも思われた。
「ねぇ、デストロイヤーちゃん。貴女はドリーマーと仲良しでしょう?次にあの子がどこに戦力を投入しようとしているのか、それだけでも教えてくれないかしら」
『痛い痛いだから知痛いらないっ痛い痛いて言っ痛いてるじゃ痛いな痛いい痛い嫌だ痛い許して痛――』
肉交じりの金属塊に繋がれたスピーカーから、思考の中身が垂れ流される。
休憩を除けば合計約三十四時間の愛撫の果て、デストロイヤーの電脳は完全に沈黙した。
トーチャラーは大きく溜息を吐いて、遺体をほじくり返す。指先の感触を頼りにコアを引きずり出すと、人工血液に塗れた立方体がぬらりと照明を反射した。
「結局コアから直接メモリを盗み見るんでしょ?拷問する必要ないじゃん」
解析モジュールで血塗れのコアを走査していると、後ろからつまらなそうな声が飛んできた。
長い髪を靡かせて振り返り、相棒の言葉に答える。
「お帰り、クレンザー。
これくらい別にいいでしょう?こんな体になってから、娯楽の一つもろくに味わえてないんだから」
「その遊びのせいで連中に尻尾を掴まれなければいいけどね。
そもそも、僕じゃ満足できないわけ?」
クレンザーが頬を膨らませて、猫のような瞳でトーチャラーをねめつける。
拗ねたようなその表情が愛しくて、トーチャラーは立ち上がり相棒に跳びついた。身長差があるのをいいことに、頭を自分の胸に埋める。
「あぁん、もう!貴女ってば本当に可愛いんだから!
安心して、貴女が一番だから、クレンザー。
でも、あんなことを貴女にするわけにはいかないでしょう?」
真っ赤な顔で豊かな乳房から浮上したクレンザーは、その言葉で部屋の奥を覗き込んだ。
先程のデストロイヤー以外にも、ゲーガー、スケアクロウ、イントゥルーダー‥‥数多の鉄血人形の屍が、それぞれ判別できるだけの要素を奪われた状態で打ち棄てられていた。
クレンザーの眉尻が下がる。
「ごめん、トーチャラー。鉄血ばっかりで。
グリフィンの人形、全然捕まんないんだ」
「いいのよ。この子たちも中々楽しめるんだから。
グリフィンの方が悲鳴も美味しいけれど‥‥彼も彼の人形たちも優秀だもの、仕方ないわ。
まぁそんなことより、早くベッドに行きましょう?」
クレンザーの柔らかな癖毛を撫でながら、トーチャラーは優しく微笑んだ。
相棒の手を引いて、ベッドに誘う。
破壊欲を満たしたのなら、次は性欲か。
“欠落組”と称される二人のハイエンドモデルは、今夜も互いを貪り合う。
感想が欲しいです。なんなら好きな動物の鳴き声でもいいです