「ごめ゛ん゛な゛ざい゛~!!」
C■■地区、鉄血領最奥。剥き出しの配線が生い茂る管制室に、小柄な鉄血ハイエンドの泣き声が響き渡った。
ドリーマーは耳を塞いでいた手を放し、溜め息を吐いた。ツインテールを振り乱すデストロイヤーが、両目から
「もう、どうしてそんなに泣くのよ」
「だって、折角ドリーマーが最前線を任せてくれたのに、アタシ失敗しちゃった‥‥。
エクスキューショナーだって、あんなに資材使ったのにぃ‥‥」
デストロイヤーの言う通り、改造型エクスキューショナーーー“
そして、結果的にそのコアも奪われてしまった。今までに投入したピーキーなモデルと同様、カストラートは手に入れたコアを解析するだろう。これからケラウノスの費用対効果は劇的に低下するはずだ。もう作らない。
だが実際のところ、ドリーマーはさして悲嘆していなかった。その態度を見たデストロイヤーが、訝しげな声を上げた。
「どうするのドリーマー?また対策されちゃうよ」
「どうって、どうもしないわよ?
元々コストのかかりすぎるモデルだったし、エクスキューショナーは旧式に戻すわ。あの子は嫌がるでしょうけど」
「やめちゃうんだ‥‥。じゃあ、何であんなの作ったわけ?アンタの遊びってわけじゃないんでしょ」
小首を傾げるデストロイヤーに、ドリーマーはコンクリートの欠片を軽く投げつけた。額を押さえてデストロイヤーが憤然と抗議する。
「痛いじゃない!何するのよ!」
「前に説明したでしょ、おバカ。それともバックアップを読み込み損ねたの?」
「え、そうだっけ?‥‥待って二発目投げないで。
そうだ!カストラートの首でも晒せばトーチャラーを釣れるってヤツ?アレ冗談だと思ってた」
「そんなわけないでしょ」
思わず天井を仰いだ。発言の重要度を判別する能力すら無いなんて。
「本気で身を隠しているトーチャラーたちを、正攻法で見つけるのは至難の業。
クレンザーは私が手慰みに設計図を書き殴ってただけのロマン兵器だけど、トーチャラーは違う。
あのお方の命令で、この地区の戦術指揮を丸々任せるために作ったハイエンドだもの。狡賢さは折り紙付きよ。
けれど、あの子には一つ、決定的な弱点――アキレス腱がある」
「それがカストラートなの?」
頷いて、『第三種遺存生命体に関する報告』という題のファイルを一瞥する。――トーチャラーの製造過程を思い返すと、少し気分が悪くなる。
胸の中にもう少し空気が欲しくて、ドリーマーは気持ち大きく息を吸った。
「トーチャラーとカストラートとの間には、切っても切れない関係があるの。
彼を捕らえるか殺すかすれば、あの子は必ず彼の体を奪いに来る。
ま、こっちはほとんどついでみたいな作戦だったんだけど」
「え?じゃあ本命って何‥‥待って!コンクリ片ぶつけないでよ痛い!
ソレ、ホントにアタシに言った!?一ミリも憶えてないんだけど!」
破片を握った手が止まる。そういえば言ってなかった気がする。まぁ言っていたとしてもどうせ忘れていただろうし、大して変わらないか。
「‥‥ナハツェーラのテストとデータ収集から、彼の目を逸らすのが本命よ。こっちは今のところ上手くいってる。
軍とはぐれ人形共が勘付いてるみたいだけど、まぁカストラートにさえバレなければ問題ないわ」
その言葉を聞いてしばらく考え込んだ後、デストロイヤーが目尻に涙を浮かべて叫んだ。
「やっぱりアタシ、聞いてないわよ!」
そのままわんわん泣き出すものだから、ドリーマーは額を押さえた。彼女を苛めるのは楽しいが、泣かせると非常に面倒なのだ。だが今回は仕方がない、最後のは自分の不手際だ。
今日はいかにしてデストロイヤーの機嫌を誤魔化そう。ドリーマーは最適な
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