先程の予想通り、最後の一名――HK416はすぐに見つかった。
そしてUMP45の言葉も正しかった。その人形の体を一見して、ノアはそう思った。
他の三名の傷は、言ってしまえばただの負傷だ。四肢の欠損も戦場ではままあること。戦闘の過程で発生する損傷という観点では、ある意味健全とさえ言える。
しかし、この人形は違った。
本来ならば先に体があって、その上に傷があるものだ。だが彼女は、最早逆と言ってもいい有様だった。彼女の体は元々傷で出来ていて、その上から申し訳程度の肉体がくっ付いているのだと感じるほど、痛めつけられていない場所が無い。外れているのは右脚のみだが、損傷の度合いでは先の三名と比べものにならない。
にも拘らず、辺りに広がる血溜まりは驚くほど小さかった。それぞれの傷口から、ほんの少しずつ人工血液が流れている。
一つの体を舞台にして、地獄が顕現していた。
破れた乳房が、浅く上下している。
意識が残っている――
自身のメンタルモデルに過剰な負担がかかった自律人形は、電脳にバグを起こして意識を失う。場合によっては記憶や思考能力にダメージが残り、その後の活動にも支障を来す。
この地獄を作り上げた下手人は、そのことを理解した上で痛みを調節していたのか。
出来る限り優しく顎を持ち上げる。瞼は切り落とされたのだろう、剥き出しになった眼球は罅割れ、赤黒く汚れていた。
「キミが、HK416で間違いないかな」
分かり切っていたことだが、真っ二つに折れて傍に転がる
人形の顔が、ミリ単位で、確かに上下した。
泣きそうになる自分を律し、優しい笑顔を作る。
「僕はノア。ノア=クランプス。助けに来たよ」
瞼が無いので分かりづらいが、416がスリープモードに移行する。
一つ一つの傷は浅いが、出血は止まらない。急いで基地まで運ぶ必要がある。
「――やはり来たな。犬共の飼い主」
背後からかけられた声に、ノアは大して驚かなかった。
大きく、わざとらしく、溜息を吐いて振り返る。
管制室の入口、ハンターが二丁の拳銃をこちらに向けていた。
きっとこの拷問はハンターによるものではない。加虐嗜好で知られるアルケミストでも、ここまで手の込んだ凌辱はしないだろう。しかし、下手人が鉄血ハイエンドであることは間違いない。
八つ当たりの大義名分は、必要なかった。
ノアは引き攣った笑みを浮かべて、両腕の力を抜く。
「あっは。
悪いけど、今はキミと遊んでる場合じゃないんだよねぇ――」