WinterGhost Frontline   作:琴町

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「喜べ、お前が主人公だ」 ①

『いいかノア=クランプス指揮官!

 今度という今度は必ず来い!絶対に来い!来なかったら無条件で退職だぞ!

 代わりにクッソ無能で性欲だけ旺盛な指揮官をC■■地区の担当にするからな!!

 やるからな!!私は本当にやるからな!!??!?』

「どんな奴を送っても僕にとっては同じ意味ですけどね。行きますよ」

 

 半狂乱のヘリアントス上級代行官と、そんなやりとりをしたのが1週間前。ノアと416は、連れ立ってG&K本部の廊下を歩いていた。

 辺りを見回しながら、ノアが呟く。

 

「ちっちゃくなったね」

「G&Kは解体された扱いだもの、仕方ないわ。

 ”猫の鼻(アソコ)”にいると忘れそうになるけど」

 

 416は居心地悪そうに髪を弄ぶ。

 

「そんなことより、何この視線。有名人なの?貴方」

「さてね。知らないや」

 

 解体の憂き目を逃れた基地は多くないが、全体会議となればそれなりの人数が集まる。指揮官だけでなく、その副官も来るとなればなおさらだ。

 廊下を歩いていても待機室のソファに腰掛けても、彼らの視線はずっとこちらに向いていた。

 

「誰あの美人。どこの指揮官?」

「アレってもしかしてC■■地区の‥‥」

「着任から一度も会議に出てこなかったくせに」

 

 好奇、嫌悪、敬遠といった様々な色を孕んだ視線がまとわりつく。

 416はノアの袖を掴んで、その表情を窺う。

 

「随分苛ついてるわね。そんなに来たくなかったの?」

「そりゃそうさ。気付いてないの?視線の3分の1はキミ宛だよ。416」

「え」

 

 視線の先を再確認する。

 言われてみれば確かに、視線の何割かは自分に向かってきていた。

 しかし、目は合わない。心なしか目線が低いような‥‥。

 

「っ!」

「反応しない方がいい、余計喜ぶよ。

 ‥‥はぁ。だから来たくなかったんだ。

 ちなみにキミを連れてくるのはもっと嫌だったんだけど」

「う‥‥ごめんなさい」

 

 今回の本部出向、元はノアが一人で行くつもりだった。それを416が「指揮官が単身で出張なんてするものじゃないわ。私も行く」と無理矢理同行したのだ。

 自分は404小隊の一員だが、G&K本部ならば姿を見せても問題ないだろうという判断だった。

 416が目を伏せると、ノアは仕方がないという笑みを浮かべて416の頬をつつく。

 

「いいんだよ。結局了承したのは僕だしね。

 そもそも、彼らの反応は特殊じゃない。

 人間(サル)にとっては女性の体をしてればなんでもいいのさ。進化の過程において脳は自重で下がっていって、現代では下半身にあるんだから。

 とにかく、帰るまでは僕にくっついててね。嫌じゃなければだけど」

「あぁ、貴方って本当に人間が嫌いなのね‥‥」

 

 言われた通りノアの腕に腕を絡めると、途端に視線が減る。なるほど単純だ。

 

「よ、416なのか?」

 

 しかしそんな中震える声で話しかけてきたのは、見知らぬ指揮官だった。

 銀髪、もしくは色が抜けた短髪が特徴的な、人当たりのよさそうな青年だ。

 ノアが視線で「知り合い?」と訊ねてくる。416が否定の意思を示すと、ノアの気配が変わった。

 確かな殺意を以て、ノアは眼前の青年の動向を観察している。

 

「416!よかった、見つけた!

 どこに行ってたんだ?何も言わずにいなくなるなんて‥‥」

「え‥‥っと、誰ですか?貴方は‥‥」

 

 その言葉に余程ショックを受けたのか、青年は目を見開いた。

 

「そんな、何言ってるんだよ!あんなに愛し合ったじゃないか!

 僕が分からな――」

Ausfallen(アウト).」

 

 青年が416の肩を掴もうとした瞬間、ノアが低く呟く。

 気付けばノアと416の位置は入れ替わっており、ノアの二指が青年の瞼に添えられていた。

 青年は肩を掴もうとした姿勢のまま、動けない。

 

「ねぇ、知ってる?そういうのナンパって言うんだよ」

「な、何なんだよアンタ。コレは僕と416の問題――」

「知らないって本人が言ってるよね?都合の悪い言葉は聞こえないかな。

 それとも何、キミの故郷では”Who are you(どちらさま)?”が”Long time no see, darling(逢いたかったわ、あなた).”と同じ意味だったりする?」

「うっ‥‥よ、416‥‥」

 

 青年がこちらを見るが、416は目を逸らした。純粋な嫌悪感からだ。記憶にない相手からありもしないセックスをアピールされることが、こんなに不快とは。少し吐きそうになる。

 青年の額に、脂汗が滲む。その量はどんどん増え、次第に体が震え始めた。

 ノアが、殺気を浴びせているのだ。こちらには微塵も伝わってこないから、おそらくは青年だけに集中して。

 

「何やってるんだ!」「おいおい止せ!」

 

 事態を見かねて、周囲の指揮官や人形たちが動き出した。流石に抜銃はしないが、ノアを取り押さえようと近づいてくる。

 ノアは416の手を握って、笑顔を作った。

 

「僕は何の危害も加えてない。ただ自分の副官を守ってるの。

 別に刃物だって出してないし、彼が過剰に怯えているだけでしょ」

 

 ノアが手を引くと、青年は尻もちをついて泣き始めた。ヒュウヒュウと喘鳴しながら、胸を掻き毟って涙を流している。「416‥‥416‥‥どうして‥‥」

 

「何だコイツ。気持ちわる」

 

 ノアの呟きに、416も全面的に同意だった。

 

「諸君、会議を始める。会議室に――って、何だこの状況は」

 

 資料を抱えてやってきたヘリアンが、目を丸くする。

 

「やぁヘリアンさん。久し振り!

 早速だけど、コイツ(クビ)にしない?」

 

 困惑と若干の恐怖が混ざり合った空間で、ノアだけがいつもの笑顔を浮かべていた。




セコムしてますか?

今回は416ガンギマリセコムなノアくんのお話でした。一応伏線もあるよ

モチベが続くうちは、このくらいの文字数でハイペース投稿していこうかなと思っています。よろしくお願いします

感想や高評価などお待ちしています。
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