強き信念を抱いて/新説 鬼となった竜の道   作:橆諳髃

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微妙な感じで書き上げたこの作品……本当はこんな形で進行するはずではなかったのですが……

いや! ここは我慢する時! 少し無茶振りでも、どうにか自分の思い描いている作品に繋がるように描くのだ‼︎

「この作者は本当にもうダメかもしれない……」


本編前
壱話 自分本位(エゴ)信念(エゴ)


 

 

 

 〜400年後〜

 

 この世界に飛ばされて既に400年……俺は日本を巡り歩いて色んなものを見てきた。と言っても争い事が殆どだったがな?

 

 平安から鎌倉へ……平氏から源氏へ……そこから鎌倉から室町、源氏から足利氏へ……戦に駆り出される人達と、引き離される家族。それぞれの想いを抱きながら……死にたくないと思いながらも刀や槍、弓を持ってぶつかる兵達。そして……死にゆく人々……

 

 時には外国から日の本を守るために戦った時もあった。その時も……どちらともに多くの犠牲が出た。

 

(こんなに……過酷なのかよ)

 

 俺は日本史が好きだ。それも戦国時代あたりが物凄く好きだった。歴史上に出てくる有名な人、有名な合戦、有名な策略……それがゲームになって追体験できる。俺が日本史を好きになったのは、歴史を追体験できるゲームをした事で興味を持ち始めて好きになった。

 

 だけど……まさかここまで過酷なんて思っちゃいなかった。所詮は追体験……リアルではなくてフィクションの世界だ。

 

 だからこそ実感なんて湧かなかった……目の前で大勢の人が死ぬ事がどれほど悲しくて、この世界が一部の人にとってのエゴによって作り出されているのか……

 

 でも……そのエゴがなければ時代が次に進まないのも確かで、だからといって全ての人に罪があるかと言われればそうではない。そこで救える命がどれだけあるかは分からないが……もし少しでも生きたいと思って鼓動を止めていないものがいるのならば、俺は少しでも助けたいと思った。

 

 所詮その想いも自分のエゴだ。だがそれで俺は自分の信念を曲げるつもりはない。少しでも……助けれる命があるのなら俺は助けたい。

 

 今日も自分にそう言い聞かせながら、戦場になった地を闊歩する。そして少しでも息があるものは助け、安静に出来る場所まで移動させる。その際に自分の血で作った球体を相手に入れる事は忘れない。脈や息、心音が正常値に戻った事を確認して安全な場所まで連れていく。

 

 んで、この時には既にいくらか日の当たるところに出ても大丈夫な様になった。一時凄い眠気に襲われて、日の当たらない場所で寝ていて次に起きた時には季節が変わっていた。その周期が何回かあった後、急な眠気に襲われる前の状態に戻った。それからまたいつもの様に日の光に慣れる練習として、普段通り鬼の姿で(もうこの時には平常時だろうが鬼の時だろうが容姿に変わりは無くなったが)日の中を歩いたのだが……

 

(あれ? 全然痛くないし身体も崩れないぞ?)

 

 そう、日の光をどうやら克服したらしい。そっからは殆ど鬼の姿で歩いている事が多くなったが、今度は逆に平常時に戻れなくなってしまった。まぁ日の光を克服したらしい今ではどちらでもいいが……

 

 という事で、こうして誰かを助ける時も鬼の姿で助けている。

 

 因みにその安全な場所も灯が作ったものなので、例え何者かが壊そうとしてもびくともしない強度で作られている。

 

 だがいかんせん……そんな中でも沢山の人が死んでしまった事を良いことにワラワラ鬼が湧き出る始末……

 

「ここにいる人達は貴様らの食料でも何でもねぇ‼︎ 分かったのならここから居ね‼︎」

 

 

 そう言いながら血鬼術であの時の日本刀を呼び出し、襲いかかってくる鬼から斬っていく。俺はここ400年この世界で嗅覚とかほかの感覚が敏感になってしまっていた。鬼も元は人間だった。だからこそ、鬼を斬る度に後悔と悲しみの匂いがする……

 

(皆……ごめんな……後でしっかり墓を作って弔ってやるからな)

 

 斬る度に……まだ生きたかったという思いと後悔を感じながらも俺は目の前に来る鬼を斬り続けた。そんな時だ。

 

「ほぅ……なにやら珍しい存在がいるな」

 

 そいつは急に現れた。黒髪で肩より長い髪。それとは比例した形で白い肌と、まるで吸血鬼のような赤い目と、縦に細長い瞳孔が、月明かりに照らされて男は立っていた。

 

「まさか人間の身でありながらこれだけの鬼に襲われても動じず、逆に立ち向かっていくとは……それも一切の息切れないように見える。これは人間のままにするのは勿体ない」

 

「はぁ? テメェなに言ってやがる? 誰にでも分かる様に話せや」

 

「あぁ、すまない。先程のは単なる私の独り言だ。それで早速なんだが……私の部下にならないか?」

 

「部下? どういう事だ?」

 

「先程から君の戦いぶりを見ていて思ったのだが……君は何かを求めている様に見えたものでね。それが何かまでは分からないが……だが人間の寿命はいかんせん短すぎる。人間である君が生きている間に、求めているものが見つかる可能性も低い。その前に死んでしまうだろうな。そこでだ。私はとある目的の為に同志を募っている」

 

「……だから?」

 

「あぁ、だから君の求めるものが見つかる為にも、私の求めるものが見つかる為にもお互い同じ存在となって協力しようと言っているのだ」

 

「同じ存在? つまりあんたは人ではないと言うことか?」

 

「そうとも。私は鬼と呼ばれる存在でね。私もこうして各地を練り歩き、まだ生きていたいと願う人間を見つけては、私の血を与えて鬼にしているんだ。そして生きながらえさせる代わりに私の目的を果たす手伝いをしてもらっているがね」

 

「鬼……人に血を分け与えてか」

 

「そうとも。そして生きながらえる為にと私の血を欲し、そして賛同してくれる同志達がこんなにいるのだ」

 

 そして男の後ろには、何百以上もの鬼が立っていた。

 

「その鬼達は?」

 

「あぁこやつらか。ここの地で無残にも散ってしまいそうだった人間達だ。まだ生きていたいと願っていたからな。私の血を与えたのだ」

 

「……他の方法で助ける事は出来なかったのか?」

 

「助ける? 無論助けているだろう? 違う存在ではあるが、彼らも生きながらえているから目的は達している。そして彼らには今度私の目的を達成してもらう為に力を貸してもらうのだよ」

 

「……その人達に重説とかちゃんとしたか?」

 

「……ん? なに? 重説とはなんだ?」

 

「その様子じゃあ何も言ってねぇ様だな。重説……自分がこうなる変わりに色々と条件があるって説明だよ。まぁテメェの口ぶりじゃあただ甘言だけで鬼にしてるった事か……」

 

「それがどうした? 彼らはただ生きながらえた事に喜びを感じている。見ろ! 彼らの顔を! 良い顔で笑っていると思わないか?」

 

 灯はその男の背後にいた鬼達を見た。確かに皆顔が笑っている様に見える。見えるが……

 

 

 

 

(タス……ケテ……)

 

(こんな姿になってまでイキタク……ナイ……)

 

 

 

 

(あぁ……聞こえるよ。お前達の悲しみが……)

 

「テメェ……その鬼達が本当に笑っていると思うのか? 心の底から」

 

「心の底から? 何を言い出すかと思えば……鬼になったのならば後は鬼の本能に従うまで。心の声は私にもある程度は読めるが、それを読もうとする気は無いな」

 

「……そうか」

 

 そこから灯の纏う気が変わった。それを間近で受けた男は……

 

(な、なんだこの威圧は⁉︎ それにこの感じ……ま、まさか既に私と同じ鬼だとでもいうのか⁉︎ だが私がさっき感じていた稀血の人間の気配が何故いきなり変わった⁉︎)

 

「貴様がこんな悲しい存在を生み出している親玉という事は分かった。それも十分にな」

 

「貴様の様な存在がいるからいつまで経ってもこの悲しみの連鎖が消えない! だからこの世から失せろ!」

 

「な、なんなんだ貴様は! なんなんだお前という存在は⁉︎」

 

「鬼だよ……今の俺は貴様と同じ存在だ。ただ在り方が違う……貴様とは真逆にいる存在だ」

 

「な、何を言っているんだ⁉︎ 私と真逆だと⁉︎ 私と同じ鬼である貴様が⁉︎」

 

(なんなのだこいつは! この存在は⁉︎ こいつをこの場で殺さねば私がやられる‼︎)

 

「どうした? さっきまで余裕そうな顔してたのに……やけに心は焦っている様だが?」

 

(こ、心も読めるのかこいつは⁉︎)

 

「え、えぇい‼︎ こんな奴に声をかけた事自体失敗だったか‼︎ こいつを始末した鬼は私の血をさらにやるぞ‼︎」

 

「「「オォォォォォッ‼︎」」」

 

 男のその言葉で本能的に動く有象無象の鬼達が灯に一斉に飛びかかった。

 

 その様子は……灯にとってはスローモーションに見えた。まるで走馬灯でも見ているかの様だ。

 

 しかしながら……灯はここで命を散らすつもりはない。

 

「血鬼術……」

 

 血鬼術を使う時には、既に灯の身体は鬼に覆い被されて男からは見えなくなっていた。

 

「ふ、フンッ! 所詮は口だけだったと言うことか」

 

(ならば先程の戦い振りは一体なんだったと言うのだ?)

 

 そう思っていた時だ……

 

 

 

ダーーンッ

 

「「「グァァァーッ⁉︎」」」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

 鬼達は吹き飛ばされる。男はその光景をただ呆然と眺めていた。そして見たのだ。灯の両手1つずつに持たれていた大剣を……

 

「あなた達の苦しみを……今断ち切る‼︎」

 

 両手に持った大剣が桃色の刃を灯した。

 

「な、なんだその光は⁉︎」

 

「テメェは知らなくてもいいことだよ‼︎」

 

 そう言いながら灯は近くの鬼から斬りに行く。

 

「デヤァァッ‼︎」

 

「ギャァァァッ……」

 

 灯に首を斬られた鬼は、当然ながら胴体と首が分かれた途端に身体が崩れ始めた。

 

「ば、馬鹿な⁉︎ まさか私が殺す以外の方法で鬼を滅するなど⁉︎」

 

「やっぱテメェは部下だと何だと言っておきながら自分の手で同胞を手にかけているじゃねぇか‼︎」

 

「今貴様がやっている行為とどう違うと言う! 所詮貴様も同族殺しだろう‼︎」

 

「確かに同族殺しだ。エゴだよこれは。だがな……」

 

「俺は彼らの悲しみと後悔を断ち切ってんだよ! その分の悲しみと後悔を背負ってんだよ! 自分本位の貴様と一緒にするな‼︎」

 

「減らず口を‼︎」

 

「減らず口だとしてもこれは俺の信念だ! 誰に何と言われようと変わる気はねぇよ‼︎」

 

 そう言いながらどんどん鬼を斬っていく。周りに陣取っていた鬼達は、灯の嵐の様な猛攻で数を減らしていった。

 

「だ、だが私がここで生み出した鬼はこれだけではないぞ!」

 

 男が言う様に……男の後ろにまたワラワラと鬼が湧き出す。これは消耗線に入るか……

 

「血鬼術ゥ‼︎」

 

 灯は大剣を一度連結させて片手を自由にすると、また新しい得物を取り出した。それは赤い小さな持ち手だった。そこに力を入れると大剣と同じ様な桃色の鋭い刃が出来る。

 

「ハァァァッ‼︎」

 

 それを横投げで前に放つ。するとそれも勢いよく横に回りながら前へと飛んでいく。それは男の頬を少し擦り後ろへと飛んでいく。男は正直何が起こったのか分からなかった様だ。

 

 その男の後ろでは鬼達の断末魔が聞こえ、今度は男の反対側の頬を後ろから擦り灯の手元へと戻った。

 

「な、何が……っ⁉︎」

 

 男が後ろを振り向くと、さっきまで大勢いたはずの鬼が既に3分の1をきっていた。

 

「あ、あれだけで私が生み出した鬼が……たったあれだけで……」

 

「アァァァァッ‼︎」

 

(な、なんなんだこの光景は……私は夢を見ているというのか⁉︎ こいつは一体何だというのだ⁉︎)

 

そうこうしているうちに上から灯が鬼の残党を攻撃していた。それを現実逃避で見ていた男だったが……

 

「さぁ、後はお前だけだな?」

 

「っ⁉︎」

 

 その言葉で現実に戻された。周りを見れば月明かりの下……灯と男の2人しかいなかった。

 

「さっきからずっと思っていたんだが……テメェをすぐあの世にっていうのも、ただテメェは楽して死ぬからな。だから……」

 

「血鬼術」

 

 灯は今まで手に持っていた大剣を消すと、今度は無骨で身の丈ほどの大きなハンマーを取り出す。鋒はトゲトゲしく……かするだけでも骨が折れてしまいそうなものだった。

 

「お前は人を鬼にした事を……長い時かけて悔いながら……反省しながら生きていくんだな」

 

「私が……この私が悔いるだと? 反省するだと? そんな下らぬ事を誰がするものか‼︎」

 

 男は灯から飛び退きながら、まるで口だけがある肉塊を背後から出して襲い掛かる。

 

「はぁ……まぁそんな事を言う事は分かっていたさ。だが……」

 

グッシャァ‼︎

 

「これはもう決定してんだよ。大人しく自分の行った事を黙って償え」

 

「ガハッ⁉︎」

 

 肉塊はハンマーによっていとも容易く潰され、男もハンマーで空に飛ばされていた。

 

「パイルバンカー……セット」

 

 ハンマーの中から何やら音がした。だが別段形状などは変わっていない。そこから灯はハンマーをまるで投げ槍をするかの様に構えて……

 

「穿て鉄血‼︎」

 

 ハンマーは投擲された。それも空に飛ばされた男目掛けて……

 

「グフゥァ⁉︎」

 

 男の腹に吸い込まれるかの様にクリーンヒットした。

 

「貫け鉄血‼︎」

 

 ハンマーが男に当たったのを確認すると、さらに灯はそう叫ぶ。

 

「グバッ⁉︎」

 

 男の腹に当たったハンマーの先端から鋭い刺が迫り出し、男の腹を貫いた。それだけでなく、ハンマーは男を貫いたまま速度を落とさず真っ直ぐ飛んでいく。

 

「その体制で最低でも何百年か自分のやってきた事を悔い改めろ。そうしたら綺麗に首を跳ねて楽にさせてやるよ」

 

「オノレェェェェッ‼︎ 悔いなどするものかぁぁっ! 貴様の容姿、この憎悪とともに覚えておくぞぉぉぉっ‼︎」

 

 男は遙か彼方へと飛ばされていく。それを姿が見えなくなるまで灯は睨み続けた。

 

「これで奴も悔い改めたらいいが……さて、じゃあ今からアンタ達の墓を作るからな」

 

 灯はお墓を作り始めた。この地で散った兵達と、男によって鬼にされた人たちも含めて1個ずつ作っていった。そのために灯は三日三晩……お墓を作り続けたという。

 

 そして灯は……また大切な何かを失う感覚を覚えた。




次回……鎌倉〜室町を経ていよいよ戦国時代へ

日の呼吸を使いし侍……灯の前に立ちはだかる。
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